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抹茶で未来をつくる

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「写真の加工はしないものでお願いします」

「加工はしていないです。この鮮やかさは自然のものですよ」

こんなやり取りがあったのは、静岡・藤枝市にある工場で加工される碾茶(てんちゃ)の写真をいただいたときのこと。

碾茶 写真の茶葉は、藤枝市付近で栽培されたものだそう。抹茶の原料として加工して使われます。あまりの鮮やかな緑色に、色味の加工をしたのだと思ってうたがってしまいました。

取材したのは、静岡県で明治から茶葉の製造、加工、販売をしてきた丸七製茶株式会社

丸七製茶が運営するスイーツのお店「ななや」の抹茶スイーツは、ここ藤枝市付近の契約農家がつくった碾茶でつくられています。

募集するのは、この夏新たに東京にオープンしたななや青山店で、静岡の抹茶の美味しさを伝えていく販売スタッフ。それと、国内外を問わないメーカーに対して日本茶を紹介していくことになる営業スタッフです。

どちらも日本の食文化や地域の農家の想いを担う大切な仕事だと思います。

静岡はお茶どころと言われてはいるものの、高品質なお茶=京都のイメージを超えることは難しい。それでも一生懸命地域のものをつくり、工夫しながらその良さを伝えようとする姿が印象的でした。

気になった方はぜひ続きを読んでみてください。



静岡県・藤枝市。

JR藤枝駅から車で10分程のところに丸七製茶のお菓子工房と、ななや藤枝店はありました。

2 ドアを開ければ辺りはお茶のよい香り。お店の中に入ると、広々とした店内にたくさんの抹茶スイーツや茶葉のパックが並んでいました。

開店前のお店は静かな中、テキパキと準備をする音が響いていて心地いい。店内からは工房の様子も見ることができます。

お話を伺ったのは丸七製茶代表の鈴木さんです。ここ藤枝でななやを始めたご本人。

3 今の会長である鈴木さんのお父さまの代まで、藤枝市は高級茶葉・玉露の三大産地の一つと謳われていたそう。

その後、お茶業界全体の景気が悪くなり、藤枝の玉露も需要が激減。

今から30年ほど前に玉露農家たちがお茶の製茶問屋である丸七製茶に助けを求めたことが、藤枝での碾茶づくりのきっかけとなりました。

「抹茶の原料である碾茶と玉露は栽培方法が似ているんです。『碾茶をつくってくれれば多少はうちでも買ってあげられるからつくってみたら』と農家の人たちに提案しました」

「でも、いざやってみるとなかなか思うようにいかなくて。伝統的な抹茶づくりを突然経験もなくやろうと思ったところで、簡単なことではないんですね。それでもうちは農家さんから全量を買い続けたので一時期は何億という負債を抱えて厳しい状態でした」

そのころ、勤めていた商社を辞めて家業を継ぐことにした鈴木さん。

苦しい状況は”食べるお茶ブーム”が来たことで解決します。鈴木さんの考えたお湯を入れるだけで飲めるフリーズドライの抹茶は丸七製茶のヒット商品に。碾茶の質もどんどん向上していったそう。

ところが、最近はまた苦境を強いられていると言います。

「この10年くらいで京都の宇治抹茶というのがすごくブームになっているんです。宇治でなければ抹茶を買ってもらえなくなってきてまして。価格が安くて品質が良くてもなかなか買ってもらえないんです。それが僕は悔しくて」

たしかに抹茶といえば宇治というイメージですね。

「でしょう。たとえば他の企業と抹茶を使った商品をつくるとき、商品開発と購買の担当者は『この品質でこの価格ならいいよね』と言ってくれる。でも、最終役員決済のタイミングで『抹茶って言ったら京都宇治だろう、なんで静岡なんだ、やり直せ』と言われてご破算になる事がよくあるんですよ」

静岡茶のイメージは、どうしても中級品。宇治のブランド力には負けてしまう。

抹茶をそのまま提供しても思うようには流通しない。なにか工夫しなければいけなかった。

「人を採用するのに『出身県が悪いから、あなたは採用しません』って言われるのと同じ。それって悔しいでしょう。どこかで見返してやろうと思いますよね」

そこで思いきってジェラートや大福、クッキーなどの工場をつくってしまった。

「分かりやすい形でスイーツにして味で勝負すれば、少なくとも地元の人たちは買ってくれるんじゃないかな、と思ったんです」

「最高級品はやはり京都のほうがいいですけど、そのちょっと下くらいからは決して負けてない自信がありましたから」

そんなふうにできあがった「ななや」では、静岡・藤枝の濃い抹茶を使用したスイーツを提供しています。

中でも一番人気は抹茶のジェラートだそう。

抹茶本来の味をできるだけ維持したまま提供できるジェラートは、濃さが7段階から選べるとのこと。

ジェラートショーケース 一般的に市販されている抹茶スイーツが1番の濃さだというから7番の濃さは相当なものだと思う。

濃いというのは抹茶の量が多いということ。

茶葉そのものの美味しさがないと成立しないスイーツだから、品質への自信がうかがえます。

「今の時代、中級品の需要はどんどん無くなっているんです。中級品のイメージのある静岡のお茶は一番苦境に晒されてる」

「それを脱却するために、まず今手がけているのは世界で一番濃い抹茶ジェラートをつくること。うちのは機械が壊れるくらい濃いんです。濃さで品質を伝えようと思って」

鈴木さんが6年前に思いきってつくった「ななや」の濃い抹茶ジェラートは、SNSなどを通じて口コミで広まり、今では連休になるとお店の前の国道にジェラート目当ての車で渋滞ができるほどになっている。

静岡県外からわざわざ来るお客さんも多くいて、今回の青山への出店も満を持してといった感じ。

青山店は表参道からは少しはずれの小さなお店。無垢の古材を使った内装にしてあるそう。

「どこのお店を立ち上げるときも格好つけすぎちゃいけないと思っています。新品のお店って初日が一番きれいだと思うんです」

「一方で古材は使っていくとだんだん味が出てきますよね。店になんとなく味わいが出てくるころにお店のスタッフも味のある対応ができるようになるというのを目指してます」

はじめから格好つけすぎないんですね。

「スイーツづくりもそうです。もともと素人の集まりですから」

「最高級ではないけれども、よい素材を使ってるから結構おいしいよねと言ってもらえる。いつもそんな感じでやってるんです。所詮静岡だけど、下手くそだけど、でも一生懸命頑張っていいものをつくろうとチャレンジしています」

“所詮静岡”とはいえ、静岡のお茶を誇りに思っている鈴木さんの想いを聞いていると、抹茶ジェラートをただ売ればいいという場所ではないということが分かります。



ななや青山店は具体的にはどんなお店なのでしょう。

藤枝店の店頭でキビキビと仕事をしていた社長の奥さま・美和さんにもお話してもらいました。

5 美和さんはにこにことした笑顔が柔らかい方。

「基本はジェラート販売のお店になると思います。8,9割の売り上げがジェラートになるのは見えています。だからジェラートさえきちんとやっていればそこの店長は合格点をもらえるかな」

お店に置くアイテムも静岡の他店舗にくらべると圧倒的に少ないそう。ジェラートに数種類のスイーツ、茶葉もスペースがゆるす分だけ。

「売り場面積が20平米の小さなお店だから、自分の色で店をつくれるっていうのは楽しいよね。ポップをここに置こうとか、時期に合わせて新茶とか、夏なら冷茶ティーバックを店頭に置いたり、広すぎないから商品を見せやすいと思います」

お店で働く人はどんな人がいいでしょう。

「店長は不器用でもいいと思う。表参道はコーヒーショップとか若くて綺麗な店長さんがいるんですけど、老若男女気にしません。みんなの意見を聞きながらまとめる能力は欲しいよね」

美和さんはスポーツのチームを想像して欲しいと言います。

「夏場は繁忙期ですから、土日は毎日試合みたいなもので大変ですよ。平日はきちっと練習するという感じ」

「ここ藤枝店の子たちは自分の役割をしっかり理解して働いてくれています。自分で考えて『これやっておきますね』というように行動できるんです。そういうチームになって欲しい。柔らかい人が多いから生ぬるいかもしれないけれど、褒めながら伸ばしたいと考えています」

6 採用の際にみんなに話すという話をしてくれた。

「何のために東京に出て来て静岡産のお茶を使用していることを一生懸命うたっているかというと、それは静岡で働く人、お茶農家さん、広くは日本の農業を支えるのに必要だと思うから」

農業を支えるために必要なこと。

「ななやをやる前は碾茶づくりをしていることを役場の人も知らなかったなんてこともあったそうなんです。でも今は、市長さんが『まちをよろしくね』と直々に言ってくださる。農家さんにもうちとやることで収入が安定したと言っていただけています」

7 「いろんな人たちがこの産業に携わっていて、たとえレジ打ちだったとしてもこの国の人々の産業食文化の一翼を担っていると思って欲しいです」

お金を稼ぐ場所であると同時に、使命を持った1つのチームなのだという気がします。

チームが成り立つために必要なことは、1人ひとりが役割を見つけて動くこと。



とはいえ国内では縮小しているお茶自体の需要。丸七製茶はどのような手を打っていくのだろう。

ふたたび鈴木社長です。

「少なからず海外からは日本の緑茶はとても注目されています。その筆頭が抹茶なんです」

今、世界中で抹茶の市場が急成長しているそうです。海外に目を向けつつ、国内の縮小するマーケットでも必ず生き残っていけると、長期的な視野で戦略を立てているとのこと。

「お茶に興味があって営業をやってみたいという方。例えば食品の営業をやってきた経験をお茶で活かしたいという方が応募してくれるとうれしいです」

まずは国内メーカーなどへの営業からだそう。いずれは海外への営業という可能性もありそうです。

最後に鈴木さんはこんなふうに話してくれました。

「うちの会社が利益を上げられれば、農家の人たちの買取価格を上げることができる。そうするとより一生懸命畑に手をかけることにつながっていく。それは数年後の高品質の茶葉の収穫、農家の元気につながっていくんです。そういういい循環づくりにやりがいを感じてほしい」

8 自分の仕事で、地域や農業の未来をつくることに少しだけでも貢献できるかもしれない。

チームの一員になりたいと思えたら、ぜひ応募してみてください。

(2016/8/19 遠藤沙紀)