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柔らかなまちで待ってます

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

豊かな海の近くに栄えた城下町は、かつての面影を残したままちょうどよく賑わっていて。

まちを横切る熊野古道は神々が鎮座する熊野本宮大社を目指し、巡礼者のゆく古道のまわりにも息づく暮らしの匂いがある。

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和歌山県・田辺市。

市町村合併を経て近畿一の広さとなったこのまちは、地域ごとに異なる雰囲気を残しています。

そんな田辺市を取材しながら感じたのは、どの地域にもあふれている”ここを良くしたい”という強い想い。

このまちを大切に思っている人たちとともに働く、地域おこし協力隊を募集しています。

今回募集するのは、すでに活動をはじめている受け入れ地域で働く協力隊。取材したのは5団体のうちの2つです。

地域ごとに違う特色があるけれど、出会ったまちの人たちは皆おおらかな空気をまとっている。いろいろな選択の幅がありつつ、柔らかいまちだと思います。

新しい土地でチャレンジがしたい。家族での移住を考えている。そんな人はぜひ読んでみてください。

訪れたのは名産の紀州梅が実をつける、晴れた初夏。

南紀白浜空港に到着すると、田辺市役所の鍋屋さんが待っていてくれた。ここから鍋屋さんの運転で田辺市へむかう。

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「町おこしは役所が指示してやるものじゃないと思うんです」

はじめて協力隊を募集する田辺市。鍋屋さんに経緯を聞くとそう答えてくれた。

「やっぱり地域の人たちが地域を想ってやるのが一番うまくいくと思う。あれしよう、これしようという意見はすでにあるんやけど、人が足りんのですよ」

地域の人たちが地域を想って活動する。

田辺には市民による活動が形になった例がいくつもあるそうだ。

田辺市沿岸の岬・天神崎を開発からまもるために起こった運動は、住民がまちの土地を買い上げる「ナショナルトラスト運動」の発祥の地として全国に知られるようになった。

そのほかにも、農業従事者たちによる「農村ビジネス」を15年以上前から成功させている地域もあったり。田辺市には地域おこしが昔から根づいているように感じます。

市内に入ると、中心街のある海側ではなく熊野古道に沿ってどんどん山のほうへ進む。

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到着したのは1つ目の受け入れ先になる近露(ちかつゆ)・野中地区。ここは和歌山県の移住モデル的な地区になっています。

お話をしてくれたのは世話人の辻野さん。

東京でステッカーづくりの会社を営んでいた辻野さんは、東日本大震災を機に家族とともに田辺市にやってきたそう。そのときに一目ぼれしてしまった近露に拠点を移して、今は会社経営のかたわらで地域づくりに取り組んでいます。

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「このあたりは僕が来る前から”緑の雇用”という林業従事者の移住があった地域なんです。最近でも若い移住者が増えていて、地域の小学校に通う大半は移住者の子どもなんです」

ご自身にも3人のお子さんがいるそう。子育てには最高の場所だという。

なんでもそろう都会が大好きで、東京にいるときは「田舎」は悪口でしか言ったことがなかったという辻野さん。絵に描いたような「田舎」の近露は退屈じゃないのでしょうか。

「都会はなんでもある。田舎には要るものしかない。欲望を満たすためだけの都会と、人間として生きるための田舎。田辺に来てそこに気付いてもうたんです」

「あとね、格好いい大人に出会ってしまった」

格好いい大人?

そう聞くと、デザインしたというステッカーを見せてくれた。描かれていたのは3人のおじさん。

「この人たちは20代の頃からボランティアで地区の整備をしたり、地域のためにやれることはないかと常に考えて行動してきた人たちなんです。40年以上前に立ち上げた地域イベントが、今では県外の人も参加する山間マラソンになっていたりして」

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「作業服で地域の為に汗を流しているかと思ったら、すんごい格好いい俳句を詠んだり(笑)。なかなか都会では尊敬できる大人とめぐり合わなかったんですけど、この3人は一生ついていっても良いくらい」

3人の影響もあって、地域活動に興味を持つようになったそう。草刈りや寄り合いに参加して自分の意見を言う。「それ、ええなぁ」と言ってくれるのがうれしくて、どんどん地域活性のアイディアが出てくる。

この地域の良いところはアイディアを出せば「やれやれ」と言って全力でバックアップしてくれる人が多いことだそう。

地域ブランドのエコ洗剤や、秋祭りに乗じて行なったハンモックで青空を見るイベントも辻野さんが関わった。「辻野さんと言えばデザイン」といった自分の強みを活かせるようになると、どんどん人脈が広がっていく。

「ここまで団結力をもってやれる土地ってないと思うんです。ここの人たちは本当に頑張り屋さん」

辻野さんといるとこちらまで近露・野中の魅力にどっぷりつかっているような気持ちになる。新しく入る人もきっと、こんなふうに地域を愛してくれる人がいいと思う。

「若い人がやってる店も増えてきている。仕事がないなら、ひとまず神事につかわれる榊を刈ったり、山で狩りをするんでもいい。来てくれたら一緒にやってもらいたい企画がたくさんあります」

最後に世話人として辻野さんはこんなことを言っていた。

「ここに来たらどんな仕事でも、自分のアイディアを活かして努力してほしい。受け身でいる人はここではやっていけないですよ」

団結した地域おこしの熱い空気があるからこそ、頑張り屋の人に来てほしい。本気になれば、きっと住みやすくて面白い場所だと思います。

2つ目の取材先へ向かう途中、立ち寄った熊野古道沿いの休憩所では、近所のお母さんたちがおしゃべりをしていた。

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何しているんですか、と声をかけると「人が来たときに誰かここにおらんとあかんやろ?」という返事。

観光客が訪れたときにお茶を出したり、道案内などのおもてなしができるよう、地域の人たちで順番にここに座っているのだそう。

「最近はようけ外人さんが来るさかい、そんときはこうするんよー」

そう言っておかしなボディランゲージをしてみせる。その人なつこさに思わず笑ってしまった。

民家が並ぶ、なんてことのない道が実は熊野古道だったり、このあたりは生活のなかに世界遺産が溶けこんでいる。

「信不信をとわず、貴賎にかかわりなく、浄不浄をきらわない」

平安時代のそのまた昔からそう謳われ、差別なくあらゆる参詣者を受け入れてきた熊野の神々。

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その参詣者を受け入れてきたまちの人たちにも、おおらかな人の良さがあるように思います。

さらに山のほうへ進むと、海沿いの市街地とは打って変わって、山脈に囲まれた静かな本宮町地域に到着した。

ここには熊野古道の終着点、”熊野本宮大社”が鎮座している。古代この地に神さまが降り立ったと伝えられ、清流と緑に愛されたしずかな町内には、今でも絶えず巡礼者が訪れる。

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2つ目の受け入れ先となるのは四村川(よむらがわ)活性化委員会。巡礼者・観光客の出入りはあっても過疎高齢化がすすむ本宮町を、なんとか元気にできないかと2年ほど前から活動をはじめました。

待っていてくれたのは松本さん。委員会のメンバーです。

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松本さんは生まれも育ちも本宮町。役場の職員として長年働かれ、その知識と人脈で地域のことは隅々までわかっていることから”本宮観光のエキスパート”と呼ばれています。

「委員会はもともと、地域の自治会長さんを中心にしてできた組織です。『この地域をなんとかせなあかん』という強い想いがみんなにあってね。市にも協力してもらって活動しています」

どんな活動をされているのでしょう。

「今はこのあたりのお年寄りがつくった物産を週に1回販売する朝市を開いたり、アマゴの養殖とわさびの栽培を頑張っとるところ」

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委員会は現在十数名。平均年齢が70歳近くと高齢のため、メインで動けているのは7〜8名だそう。

朝市は盛況で、もっと活動の幅を広げたいと考えている。すでに町内の温泉街で品切れを起こしているアマゴも、安定して提供できるようにしたいそう。

やりたいことはある。問題はやれる人が足りていないこと。

活性化委員会に入る協力隊には、すでにはじまっている朝市や養殖・栽培などの仕事を拡大して、利益があがるベースをつくってほしいそう。任期終了後も自分の仕事にできるから、委員会メンバーや地域住民をひっぱるくらいの気概があるといいかもしれません。

松本さんと同じ委員会メンバーの坂本さんは、10年前にUターンで本宮に戻ってきました。この活動がはじまるまで、アマゴ養殖や農家の経験はまったくなかったそう。

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「委員会の人らはほとんどが素人ですけど、やる気はみんな持ってます。もしかすると素人だからできてるのかもね」

みんな手探りでやっているけれど、協力して頑張っている。ここに都会から人が来たらどんな化学反応が起こるだろう。

「朝市も週に1回。アマゴとわさびも1日に数時間。1日中委員会の仕事につきっきりということはないよ。空いた時間は生業づくりを考えてくれていい。自分からここに興味を持って来てくれたら、みんななんぼでも協力するわ」

坂本さんからは「不安にならんでもいい。お任せください」と頼もしい言葉を聞けた。

取材を終え、”エキスパート”の松本さんのアテンドで本宮町をまわることに。

世界遺産に登録されている「つぼ湯」がある湯の峰温泉や、熊野権現が和泉式部の夢枕に立ったとされる場所、おだやかな松本さんの案内で熊野古道沿いを軽く歩いてみる。

本宮観光協会0120湯の峰温泉

「全国から熊野詣でに来る人に対するおもてなし精神が、ずっと息づいてるんです。だからよそから来た人を受け入れる気持ちがみんなにあるわけです。あとは来られた方が一緒になって動いたら、とけ込むのは簡単ですよ」

最後に訪れた熊野本宮大社で、松本さんはそう話してくれた。

このまちにあふれる空気はあたたかくて、海も山も川もやさしい。

ここには、地域おこし協力隊を今や遅しと待っているたくさんの人がいます。

すこしでも田辺市に興味がわいたら、一度訪れてみてください。まちのために頑張っているおおらかな人たちが、きっとあたたかく迎えてくれると思います。

(2016/6/17 遠藤沙紀)