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「君はまだそこにいるの?」移住し、新しいことを学ぶには勇気が必要です。大事なのは、実際に自分で体験して肌で感じることだと思います。
とはいえ、めまぐるしいスピードでくり返される日々の中、働き方や生活で感じる違和感に向き合える機会は決して多くはありません。
そこで、自分を見つめ、自分が見つかる場所があります。
『しただ塾』
新潟県三条市下田(しただ)地域で、この秋から本格的に始まる人づくりのプログラムです。
カリキュラムは1日6時間。内容は、座学や観光資源発掘のための地域視察、経営者講話、職場体験など。
一般的な観光のあり方の学習に加え、地域の人と触れ合うことで実践的な観光学習ができるそう。
金属加工などものづくりで有名な三条市。その山あいにある下田地域は、ランドマークの八木ヶ鼻をはじめ、アユが群れる清流五十嵐川、カジカ獲り、温泉など手つかずの大自然に囲まれ、観光をはじめビジネス化できる地域資源は無数にあります。
今回は、多くの可能性を秘めた下田地域で、実践を交えながら体験していく「しただ塾生」を募集します。
『頑張れる場所を探している』『新しい故郷をつくりたい』など、働き方や暮らしにおいて自分と向き合える場所だと思います。
下田地域に滞在しながら観光事業について学ぶ4か月。
自分の良さや強みを再発見し、働き方と向き合える良い機会になると感じました。
新幹線で東京駅から燕三条駅まで約2時間。
燕三条駅で迎えてくれたのは、三条市役所の地域経営課で地域おこしや「しただ塾」事業などを担当している山屋(やまや)さん。会場となる旧荒沢小学校まで案内してくれました。
車で信濃川を渡り市街を抜けると、徐々に緑が濃くなっていきます。
しただ塾のある旧荒沢小学校近くには、アウトドアブランドのスノーピークやキャプテンスタッグもあります。
塾生が卒業後、このまちの資源を活かしたスポーツツーリズムを事業展開することも可能とのことです。
駅から40分ほどで廃校になった旧荒沢小学校に到着。
現在はNPOソーシャルファームさんじょうの拠点として、地域おこし協力隊7名が常駐し、しただ塾の運営をはじめとした人財育成に取り組んでいます。
玄関を入ると木のぬくもりがあり、学校の温かさを感じます。
心地よい日差しが差し込む部屋で、しただ塾の取り組みについて話を伺います。
まず初めに伺ったのは柴山さん。現在は人財育成に関する活動を中心にNPOの運営や企業を経営しています。
「しただ塾は、一人の労働者を育てるわけではないんですよ。しただ塾に参加してもらうことで、遠くにある光に向き合えるような人になってもらえればいいと考えているんです」
学べる事業は下田地域の資源活用が中心となるが、根底にはしただ塾に参加してくれた人たちが次のステップをどう見つけるのかという思いがあります。
そもそも、どうしてしただ塾をはじめようと思ったのでしょうか。
「しただ塾も、人づくりの一環としてはじめようと考えました。下田地域だからこそ教えられることがあると思っていたんです」
下田地域だからこそ、ですか。
「三条はものづくりのイメージがあると思いますが、農業を核とした下田はひとづくりで、地域の6次産業化を展開できると考えています」
「しただ塾は、その根幹のひとづくりを担い、そこにものづくりが掛け合わさり、さらにプレイスメイキングによるまちづくりまで視野に入れた12次産業化を表現できる場所と思っています」
とはいえ、しただ塾の期間は4か月。あらゆることを学ぶ時間としては、すこし大変な気もします。
「そうですね。その4か月は濃密な時間だと思います。ただ、しただ塾を通して学んだノウハウをいかせば、就職せずに起業することだってできると思います」
「来てくれた人の人生を狂わせちゃいかんと思っていて。ここに参加してくれた以上、出口はしっかり考えてあげなきゃいけない」
参加してくれた人を本気で考えたとき、どういう道筋をつくることが最も良いのか。
ただ参加して終わりではなく、吸収した資源をどういかすのかまでを見据えて話す姿勢からは、しただ塾の本気さを感じる。
今年の4~7月にはしただ塾をプレ開講し、2名の塾生を受け入れました。
「ここにいる期間は、常に求められるような環境です。だから一人一人が輝けるというか、その人にフォーカスがあたり成長できると思います。大切にしているのは、その子の長所を伸ばすにはどうすればいいか考えることと、信じて任せること。でも時々カミナリは落とします。あえてね」
「人の役に立つっていうことはものすごい経験だと思うし、数か月の間に彼らの成長もすごく目に見えました」
変わりましたか?
「もちろん。お客様が玄関に行かれたら、靴をどうぞって出してくれて。その気遣いができるって、彼らが来た時と比べたらすごい成長だと思いますよ」
塾生が『下田地域で何かを得たい』っていう姿勢があったからこそ、学べることはたくさんあったのかもしれない。
そこで、今年の4~7月に実施されたしただ塾生にも話を聞いてみることに。
左手に座っている方は大久保さん、右手に座っている方は伊藤さんです。
お二人とも同じ専門学校に通っていたそうですが、しただ塾に対する思いや感じ方はそれぞれ違いがありました。
はじめに大久保さん。
「そもそも田舎で暮らすこと自体はじめてでした。でも、20代前半の今、しただ塾で学んだことを自分の人生の糧にしていけたらいいなと思い参加しました」
実際に参加してみてどうでしたか?
「カリキュラムに嵐溪荘(らんけいそう)という旅館で研修させてもらう機会があったのですが、学べることがとても多かったんです。というのも、接客業はラーメン屋の経験しかなくて。旅館という環境とはかけ離れていました」
さらに、三条でものづくりを営む企業の代表と話をしたときのこと。
「社長に、なんで今の仕事をやっているんですかって聞いたことがあったんです。すると、『やりたいことやってるだけだよ』っていう答えが返ってきて。そのとき、自分もそれでいいんだって思いましたね」
現場で働く人の言葉を聞くことによって、より実感が増すのかもしれない。
「もちろん成功している方々の話なので、自分とのギャップはあるんでしょうけど、そのギャップをこれからどうやって埋めていこうって考えるようになりましたね」
「また、研修以外の時間でも、地域の方と話す機会がたくさんあって。90歳過ぎのおばあちゃんと雑談する機会なんてなかったので刺激的でしたね。下田地域の方々に出会えたことが財産のように残っていく気がします」
大久保さんは研修後、横浜に戻るそうです。
「もう一度下田に戻れるチャンスがあれば戻ってきたいです。ここでの縁は切りたくないし、将来ここに戻ってきて恩返ししたいと思っています」
続いて話を聞いた伊藤さんは、将来の夢でもあったサッカーコーチの話をもらっていたものの、しただ塾への参加を希望しました。
「なんか、そのままサッカーコーチになることが踏み出せなかったんです。とはいえ、一般企業に就職して働くのもなんか違うと悩んでいて。そんなとき、しただ塾のことを知りました」
しただ塾に参加してみると、いろんな方の実体験を聞けたことが印象的だったと話します。
「たとえば、燕三条地域の玉川堂という企業や諏訪田製作所など、世界的に進出している企業の話をじっくり聞くことができたのは楽しかったし、いろいろ迷っていたことが解消されました」
「いろんな働き方を見せてくれた下田地域の人と関わるなかで、これでいいんだって思えて、安心したんですよね。正直、自分はそこまで観光業にこだわっていませんでしたが、観光業ベースのカリキュラムがとてもよかったです」
「多分、僕と同じように『なぜ卒業したらすぐに就職しないといけないんだろう』って思っている人が参加してみても、学べることはたくさんあると思います」
観光業について勉強したいという方が応募することももちろん良いけど、自分がどうなりたいのか悩んでいる人にも、働き方を見つめ直す糸口があると思います。
「ただ、学ぶ姿勢や何かしたいっていう意欲はあったほうがいいと思います。ひとつでも良いからやり遂げたいことがあるだけで、学べるものがたくさんありました」
現場で学ぶ態度や実践で何か得たいという姿勢は、人を成長させる一番の糧になっていると実感しました。
自分で体験したり、直接話を聞ける経験をしたり。
関係をつくっていくなかで地域を知り、心を磨かれ、生きる力が身につくということは、なによりも大きな魅力なのかもしれません。
最後に柴山さんの言葉を紹介します。
「都会では原石のままかもしれないけど、ここで磨かれてこそ光ることがあると思うから。まずは楽しむために何をすべきかを一緒に考えていきたいね」
「その積み重ねはかならず糧になるので、どんなに小さな企画だろうが、確実にやりきってほしい。僕らも教えてあげるではなく、一緒にやっていこうっていう意識でいろいろと学ぶつもりです」
取材中、しただ塾の運営を支える皆さんが下田地域を案内したり、実際にしただ塾生が企画した活動を紹介してくれたりしました。
夜になると明かり一つない真っ暗な場所だけど、不思議と感動を覚える話や、住んでいくうちに都会とは違う価値観を見出してきた話。
何もない場所だからこそ、実はたくさんのモノや出会いを濃密につくる環境が整っているのかな。
今回の取材を通して、そんな風に思いました。
9月25日(日)には東京で説明会がおこなわれます。少しでも心が動いたら、ぜひ参加してみてください。
一歩踏み出したその先には、さまざまな光があるのかもしれません。
(2016/9/7 浦川彰太)