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「えらぶ」機会は、ほんとうに沢山ある。何をえらぶか、ひとつひとつ丁寧に見極めていたい。そう思える場所に出会いました。

ここであつかう野菜や食品は、無農薬・低農薬の野菜に、添加物を使わない食品など。安心して食べられて、おいしいと思うものが選ばれています。
「いろんな社会現象があるけれど、信じてやっていたらいつか何かのきっかけで火がつくと思う。“いいものを選ぼう”って姿勢に対してね」
「この小さい村が提案できることは、そこなんやろね」
そう話すのは、代表の村雲さん。
この村の自然な食材をつかって、無添加のおいしい商品をつくってみたい人はいませんか。
今回は、食品衛生管理者を募集します。はじめの3年間は地域おこし協力隊として働くことになるけれど、資格を取るための補助もでるそう。これから取りたいという人にもチャンスだと思います。
名古屋から電車と車で2時間。
初夏に訪れた東白川村は、みどりと水の音でいっぱいでした。

どこか澄んだ空気があって、清々しい村です。
川沿いに車を走らせると、道の駅「茶の里 東白川」が見えてきた。新世紀工房は、この道の駅を運営している会社です。
中に入っているのは、特産である白川茶をあつかう「茶蔵園(さくらえん)」、レストラン「おいしい自然工房cafe」、そして地元の野菜が並ぶ「東白川産直」。

「お客さんの健康をいちばんに考えた道の駅でありたいんです」
そう話すのは、代表の村雲さん。

「いま、大人でも急にアトピーが出た、なんて話をききますよね。原因は、知らず知らずのうちに食べている食品に含まれる食品添加物にあるともいわれています」
「アトピーに限らず、からだの不調の原因をたどっていくと “食”に戻っていくんです。ここでは、素材そのままに食べていただく。長い目で見たとき、この小さな村がお客さんに提供できるのは、安心して食べられる“ほんとうにおいしいもの”だと思ったんです」
村雲さんが就任したのは、9年目。
来たばかりのころは、お店の方針も卸業者任せで利益率重視。そのため、添加物が入っていても日持ちのする商品が大半を占めていたそう。
少しずつ、扱う商品や野菜を安全で無添加のものに変えていきました。
「新規就農で県外から来ている人は、やっぱり安全なものをつくりたいっていう考えでここへ移住しているんだよね。そういう人たちの経営をサポートしながら、うちへ野菜を卸してもらうシステムをつくりました」
さらに、農家さんの意識自体も変えるためのこんな工夫も。
「野菜にシールをつけているんです」
自家採種して自然農法でつくられたものはゴールド。有機栽培はグリーン。無農薬・減化学肥料がブルー。シールのついていないのは、農薬や化学肥料は慣行栽培の70%以下のものなんだそう。
「これまで慣行栽培をしていた農家さんでも、なるべく農薬や化学肥料を使わないように、できるところからステップアップしましょうよ、って取り組みなんです」

「ほかの自然食品を扱う店も見に行ってたんやけど、自然食の店って入りにくい雰囲気があった。入ると買わなきゃいけない感じがあってさ、入っちゃったなぁ、って思うよね(笑)そういう敷居をさげたいなと思ったのがひとつ」
「それから、そういうお店って、どっか一色いろが抜けとるよね。鮮やかな色がなくて、淡いくすんだような色が多い。扱っているのはいいものなのに、商品が輝いてない。そういったところから、やっぱり手にとっていただくには商品コンセプトや価値を伝えるパッケージと、店の雰囲気をマッチさせることが大切だと学び、10年前からデザイナーさんと一緒にやっているんです」

「ここでやっていくことはまちがってないな、って思います」
まずはこの想いに共感できることが、何よりの応募条件になると思う。
「その上で、ここの食材や資源を生かした商品をつくりたいという人があればいいですね。なにかあると思うんやけど、まだ確信になるものが見つかってなくて」
「やりたいことがあったら何でもできるよ」という通り、加工施設は設備も揃い、漬物、惣菜、菓子、食肉あらゆる製造の許可をとることができる。
実は4年前に食肉の加工品を開発したとき、名産のお茶由来のカテキンを使った殺菌方法を編み出したそう。
「食肉加工が無添加でできる方法です。特許もとったんですが、今、商品化申請する食品衛生管理者がいないので活用しきれていなくて」
そこで、食品衛生管理者の資格を持っている人、もしくは取得資格のある人が求められています。
いま商品開発と調理を手がけているのは、料理長の佐藤さん。あたらしく入る人が、一緒につくっていくことになる人です。

料理人歴は33年。
以前は料理長として、ホテルのビュッフェ、宴会などの料理をみていたそう。ずいぶん雰囲気が違うように思うけれど、どうしてここへ来たんですか?
「おもしろそうだと思ったからですよ」
「なんていうんですかね、懐石料理って、今までの自分の知識の中でやるんです。枠が決まっているので、なかなか自由な発想ではつくれない。その知識を活かしておもしろいものをつくりたいと思っていたら、そんな環境がここにあったんです」
働いてみて、どうでしたか。
「難しかったです。ここへ来てはじめて商品をつくったんですけど、商品って、その場で食べてもらうものと違って、いつ食べるかわからないんです。賞味期限を1ヶ月つけるのであれば、その間美味しくなきゃいけない。しかもそれを無添加で実現する。そのハードルがあまりにも高いっていうのがわかりました」

「東白川村はお茶どころなので、お茶を生かした商品をつくろうと思ったんです。はじめはお茶の香りがしたらいいなぁくらいの期待で、ソーセージに入れてみました」
試してみると、お茶が豚肉の水分を吸って身を締めるため、ぼそぼそした食感になってしまった。
「でも、その失敗をしたとき、カテキンが肉を締めるならハムに向いているんじゃないかと思ったんです。一緒に塩を入れて漬け込めば、塩分が安定しハムの塩抜きという工程が要らなくなると思ったんです」
つくってみると、2ヶ月たっても腐らなかった。
そこからカテキンの防腐効果がわかり、お茶をつかった製法ができあがった。

お客さんの反応はどうでしたか?
「商品としてはすごくニッチな商品です。ここじゃないとだめっていう熱烈なファンはつきますわ (笑)」
「ネットでも販売していたんですが、あるときソーセージが大好きなお客さんからの書き込みがあって。いろんなソーセージを満足するまで食べてるらしいんですけど、うちのは1キロも食べられたって言うんです」

わたしも食べさせてもらったのだけれど、まるでお肉をそのまま食べているみたいなおいしさだった。
「そういうことの積み重ねなんです」
「年間でいくつも商品をつくって、お客さんがついたものを突き詰めていく。それで商品がヒットすることもあります。こんなものがヒットするんか!って(笑)。そういう楽しさは、懐石の世界じゃ味わえなかったやろなあ」
あたらしく入る人も、佐藤さんと一緒にイチから商品開発していくそう。
「むちゃくちゃでもいいから、挑戦する人がいいね。むちゃくちゃなところから発想が生まれると思うよ」
この村にはお茶もあるし、安心してたべられる野菜もある。
それも多品目少量生産だというから、素材はたくさんありそうです。
「やっぱり、名物って本物じゃなきゃ絶対にならない。わざわざ足を運んでもらうには、ほんとうに美味しいものじゃないとだれも来ないです」
「いま調理のほうで目玉になりそうなのがひとつあって。にごみうどんって言うんですけど」

徐々に安定して売れるようになり、お客さんも「あれっ、おいしい」とおどろかれるのだそう。
「出汁にこだわっているんです。前は稀釈だしを使っていたんですけど、今は昆布と鰹で。鰹も2種類使っているんです」
しっかりとつくりこんだ本物の味。
村雲さんは、こんなことを言っていました。
「どこで妥協するかって話をよく聞くけれど、妥協しちゃいけない。ほんとうにおいしいものの価値を信じてやってたら、世の中もいつか“いいものを選ぼう”って意識に火がつくとおもいます」
小さな村が、未来へ贈るもの。
ここでのキーマンになってみませんか。
(2016/8/10 倉島友香)