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アンテナをめぐらせる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

那覇空港からモノレールに乗りかえる。しばらくすると、窓に沖縄の青い空が広がる。

観光地としてだけでなく、移住先としても人気が高まっている理由がよく分かる。

沖縄の風土から生まれた独自の文化や価値観が、人々を惹きつけてやまないのかもしれません。

そんな暮らしに根付いた価値観を発信していくアンテナショップ「ニライカナイ」が、東京の自由が丘に生まれようとしています。

移住気分を味わえる「移住雑貨®」をテーマに、沖縄の物産品を販売するだけでなく、様々な情報を発信したり、商品に込められた物語を伝えたり。

01 地域と東京をつなぐことで、地域を潤し東京の暮らしを豊かにする。

沖縄のみならず、地域おこしの新しいかたちを提案する取り組みになるのかもしれません。

あらゆる方面へアンテナを張り巡らすお店で、仲間を募集します。

場を営み、価値を育んでいく仕事です。

 
県庁前からバスを乗り継ぎ30分。今回のプロジェクトのパートナーを担っている「ゆいまーる沖縄」の店舗が見えてきます。

以前、日本仕事百貨でも紹介したゆいまーる沖縄は、商品の表面的な美しさだけでなく、物の奥にある本質的な価値や物語を商品を通して伝え続けているお店です。

「このプロジェクトは、地域おこしの雛形となることを目指しています。ですので、地元密着で活動されているゆいまーる沖縄さんに商品をセレクトして提供していただき、同じく沖縄で地域づくりに取り組んでいるルーツさんと沖縄の情報発信におけるパートナーシップを組んで進めています」

そう話すのは、事業の中心となるブルームコンセプトの代表の小山龍介さん。

コンセプトクリエイターとして新規事業や商品開発といった企画立案に携わっています。『IDEA HACKS!』などの仕事術の本の著者としても知られています。

b02 そもそも、今回どうして沖縄のアンテナショップをつくろうと思ったんですか?

「小さいころから親が転勤族で引越しが多く、自分にとってのふるさとがなかったんですよ。ただ、東日本大震災をきっかけに地域に貢献したいという思いが生まれました」

震災後に石巻や被災地にボランティアへ行った小山さん。それ以降、被災地に限らずさまざまな地域おこしのプロジェクトに関わるようになったそうです。

そのひとつに沖縄のプロジェクトがありました。

「ところが、商品を企画しても売り先がないという問題に直面したんです。それから、どうしたらもっと沖縄のために貢献できるか考えはじめるようになりました」

さらに、新しく入社したスタッフが沖縄出身だったこともあり、可能性を探ることに。

そんなとき、沖縄で地域づくりに取り組んでいる株式会社ルーツの今津さんと話す機会が生まれる。

そこで出たキーワードが「移住雑貨®」というものでした。

「人々が地方移住に憧れるのも、そこに別の豊かさを見出すからだと思うんです」

別の豊かさ。

「収入が減ったり、人間関係を0からつくり直すといった負担もあるけども、それ以上に都会にはない豊かさがある。豊かで重層的な時間が流れているんです。雑貨を通してそうした豊かな時間を体験できる場所にしていければと思います」

商品を買う・売るという短絡的な取引ではなく、沖縄との長期的な絆を深めていく。それにより、沖縄の生活にある豊かさも伝えられるようにする。

沖縄と東京を結ぶ、新しいアンテナショップのかたちを目指します。

04 「お店の名前にもなっている『ニライカナイ』という言葉は、異界を意味します。向こう側の世界で、いわゆる彼岸ですね。古来、人間と自然はこの異界を通じてつながっていると考えられてきました。深いレベルで人と自然、人と人とがつながっていくアンテナショップにしたいと考えています」

たとえば、工芸品の作り手をめぐるツアーを組んでみることも考えているとのこと。

「昔の呉服屋さんでもお得意様をご招待して旅行することはよくありました。いろんな企画を通して、作り手と買い手がご縁を深めていくようなお店にしていきたいと思っています」

このように、「アンテナショップ」という既存の枠組みに当てはまらない場所をつくる上で大事になってくるのは、自分なりの関わり方を見つけていくということ。

「応募していただく人の興味やポテンシャルを重視したお店にしたいです。旅が好きなら体験型の旅行企画をしてほしいし、モノに興味がある方でしたら、沖縄の事業者の方と商品開発をすることになるかもしれません」

05 「私たちが別事業で取り組んでいる企業向けの教育プログラムには、即興劇を組み込んだものがあります」

「私たちのチームでは、不測の事態が起きたときに、紋切り型の対応ではなく、その場に適した振る舞いをするということを大切にしています」

お店に立って商品を紹介することが仕事の中心ではなくて、お客さんとの新しい関係をつむいで地域おこしにつなげていく仕事だと思いました。

 
商品に宿る文化や価値を発信している、ゆいまーる沖縄の鈴木さんにも話を伺います。

b06 「わたしたちの役割は、取り扱う商品のご提案をさせて頂くこと。ライフスタイルの提案や生き方を提示するといった、モノに完結しない場所になると思います」

モノに備わる暮らしや、暮らしをつくる価値観。

それらを伝えることで、商品の付加価値につながっていく。

「新しい店舗を通して、沖縄のさまざまな問題を解決していきたいという思いもあります。工芸品をつくっている現場は、後継者不足をはじめさまざまな課題が山積みです。マイナスをプラスに変えられればと思っています」

b07 さらに、ハンドクラフトは注目されつつも、転換期に向かっていると考えている鈴木さん。

「商品の見た目は一面に過ぎなくて、その背景に興味を持ってもらうきっかけをつくることが、豊かさを意識する入り口だと思います」

ひとつのモノにしても、沖縄の自然や引き継がれてきた技術など、いろんな要素が詰まっている。

「沖縄の暮らしの価値観や魅力に、沖縄の人でさえ気づいていないことがあると思うんです。だから東京で商品の価値を発信しつつ、沖縄にいる人もその価値に気づくような、影響がある取り組みができたらいいですね」

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「移住雑貨®」というキーワードを掲げていることもあり、沖縄の雑貨を提供すると同時に、地域への移住を促し、地域の情報を発信する企画もおこなっていくニライカナイ。

そこで沖縄の情報発信の役割を担うのが株式会社ルーツです。

スタッフの平田さんは、地域コーディネーターとして活動しており、最近では沖縄県の移住促進事業にも取り組んでいます。

09 「コンセプトの『移住雑貨®』は、沖縄への移住を身近に感じてもらえるきっかけになるのではないかと思っています」

「というのも、従来の移住促進の取り組みには、興味を持ったところから移住するというステップまで一足飛びに行こうとしているものが多いように思えます。本当は、移住までのプロセスにはさまざまなグラデーションがあると思うんです」

グラデーション。

「沖縄の市町村はどこも青い海と空のビジュアルです。ただ、生活ってそれだけでは完結しない。沖縄の暮らしの本当の豊かさが理解されることが大事だと思っています。そのきっかけとして沖縄の雑貨がある。『移住雑貨®』は移住の新しい入り口となりうると思っています」

だからこそ、今回のプロジェクトもただのアンテナショップではなく、移住という異なる暮らしの可能性を提案する役割を担う必要があるのかもしれない。

「沖縄での暮らしに幻想をいだいて移住してもなかなか長続きしません。だから、沖縄のイメージを消費するような取り組みにはしたくないんです。沖縄の生活のなかにある、まだオモテに出てきていない価値を、このアンテナショップを通じて伝えていければと思っています」

10 沖縄の魅力の伝え方にしても、物の歴史や暮らしの工夫、風土的な独自の習慣など、たくさんの切り口は存在する。その多様性を提示できるのかもしれません。

 
最後にブルームコンセプトのスタッフにも話を聞きます。

沖縄出身である大城さんは、今回のプロジェクトに特別な思いを抱いています。

11 「父の仕事が地元に密着した仕事で、自分も仕事を通して地域に貢献したいと思っていました」

そんな気持ちで東京や大阪で勉強し、沖縄をでて10年が経った。

わからないことが多くても、まず行動したほうが良いという気持ちが強まり、その思いを代表に伝えることに。

そこから形になっていき、プロジェクトは大きな一歩目を踏み出すことになった。

「つい最近帰ったら、県外の方々が沖縄で活動されているのを目にして。新たな魅力がどんどん生まれていることに希望が湧いてきたんです」

「だからこそ、これから入る人と一緒にこれからの沖縄について考えていきたいですね。会社からは、研修など勉強できる機会をたくさんいただいています。お店を立ち上げるにあたってラッピングやVMDの講習も受けるなど、気になったことは学べる環境です」

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取材がひと段落したところで、お菓子をいただきました。それは、沖縄の島で取れたさとうきびを使った黒糖。

よく見ると、若干色が違うことに気がつく。

「それは伊平屋島(いへやじま)と粟国島(あぐにじま)の黒糖です。島によって黒糖の味も変わっているんですよ。8つの島の黒糖が入っていて、島ごとに味の違いを楽しめます」と鈴木さん。

13 「これをお店に来た方に食べ比べしてもらうのは面白そうですね」と、取材後も商品を囲みながら、さまざまなアイデアやイメージが膨らんでいく。

雑貨を通じて沖縄の暮らしを魅せるアンテナショップ「ニライカナイ」。

沖縄に眠る暮らしの豊さを発信するお店がオープンします。

アンテナをめぐらせ、あなたの人生にとっても豊かな時間を体感できる仕事が、ここにはあるのかもしれません。

7/1(金)はリトルトーキョーで「沖縄移住・移住雑貨ナイト」を開催します。

nirai-kanaiのコンセプトと、これからの移住のあり方について興味を持った方は、ぜひ遊びに来てみてください。
(2016/6/27 浦川彰太)