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話をじっくりと聞く。相手がどんなことを考え、なにを必要としているのかを感じとる。話しているうちに、当初の予定から変わることもあるかもしれません。
その都度調整を繰り返しながら、相手の気持ちをくみながら。そうやって、まちや地域をつくってきた人たちに出会いました。
株式会社地域計画連合は、まちや地域のさまざまな困りごとに向き合い、まちの未来を考える「まちづくりコンサルタント」の集団です。ときには海も飛び越えて、活動は広がり続けています。
たとえば、古くなった木造建築がならぶ密集市街地の再生や、発展途上国への開発支援。近年では防災や福祉の分野にも力を入れています。
今回は、ここで防災まちづくりに関わる人と福祉サービス評価の企画・実施に関わる人を募集します。
この役割を入り口にさまざまな分野の仕事を経験して、ゆくゆくは一人前のまちづくりコンサルタントになってほしいとのこと。
どちらもあまり聞きなれない仕事かもしれません。でも自分がどんなふうに関わっていけるのか想像しながら、読んでみてください。
山手線の大塚駅を降りて、歩くこと5分。学校帰りの学生さんや、スーパーに買い物にきたお母さんたちでにぎわう街並みの中に、地域計画連合のあるビルを見つけた。
エレベーターで2階に上がり、まずは代表の江田さんにお話を伺います。
「もともとこの会社を設立したのは、大学の研究者だった二人の先生たちでした。当時は高度経済成長期で、学生運動が盛んな時代でもあったのです」
お二人とも工業地開発や都市計画の第一人者として大学に赴任していたけれど、ほとんど講義や仕事ができなかったそう。
そこで大学発のベンチャー企業として設立したのが、今の地域計画連合です。
江田さんはどうしてこの会社に入ったんですか。
「創設者のお一人が大学の先輩なんです。話を聞くと、研究していたことをそのまま実務にしている感じなので、違和感がなくて。それで入ることにしました」
「昭和57年だから、もうかなり前のことだけど」と、江田さんはどこか懐かしそうに話してくれる。
地域計画連合は、国や自治体から委託されてニュータウンや工業団地など地域開発のプランニングを行ってきた。それが“地域計画”と呼ばれるもの。
地域計画は、都市計画とは違うのでしょうか。
「都市計画は道路をつくるとか、住宅をつくるとか。ハード面を考えるけど、地域計画はその土地に根付く経済や産業も含めて、もっと手前から考えていきます」
手前から考えていく。
「たとえば工業団地をつくるとき。ここにはどんな産業があるだろうと調べる。需要があるのか、ふさわしい資源があるのか。本当は農業に関する開発を行うべきじゃないか、観光地として生きるべきじゃないかとかね」
「さまざまな選択肢をみた上で、本当にその地域に必要なのかということを判断するんです」
各地で開発が進んでいた時代は、都市計画の需要が大きかった。
でも人口が減り、大規模な開発がなくなるにつれて、既存の建物の価値を見直したり、住む人や地域ごとの特性まで理解して地域づくりに関わることが求められるようになった。それはこれからの社会にも必要なことだと思う。
一方で時代や社会のニーズにそって、事業のかたちも変化してきました。
たとえば、ノウハウを海外に伝えようと国際部が生まれ、震災をきっかけにまちの安全性を見直し、災害に強いまちづくりに力を入れる部署が生まれた。
この後紹介する福祉サービス評価の仕事は、保育園など福祉サービスの民営化を受け、サービスの質と事業の透明性を高めようとはじまったこと。
こうして聞いていると、かなり幅広いですね。
「求められることに応えていたら、自然と広がってきたんです。でも現場の声をしっかりと聞いてまちづくりにつなげることは変わりません」
例として、東日本大震災のときの話をしてくれた。沿岸部では100人以上の方が亡くなった、新地町というまちを高台に移転するプロジェクトを手がけたそう。
「移転先の団地をつくるために話を聞いてみると、昔のおうちが多くて。3世代で暮らしている。おじいちゃん、親父さん、息子さんに孫とかね。だから車を5台も持っていたり、想定よりもスケールが大きかったんです」
敷地は国の定める基準で、一律100坪としていた。だけどほしい坪数は住む人によって違うもの。80坪でいいという人や、200坪ほしいという人もいる。
江田さんたちは現地に事務所をかまえ、一人ひとりにあったオーダーメイドの団地づくりをしていったという。
「途中で設計変更を何度も繰り返して、とても大変だった。でも結果としてはすごく早くできたし、想いを聞いてつくったから空きもほとんどないんです。本来は、そういう関わり方が当たり前だと私は思います」
実際に働いている人たちにも話を聞いてみる。
まずは入社8年半の大橋さん。カナダの大学院で都市計画を勉強後にこの会社にやってきた。サバサバとしていて、とても話しやすい方。
「行政で働くことも考えました。でも地域の人たちの想いを理解しても、行政という立場での対応が必要になる。そこにジレンマを感じると思ったので、中立の立場に立てるこの会社に入りました」
入ってみて、ギャップはなかったですか。
「営業から総務的なことまで、思っていたよりもいろいろやるんです。密集市街地でチラシを配ったりもするし(笑) 週に1回くらいは、調査などで外に出ています」
今回防災まちづくりの担当として入る人は、大橋さんと一緒に仕事をすることになる。主になるのは、年間70〜80本も行われる防災研修の企画運営だという。
地震大国とも呼ばれる日本では今、防災について市民ができることを増やそうという流れが広まっています。
「たとえば、避難所に行けばなんとかなると思っている人が多いんです。だけどそもそも、本当に避難所まで行けるのか。阪神淡路大震災では約6,400人の死者のうち、4,000人以上の方が物の下敷きになったりして、地震発生の瞬間に亡くなっているんです」
話を聞きながらドキリとする。私も、自分が避難所で生活している姿をイメージしていた。
「避難所に行くことだけじゃなく、発生の瞬間から被災生活までを研修でさらいます。その時々にどんな状況に陥りそうかイメージすることで、自分ごととしてとらえられるようになっていくんです」
家具を固定したり、非常食を準備したり。自分や家族を守る準備ができたら、次は地域で協力できることはないだろうか。
想像してみることで、必要なことが自然とはっきりしてくる。
どんなことがやりがいになっているんだろう。
「人と人、地域と地域とか。つながった瞬間ですね」
つながった瞬間?
「去年中学生向けの研修の中で、被災した仙台の中学生から練馬の中学生に自分たちの体験を伝えてもらったんです。『このときどうしたの?』っていう意見の共有が生まれたり、自分たちのような思いを絶対にしてほしくないっていう強い気持ちを感じたりして」
「思いが伝わったときの中学生の顔。それを見られたことがうれしかったです。被災地も非被災地も、みんなの想いを汲むっていうのが大切かな。今ではときどき、まちを歩きながらここで災害が起きたら私はどう行動するか考えています」
そんなふうに話す大橋さんは、仕事ではなく本当に自分ごととしてとらえているんだろうな。
これから入る人も、大橋さんのように今目に見えていることだけにとらわれず、常に想像力を持ってまちをみることができるといいと思います。
続いて、福祉サービスの評価業務について教えてくれたのは姫野さんです。この業務を担当する人の、上司になる方。
私もよく知らなかったのではじめに説明しておくと、福祉サービス第三者評価制度は利用者でも事業者でもない第三者が、サービスの内容や事業者のマネジメント力などを評価して、結果を公表するもの。
結果は都道府県のホームページから誰でも見ることができます。
福祉サービスと聞くと介護施設などをイメージしがちだけど、保育園や児童養護施設などさまざまな施設が対象になっている。地域計画連合では特に保育園の評価業務が多いそう。
利用者は事業者がどんな考え方で何をやっているかがわかるし、事業者は自分たちがやっていることをアピールできたり、施設の改善点を見つけていくことができる。
具体的に、どんなことをしているのでしょうか。
「アンケート調査や聞き取り調査で、利用者やそこで働いている職員の声を集めるんです。責任者に自己評価もしてもらいます」
「最終的にはなにをすればこの事業所がより良くなっていくかということをレポートにまとめるんですが、そこには良い点も悪い点もふまえて書きます」
たとえば利用者調査の項目には「保護者の考えを聞く姿勢があるか」「子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか」というはい・いいえで答えられるような項目のほかに、自由意見を書ける欄もある。
厳しい意見を書く人もいるんでしょうね。
「事業者は最初、自分たちのやっていることが否定されたような感覚を持つんです。でも人の意見を否定してしまうとそこで止まってしまうので、受け止めてもらうことからはじまります」
「よくよく聞いていくと、やっていることを利用者に伝えていなかったりするんです。それで評価が下がっている場合もあるので、ちゃんと伝わる方法を考えましょうと話します」
大切なのは、改善への気づきをどれだけ汲み取ってもらえるか。結果だけでなく、なぜ起きたのかという背景の部分に目を向けています。
評価業務を行うには資格が必要で、取得には3年以上の実務経験が必要とのこと。最初は提出書類の作成などを一手に引き受けている事務局のマネジメントや、評価者の研修業務に関わりながら、経験を積んでいくことになる。
姫野さんをはじめとする経験者のそばで仕事ができることは、とても魅力的だと思います。
どんな人と一緒に働きたいですか。
「地域に対してどんな役割りを担っていけるのか、視野を広げて施設をとらえていける人がいいですね。私たちがやっていることは、現場に深く関わることです」
大橋さんも姫野さんも、しっかりと現場の声を吸い上げながら、自分にできることをやっている印象でした。
それは一見地味で、大きな変化を生むものではないかもしれません。
だけど一つひとつ積み重ねることで、その場所に集う人の感覚がより鮮明に浮かぶようになるのだろうし、結果としてよりよい地域、まちづくりにつながってゆくのだと思います。
一緒に、まちづくりコンサルタントを目指しませんか。社会になくてはならない仕事です。
(2016/5/25 並木仁美)