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つながりのある風景

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突き詰めれば、また違ったものが見えてくる。

それは建築や不動産の仕事も同じです。

thinkgreenproduce01 よりよい場所をつくろうと考えれば考えるほど、土地や建物だけを考えることができなくなっていく。中身も自分たちでつくらないといけない。

THINK GREEN PRODUCEの関口正人さんはそう考えました。

今回はまちづくりプロデューサー、事業コーディネーター、そして運営事業マネージャーを募集します。気になる方はぜひ続きを読んでください。



代官山の東横線の上にできたLOG ROAD DAIKANYAMA。地下にもぐってしまった東横線の跡地にできました。

この基本計画を担当されたのがTHINK GREEN PRODUCEの関口さん。いちばん奥にあるGARDEN HOUSE CRAFTSはTHINK GREEN PRODUCEが運営するお店です。

thinkgreenproduce50 関口さんはもともと建築や不動産の領域で仕事をしていた方。お店の運営まではじめることになったのはなぜなんだろう。

お店の軒先にある気持ちいい席で、関口さんに話を伺いました。

「ぼくは1杯のコーヒーから都市計画までつながっていると思っていて。つながっていることが理解できる人がどれだけいるのかわからない。でも仲間には1杯のコーヒーがどれだけまちに関与しているか、その感覚を共有してほしいと思うんです」

thinkgreenproduce03 タイミングよく出てきたのは、コーヒーとクロワッサン。

とてもおいしい。

なぜそういう感覚に至ったのか聞いてみる。

「今から8年ちょっと前。テレビを見ていたら、アメリカの証券会社が破綻をして、スーツをきた偉そうなサラリーマンが会社からダンボールとパソコンを持ってでてきた。そのときはリーマンブラザーズという大手金融の会社が破綻したんだ、くらいにしか考えていなくて」

景気がいいから、土地を買う。たくさんの建物ができる。儲かるからやる。それの繰り返し。

そうやって世の中が動いているのかもしれないけど。

「ぼくはサーフィンが趣味で、毎日のように海にはいっていて。海からあがったら、おいしいごはんを食べたいとか、おいしいコーヒーを飲みたいと思っても、そんな場所がないんですね。世の中はこんなに景気がいいのに」

そんなときに関わったのが、鎌倉の七里ヶ浜にあるWEEKEND HOUSE ALLEY。海に面した場所にあって、レストランや住宅がはいっている。

thinkgreenproduce51 「不動産的目線でいくと、そのあたりは家賃とかそこまで高いわけじゃない。でも自分がやりたいことをやったら、結果としてたくさんの人にきていただいて。評価もよくて、イコール売り上げが上がって、家賃も取れるようになった」

「競争の高い都心でハコだけをつくるビジネスよりも、気持ちいい時間、つまりコトを考えて場をつくるほうがビジネス的にもバリューがあるんじゃないかって思ったんです。そのほうがおもしろいことになるとも思ったんですね」

そのときに重要だと思ったのが「建物ではなく中身」だった。

不動産の価値は立地によってほとんど決まってしまうものだった。けれども不便な場所でもそこにどんな場所をつくるかによって、立地という制約を超えることもできる事例が増えてきているように感じる。

「これからはオペレーションから考えるまちづくりをやっていきたい。それまでぼくがいた会社はハードをつくっていた。そこに距離を置いて、自分のやりたいことをやろうと立ち上げたのがTHINK GREEN PRODUCEなんです」

なぜ会社をつくったのかといえば、それは求められたのがきっかけだった。

自分たちが心底いいと思うことをクライアントに提案すると「とてもいい」と言ってくれる。

ただ、もうちょっと踏み込んでみると「イメージつかない」「なんか事例ないの?」「関口さんできないの?」と返ってくる。

「コンサルティングという仕事にジレンマを感じていて。ほんとだったら自分がやりたいのに。だから自分たちがやりたいことを自分たちで形にしていきたいと思ったんです」

そうして実現したのがGARDEN HOUSEだった。

thinkgreenproduce52 鎌倉駅から少し歩いたところにある築60年の古民家。もともと「フクちゃん」で有名な漫画家横山隆一さんのアトリエだった。

今は関係者が所有していて、はじめはひとりで住んでいたそうです。

ところが築60年、敷地180坪の建物に住むのは難しい。雨漏りもするし、草もボーボー。冬は隙間風が寒いし、夏は虫もでてきた。

「あるきっかけでその方とお会いしたんです。はじめは有効活用の相談だった。IT会社に勤めている方で、夢はリアルな仕事がしたい、というものでした。たとえば、レストランとかセレクトショップだとか」

ところがこれを実現するには莫大な資金が必要になる。用途変更をしたり、構造補強も必要。企画書を提出したところ「そんなにお金はない」ということだった。

「直感で『ぼくがやるのはどうですか?』って聞いたんです。貸してくださいと」

はじめは建築のコンサルからはじまって、結果として自分たちでやることになった。

そのときに声をかけられたのが近藤さん。飲食のプロフェッショナルだ。

近藤さんにもお話を聞いてみる。

「もともと一緒にやりたいね、というのはあったんです。でもタイミングが急だったのでびっくりしました。それに東京でやるイメージだったので、鎌倉だったこともびっくり。ただ、そういう流れなんだな、って思って楽しみました」

thinkgreenproduce06 近藤さんはもともとジャズなどの音楽が好きで、ライブによくいっていた。ブルーノートで働くことになったのがきっかけとなって、飲食の世界にのめり込んでいく。

「やってみると、想像以上に自分が食べ物に関心が高いことがわかって。その後はヨーロッパに行きソムリエの資格もとりました」

「けれども25歳のときに、サラリーマン的な仕事もしてみようと思った。それは砂糖の商社のような仕事だったんだけれども、ほとんど結果が決まっている仕事だった」

そんなときに知り合いの不動産ディベロッパーから「カフェをつくるので、店長やらないか」と声をかけられる。

そこで出会ったのが関口さんだった。

「不動産ディベロッパーの人なのに、お味噌汁の味まで細かく言ってくる。こういう人もいるんだと思って」

thinkgreenproduce53 「アルバイトとか社員とか関係なく対等に付き合ってくれて、収支のことをつっこんで質問しても当然のごとく答えてくれる。なんかいいな、と思って、いつか一緒に仕事がしたいと思っていたんです」

その思いが実現して、近藤さんはTHINK GREEN PRODUCEに入社することになった。

「前の職場は入社したときのスタッフ数が12名だった。そこから急成長して、120人くらいになって。でも食に関するカルチャーを感じなかったんです。それにすごい違和感があって、THINK GREEN PRODUCEに転職を決めました」

「関口さんのやっていることは、ほかの人から見れば不器用に映るかもしれない。でもカルチャーとかブランド、コンテンツをつくる、というところに自分自身もすごいやりがいを感じるんです」

最初の仕事はGARDEN HOUSEの立ち上げ。ところがとても大変な仕事だった。

120席くらいの規模のレストラン。もともと飲食のチームがいるわけじゃない。テストキッチンもないし、予算の都合で前もって人材を揃えておくことも難しい。

女性のフードディレクターと二人三脚で試行錯誤した。

「体力的にハードだし、失敗したら会社が立ち行かなくなるかもしれない。絶対に成功させなきゃいけないというプレッシャーがあって」

とくに苦労したことは何ですか?

「価値観の共有。飲食店って作業の積み重ねなんです。作業はみんな慣れていくから問題ないんですけど、仕事は作業と違う。どう目標をもって自主的にやっていくかというところ」

thinkgreenproduce08 たとえば、その価値観がしっかり共有されていると、サービスの仕方や、サラダの盛り方や味付けも決めやすい。

けれどもそこができていないままお店がオープンしてしまうと、バタバタしてしまって軌道修正が難しく、ちぐはぐなお店になっていく。

どうやって共有するのだろう。

「価値観を共有するには、結局いろんな角度から話していくことなんです。たとえば、歴史とか。結果だけを伝えるのではなく、歴史から振り返ってみると理解することができる」

「なぜ地産地消とか、フュージョンが流行っているのか。もともと西海岸にはヒッピーカルチャーがあって。文化がないところに、新しい文化をまぜていく。ミクスチャーっていうカルチャー。こうやって歴史を紐解きながら話していく。それは素材や生産者についても同じこと」

近藤さんが話すときに大切にしているのが、流れを説明していくこと。単にポイントだけ真似するのではなく、文脈を理解してつなげていく。

関口さんが建築にとどまらずに中身からつくろうとしたことに似ているのかもしれない。どちらも点と点をつなげていくことで、表面的なことではなく、結果として本物をつくっているように感じた。



食以外で中身をつくっているのが蝦谷さん。彼もまた、空間や人をつなげている仕事をしています。

「自分はおふたりとは違って、アーバン育ちじゃなくて。富山出身なんです。大学時代に先輩たちとお店をつくることをやっていて、新卒時は違う仕事をしていたのですが、この会社を知ってあらためて場所をつくることの楽しさに気づき入社しました」

thinkgreenproduce09 大学を卒業して、ITコンサルティング会社に就職する。日々、エンジニアのような仕事をしていた。大震災が起きたときには、みんながどう働いているのか知りたくてイベントをやったこともあった。

「やりたいことをもっと深く思考する必要があるな、って思ったんです。そのときにたまたま地元に帰って。そしたら中高生のときに遊んでいた街がシャッター街になっていて」

「自分にとって音楽や服を買ったり、おいしいものを食べる場所だった。それがなくなるのはさびしい。すべて元どおりにはできないけど、100のうち10くらいは再生できるかもしれない。そう思っていたら、THINK GREEN PRODUCEに出会ったんです」

まちづくりをやっている会社はいろいろある。その中でも感性や理念に共感できたのはこの会社だけだった。

今はスペースを貸して運営したり、有効活用する役割を担っている。

たとえば、オーナーさんから場所の有効活用をしてほしい、という相談があれば、飲食店にしたり、シェアオフィスにしたり、というように考える。さらにその後、運営することも担当している。

まさに建築や不動産の駆け込み寺。

「GARDEN HOUSE CRAFTSの前では代官山の何軒かのクラブと合同でレコードマーケットを開催しました。意外と売れて、好きな人と好きなこと、好きな場所が結びつく瞬間はとても幸せでした」

thinkgreenproduce10 単にハコだけつくるのは簡単。でもそこでどんな風景がひろがってほしいか考えたときに、実現するには自分でやるしかない。それはとても手間暇をかけることだけれども、どうせやるならそういう仕事がしたいもの。



最後に関口さんに聞いてみた。

どんな仕事をしていきたいですか?

「同じお店を10個つくっていくようなことはしたくない。街が変われば、やりたいことも変わる。それが自然なのかな。そこで自分が興味をもってやっていれば楽しんでいける。働いている人それぞれの挑戦が見える会社でありたいです」

(2016/9/1 ナカムラケンタ)