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未来を開拓する

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自分の行動が、まちの未来をつくっていく。

このコンパクトなまちでは、それを実感できると思います。

大山登~1 大きな都市にはない余白が地方にはある。

先駆者がまだ少ない場所で、新しい価値をつくり出してみたい、自分の力をつけていきたい。そんな人を求めています。

ここには訪れた人を魅了する、海や山、農産物などのたくさんの資源、そして迎えてくれる人がいます。

それを考えてみると、早いもの勝ちとはいわないけれど、自分で開拓していきたい気持ちがあるのなら、飛び込まないのはもったいない、そう思います。

鳥取県・大山(だいせん)町。中国地方最高峰の山、大山がそびえ、海水浴やサーフィンを楽しむことのできる海が広がる、自然に恵まれた場所です。

ここで地域おこし協力隊として活動する人を募集します。求められていることは、農業を通して、まちの未来を切り開いていくこと。

「つくってみたい!」という気持ちさえあれば、経験は問いません。


東京から1時間半ほど。米子空港に到着したら、大山町の地域おこし協力隊の薮田(やぶた)さんと合流する。

車に乗り込み大山(だいせん)町へ。日本海側に面した海沿いの道を走る。

日差しが眩しく、車の窓をあけると、風が心地いい。

まちに近づくと、いくつもの大きな風力発電機の姿がみえてきます。

828 585 薮田さんは、「これがみえると、帰ってきた感じがするんです」と慣れた口調でそう話していました。

車で30分ほど走ると、大山町の役場に到着。

まずは大山町の町長、森田さんに話を聞くことに。厳格な人をイメージしていたけれど、気さくでフランクに話をしてくれる方でした。

大山町は3つのまちが合併してできたまち。合併10年目を迎え、つぎの10年を描きはじめている。

そのため、町長の森田さんの発案により、山崎亮さんが代表をつとめる、まちづくり集団のstudio-Lと住民が共同で、大山町の未来について話し合うという総合計画づくりに着手した。

IMG_2421 「行政の理論だけではまちは発展しない。ぼくはずっと農業をしてきたので、違う感覚ももっていると思います。いままで行政が長い時間かけて積み重ねてきたことをベースに新たな角度からもまちをつくっていきたいですね。」

町長になる前は、ハウス栽培で花をつくってきたそうだ。

「農業は土づくりが大切です。まちに置き換えればそれは人づくり。ここはいなかなので住民はそれぞれ自分の生活があって忙しいんです。けれど、高齢者や核家族世帯がどんどん増えるこれからの時代は地域の中で横のつながりを広げていかなければなりません。」

IMG_1968 「総合計画づくりを進める中で、若い起業家や、エンジニア、デザイナーなど多様な専門家を招いて、アドバイスをもらったり、研修をして、地域の若者たちの意識を高める土台づくりをしています。と同時に、そういう活動をしている若い人たちがまちづくりの舞台に上がらんといかん。これからの目標は若者が活躍する舞台をつくることです。」

住んでいる人たちが、まちの未来を“自分のこと”として捉え、自らが行動を起こすまちづくりを進めている。

地域おこし協力隊に期待していることはどんなことでしょうか。

「大山町の産業の柱が、観光業と農林水産業。たとえば観光に関しては、ここには山や海という自然や、食、スポーツ、農業という資源がある。それぞれ特徴はあるけれど、いまは個々に活躍している状態なんです。」

山と海が近い立地を生かして、日本海から大山山頂までを駆け抜けるモンベルのスポーツイベント『SEA TO SUMMIT』や、県外から移住してきた作家など、個々に活動している人はいる。

IMGP0737 「けれど、そういう人同士のネットワークが実はまだつくれていなくて。それぞれ個性があるから、つながると新しいアイディアがどんどん出てくるはずです。」

農業の地域おこし協力隊についても教えてください。

「梨やブロッコリーなどの鳥取の特産品の生産から販売までを、地元の農家の先輩に学びながら身につけていくという、アグリマイスター制度をつくりました。農家のかたも高齢化が進んでいるのですが、やる気満々でしっかり収入も得ることができている人たちです。この技術が残されないままリタイアしてしまうのはもったいないので、しっかり習得してほしい。」

まずは農家のかたと二人三脚で、技術を覚えていき、ゆくゆくは自分で土地を借り、自立できることを願っている。

ふたたび車に乗り込み、今度は大山のふもとにあるゲストハウス、『寿庵』へと向かう。

緑が波打つブナの原生林のあいだをぬって車を走らせる。灰白色の幹のおかげか、森全体が明るく感じられる。

このまちのブナ林は西日本で一番の広さを誇るそうだ。

海の近くにある役場から、ひんやりと肌寒さを感じる山のふもとのゲストハウスまでは車で20分ほどしかかからなかった。いろんな地域を訪れて来たけれど、ここまで海と山、両方が楽しめる地域はめずらしい。

大山のふもとには大山寺という室町時代に立てられた、自然石で敷き詰められた長い参道の美しい寺があり、その周辺には数多くの旅館が並ぶ。けれど、そのほとんどが家族で経営しているため、この場所に物件を借りること自体が難しいそう。

IMG_2584 そこに風穴をあけ、昨年の7月にオープンした『寿庵』。

宿に到着すると、宿泊客を迎える準備をととのえた矢田さんが待っていてくれた。

矢田さんは島根出身。どうして大山町にやってきたのだろう。

「大山が好きなんです。自分が宿を開業するときに、大山以外の場所は想像できませんでした。それで、ずっとゲストハウスをできる場所を探していました。」

5年ほど物件を探し、いいご縁があった。

IMG_2642 どうしてそこまで大山にこだわったのですか?

「北アルプスなんかと比べたら、大山は比べ物にならないくらい小さな山なんです。それでも、この小さい中にいろんな表情があって。大山の四季、すべてをみながらここで働きたいと思ったんです。」

それと、山だけではなく海が近いというところや、まちにもすぐ出ることができるところなど、ほどよく全て揃っているところが住みやすかったそうだ。

観光にくる人を案内する中で、なにか感じることはありますか?

「ゲストハウスは観光の目的を決めないでくるお客さんもいらっしゃいます。そういう方にどこかおすすめはないですか?って聞かれるんですが、マニアックな部分になると答えられないことも多くて。普段は仕事があるので、なかなか大山町や鳥取全体をまわることは難しいんです。なので、大山町全体や、鳥取全体のことに詳しい人、そういうネットワークを築ける人がいたらいいのに、とよく思うんです。」

IMG_1025 やはり魅力的な人や場所はあるけれども、それをつなぐ人がいない。

「最近だと、山陰だけを長期間まわってる人がいるんですよ。そういう人たちの中には、訪れた先で情報を得ようという人が多くて。山陰内でもゲストハウスが2014年に何軒も開業したんですね。そういうゲストハウスの間を観光しながらまわれるような、新しいマップをつくっていこうという流れもあるんです。そういうことにも興味がある人だと嬉しいですね。」

とにかくまずはいろんな人と会うことが必要になってくるのだろうな。そして、話を積みかさねていくことで、新しい企画やルートを考えたり、観光といったら“この人に連絡すれば大丈夫!”という存在になっていくのだと思う。

急ぎ足で山を下り、最後はアグリマイスターである梨農家の米沢さんのもとへ。

梨園につき、さっそく園内を案内してもらう。

ここは6人の農家さんが共同で土地を耕し、さまざまな品種の梨をつくっているところ。最近だと農業経験のない女性の就農者さんも入ってきていると嬉しそうに話してくれた。

園内を歩くと、イメージしていたよりも、梨の木の高さが少し高いように感じた。

IMG_2459 「これは、除草や消毒の機械が通っても、木が傷つかないように最初から高くつくってあるんです。農業といったら、きついイメージがあると思うんだけど、身体を痛めないで、継続的に美味しいものをつくって消費者に届けられるように工夫しているんです。でも決して仕事は甘くないんだよ。プラス思考でやっているけどね。」

アグリマイスター制度でまずは3年間、果樹や野菜づくりを覚えていく。

どんな流れになるのでしょうか。

「つくり方は1年ぽっきりでは覚えられません。1年目は一緒に手を動かしながら、農家の家に入るようなイメージで、こうしてつくるもんか、ということを自分で一通りやってみる。2年目からはその繰り返しと、空いている土地を借りて、ここで覚えたことを自分で試しながらつくっていけたらいいな。」

IMG_2460 つくる農産物や、どの農家さんに教えてもらうかなどは、直接会ったり、実際の農地をみながら決めていけるとのこと。

農業の経験がない人にとって、大変なことはどんなところでしょう。

「農業に土日は関係ない、忙しいときは忙しい、休憩するときは休憩する。たとえば果樹だと、花がつく時期に休むっていうことはありません。ただ、ずっと同じ作業をするっていうことがないんです。10日くらいは同じ作業するかもしれんわな、でも1ヶ月後にはまったく違う作業をしているので飽きないですよ。」

どういう気持ちがある人にきてほしいですか?

「つくってみたいっていう気持ちがあるかどうかだな。『つくりたい!』っていう。農業はものづくりだから。」

ここにくれば、農家同士のネットワークもあるし、それがあることで、自分の土地を借りるときも、スムーズに借りることができると思う。

農家さんの高齢化が進む中、これからは「畑をやめてしまう人の土地もたくさん出てくる」と米沢さんは話していました。熟練の農家さんから技術を学ぶには恵まれた環境がここにはあります。

けれど、ただ通って教わるというより、弟子になるという心構えがあったほうがいい。まずは素直に話しを聞いて、手を動かすことが大切になってくるように思う。

そして、この大山のある地域は大手飲料メーカーの採水地となっているほど、水もおいしい場所です。

農業にもこの水は生きてくると思います。

IMG_2624 農業を通して、自分の居場所を自分でつくる。

その行動力こそが、まちの未来をつくっていきます。

(2016/5/11 吉尾萌実)