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「最近ちょっと疲れたなというときって、どことなく部屋が散らかっていませんか。むしろ、散らかりはじめた部屋を見て、自分の状態に気づいたり」これは取材しているときに聞いた言葉です。たしかにそうだな、と思いました。
空間は今の自分を映す鏡。片付けをあとまわしにしたり、いつもと違う場所にものがおいてあったり、小さなことであったとしても、今の自分を表しているのかもしれない。
そうだとしたら生活する人に合った空間で心地よく過ごせたら、心も体も良い状態をたもてるんじゃないか。

東日本橋にある東京建築PLUS。今回は、施工管理と設計をトータルでみて、空間をプロデュースする人を募集します。デザイナーとして働いてきたけれど、施工の現場も一緒にみたい。そんな人も歓迎だそうです。
未経験でも、礼儀がきちんとしていて、なにより学ぶことを楽しめるひとであればいいそうです。
いまは代表の中里さんとスタッフの方2人が働く、はじまって3年になるあたらしい会社。
学ぶことが好きな中里さんと一緒にアイデイアを出していけたら、建築をベースに世界が広がっていくかもしれません。
いろんなことを学び吸収すること、つくること。少しでも気になったら、ぜひ読んでみてください。
最寄り駅の東日本橋を降りて、柳のゆれる薬研堀通りを歩く。
5分ほどで事務所についた。

入ってみると、いくつか区切られたスペースがあった。

「いろんな人と話しながら仕事をすると、アイディアも出ますよね」
お話ししてくれたのは、代表の中里さん。

部屋の真ん中にあるテーブルに座り、これまでのことをお聞きしました。
「もともとは、埼玉のゼネコンで幼稚園や道路などの大きなものをつくっていました。すごくアットホームでいい会社でしたよ。夕方になると所長がごはんをつくってくれて、みんなで食べるんです(笑)」
いい雰囲気の会社。どうしてやめることになったんでしょう?
「もっと楽しめるんじゃないかな、って思ったんです。もともと建築事務所として独立したいという思いもありましたしね。勉強してみようと思って、都内の小さな店舗施工をしている会社に勤めました」
そこで内装の管理や調整など、仕事の進め方を覚えた。施工の現場で寝る日が続いたり、忙しいこともあったそう。
5年ほど働いて、2013年10月に東京建築PLUSを立ち上げる。

働いてきた中で、気づいたことがあるといいます。
「仕事を進めていく上でどこまでやるのか、そんなバランスをとることにみんな苦労していたんです」
バランスをとる?
「施工管理の仕事は忙しいイメージがあると思います。でもやるべきことと、やらなくていいことの精査をきちんとできれば仕事の時間は減るんじゃないかな、と思うんです。組織の中で働くと、やらなくてもいい仕事が多い。独立してからは、売上はおなじくらいですけど、自分がやると決断すればどんどん進められるのでやりやすいですね」
いらないものは省き、できるだけシンプルにしていく。独立してから、現場で寝るほど忙しいということはなくなったそうです。
そんな仕事への姿勢は、中里さんがつくる空間にも通じるものがありました。
見せてくれたのは、中里さんが手がけたオフィス空間。デザインが気にいっているそう。

ちょっと気をつかう?
「たとえば生活の動線がスムーズでなかったりだとか、日々生活をしていて違和感があるところ。その違和感が積み重なってしまうと、ストレスになると思うんです」
「あるべきところにあるような収納をつくってあげるとか、ちょっとしたこと。けれど、そんな根本的なところを見直していけば、少しずつ空間の雰囲気がよくなっていくんじゃないかな」
ちょっとした気遣いの積み重ねが、その場所で暮らす人のためになる。
「そんなふうに、なぜ、その場所にその形であるのかを突き詰めて考えられた空間がいいですよね」
仕事とはいえ、中里さんの相手を思う人柄が感じられる言葉。

空間のプロデュースはまず、ご依頼いただいた場所の現場調査からはじまる。電気や空調などの設備がどこにあるかを確認し、図面に落とし込む。
「この図面をもとに、お客さんとどんな空間にしたいのか打ち合わせをして決めていきます」
デザインは外注しているそう。東京建築PLUSでは、施工やファイナンスも含めて、全体のバランスを見ながら仕事を進めていく。
「いつも考えているのは、お客さんがなにを求めているのか。この一点だけですね。求めているものが価格なのか、スピードなのか、格好良さなのか。それが共有できると、お客さんが喜んでくれますね」
相手が個人でお店を持とうとしている方であれば、依頼にかける思いも強い。
自分の思いが先行して、エンドユーザーのことを忘れてしまっているときはアドバイスもする。やりたいことと施工にかかる金額のバランスも取りながら、話をして進めていくそう。
まずは、相手の話をよく聞くことが大切になる。
何度か打ち合わせをして、形がはっきりしてくると、完成に向けた工事の工程表を組む。

現場にいると、お施主さんが見にくることもある。前職のときに、こんなことがあったそうです。
「オレンジの壁に黒い棚という内装の本屋さんだったんです。まだ棚のないときにお施主さんがいらして、一面オレンジの壁をみて不安になってしまったんでしょうね。『塗り直してくれ』って頼まれたんです」
お施主さんが完成のイメージがうまくもてずに、焦ってしまうことがよくあるそう。
そのときどんな話をしたんですか?
「とにかく、目をみて『大丈夫です』って話をします。僕たちには完成のイメージが見えています。だから、はじめに共有したイメージのお店を求めているのであれば、これで大丈夫です、と言い切れるんです。あとはシンプルで、とにかく丁寧につくってあげることに尽きます」
黒い棚やお店のロゴ、ペンダントライトなどが入っていく。完成してみると、お施主さんはすごく喜んでくれたそうです。

「ああしようか、こういうのはどうだろう、ってお客さんと話をしたのものが、現場で着々とできていく。つくることは、ほんとうに楽しいことだと思います」
がらんどうな空間を、一緒に思いを形にしてつくっていく。空間をつくることが好きな人にとって楽しい場所になりそう。
大変なことはあるのでしょうか。
「外注の職人さんの対応が大変かもしれないですね。明るくていい人たちなんですが、少し荒いから(笑)たとえば何かトラブルがあると『どうするんだよこれ、どうすんだよ?』って言われたり。これは経験だと思います」

「やっていることはそんなに難しくないと思いますよ。お施主さんや職人さんなど、みんなの気持ちを聞ければ、誰でもできるんじゃないかな」
人が好きだったり、話をきくことが好きだといいかもしれない。
中里さんは、どんなひとと働きたいですか?
「そうですね。いちばんは、学ぶことが好きな人がいいですね。学校とか仕事場のことをキャンパスっていうじゃないですか。そんなイメージで、一緒に学んでいきたいなって」
一緒に学んでいく。
「生活を会社という枠の中だけで終わらせてしまうのはもったいないなと思うんです。沢山のことに触れて、いろんなチャンネルを持っててほしい」
転職したことや、オフィスをオープンシェアしていること。新しいことを学び吸収しようとしている姿勢は、あちこちに現れている気がします。
「そういえば、これは難しいのでしょうか」
そう言って広げたのは、大学院入学のための英語のテストでした。
来年は、まちづくりに関する大学院の受験にも挑戦するそう。ほかにも、丸の内朝大学でのフィールドワークの参加や、留学生のホームステイの受け入れなど、試していることがほんとうにさまざま。その度にお話が広がって、聞いているこちらまでわくわくします。
「ちいさな世界でウジウジしているのはもったいないです。世界はこんなに楽しいよ、って思いますね。健康で元気で、仕事じゃなくてもいろんなことで楽しめるといいな」
学ぶことで、より生きていることを楽しもう。そんな気持ちがあるように感じました。
余裕ができたら、地域への子どもたちに向けたワークショップも考えたいそう。きっと中里さんと一緒に仕事をしたら、楽しい広がりが持てるんじゃないでしょうか。

(2016/06/17 倉島友香)