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「じぶん色」のお店づくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

一人暮らしをはじめたときの、あのワクワク感。

親に言われたことをするのではなく、自分がよいと思ったことをやる。責任はすべて自分にかかるけど、だからこそ自由で面白い。

仕事も似たようなことが言えると思います。

emariko01 今回募集するのは、今夏にオープンする新店舗の店長です。

国立・西国分寺・立川で地場野菜直売店や飲食店を運営している「エマリコくにたち」が、新たに多摩センターの三越地下1階に直売店を出店します。

エマリコくにたちは2011年創業のまだ若い会社。社員数もまだ少ないため、お店の運営の多くは店長に委ねられます。

「自分の個性を活かしたお店にしてほしい」

どんな仕事なのか、続けて読んでみてください。

東京・国立。

駅の南口から歩いて5分ほど。線路沿いの道を歩いて行くと、「くにたち野菜 しゅんかしゅんか」が見えてきます。

emariko02 軒先に並んでいるのはズッキーニやトマトなど、旬の野菜。どれも「くにたち産」と書かれています。

店内にも「くにたち産」の野菜や商品が置かれていて、こちらは加工品が多め。日野や多摩地域でつくられたものも売っている。

「高幡不動の三河屋さんのお豆腐は昔から人気なんですよ。お店においしいお豆腐を仕入れようと、いろいろ試食したなかでダントツにおいしかったのが、三河屋さんのお豆腐なんです」

そう教えてくれたのは、エマリコくにたち代表の菱沼さん。

emariko03 「三河屋さんは老舗でずっと続けてこられたお豆腐屋さんです。あるとき輸入大豆から国産大豆に切り替えて、消泡剤ではなく天然にがりを使おうと決断されて。お客さんが減ってしまうのではと心配があったそうだけど、結果支持を得たんですよね」

高幡不動にそんなお豆腐屋さんがあるなんてまったく知らなかった。そもそも国立産の野菜がたくさんあることに驚き。

意外にも、東京には専業でない農家さんがたくさんいるのだそう。エマリコくにたちでは100軒もの農家さんとのネットワークがあるといいます。

「東京の農業ってすごく多様性があって。たとえば極端な話、長野県の川上村ではレタス農家さんばかりだけど、東京の場合はJAによる共同出荷がないからそれぞれ独自の経営をしていて、品目が多様。すごく珍しい野菜を育てていたりするんです」

emariko04 菱沼さんは、実はこのビジネスをはじめるまで野菜にまったく詳しくなかったそう。

以前は、大手不動産ディベロッパーやコンサルティング会社に勤めていました。

その仕事に比べたら野菜は金額が小さいし、正直派手さもないように思う。どうしてこの仕事をはじめたのだろう。

「金額の大小じゃないなっていうのは会社にいたときから感じていて。億ションを売っているような会社だったけど、それが面白いとは思っていなかったです」

「今は生活に密着していることが仕事になっていて、すごいしっくりきている。もともと食べることが好きだったんですよ。誰かに食べてもらって幸せな気持ちになってもらうのも好き。学生時代には商店街の空き店舗でカフェを開いたことがあって」

菱沼さんの出身は神奈川・逗子。国立との縁は大学生時代にはじまりました。

一橋大学に通っていたころ、谷保の商店街を活性化する活動に携わり、空き店舗を改装してカフェや多目的ホールを運営。商店会の人と一緒にNPO法人も設立したといいます。

その後、一旦は就職しようと大手不動産ディベロッパーに入社し、3年半勤めました。

「27歳で起業しようとなんとなく決めていました。それでいろんな業界を知るためにコンサルティング会社に転職してみたけど、ビジネスのアイディアが生まれることはなかった。で、国立に戻ってきたんですね。知り合いがいっぱいいるので、ここに来れば何かしら仕事があるだろうと」

ちょうどそのタイミングで学校給食に地元野菜を卸しているNPO法人の引き継ぎを頼まれることに。これがエマリコくにたちのルーツになります。

emariko05 「給食に卸す以外にも、青空市とかで直売もやっていて。僕が入ってからそこを強化したんです。そしたら、農業って面白いなと思うようになって」

どんなところがですか?

「農家さんの性格が野菜に出ちゃうんです」

性格が野菜に出る?

「喫茶店の店主のカラーがお店の雰囲気に出るように、野菜も農家のカラーが出るんですよ。すごく研究熱心で几帳面な方だと、肥料の配分や気温の記録を一つひとつとって、育った野菜も丈が揃っていたりする。感覚的にやっている方だと、『うちは代々かぼちゃが得意なんだ』ってかぼちゃをつくっている。なぜ得意なのかは分からなくて、理由は代々うまくいっているから。でも、確かにうまいんです(笑)」

「それがすごく新鮮だったんですね。スーパーにある野菜はみんな同じだと思っていたので、こんなに違うんだと。ビジネス的に面白いと思ったというよりは、その多様性を感じられない社会ってつまらないなって」

そんな野菜たちやつくり手の農家さんの個性を把握するためにも、NPO時代から必ず農家さんを回って集荷するようにしている。

野菜をどんな人が買ってくれたのか、農家さんに伝える役割もあるといいます。また、農家さんの野菜とワインを揃えたバル「くにたち村酒場」も運営しているので、食べた先の感想も伝えることができる。

毎日顔を合わせることで、信頼関係が築かれていく。野菜が不作のときに優先してくれたり、新しい生産者さんを紹介してくれたり。次第にネットワークが広がっていきました。

いろんな縁から、仕事の幅も広がっています。

「国立に養蜂をはじめられた主婦の方がいて、国立のデザイナーの方と一緒にパッケージデザインから販路開拓までやらせていただきました。そのあとも八王子の飴屋さんと一緒に、はちみつ飴を商品開発させていただいて」

emariko06 お店も増え続け、いまでは直売店が国立・西国分寺・立川の3店舗。今年の夏には多摩センターの三越地下1階の一角に新店舗がオープンします。

今回は、そのお店の店長になる人の募集です。

ショッピングモールなど大型商業施設が立ち並ぶこのエリアでどんなお店を展開できるか、エマリコくにたちにとってもチャレンジだといいます。

管理・運営だけでなく、どんなお店にしていくかを主体的に考えてつくり上げていってほしいそうです。

「農家さんに個性があって、野菜や商品も個性あるものを揃えて、地域によって客層は全然違う。そんなだから、店舗ごとにお店の雰囲気は違っていいと思っているんですね。実際にいま働いている店長の個性はそれぞれ違って、その個性がお店に反映されています」

「そのほうが働いていて楽しいはず。それは農業もそうだと思っていて。農家さんだって無理して規格に合わせて野菜をつくるよりも、農家さん自身の価値観に合った農業をやるほうが豊かな仕事ができると思う。新しく来てくれる人にも、自分の個性を活かしたお店にしてほしいです」

どんなふうに個性を活かせるのか。それは岩田さんを見ていたら分かると思います。

岩田さんは第1号店である国立店の店長。

emariko07 とても明るくサッパリしていて、話していると元気をもらえそうな方。

専門学生のころから2年半ここのお店でアルバイトし、新卒入社してから店長として働いています。今年で4年目。

「店の前の通りは通学路で、近くに変な店ができたな〜っていうのがはじまり。料理は好きだけど、野菜はべつに普通。これといった情熱とかはなかった(笑)。でも、接客が好きではじめてみたんです」

やってみてどうでしたか?

「やりたいと言ったら大抵のことはやれるし、日々の仕事のなかにやりたくないことはそんなにないし、お客さんは優しいし、スタッフは最高。楽しいから続けてます」

エマリコくにたちでは、お店に関する多くのことが店長に委ねられます。

たとえばアルバイト採用。必要なときに募集をかけて、採用も自分で行う。気の合う人や納得できる人と一緒に働けるのだそう。

「お店に置く商品も自分で決められます。あの会社のあの商品いいなと思ったら、自分で連絡を取って会いに行ってもいいし、サンプルを送ってもらってもいい。お店のスタッフみんなと『これおいしそう』とカタログを見ながらサンプルを頂戴して、月1回のスタッフミーティングのときに試食して『これうめえ!』って」

「それとわたしはフォトショップが使えるのでポップをつくったり、お店の中に置く小物も自由にやらせてもらっていますね」

emariko08 裁量が大きい一方で、責任も大きくつく。

ときには仕入れた商品がなかなか売れなかったり、月の売り上げが大きく下がってしまうこともあるといいます。

チャレンジして失敗することを菱沼さんは責め立てることはしないけれど、責任の大きさが辛い仕事でもあるそう。

「1ヶ月後に賞味期限が切れる商品がいくつもあると、考えて眠れない。棚卸しの夢とか見ますよ。重い荷を運ぶし、夏は暑いし。体力的な辛さもあります」

まるで自分でお店をやっている人の話みたいですね。

「ここ、わたしのお店だと思っています(笑)。わたしがスタッフのみんなと一緒にお店をやるために会社を運営してくれてありがたいなくらいに思っているので」

岩田さんがいまの仕事が好きなのは「毎日が幸せ」だからなのだそう。

特出したことは起きないけれど、毎日必ずちょっとうれしい出来事がある。

「常連さんの幼稚園のママさんが毎日挨拶してくれるんです。お腹の中にいた子が生まれて、めっちゃ喋るようになったり、はじめてのおつかいに来たりする。おばあちゃんがお土産をくれたり、恋愛相談に乗ってくれたりする。『うちの息子どう?』って(笑)」

emariko09 「地に足の着いた幸せがある仕事なんです。日々楽しく幸せに感じる。毎日に自分なりの楽しみ方がある人なら合っていると思います」

「だから農業とか野菜とか、そういうキーワードを一旦忘れて応募してほしいです。どういう仕事なんだろうって思ったまま応募してくれて大丈夫」

むしろ農業や野菜への想いが強すぎると、すれ違いが起こるかもしれないといいます。

もちろん、東京のまちなかと農業をつなぐことで両方を元気にしていける仕事だけれど、日々の仕事からそれは見えにくいそう。大きな結果が出るまで時間がかかることでもあります。

また扱う野菜は、農家さんの負担を考えて、無農薬やオーガニックにこだわることはしていません。

はじめからこの分野に想いや関心があったとしても、ほどよいバランス感覚で仕事に向き合えるといいと思う。

少しでも働くことがイメージできたら、まずはお店へ行ってみてください。お店の空気感を感じるのが一番わかりやすいと思います。

(2016/6/24 森田曜光)