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長年にわたって使われてきたものには、ずっしりとした重みとともに、親しみやユーモアを感じることがある。ダルマのマークの家庭糸。
どこかで一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

115年にわたって紡がれてきた、伝統と変革の歴史。つくり手のこだわり。そして、横田の糸を心待ちにしているお客さんの想い。
さまざまな要望と期待に応える営業担当を募集しています。
本社のある大阪・中央区は、府庁舎や大阪城、歴史ある大手企業の本社などを数多く抱える大阪の中心都市。
地下鉄御堂筋線の本町駅からオフィス街のなかを10分ほど歩くと、横田の本社が見えてきた。
パーテーションで仕切られた室内。ここは仮事務所で、来年1月には改装工事が終わり、近くにある元の本社に戻るそう。
そこへ、毛糸やカタログを抱えたスタッフのみなさんが入ってくる。途端に、殺風景だった空間が鮮やかに彩られた。

宗樹さんのおじいさんの、そのまたおじいさんが、創業者である横田長左衛門。
115年の時を経て、現在は105名の方がここで働いている。
「うちの会社は、規模の割に幅広くやっているほうだと思うんです。撚糸工場と染色工場があるので、自社製品もつくりますし、得意先様の別注商品やOEMもやります。今年はISBNコードを取得して、自分たちで本もつくろうとしています」
![IMG_9361[1]](https://shigoto100.com/wp-content/uploads/2016/07/IMG_93611.jpg)
もちろん、長い間「ダルマの糸なら使って安心。」と評価されてきた縫い糸は、未だに横田の原点であり、軸として在り続けている。
「ただ、昭和62年ごろから、基本的に売り上げは下がり続けているんです。それは人口減の影響もあるでしょうけど、手芸や編みものをされる方が減っているという現実もあります」
従来のままでは、会社としての存続が危ういかもしれない。横田も何らかの変化が求められる時代になってきた。
「4年ぐらい前ですね。手芸店さんだけでなく、雑貨店さんにも商品を置いてほしいということで、DARUMA THREADという雑貨のブランドを立ち上げたんです」
縫い糸のパッケージを新たにデザインしたほか、ダルマ形のピンや刺繍入りのTシャツ、靴下などを製作・販売。
デザイナーさんの影響もあり、次第に商品の撮影やサイトづくりまで自分たちでやるようになった。

「これからは糸以外のモノも果敢につくっていきたいですね」と宗樹さん。
「将来、ぼくらが手芸店をやることになるかもしれないし、あるいは産地や工場のツアーを企画すれば、旅行会社になるかもしれない。“お客さまの立場に立つ”ことさえ見失わなければ、会社の形を変えながら、ずっと存続していけるんじゃないかと思っています」
Webサイトには、企業理念として「常にお客様目線から物事を考え、卓越した商品やサービスを追求する」という言葉が記されている。
これは宗樹さんが代表取締役となったときに掲げたものだそう。
「BtoBが成り立つのは、その先にBtoCがあるからだと思っていて。こだわったものでないと、お客さまからもこだわってもらえないんですよね」
どんなこだわりがあるんでしょうか。
「新しくないものを、新商品として出したくないです。今すぐ店頭に置いて売れるものは、すでにあるもの。そうじゃなくて、今は売れなくても、2、3年後に売れるものをつくっていくメーカーでありたい。そのほうがきっと面白いし、閉塞感のある業界だからこそ、面白い人が集まってくると思うんですよ」

「『そして、従業員一人ひとりが充実した毎日を送れるようにする』。働く時間って、すごく長いじゃないですか。うちの会社に来ていただくなら、働いている8時間も人生にとって有意義な時間にしていただきたい」
「イベントを担当したい人、グラフィックが好きな人、営業をやりたい人。いろんな人がいながら、みんなで同じ方向を向いているのが理想です」
過去には、能力や経験重視で採用活動をしたこともあった。しかし、直接会ってはじめてわかることが多かったという。
昨年、日本仕事百貨で営業担当を募集した際には、面接時に一人ひとりと1時間半ずつ話したそう。
「これだけ人が集まっているので、なんだかんだで仕事のほとんどがコミュニケーションだと思っているんです。お互いに話しやすい関係を築けたほうがいい。そのためには、まずぼくたちが会社のすべてをさらけ出すことが必要なのかなと思っています」
「お金の話で言えば、大手企業ほどの給料とボーナスは払えませんが、それでも一緒に仕事をしたいという人に来てほしいですね。年齢、性別、国籍も問わず、いろいろな背景を持った人と会いたいです」
そんな採用活動によって、今年の4月に新卒で入社したのが松坂さん。
グラフィックデザイナーの上司のもと、企画課でイベントやワークショップの運営、ネット販売のビジュアル調整などを担当している。

「もともと編みものが好きでしたし、横田のモノをつくる姿勢にビビッときて。直感的にいいなと思いました」
現在は“マクラメ”という結び方でプラントハンガーをつくるワークショップを企画中だという。
「今まで手芸に関わりのなかった人が、モノをつくることの楽しさを実感して、今度は自分でやってみようと思えるようなイベントやワークショップをやりたいです。『おしゃれなプラントハンガーをつくってみたい』とか、『SNSに投稿しよう』っていうような、どんな入り口からでもいいので」

「彼女の経験が、今の本づくりに役立っているんですよ」と宗樹さん。
「本について、ぼくたちの知らないことを彼女はたくさん知っている。書店さんの立場からの意見は説得力がありますよね。社長と新入社員でも、モノをつくるときは対等です」
本づくりにせよ、イベントやワークショップにせよ、松坂さんが担当している仕事は、会社としても前例のないことが多い。企画課の一員として、対等な立場で試行錯誤しながら進めていく過程が面白いという。
「数ヶ月前に入ってきたわたしでも、意見をすごく聞いてくださって。わからないなりに『こうじゃないですか?』と声に出せば応えてもらえますし、聞かれたらちゃんと応えなきゃと思える環境なので。そこはすごくいいところかなと思います」
そんな企画課の想いを引き継ぐのが営業部の小倉さん。問屋さんや量販店、通販誌や一部の海外営業も担当している。

そして今から20年前、宗樹さんのおじいさんの面接を受けて入社。
以来、横田の営業一筋でやってきた。
「うちには営業マニュアルがないんです。商品の基本的な特性と見本帳が渡されて、あとは自分で考える。常に“仮説検証”ということを口すっぱく言われてきましたね」
仮説検証?
「商品のひとつの特性だけを見るのではなく、その背景や売り先の環境をもっと考えなさいということです。まずはひとつの糸をいろんな角度で見ることからはじまります」
具体的にはどういうことでしょう。
「以前、大手量販店向けに洗える毛糸を提案したときのことです。当初は単純に“洗える毛糸”として売り出していたんですが、それではバイヤーさんになびかなかった。何か別の打ち出し方が必要だったんです」
当時、世のなかではエコブームが到来。売り先の大手量販店も、エコをテーマにした売り場づくりに力を注ぐようになった。
「洗えるということはクリーニング代の節約につながるので、家計に優しい。つまりエコになりますよね。そうやって別の側面に目をつけ、お客さまの層や売り先さまの方針に応じて打ち出し方を変えていきます」
今年新たに販売する靴下用の洗える毛糸は、その太さに注目。中細と言われる細めの糸で、かつウォッシャブルタイプのものは、ほとんど国内の市場に出回っていないという。

糸を使って実際に編んだモノを見せながら提案したり、売り場で展示することもあるそうだ。
「糸だけでイメージしづらいものは、担当社員に編んでもらいます。商談に行く数十分前にお願いしたこともありますね(笑)」

「とにかく店頭に並べるのが営業の使命かな」と小倉さん。
それに対して、「並べてくれたら、あとは売れるようにするのが企画課の仕事」と宗樹さんが応える。
お互いの気持ちに応えあうことで、この会社は前に進んでいるのかもしれない。
「生々しい話ですが、やりがいを感じるのは売り上げがたったときですね。もちろん過程も楽しいんですけど、すべて集約されるのはその瞬間なんです」
「スムーズにいく仕事よりは、いろんな人に手を貸してもらうような仕事こそ、成立したときが一番気持ちいい。やってくれた以上は、この仕事をモノにしたいという気持ちも強くなりますから」
会社が1世紀以上続くというのは、並大抵のことではありません。
それは、つくり手の想いや努力だけでなく、商売人としての営業の存在があってこそだと思います。
新たなフェーズに入りつつある横田株式会社。その未来に向かって、ともに歩んでいく人をお待ちしています。
(2016/7/6 中川晃輔)