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森の中で気づくこと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

生活していると、なかなか自分の心や身体に向き合う機会がなかったりします。

ファスティング旅館の若杉屋を訪れて、話を聞いていると、ちゃんと自分のことに向き合わないといけない、と思いました。

wakasugiya05 若杉屋はファスティングを行う宿です。ファスティングとは、長年働き続けてくれている内臓を休める体内ケアのこと。固形物を食べずに酵素ドリンクを飲むことで、身体を整えることができる。

さらに森林セラピーや瞑想などで、心も脳もお手入れできる。

そんな時間を経験していると、普段見過ごしていたことに気づくそうです。

そんな繊細な場所をつくりあげていくのが仕事です。もし興味があれば、続きを読んでください。



福岡空港から福岡駅へ。さらに篠栗線に乗り換えて約15分で篠栗駅へ。ここからタクシーに乗り換え。

あじさいの咲く、曲がりくねった山道を進んでいきます。

森の中を進んでいくと、20分ほどで宿が集まっている開けた場所に出た。目的の若杉屋もこの場所にありました。

wakasugiya30 篠栗には八十八カ所の札所があり、お遍路さんの宿として集まっているようです。2009年には森林セラピー基地の認定も受けたとのこと。

宿からは博多湾が一望できる。

この場所を運営しているのが株式会社コプラス。コーポラティブハウスで有名な会社で、日本仕事百貨でも何度か紹介しています。

とはいえ、なぜ旅館を経営することになったのか。

もともとコミュニティをキーファクターにしているコプラスでは、地方でのまちづくりも手掛けている。それがきっかけとなって篠栗町のブランディング、観光再生、町民コミュニティの活性化を目的としたプロジェクトがスタートし、若杉屋を再生することになったそうです。



そのときにテーマとなったのがファスティング。

この宿を実際に運営していくために白羽の矢が立ったのが品川さんです。

まずは品川さんに話を聞きました。

「わたしはヨガのインストラクター、整体、森林セラピーのセラピストなどをやっています。若杉屋が目指していることと、私がやりたいことが同じだったので、ぜひここで働きたいと思いました」

wakasugiya04 もともと出身は神戸。結婚相手が福岡の方だったので、引っ越してくることになった。

「はじめはこちらで整体の仕事をしていたんですけど、スキルをあげたいということで、ハワイにロミロミの勉強をしに行きました」

「いろんな技術をあげるために勉強していると『あなたがフラットであること、そして周りの自然のエネルギーを手当てしている人に与えることが重要』という話があって。まさにそうだと思って、自然の中に身を置くことの大切さをハワイで実感したんです」

日本に帰ってくると、それまで気づかなかった篠栗の森の豊かさに気づく。

「篠栗町が森林セラピー基地にも認定されて。それから5年くらいして、この宿の話をいただいたんです。これもご縁だなと思いました」

wakasugiya14 働きはじめてみて、どうでしたか。

「大変でした。宿って24時間ですから。やらなきゃいけないことはたくさんありましたし、あれもこれも出来ていないー!って泣いたこともありました」

「でも貴重な体験だと思います。ゼロから、自分たちで考えてつくっていけるので。普通はできあがったものをそのまま渡されるのがほとんどだから」

品川さんのおかげでハンモックセラピーができる宿になったそうです。

wakasugiya50 そんな品川さんに誘われて働きはじめたのが池田さん。ホリスティックビューティアドバイザーという資格を持っていて、若杉屋ではファスティングや食を担当しています。

もともと品川さんの整体を受けていたのがはじまりだったそうです。

そのときのことを話していただきました。

「社会人2年目のときに仕事に疲れ果て、肩がガチガチになってしまって。自分でリセットができないと思いました。それで電話したら、出たのが品川さんだった。ほんとは予約がいっぱいなのに、わたしがしんどそうなことを感じ取ってくれて、迎えてくれたんです」

wakasugiya06 さらに品川さんから森林セラピーのことを教えてもらって、篠栗にも訪れるようになった。

「森に入ったら、全然違っていて。気分が違う。じぶんの五感に気づく。鳥の音とか。普段はシャットアウトしているんだなって」

お遍路セラピーにも参加していて、すでに3周まわったそう。

「月に一回、ちょっとずつ。半年で回れますよ。歩いている感じはセラピーもちょっと入っていて」

wakasugiya07 「普通のお遍路とはちょっと違う。いつも目にしないもの、気づかないものがあることがわかるんです」

もともとどんな仕事をしていたんですか。

「銀行員です。カウンターでお客さんと接する仕事をしていたんです」

「あるとき体調を悪くしてしまって、自分でも改善しようと思ったんです。それでホリスティックビューティというのを勉強したら、その延長にファスティングがありました」

そんなときに若杉屋の話を品川さんから聞くことに。

「興味を持ってはじめていたことが仕事になるということで、すぐにやります、と言いました」

今はどんな仕事をしているんですか。

「まずファスティング中は固形物を食べないので、酵素ドリンクを提供しています」

wakasugiya08 「あとはおうちに帰ってからも継続できるような食事を考えています。『まごわやさしい』です」

まごわやさしい?

「まめ、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけなどのキノコ系というのを普段の食事に取り入れようと。ちょっと添えるだけでも」

「あとはみんな眠りが浅いことがあるので、どうすればいいのかとか。眠りのストレッチとか。そういうのを帰る前に教えるんです」

この仕事の大変なことはなんですか。

「そうですね、わたしは通勤ですね。車が運転できないと大変です。それに宿なので、24時間体制なこと。だからこそ、近くに住んだほうがいいと思います。鳥の声が聞こえてくる職場は気持ちいいですよ」




今回、募集するのは品川さんや池田さんとは違って、専門的な知識は必ずしも必要ないそうです。むしろ、ちゃんと旅館を運営できる力が必要だと思います。それはホテルなどで働いていた必要はなくて、社会人としてしっかり働いてきた方がいい。

五輪さんは、まさにそんな人。お話していても、とてもしっかりした方で、ちゃんと相手のことを気にかけてくれるので安心できました。

それにみなさんに好かれる方で、コミュニケーションも上手いのだとか。

今まで働いていたのは車のディーラーや小さな建設会社、それにお米の袋を企画製造販売する会社。

「内勤営業で、価格やデザイン、打ち合わせ、それに納期確認から回収まで。外に出てないだけでなんやかんやいろんなことをやっていました。あとはデータ管理。内部監査員でもあった。年に何度か監査にも携わっていたので、実力以上に働いていたらとても疲れてしまったんです」

wakasugiya11 結婚して、家も建て、昇進もして。働く喜びもあったけれども、身体のバランスを壊してしまった。そんなときに品川さんに出会うことになる。

「人生をここでリセットしないとまずいなと思いました。それでヨガをはじめたら、先生が品川さんで、しかもご近所だったんです」

ヨガに参加したり、森にも行くことで、元気を取り戻していった。そして、若杉屋で働くことになった。

働いてみて感じたことはありますか?

「お客様と直接会えるというのが前職ではほぼありませんでした。お目にかかれて楽しかったです。顔が見える、温度がわかるというか。そこがすごいうれしい。目に見えて変わっていかれる方がいらっしゃるのもうれしい」

wakasugiya10 どう変わるんですか。

「最初、伏目がちで話される人が、最後には目を見て話せたり、笑顔になったり。何人かいらっしゃいました。少し自信を持ってかえられる」

はじめは「個室じゃないの?」と質問されていた方が、2日目には扉を開けっ放しにして寝ていたり。行きはタクシーだった人が、帰りは車に乗せてもらったり。一緒に体験している人たちが心強い仲間になっていく。

「わたしも自分でやってみて感じたことなんですが、生活習慣が変わっていく。体重も何をやっても落ちなかったのに落ちてくる。たぶん、わたしも何かを見つけることができたんだと思うんです」

参加いただいた方からは「気持ちがゆったりし、家族も私の変化をよろこんでいます」とか、「食べることから離れて、気持ちを変えた。それまでの私をリセットしてくれたんだろうと思います」というようなメールが届くそうです。

この場所は決められたことをするというよりも、それぞれに自分のことに気づく場所なんだと思う。

wakasugiya12 こんな場所をつくるには、どうお客さんと関わるかが大切なことになってくる。

まず前提として求められていることは、この若杉屋の考え方に深く共感できるかどうか。自分がどうしたいか優先するよりも、「若杉屋ならどうしたらいいか」考えられる人だし、それが自然と自分のことになっている人がいい。

さらに臨機応援に対応できることも大切かもしれない。

調子が悪い方もいるし、すぐに溶けこめる方もいる。かまってもらったほうがいい方も、ほっといてもらったほうがいい方もいる。

一人ひとり違うことに向き合うことが求められている。決まったやり方はありません。いつも同じ仕事をするよりも、常に目の前に向き合いながら、未完成なことを楽しめるような方が合っているかもしれません。とくに開業間もないので、そういう姿勢はより必要だと思います。

スタッフ同士でも同じ。すでに仲のいい人たちが集まって働いているけれども、これから入ってくる人たちとの関係性も大事にできるように思います。



話を聞いてから、少しだけ近くの森を歩いてみました。眼下には博多湾が手に取るように望める場所に、こんなにも気持ちが落ち着く場所がある。

ここをきちんと形にしていく人が求められています。技術的なことは未熟でいいそうです。まったく異なる業界でも大丈夫。ただ、目の前にある仕事をしっかり対応しながら、この場所をマネジメントできるような人がいいのだと思います。

さらにこのプロジェクトが成功したら、第2第3の旅館再生プロジェクトがはじまるかもしれません。そんなことに関わりたい方にもオススメです。

今回は女将たちをサポートしてくれるアルバイトや夜勤も募集するようですよ。

少しでも興味があれば、ぜひ若杉屋を訪れてみてください。それだけで、何かに気づくことがあるかもしれません。

(2016/8/2 ナカムラケンタ)