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「ナゴヤドーム10個分ほどの森に、いろんな生きものがくらす環境がある。そこを自分たちで管理しつつ、いかにして自然の魅力を多くの人に伝えていくか。アイデアが試される場所です」博物館事業とまちづくり事業を柱として事業を行っている、NPO法人三重県自然環境保全センター(以下、ECCOM)。
ECCOMは、三重県に2つある自然公園を管理・運営しています。
その1つ、伊賀市にある上野森林公園の管理が、今年の4月からはじまりました。
今回は、この上野森林公園の運営を担っていく人を募集します。
公園の管理運営と聞いて、一見、のんびりした環境のなかでの地味な作業を想像するかもしれません。
けれど、少数精鋭のスタイルで園内の自然環境を整え、イベントの開催も数多く手がけています。
だからこそ、一人ひとりが、仕事の手応えを大きく得られるように感じました。
気になる方は、ぜひ続きを読んでください。
名古屋駅から電車で20分ほど。桑名駅に着くと、ECCOMの事務局長・内山さんが迎えてくれました。そこから車で40分ほどかけて、管理をする公園の1つ、三重県民の森へ向かうことに。
もともと自然環境について興味があったのか聞いてみると、「そう、これが原因です」と内山さん。
視線を横に移すと、川が流れていた。
「員弁川(いなべがわ)です。小さい頃にじいちゃんによく連れて行ってもらって。川で魚をとって食べたりしていました」
そんな経験があったからなのか、三重で自然に関する仕事をしたいという想いが生まれた。
大学は農学部に進学。卒業後、東京で自然系の財団法人に就職した。
「東京で働いていたとき、ECCOM立ち上げに誘われて。2007年の2月にスタートしました」
自然に関連した職場は少ないものの、自然環境をそなえた施設は各地にある。ただ、多くのところでは施設を運営していくためだけに職員がいて、それ以上のことは求められていないのが現実。
「役割の幅を広げていこうとする施設ってなかなかないんです。でも、外から見てるともったいないなって。施設を拠点に、もっといろんなことができるんじゃないの?って思うんです」
「昔は生業(なりわい)として人と自然が関わっていた。その営みがなくなったから、今、自然の豊かさが薄れてきている。だったらもう一度、自然と関わるということを、仕事や産業として成り立つ形をつくっていけば、豊かな自然を取り戻すことができるんじゃないか。それが根底にある考えです」
人と自然が関わる営みってどんなものがあるだろう。考えながら話をしているうちに、三重県民の森に到着した。
まずお話を伺ったのは、所長の川根さん(写真右)と桝田さん。
桝田さんは、5年前から勤めている。
現在は、イベントの企画・実施のほかに、広報や事務の仕事をしたり、冬は間伐もしているそう。
イベントはどんなものがあるのだろう。
「鳥や昆虫、キノコなどの観察会をはじめ、公園でとれる素材を活用したクラフトなど。いろんなものをバランスよく組んでいます」
たとえば、森の中でヨガをしたり、絵の具を塗った葉っぱを布バックに押してエコバックをつくったり。ほかにもたくさんあって驚いた。
それもそのはず。イベントは毎週末開催しているし、夏休みは毎日おこなう。
ECCOMが管理するようになって、リピーターのお客さんが増えたという。お客さんのためにもバリエーションを広げていきます。
今年からはじめたイベントについても教えてくれた。
「新しく『山の日企画』ということで、ひのきの生木を使って、皮を剥くところから杖をつくってもらいました」
「『さっそく孫とつくった杖をもって、御在所に登ってきたよ』って、イベントに来たおばあちゃんが教えてくれて。うれしかったですね」
来てくれた方の声が直接聞こえる環境のよう。
もちろん、自然相手の仕事だし、はじめての試みなら予想外のことも起こる。
「つくった時期は、なかなか雨が降ってくれなかったんです。空気が乾燥しているから木の皮が剥けなくて、苦戦しました」
そう話すのは、所長の川根さん。
「自然について常に新しい知識を身につけていくことも、何をすべきか自分で考えて挑戦していくことも必要です。同時に、そこがこの仕事の面白さでもあります」
どんな人が向いていると思いますか?
「やっぱりかなり少人数でやってるので、イベントだけでなく、一人ひとり受け持つ仕事の範囲は相当広いです。柔軟性のある人がいいかなと思います」と川根さん。
桝田さんはどうですか。
「アイデアを形にしていける人がいいかな。そうしたら、自然との触れ合いも、人との触れ合いも楽しめる仕事だと思います」
アイデアを形にしていく。
まさにそんな人だと感じたのは、ECCOMの理事でもあり、上野森林公園の所長を務める芝野さんです。
名刺を見ると、「ポジティブシンカーな薪割り人」「介護福祉士」とあって、何やらいろんな肩書きの持ち主のよう。
動物園の飼育員を37年勤めたあと介護福祉士なども経験してきた。
そんな芝野さんがはじめたイベントの一つが「ネイチャリングカフェ」。
科学について気軽に語り合う、サイエンスカフェという取り組みをヒントにしている。
「公園を訪れる皆さんは、もくもくと歩く人がほとんどです。でも、こっちから声をかけることで、公園で発見したことを教えてくれたりして」
「来てくれる人と話すことは、お客さんのニーズを引き出すことにもつながる。だから、イベントとして対話できる場をつくってみました」
今後も自然をテーマに、木こりやチェーンソーアート職人など、特技を持った方を講師に企画していくという。
芝野さんからはアイデアがポンポン出てくるから驚く。
まちのミュージシャンに出演してもらうコンサートイベント「森の音楽祭」では、移動式の足湯サービスをしているホテル経営者の方とコラボして、お客さんに足湯に入りながら音楽を聞いてもらう計画なのだとか。
加えて、伊賀市で行われたナイトフードマーケットの参加飲食店さんにキッチンカーを出してもらう交渉もした。
「遊びに行った先はアイデアの宝庫です。どんな時でもアンテナを張って、仕事に結びつけることができる人を求めています」
もちろん、アイデアを実現させていく過程で、県の施設としての制限が壁になることも。
「火の使用や、営業・物販がだめとか。でも、話し合いに持っていけば突破口も見つかります。できない理由をまず探すのではなくて、どうやったらできるかを考えられるかがカギです」
実際、県とかけ合うことで許可が下り、草木染めや燻製、ジャム作りといったイベントを開催してきた。
話を聞いていると、自然相手の仕事である以上に、人を楽しませる仕事なんだろうなという思いが強まっていく。そして、構想を形に変えていく力を感じる。
これからどんな場所にしていきたいか、聞いてみた。
「僕らECCOMのモットーは、『人も自然も笑顔に』すること。人も自然も笑顔になれる公園をつくっていきたいですね」
「今は、管理・運営がはじまって半年ほどなので、まだまだ公園を知らない人がたくさんいる。まずは、こんな公園があるのでどんどん使ってくださいとPRしていく段階です」
いま、市内の幼稚園では、自然の中で子どもたちを育てるプログラムのニーズが高まっているそう。
「そこを助けられたらいいね。場所は提供できるから」
「小学生や大人そして健常者だけではなく、未就学児や障がいをもった方にも公園に来てもらえたらなと思っています」
隣で聞いていた内山さんも反応します。
「公園はただ施設として置いておくだけではなく、社会のニーズで求められているものを提供しやすい場所なんじゃないかな。コンテンツは探せばいくらでもあると思う」
「みんなに広く知ってもらって。地域の拠点となって、人が交流できるような場所にしていきたい」
地域を発信する広告塔としての側面も担うECCOM。
デザインを通して地域と人をつないでいるのは、前回の募集を通して加わった、北住さんです。
「以前はデザインの仕事をしていたんですけど、企業商品の宣伝ではなく、地元の宣伝がしたかった。こういうところに来れば、地元の自然のPRができると思って」
現在はアートディレクターとして、ECCOMが運営するイベントの宣伝物やHPなどの制作を担当している。
働いてみてどうですか?
「地域の情報発信の仕方を見ていて、ずっと、もっとこうしたらいいのにって思っていました。それを、いま自分が変えているということはすごくうれしいです」
鈴鹿スカイラインで開催される「ヒルクライムチャレンジ」の広報物も手がけた。以前は600〜700人くらいの参加者だったのが、昨年は1200人にまで伸びて、結果を出している。
働き方も、以前とは違ったものに。
「僕の場合、事務所の外と中でかなりフレキシブルに仕事をさせてもらっているんです。子育て中なので、『これからお迎えで、ちょっと早く帰らして』っていうときも理解してもらえるのは、本当に助かります」
開園・閉園時間の決まっている公園の仕事でも、たとえば夜にイベントがある日は、担当スタッフは午後からの出勤にするなど、柔軟な働き方を心がけている。
「当然やるべきことをやって自分でも仕事をつくって、ある程度回せるようになってからの話ですが。それができれば、楽しくて仕方のない職場だと思います」
自由と責任は表裏一体。
自分で考え、行動していくことが求められる。
どんな人に来てほしいか、ふたたび内山さんにも伺います。
「本当に任せられるのであれば、自由にやってもらったらいいと思います。今回も、近い将来、所長候補になるような人材に来ていただきたい」
「予算は限られています。そのなかで、どう稼ぎをつくっていくか。稼いでくれたら、その分どんどん給料に還元していきたい。ビジネス感覚を持ち合わせて、本気で“自然”でメシが食いたいという想いの方に来てほしいです」
紹介しきれなかったけれど、いろんな方に話を伺いました。
各自が、持ち味を活かして柔軟に自分の仕事をつくっていました。
可能性を広げるかどうかは自分次第。
あなたなら、ここでどんなことをしていきますか。
(2016/10/07 後藤響子)