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環境をデザインする力

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「地方移住」という選択肢が一般化してきた昨今。

都会から離れチャレンジする姿を、さまざまなメディアで見かけるようになりました。

一方で、壁に直面する人も少なくないと聞きます。

理想の暮らしや現況からの変化を求めて、環境を変えるのもいい。けど、どんな地域にも自分にとっての一長一短が存在する。

本当の理想の環境というのは自分でつくり出すしかないのかもしれない。きっと大変だけれど、そうしたほうがもっと自由に楽しく過ごせる。

多田朋和さんの話を聞いて、そんなふうに思いました。

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多田さんは合同会社WOULDの代表。南房総市白浜町の海岸沿いでCafe&Rooms『シラハマアパートメント』を運営しています。

多田さんのスタンスは「自分の好きなことをやり続ける」こと。好きなことだからこそ諦めずにチャンレンジし、できあがったプロジェクトや事業は結果的に地域交流や地域おこしにもつながっていった。

これから無印良品のサポートのもと、廃校を利用する大きなプロジェクトもはじまります。

なぜ可能なのか。それは多田さんが特別な人だから、というわけではないみたい。「まずやってみること」の積み重ねのようです。

多田さんと一緒に働き、その過程を体験する。

地方で暮らしたいけれどなかなか勇気が持てないという人。いずれ地元に戻って何かを起こしたいという人。そんな人にとって貴重な経験になると思います。

 

この日訪ねたのはシラハマアパートメント。

目の前には太平洋が広がり、すぐうしろには緑深い山々が見える。「千葉県最南端のCafe&Rooms」という言葉通り、地図を見るとなかなかの場所にある。

けど意外にも、東京駅から出る高速バスに乗れば2時間30分ほどでたどり着くことができます。

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東京から近い場所でありながら、自然豊かでサーフィンなども楽しむことができる。

別荘地として週末を過ごす人や移住する人が年々増えているそうです。

「都内から往復5000円以内の2拠点居住可能地域って、実は3箇所くらいしかないんです。ここと茨城県つくば市と山梨県大月市。なかでも温暖な気候で1年中活動できるのはここだけ」

「地方移住って都会の生活から離れなきゃいけないと思うかもしれないけど、ここなら片足突っ込むくらいな感覚で住めるし、自然もあって過ごしやすい。そういったところでもポテンシャルのあるエリアだなと感じたんですよね」

多田さんが白浜町へ移住してきたのは、いまから6年前のこと。

はじめは縁もゆかりも全くない状況からシラハマアパートメントをはじめました。

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もともとは千葉県内のほかの地域で遊休不動産をリノベーションした新規事業を考えていたそう。たまたま紹介を受けることになり、海と山が広がる景色に一目惚れして現在の物件に決めたといいます。

「カフェとかシェアハウスにしたのは、建物を見て思い浮かんだからで。以前からアートと建築と不動産を融合させた空間をつくりたいと思っていたんです」

なぜアートと建築と不動産なのか。まず多田さんが高松市出身ということからはじまります。

「高松ってアートが身近に感じられるまちなんです。県庁は丹下健三が設計したものだし、イサム・ノグチやジョージ・ナカシマ、猪熊弦一郎といった著名なデザイナーの記念館や美術館があった。その環境がすごく根っこにあって、昔は家具職人になりたいと思っていました」

大学はプロダクトデザインを専攻。設計会社でのバイト漬けな日々を過ごすうちに空間づくりに興味を持ち、卒業後は店舗開発を行う会社に入社。

設計だけでなく施工監理や営業の仕事も担当したといいます。

「当時は高級ブランドのプロジェクトが動いていたので、坪300万円くらいの内装工事を担当したりもして。素材すべてにいいものを使うので、それに触れたり図面を描いたりできたのがいい経験になりました。そのあと実家に一度戻って家業の不動産業を手伝ったりして」

「サラリーマンの家庭で育ってないので、30歳になったら起業しようと昔から思っていたんですね。やるなら今までの経験を融合して、自分の好きなことをやりたい。この物件を見た瞬間にいまのシラハマアパートメントの形が頭に浮かんだので、それをそのままセルフリノベーションして運営をはじめたという感じですね」

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過疎が進む田舎ではあるけれど、ほかの過疎地域に比べて都心からのアクセスがよく、2拠点居住などもしやすい。人口が圧倒的に多い関東を商圏にできるのも大きかったといいます。

1階をカフェ、2階はテナント貸しとゲストルーム、3階はシェアハウスにリノベーション。

不動産業の経験から、シェアハウスはスケルトンの状態で入居者を募り、DIY可能物件に。住む人が自由に暮らせるようにと、原状回復は必要ないようにしています。

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シラハマアパートメントはオープン当初から評判を集め、シェアハウスには多いときに18組の入居待ちがいたほどだとか。

「最初の動機はすごくハード面が強かったけど、はじめてみるとここがお客さん同士の交流の場になったり、『こんないい物件ないか』といった情報の場にもなってきて。それをきかっけに移住されてお店をはじめた方がいらっしゃったりして、波紋のように広がるようになってきました」

地域の方との交流が深まるうちに、多田さんは耕作放棄地を借りて農業をはじめるように。こんどは新たに海沿いの土地を購入して、ブドウの栽培をはじめました。

「昨年末にワイン用のブドウの苗木を十数本植えました。今後苗木を増殖して、将来はワイナリーをつくろうと計画中です」

「できるかどうかわからないけど、興味あることをやっていこうと。だめだったらだめで方向転換できるのでトライアンドエラーですね」

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ワイナリーはシラハマアパートメントとは少し離れた事業のように思うけれど、なぜはじめようと思ったのだろう。

「それはもうワインが好きだからです。猟銃免許もイノシシの肉が好きだから取ったんですよ。獣害がいますごく深刻になっていることもあって、いいかなって」

好きだからなんですね。

「自分の好きなことをやっていくことで地域活性もコミュニティづくりもお金も全部後から付いてくる、という考えで僕はやっているんです。いっこずつ完結させていくんじゃなくて、とりあえず種をまいて同時進行で進めていく」

「だから、まずやってみることなんですよね。カフェもやったことなかったけど、最初はクックパッドを見ながらメニューをつくることからはじめて。それから6年も経つと、積み重なっていくものがあるんです」

カフェ、ホテル、ワイン、狩猟….。次に多田さんがはじめているのは、地域にある小学校跡地を利用したシェアプレイスプロジェクト「シラハマ校舎」です。

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既存の廃校舎を改装してシェアオフィスと宿泊と飲食のスペースに。校庭は無印良品が展開する小屋販売サービス「MUJI HUT」の分譲地となり、管理・運営はWOULDに任されます。

日本初のこの取り組み。約3000坪の敷地に12部屋のシェアオフィスと25棟ほどの小屋ができる予定で、シラハマアパートメントと比べて何倍も大きな事業になります。

すでに募集前から引き合いがいくつもあり、ロードバイクメーカーやアウトドアメーカーへの誘致活動も行なっているそうです。

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シラハマ校舎ははじめ「この予算では絶対無理だ」と言われていたそう。けど自主施工したりすることで費用を抑え、実現することができた。

廃校利用のノウハウを蓄積していき、こんどはパッケージ化して広めていくことを考えているといいます。

さまざまな広がりが見えるなか、今回募集するのはシラハマ校舎にできる飲食店のスタッフです。

シラハマ校舎の完成まではシラハマアパートメントのカフェで仕事を覚えることになります。調理は比較的簡単で、飲食・調理経験は必要ないといいます。

ゆくゆくはシラハマ校舎の管理・運営を担当してもらったり、希望すればスペースを使って自分のお店を出店したりすることも可能なのだそう。

「飲食だけじゃなくて、何か自分でやりたいことがある人がいいなと思っています。このあたりは本当に何もないので、逆に何でもできるんですよ。僕は自分の好きな空間をつくりたいし、いまの日本にはないものをやっていきたい」

 

「もし夢とかはっきりした目標がなくても、この環境にいれば自分も何かやりたくなると思うんです。きっかけになるんじゃないかな」

そう話すのは、シラハマ校舎の始動に合わせて今年の3月に入社した鎌田さん。

シラハマ校舎の外壁を塗装しているところにおじゃまして、話をうかがいました。

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鎌田さんは千葉市出身。もともとシラハマアパートメントの住民で、以前はグリーンを扱う会社で働いていました。

これからはシラハマ校舎の管理・運営を担当し、いずれ自分のお店をそこで開くことも考えているそう。

「小さいころから自分の身の回りの空間をデザインするのが好きで、モノも好きだから将来は雑貨屋をやりたいなって。多田さんはそれを知ったうえで声をかけてくれたんです。自分のやりたいことをやりつつシラハマ校舎もやってみて、両立できるところからやっていってほしいと言ってくれて」

鎌田さんはすでに夢へ一歩踏み出しているそう。いまは校舎の施工をしながら、仕事が終わるともともと移動本屋さんとして使われていた車で雑貨屋を開いています。

「はじめてまだ4ヶ月くらいなんですけど、やっていくうちに毎日『こうしたほうがいい』が見つかるんです。最初はものをいっぱい置きたかったから棚をいっぱいつくったけど、棚を撤去してお客さんのスペースにゆとりをもたせた方が全然よかった。お客さんはゆっくり見てくれるようになって、会話も楽しくなって」

「やっぱりやってみないと分からない。最初はイメージしたかたちの100%じゃなくて、数十%しかないのにはじめる勇気が必要でした。でも、最初から完璧なんて無理だから。身の丈に合ったチャレンジをしていって、徐々に段階を上げていけばいいんだなって、やってみて分かりましたね」

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自分のお店を開くにはそれなりの資金も経験も必要で、とてもハードルが高いことだと思っていた。けど、鎌田さんはこうしてはじめている。

多田さんが大手企業とのコラボ事業を形にできたのも「まずやってみる」を積み重ねてきたからなんだと思います。

ここで働く人もそれを間近で体感しながら、吸収できると思います。

(2016/6/28 森田曜光)