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ビーズを育てる

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ビーズを見ていると懐かしい気分になる。月に一度の何百円のおこづかいで買って、かんたんなブレスレットやゆびわをつくって遊んだことを思い出すから。

toho100 日本でトップクラスのビーズメーカー、TOHO(トーホー)にお伺いしました。

今回はトーホーのビーズを使用したアクセサリーブランドの企画営業をする人の募集です。

身近な日本製のビーズは、じつは高品質で世界中に需要があるそうです。話を聞いていると、わたしのビーズの印象がどんどんかわっていきました。

ビーズの新しい可能性をつくりだしていく仕事です。

常務取締役・東京支店長の山仲さんと幡ヶ谷駅の改札の前で待ち合わせ。時間になると半袖短パン姿の山仲さんがいらっしゃった。

山仲さんとオフィスまで会話しながら一緒に歩いていく。気さくで明るくてお話し好きな方。

あっという間にオフィスに到着した。古い集合住宅を改装した建物で、目の前には立派な木が影をつくっていた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 一階にはカフェ、そのとなりにはギャラリーがあって、同じ建物に入居しているデザイナーさんたちの作品が置いてあるそうだ。

上の階にはオフィスやショールーム、アトリエがはいっている。

案内された部屋は、半分くらいは自分たちの手でつくったのだとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA バーカウンター、テーブル、小上がりの畳の打ち合わせスペース。

ところどころに緑があって、木でできたブラインドからはやわらかく風がはいってくる。スタッフの方がつくったというビーズのオブジェが揺れていた。

そのまま、テーブルに座って山仲さんにお話をきいた。

「トーホーは創業して64年間、広島でずっとビーズをつくっている会社です。私の兄が社長で、私は弟です。国内実務の長ということでがんばってやっております」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 初代であるおじいさんが亡くなられてお兄さんが事業を継いだとき、山仲さんも会社を手伝ってほしいと相談されたそうだ。

どうして入ることに決めたのですか?

「やっぱり、弟を入れるっていうのはすごい決断だったと思うんですよ。だけどそうやって覚悟決めて呼んでくれたということは、俺のことは好きなんだなってわかったので。それがいちばんうれしかったですね」

「あと前の仕事でも海外に行くことが多かったのですが、この会社の商品も海外にたくさん輸出しているので、おもしろそうだなという印象がありました」

もともと山仲さんは、国内外でお菓子製造の機械を売る仕事をしていた。

単に機械を売るのではなく、あたらしいお菓子を提案したり、機械に合わせた調合を研究して、ノウハウと一緒に販売していたそうだ。

「たとえば、自社の機械で生クリーム大福などをつくって、お土産として持参するんです。それで『この機械でつくりましたよ』とか『1日何個売れたら何年のリースでこのくらい利益がでる』とか提案する。そのものがどうやったらより価値をもつかを考えてきたんです」

ものを売るだけではなく、何ができるかまで提案して販売すると、売れやすいことを実感した。

「僕らは基本的に素材をあつかう会社で、どうしても素材のことだけを考えることにいきがちなんです」

トーホーに入社してからも山仲さんはビーズそのものだけでなく、ビーズでどんなことができるかという提案をしてきた。

そのひとつが浅草橋にあるギャラリーの展開。

toho103 ビーズをつかったアート作品や、現代美術の作品を展示している。

世界には部屋という空間をビーズで表現している人や、自転車をビーズでデコレーションする作家さんがいるのだという。そんな作品を展示したり、制作をしたアーティストと会話できる場所を提供したいと考えている。

「手芸とアートって、一緒のようで同じではない。手芸はテクニックにこだわりがあるけれど、アートとなると必ずしもそうではないんです。ギャラリーをやっていると、ビーズが好きで来てくれた人や、通りかかって見に来てくれた方たちにも刺激をあたえられるし、ぼくらメーカーにとっても刺激になるんです」

ギャラリーでは今までになかった新しいビーズの見方を発信している。

ほかにはどんなことをしているのだろう。

「もうひとつは、シードビーズ協会というインストラクターの養成学校です。やっぱり、商品だけでなくて技術だったり、そのノウハウを売らないと売れないと思うんです。だから自分たちでも先生を育てたり、そのノウハウを我々が教えたりという部門を持ちたいなと思っていて。それではじめたのがきっかけですね」

toho102 自社のビーズをつかって、インストラクターたちは技術を磨き、つたえていく。

そうしているとインストラクターがアーティストやデザイナーになって、いい影響をもたらすこともあるそうだ。山仲さんはそんな広がり方も期待しているという。

そして最後の3つ目が、完成品の事業。

今回、企画営業を募集するブランディング部門だ。ここではIco&Co.というビーズジュエリーの自社ブランドをつくっている。
実はいま、ジュエリーに使用されるガラスビーズに、あまり質のよくないものが増えているそうだ。ビーズは世界中で使われていて、製造しているのは主に中国、台湾、インド、チェコ、そして日本と言われている。なかでも中国のビーズの質は落ちるものの、安くて生産量が多いため、クオリティの低いビーズジュエリーが大量に出回っているのだという。

対して日本の製品は品質がよいため、ハンドメイドや高品質のアパレルメーカー、ウェディングなどに需要がある。特にハンドメイドは、手づくりをするならトーホーのビーズを使いたいと言ってもらうことが多く、特にアメリカが大きなマーケットになっているのだとか。

「イメージでいうと、氷山の一角みたいなところで販売しているんですよね。だから、ハンドメイドの人たちを増やしたいんです。ビーズをつかって、『こんなの自分でつくれるんだ!』という思いをもってほしいので、完成品の事業をはじめたんです」

toho222 この写真のブランド「PENTA」は、ROOMSというアッシュペーフランス主催の展示会で亀山アワードをいただいたもの。もちろん手づくりで、機械ではつくれない。はじめて見たときはビーズでできているとは思わなかった。繊細さにもすごく惹かれた。

こういった作品をつくるためには、質のいいトーホーでつくられているビーズであることが前提になるのだと思う。

以前、山仲さんはアンティークのような雰囲気のビーズをつくろうと、まだら模様や不揃いなものをつくって欲しいと製造現場の人に頼んだことがあったそうだ。

すると現場から返ってきたのがこんな言葉だった。

「いけんです、それはいけんです」

広島弁で「だめです」ということ。広島にあるビーズ製造の工場には、地元の人が多く働いている。

「やっぱり日本人って恥ずかしいものは出せないって人たちなんです。トーホーの製造過程は優れているし、当然いい素材を使用しているということもあるんですけど、最後はね、人なんですよ」

toho104 ものづくりにかける人の想いが、トーホービーズの品質を生み出している。

トーホーがつくってきた歴史をふまえて新しくビーズの価値を高めていくことは、会社の見え方も変えうるのだとおもう。

だからこそ、今回募集するのは、今までのいいところを引き継ぎながら、ブランドを展開して育てていける人。

具体的に企画営業って、どんな仕事になるのか聞いてみる。

「ぼくらこの商品をもって催事にでることが多いので、催事にでてもらったり、催事の企画、そのとき展示会にいらしたお客様のフォローアップがあります。そのなかで要望が出てくるので、提案をすることもあると思います」

toho101 世界中に輸出しているので海外での催事もある。英語やフランス語ができるといいそうだ。

展示会に来てくれた人から別の展示会のおはなしをいただくこともあるのだという。

「あとは、僕たちがこの商品を置いて欲しいお店に交渉に行きます」

toho90 置いてくれるお店だったら、どこでもいいわけじゃない。

トーホーの会社や商品であるビーズがどう見えてほしいのか。そのためにはどう売ればいいのか。どういうお店で扱ってもらうのがいいのか。手に取った人はどう思うのか。

そんなふうに一連の流れを考えなくてはいけない。

どんなひとに来て欲しいですか?

「自分の意見をしっかり持ってる人がいいかな。あと『このお店に合うとおもうから営業に行ってきます!』みたいなフットワークの軽さもあるといいですね」

何も考えずに、黙々と作業する仕事もあるかもしれない。けれども、企画営業の仕事には正解がない。自分で考えて行動する人が必要とされている。

「考えるのってね、自由なんですよ。僕は前の会社のときに、自分が経営者だったらどうするかっていつも考えていたんです」

自分が経営者だったらどうするか。

「そう考えたら、これはやったほうがいいな、って思い浮かぶんです。前の会社は大きかったので、10個言って、1個以下しか実現しなかったんですけど(笑)。それを考える人であってほしい。入ったばっかりでいきなりそれを求める気はないですけど、将来そういうふうにできる人がいいなと思っています」

試行錯誤しながら自分でビーズの価値をつくっていくことは、やりがいも楽しさもあるのだと思う。

「おれ、あんまり仕事つらいとおもわないんだよなあ」と山仲さんがつぶやいていた。いつでも自分で考えて行動する。やらされるよりも、自由に考えることのほうが好きな人なのだと思う。

最後に山仲さんのおじいさんである、トーホー創業者の言葉を聞いた。

「女性がいるかぎりビーズはなくならない」というもの。

そうおっしゃってビーズをつくりつづけてきたそうだ。

toho8 女性がビーズに求めていることは美しさだけではない。もともとビーズの語源は「祈り」なのだとか。

祈りのときに使う道具としての価値ももっていたそうだ。

いま使われているビーズにも、いろんな価値や使い方を提案することで、そのうつくしさがいっそう際立つかもしれない。

いま、ビーズの新しい価値をつくる人が求められています。

(2016/4/22 倉島友香)