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あちこちに生える緑の勢いの良さ、鮮やかな花の色。歩いていると、ときどき甘い花の香りがする。

ひとつ呼吸をするだけで、南の国のゆったりとしたおおらかさを感じる沖縄。

キネハモニカ - 1 (1) 今回はそんな沖縄で生まれ続いてきたやきもののまち、壺屋が舞台です。



那覇空港を降りて、ゆいレールで牧志駅へ向かう。車社会の沖縄では、このゆいレールとバスが車を持たない人にとって大切な移動手段になっている。

15分ほどで牧志駅へ。そこから10分ほど歩いて着いたのは、”壺屋”という壺屋焼の盛んなまち。

琉球王国の時代から334年の伝統があり、あたりには赤橙の屋根瓦の古くから続く窯元が点在しています。

窯元のある細い道を通り抜けると、白い石畳の「やちむん通り」が見えてくる。“やちむん”とは沖縄の言葉で、“やきもの”のこと。

そんな風情ある通りに、2つのお店はありました。

キネハモニカ - 1 (2) こちらは「Craft・Giftヤッチとムーン」。沖縄のやきものを中心に工芸品の販売を行っています。

すぐ近くにもう一店舗、カフェも併設する「やちむんとカフェ チャタロウ」

キネハモニカ - 1 2つを運営している「オフィスキネハモニカ」は今回、オリジナル商品をつくるデザイナースタッフと販売スタッフを募集します。



「どんなことでも、なにか前提があると思うんです」

そう話すのは、代表の瀬底芳章(せそこ・よしあき)さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA きちんと整理されたお話しをしてくれて、感覚的なこともすごく大切にされている方。沖縄の広告代理店に勤めた後、陶芸の教室と工房の運営に携わり、縁あって壺屋という土地で店舗を構えることになったそう。

2つのお店も、歴史ある壺屋という町と、やちむん通りに面しているということを意識しているといいます。

「たとえば、ぼくらは考えるとき日本語を使いますよね。それは私たちが生まれる前から続いてきていることです。そんなふうに、この場所にも生まれる前から続いている風土、特有の環境があります」

「その前提を活かして新しい土壌をつくっていく。そうすれば、ここに合った形で面白くなっていくと思うんです。まったく新しいことをするよりも、この場所の中に自分たちを置いてやっていくほうがいい広がりがあるんじゃないかな。うちでつくる商品も壺屋という前提があって面白いものばかりなんですよ」

キネハモニカ - 1 (13) 土地の文脈を受け入れたうえで、自分を乗せていく感じなのだろうな。

「日々の仕事は同じことの繰り返しかもしれない。けれど、やっぱりちょっと違いますよね。1年続けば、やっぱり1年前とは違う。日々を更新しているという意味では、未来をつくる仕事だと思うんです」

未来をつくる仕事。

「大事なことは今、目の前をきちんと見ることです」



お店での時間を、まるで「ライブ」のように捉えているとお話してくれたのは、もう一人の代表の瀬底希音(せそこ・きね)さんです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 希音さんはプロのドラマーとして、東京でバンド活動をしていたそう。

「買い物はエンターテイメントなんですよ」

エンターテイメント。

「店舗はライブや演劇でいう『劇場』で、一歩足を踏み入れたその時から幕は上がりショーが始まります。開演前には商品のディスプレイやその裏に隠されたたくさんの仕掛けのチェックをします。これが『演出』にあたります」

「ショーの間にも、その日のお客様のテンションや空気に合わせディスプレイを変えたり、劇中さまざまなことに気付き、お客様に楽しんでもらえるように物語を進めて行く大切な役割を担うのが私たち『演者』のスタッフなんです」

希音さんは、自分自身が演者としてステージに立つ中で、様々な体験や感動に出会ったという。

「私にとってドラムは伝える手段でした。人に感動してもらえるような仕事がしたい。漠然としたその想いのまま運良くプロの道まで進めたけれど、プレイヤーとして技術を追求しなければいけない立場になって気づいたことは、ドラムの技法やパフォーマンスの先にあるエンターテイメントそのものに興味や関心があるということでした」

長年続けてきたドラムでのステージを降り、エンターテイメントとお客さまを繋ぐには他にどんな仕事があるのだろうと考え始めたという。

そんなとき、木工職人であるお父さまがつくった「カフェ茶太郎」をリニューアルしてオープンするというチャンスが訪れます。

希音さんがはじめたのは、実際にお店で販売しているやちむんをカフェで使ってもらうという体感型のカフェスタイル。

「お店は新しく『やちむんとカフェ チャタロウ』となり、生まれ変わりました」

「壺屋は何百年も続く歴史があるので、地元の方でも敷居が高く感じられる方もいらっしゃいます。私たちのようなスタイルのお店が入口になることで、たくさんの人に陶器や工芸品に興味をもってもらいたいなと思ったんです。気軽にお買い物を楽しんでもらいたいから、冬でも扉をあけているんですよ」


ここで働くスタッフにも話を聞いてみます。

はじめにお会いしたのは、デザイナーの塩谷さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 沖縄の美術大学でグラフィックと木工を学んできたという塩谷さん。つくることをもっと探りたいと思っているとき、キネハモニカを見つけたそう。

最初の印象はどうでしたか?

「陶器の販売と商品開発ってどんなことするんだろうって想像がつかなくて。まだ自分に何ができるかわからない状態だったのですが、なにか一緒に探して見つけていけるんじゃないかなって来てみたんです」

いまは、ヤッチとムーンのキャラクターのデザインや、陶器の絵付け、オリジナル商品などを手がけています。

こちらは、最近つくったという商品につけるタグ。

キネハモニカ - 1 (6) 「沖縄の古くからの民芸品も扱っているのですが、地元の人もお土産にする人もその民芸品が何か分からないことがあって。それが何かという説明を入れたタグをつけることで、地元の人もお土産にする人も手に取りやすいんじゃないかなと思ったんです」

ちょっとしたことだけれど、こういった心くばりも商品の魅力につながってくると思う。

「『オリジナルの商品をデザインする』と難しく考えるのではなく『どんなものや商品があったらいいか』をかたちにすることを楽しめる人だといいかもしれませんね」

キネハモニカ - 1 (12) デザインのほかにも、工房にかかわる材料の調達や事務作業のマニュアルづくりなど、仕事はたくさんあるそう。

つくるための時間をつくることが大変だといいます。

「でも、商品ができあがっていく工程が分かるのはたのしいですね。私の中に、楽しいこと大変なことは一緒だという考えがあるんです」

楽しいことと大変なことは一緒?

「大変なことの先に、楽しいことがあると思います。なので仕事は、楽じゃないですけど、楽しいですね」



続けて、店舗スタッフの鶴巻さんにもお話を伺います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 鶴巻さんは東京近郊の美術系の大学を卒業後、学童保育の仕事につきました。けれど、「先生」の肩書きをもつことに息苦しさを感じたそう。

「そんなとき、親戚がやんばるに越してきたんです。遊びにいったら、沖縄はすごく肌馴染みがよくて。ちょっと身辺整理してまた帰ってくる、っていってすぐに沖縄に戻ってきました(笑)」

そんな鶴巻さんは、お店の鮮度を大事にしているといいます。

「あるとき、グラスの売れ行きが悪いことがあったんです。よく見ると、グラスが壁と同化している気がして。磨いてみたら、グラスが蘇ったんです。すると、また売れるようになったんですよ」

どんなところからそう感じたのですか?

「たとえば、暴飲暴食がつづいて体をないがしろにすると、虚しい気持ちになると思うんです。それと似ていて、モノにも意識をもってあげないと愛のない空間になってしまう。そういうところがないように気をつけてよく見ています」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA モノと、お客さんと、自分たちがつくる空気感。

まずは、目の前のものをよく見ることが大切になりそうです。

その上で、ここで何ができるかを考えていく。

その姿勢は、カフェで提供しているメニューにもあらわれているように思います。

たとえば、ぜんざい。

キネハモニカ - 1 (9) 希音さんは、こう話してくれました。

「このお店は、観光客の多い大通りからやちむん通りに人が流れてくる、ちょうど入り口のほうにあります」

「外の暑い通りを歩いてきて、ここでちょっと一休みして冷たいものをたべる。元気になったら、またやちむん通りを歩いて買い物を楽しんでもらえたら。そんなふうに思ってメニューをつくっているんです」

どの職種でも、この場所に求められるもの、この場所から伝えていきたいことをイメージしていけるといいのかもしれません。

希音さんは、どんな人に来てほしいですか?

「人だから調子のいいときも悪いときもあると思います。それでもちゃんと社会とつながるために、挨拶をするとか、一通り筋を通すとかそういったことのできる人」

その上で、自分を活かせることをもっていてくれたらいいですよね、と続けた。

「合わせるというよりも、ここに寄せてほしいです」

寄せる?

「合わせて中に入ってしまったら、同じになってしまうからあんまり変わらない。あくまであなたはあなたです。そこからもう半歩こちらに寄ってもらえたら、その人の持っているものでこちらも広がりをもてるように感じます」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「この場所や人に、半歩寄った自分がいる。人や場所ありきで、新しい土壌がつくれたら面白いんじゃないかな。自分たちに合った土壌を一緒につくって、そこに種を植えて育ててくれるような人に来てほしいです」

まずは沖縄の風土や文化、環境を知るところからはじまるのかもしれません。

そこから少しずつ自分の活かせるところをつくっていけばいい。自分自身も育ててくれるようなおおらかさが、ここにはあると思います。

(2016/5/27 倉島友香)