※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「すごく大きなことに関わらせていただいていると思っているんです。島の教育というのはまちづくりの根本になることだし、それに携わるというのは島の未来を担うようなこと。すごく貴重な経験ができる3年間だと思うんですよね」
「高校魅力化プロジェクト」
隠岐島前高等学校は全国から生徒が集まる人気校になり、教育改革の先進事例として全国から注目されるようになりました。
いまでは高校魅力化プロジェクトが全国各地で広がっています。
今回の舞台は、沖縄の離島です。

琉球列島でもっとも美しい島といわれる久米島。サンゴでできた砂浜「ハテの浜」でこの島を知っている人がいると思う。
景観だけでなく肥沃な土壌にも恵まれ、農業が盛んな島でもある。島の平地一面に広がるサトウキビ畑は、その昔田んぼだったそう。琉球王朝時代は米どころとしても知られていたという。
「いまでも島では、稲作の豊作を祈願したり収穫に感謝する由緒ある儀式が行われています。自給自足の方も多く、むかしから独自性のある島だったようで」
久米島を紹介してくれたのは、高校魅力化プロジェクトに携わるメンバーのひとり、田中さん。

はじめは田中さんが「よく買物をしている」という港近くの商店街を散策。その先にある定食屋さんで県外からも人気のソーキそばをいただいたあとは、島をぐるっと一周するように車で案内いただいた。
中心地を抜けると、軒の低い屋根が特徴的な琉球建築の家があちこちに見えてくる。

「もともとは中国から久米島に紬の技術が伝わって、ここから全国に伝わっていったといわれている。真謝は久米島のなかでも紬が一番盛んな集落なんです。久米島紬は、国の重要無形文化財にも指定されています。」
島のことを話していただきながら、田中さんについてもうかがう。
東京都文京区生まれの23歳。昨年の4月に久米島にやってきて、高校魅力化プロジェクトに参画しているという。
田中さんは、久米島で唯一の高校「県立久米島高等学校」と連携する公営塾で講師スタッフを務めている。

生徒数が減り続ける久米島高等学校では、伝統ある園芸科の廃科が2009年から検討されるようになった。
もし園芸科が廃科されると、島の基幹産業である農業の後継者育成に支障が出てしまう。
また、このまま高校の生徒数が減り続ければ、今までレベル別に分かれていたクラスがひとつになる。学力が両極端の生徒たちが同じクラスで学ぶことになり、充分な質の授業ができなくなるという。
久米島町役場・企画財政課の濱元さんは、こう話をしてくれた。
「わたしも久米島高校出身なんです。大学へ進学するために島を出て行って、卒業後は久米島のために何かやりたいと漠然と思っていたけれど、とくにきっかけがなかった」
「そんなときにメッセージがあれば、帰ってくる人はいると思うんです。子どもたちが島の外で勉強したり就職して、ゆくゆくは島に帰ってきて活躍するという循環ができたらいいなと」

2013年には久米島町教育委員会に専属のスタッフを置き、久米島高校の魅力化プロジェクトを本格的に開始した。
久米島高校魅力化プロジェクトは、「久米島でしかできないカリキュラム」「教科学習とキャリア教育を受けられる公営塾」「人との出会いと気づきがある離島留学」の3本柱を軸に展開をしている。
スタートから約2年、このプロジェクトを濱元さんは裏方として支えてきた。
久米島町教育委員会の斉藤さんは、久米島高校魅力化プロジェクトの専属スタッフ。プロジェクト開始と同時に来島し、現場から立ち上げに携わってきた。
現在は高校と町、地域をつなげるハブ役を担っている。
出身は神奈川。前職では東京にある国際協力NGOに勤めていた。

プロジェクトを進めるなか、高校魅力化を全国各地で広めている株式会社Prima Pinguinoの藤岡さんに出会ったことで、現在の公営塾の展開につながったという。
公営塾は昨年の4月にオープン。高校では久米島の歴史や文化、産業について生徒が学ぶ「地域学」をはじめようと、現在準備中だという。

「魅力化プロジェクトは、これからは高校だけじゃなくて島の教育とかまちづくりに広がっていくと思います。きっと5年10年たったときに、久米島は全国や世界のモデルになるようなまちづくりができると。可能性がものすごくある島だと思っています」
それは島に住んでいて感じることもあるそう。
海洋深層水の取水量が日本一で、それを使って養殖している車エビの出荷量も日本一。自然環境に恵まれた島だけど、リゾート化はされていない魅力がある。
「住んでいる方々は、久米島のためなら何でもするよって。年配の方も、自分が責任とるから若い人たちは何でもやりなさいって言ってくれる。自然も人も本当にすごいところです」
斉藤さんはこれからも久米島に住み続けたいと話していた。
「『久米島ってすごいな、いいな』って思っていたら、あっという間に3年経ってしまいました。」
今回募集するのは、高校生対象の公営塾の講師スタッフと、中学校の勉強をサポートする中学校学習支援スタッフ。
中学校のスタッフは高校とは違い、学校の授業で先生のサポートをしたり、放課後に生徒へ勉強を教えたりする。
どちらも久米島町の地域おこし協力隊として雇用されることになる。
島を案内いただいた田中さんを含め4人のメンバーが公営塾を運営してきた。
写真左から大脇さん、塾長の山本さん、田中さん、岡本さん。
山本さんと岡本さんを中心に話をうかがう。

公営塾に通う生徒は38名。毎日10〜15名ほどの生徒がやってくる。
「もともと塾文化のない島なので、はじめは生徒が集まるのか不安でしたね」
まずは存在を知ってもらうため、チラシをつくって配ったり、行事や飲み会に参加して地域の方と仲良くなったり。地道な活動を通じて、徐々に認知されていったそう。
勉強を教えることはとくに難しくないという。基本的には学校で教わった内容を公営塾がフォローする形。たとえ専門の科目でなくても、生徒と一緒に調べながら教えることができるという。
「子どもたちの勉強の仕方が明らかに変わってきています。テスト前日でも教科書を見ているだけとか、スマホをいじったりしていたのが、だんだんノートに書き出したり、自分で工夫するようになって」
「みんないい点数をやっぱり取りたいみたいなんです。でも、どうすれば取れるのかが分からなかったようで。覚え方を取り入れて、勉強の仕方が変わったりしているなって。この間のテスト対策のときにそれが見えてきて、うれしいことも増えてきましたね」

この日は「仕事を辞めたいという人にどんな言葉をかけるか」をテーマに、グループディスカッションと発表が行なわれた。
はじめは慣れない授業の形も、生徒たちは次第と受け入れるようになったらしい。率先して発言したり、真剣になって話し合う場面に、見ているこちらも何だかうれしい気分。
「一回ずつやるたびによかったと思いますね。でも、科目の勉強と違って成果が見えにくい。それが本当に正解なのか、子どもたちのためになったのかっていうのは時間が経たないと分からないので、ずっとつくり替えてバージョンアップさせながらやっていけたらと思うんです」
「ちゅらゼミ」は探究心や情報収集能力、ディスカッション力、自信、将来の方向性を身に付けていくための、いわばキャリア教育の要素を含んだ授業。
久米島ならではの授業課題をスタッフが独自で作成している。

「都会の学習塾とは全然違います。今まで久米島には塾がなかったので、大学進学やそもそも勉強に対しての意識が、都会とは違っていて。だからこそやりがいがあるし、ここに通う子たちが久米島高等学校を選んでよかったと思ってもらえるような授業をしています」
「成果が出るまで時間がかかると思うんです。もしかしたら2年先かもしれない」
だから「来るからには長く腰を据えて、忍耐強くやってほしい」と山本さん。
「指導経験はなくてもいいので、子どもと接するのが好きだったり、成長を見守っていきたいという方に来てほしいです」
岡本さんは東京工業大学大学院を中退して、公営塾に参画。大学時代に塾講師のアルバイトをしていた経験から、教育に興味を持ったそう。
同じように社会人経験のない方でも、大学を休学した学生でも公営塾のスタッフに加わることはできるという。
岡本さんは、どんな人にきてほしいのだろう。
「このプロジェクトは10年後20年後の島の教育に、もっといえば将来の島や子どもたちに影響するかもしれない。それくらい責任があるし、だからこそやりがいがあると思うんです。そういったことを担いたいという方がいたら、ぜひ」
「僕は久米島がすごい好きになってしまったので、それを実際に来て感じてほしいです」

日々子どもたちの成長を見守り、島の未来をともに考えていくこの仕事に興味のある方は、ぜひご応募ください。
(2016/5/10 森田曜光)