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ツーリストの声を聞く

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いつのころからか、日本の観光地で外国人観光客を目にすることが増えたように思います。

外国人を受け入れるインフラは年々整備され、まちを歩けば外国語の案内表示がいたるところで目に入る。

10年ほど前に始まった政策が功を奏し、2015年にはおよそ1970万人の外国人旅行者が日本を訪れるほどになりました。10年前にくらべるとその数は2倍以上。出国する日本人数をついに訪日外国人数が上回ったのも昨年のことです。

けれど、駆け足で「観光立国」になろうとしている私たちの国には、インバウンドツーリズムの教科書がありません。

どんどんインバウンドが増えているとはいえ、やっぱり気になるのは5年、10年後。この先の日本のツーリズムは、いったいどんな未来をむかえるのだろう。

今回はそんなツーリズムの明るい未来をさがすため、本気で動き始めようとしている山一商事株式会社を取材します。

IMG_6558 訪れたのは岐阜県・高山市。

人口が10万人に満たない飛騨高山の年間観光客数は400万人。そのうち外国人は40万人という国際観光都市です。このまちの玄関口・JR高山駅はこの秋リニューアルオープンすることが決まっています。

求めているのは新しい駅ビルの1階に入るカフェ「iCAFE」で働くスタッフ。

i-cafeパース外観 ここはただの飲食店ではありません。高山観光の入り口にあって、ひょっとすると日本の顔にもなってしまうような場所。そして、山一商事が日本の観光の未来をかたちづくろうとする拠点です。

ここで働く人に必要なことは旅行者の気持ちをわかってあげられることだそう。いったいどんな場所になるか気になった方は、ぜひ続きを読んでみてください。



名古屋から2時間半ほど特急電車にゆられ、到着したのは目下改装中のJR高山駅。

ホームに降りると、さっそく大きなスーツケースやバックパックを背負った外国の方たちが改札前で行列していました。

IMG_2436 周囲を北アルプスや峡谷に囲まれた飛騨高山は、1日のうちに四季があると言われるほど寒暖差が激しい土地。盆地が育てた独特でゆたかな食材や風土、歴史を感じさせるまち並みを目当てに、ここへ訪れる外国人は後を絶ちません。

IMG_2458 駅から歩いてすぐの三之町と呼ばれるエリアに、山一商事が運営する飲食店” 牛まん喜八郎”がありました。お店のまわりは外国人だらけで、日本の風景の中にいながら外国にいるような不思議な気分。

ここでお話ししてくれたのは、山一商事の3代目代表・山下喜一郎さん。ニコニコとした笑顔がすてきな方です。

IMG_2491 90年以上続く山一商事の主な事業は、食品の製造・卸売り業。そのシェアは飛騨高山の旅館・飲食店の7、8割にもおよぶそう。

山下さんは、長く事業者相手に卸売りをしてきた山一商事だからこそ、このまちの観光のゆく先をつくれると考えているそう。

「観光地が舞台だと考えてみてください。お客さんに対面する旅館や飲食店を役者とするなら、私たちは舞台の裏方の仕事をずっとやってきています。観光地の全体を把握できる黒子として、今やるべきことってたくさんあるはずなんですよ」

今やるべきこと?

「たしかに今、たくさんの人が訪れています。今年は閑散期のはずの1、2月にも3年前の繁忙期と同じくらいの人が来ましたよ。でも、それは観光地の事業者たちの戦略や努力によるものではなくて、行政のPRなどで一時的に盛りあがっているだけなんですよね」

一時的な盛りあがり。

「そうです。やっぱり地方の観光で一番よくないことは、現地の事業者が集客を考えないこと。お客さんが来ているあいだに次の手を考えておけばいいのに、お客さんが来なくなってからあわてて考えるんです」

「これは日本全体に言えています。日本の観光は歴史が浅いから、長期的な見方ができてないんだよね」

いつか見た、寂れた地方のリゾート地を思い出してドキっとしてしまう。高山も表面的には人が絶えていないように見えても、ひっそりとつぶれていく老舗の宿があったり、中居さんの数が減っていたり、 努力の方法がわからないところから明暗がわかれているそう。

だからこそ、黒子の山一商事の出番。

「うちは関わる事業者の多さを活かして、いろんな情報を得られます。裏方だからこそ、表面に見えてこない高山の変化を一番に感じ取れていると思うんです」

たとえば、あるお店から今までとは違う無添加のものや、植物性の食品の注文が入るようになった。その背景はイスラム圏の国の人の利用が増えているということかもしれない。

納品時に旅館の仲居さんの数が足りていないように見えたら、その旅館のサービスには何か問題があるということかもしれない。納品日が1日変更されたら…

どんなに小さな変化にも敏感になることで、山一商事のなかで素早い対応や分析ができる。その情報を納入先の事業者のあいだでも共有すれば、高山全体のサービスの底上げになる。

「私たちの仕事は『食変化対応業』と言ってるんです。環境にあわせて地域事業者も変わる努力をしないといけない。我々のような問屋が納入先だけではできていない細やかな対応に手を差し伸べることによって、両方が共存共栄できたらと思ってます」

長く観光業を成り立たせていくためには変化に柔軟にならなければいけない。それは観光客のニーズに耳を傾け続けるということ。

食品の卸売業者として裏側の情報を集める一方で、直に外国人観光客からも意見をもらうようにもしているそう。取材場所の牛まん屋さんでも定期的に外国人観光客向けのアンケートを行なっています。

新しくつくろうとしている「iCAFE」には飛騨高山の情報発信をするインフォメーション機能と、荷物預かりの機能が併設される予定なのだそう。

i-cafe パース内装 世界中から高山へ訪れたツーリストたちが、一度はここへ立ち寄って、コーヒーを片手に旅の作戦会議をする。何か困ったことがあったら、ここへ来れば解決できるような、そんな場所になったらいい。

裏方を知っている山一商事が、今度はメインキャストとして、お客さんの言葉を拾っていく。

入口でもあり、出口でもあるこの場所でひき続き情報収集ができれば、そこで得られるニーズは日本の観光の未来に寄与できるかもしれません。



続いてご紹介したいのは、山一商事の強力なパートナー”株式会社美ら地球(ちゅらぼし)”の山田さん。

世界中を旅してきた知見を活かして、飛騨高山地域をツーリズムの視点から元気にしようと活動しています。

IMG_2528 会社は違えど、このiCAFE計画には当初から参加していて、カフェのインフォメーション部分やサイクリングツアーなどのアクティビティの提供、効果的なアンケートの監修なども担当しています。

山田さんは、世界の観光地を知る男。インバウンド戦略についてお話ししてくれた。

「とにかく日本はお客さんが増えれば増えるだけよいと考えがちだけど、この急激な変化はいろんな弊害をはらんでいると思います」

弊害ですか。

「ここで、来る前に期待していることと、出て行くときに満足したことというアンケートを取っているんです。来るときに期待していることは文化、街並みが1位。でも帰るときには食が1位に逆転している」

それはだめなことなのでしょうか?

「食の立場からしてみるとすごいなと思いますが、高山全体でみると期待値を超えなかった部分が結構あるということですよね」

「それって地域ではまだ認識されていない部分。こうやって直に聞けば簡単に拾える観光客の声が、客をとにかくさばくことに必死で見えなくなってしまっているんです」

日本の観光地ではまだ、このようなアンケート調査自体されているところは多くないそう。あったとしても、まったく見当違いな内容だったりするようだ。

『客が来ているからいいや』という甘い認識が、いずれ自分たちのまちや国に負の遺産をつくることになるかもしれない。

だから今、動き始めないといけない。

「日本のこれからのツーリズムを考える上で、高山がひとつのモデルに成るべきだと思っていますし、iCAFEでできることはきっと多いんじゃないかな」



情報収集の拠点とはいえ、iCAFEでやらなくてはいけないことはアンケートだけではありません。実際どんな対話が生まれるといいのだろう。山一商事企画部部長の中川さんにもお話を伺います。

IMG_2537 「基本はシンプルです。牛まんやコーヒーなど調理のほとんど必要ないものを出すので、飲食業の経験はなくても大丈夫です。ただお客さんに満足して帰ってもらえるかどうかという視点を一番大事にしてほしい」

シンプルとはいえ、来た人を満足させるツーリズムの真理のようにも聞こえます。

「いろんなところを旅して、こんなサービスがあったらいいのにという想いを持ってる人がいいかもしれないですね。iCAFEで自分が不満におもっているサービスを解消して、体現してみたいとか、旅好きがいいなって思ってくれるようなところにしたいと思っています」

飛騨高山の玄関口になるということを胸に、観光客の立場に立ってほしいそう。そのためなら既存のサービスを改定してしまってもいい。たとえば、菜食のメニューをつくったり、ツアーやアクティビティの提案もして構わない。シンプルだけれど、できること、やるべきことはたくさんありそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 外からみると当たり前のようなことも、目の前のお客さんが困っていたら気づける人がいい。観光客が求める本当の満足を提供することは、山一商事の行なっている変化やニーズへの対応にもつながっている。

自分の立居振る舞いが、そのまま飛騨高山、日本旅行の満足度になる。

一見駅前のカフェのようだけれど、ここは普通の飲食店ではありません。日本・飛騨高山の看板になると思って働いてほしいと思います。

「たとえば2年3年経ってアメリカで仕事をしたい、語学力を洗練させたい。そういう人のジャンプ台にしてもらってもいいと思っています」

飛騨高山にいながら、世界を感じられる仕事はきっと大きなやりがいを感じさせてくれるはず。

観光客との対話を通して高山・日本のツーリズムをかたちづくる。面白そうだと感じたら、ぜひ応募してみてください。

(2016/7/11 遠藤沙紀)