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「技術革新によってあらゆることが機械にとってかわられ、今ある仕事の6割はなくなると言われています。自分で仕事をつくらないといけない世の中がくる。そのとき、自分で考える力と、みんなで相談して協力できるコミュニケーション能力が必要になってくると思います。わたしは、未来を生きていく子どもに武器をもたせたいんです」そう話すのは、「未来舎」塾長の宮崎さん。
未来舎は徳島の板野にある塾です。
ここでは、子どもの「やりたい」という気持ちを出発点に、答えや解き方はあえて教えず、自分で考える力を育んでいます。
小学生の授業をうけておどろいたのは、子どもたちがしーんとしたなか、黙々と集中する姿。
「いろんな塾にいったけど、ここが一番たのしい!」という声も聞きました。
勉強を通して自分で考えること自体を楽しんでいる印象。
そんな未来舎では今、ふたつ目の塾を開こうと考えています。
そこでは注目が高まるプログラミングの授業も取り入れていく予定。
今回は、講師とアルバイトのチューターを募集します。
学校の先生になりたかったけど、ちょっと違うなと感じていたり、子どものためにあたらしいものに取り組んでみたいと思う人へ、ぜひ知ってほしい場所です。
未来舎へは、徳島駅から車で30分ほど。
まっすぐの道を進んで見えてきたのは、広い一軒家のような建物。
中庭では、早く来ていた小学生が塾の先生とバドミントンをしていました。
中に入ると、教室というより大きな家のような雰囲気。
はじめに代表であり塾長の宮崎さんにお話を聞いていきます。
「32歳のときかな。それまで主婦をしていましたが、自分に子どもができなかったことがきっかけで塾に勤めだしたんです」
4年経ったころ、勤めていた塾の塾長が辞めるからと運営の権利ごと任されたそう。
そこで名前もあたらしくし、23年前に「未来舎」を創立します。
「はじめるにあたって、一人ひとりの子どもをきちんとみる塾にしようという想いがありました」
「今も昔も大人や先生たちは“成績のいい子はいい子”というように、成績と人間性を一緒に考えてしまう気がします。それがいやで、もっと一人ひとりをちゃんと見て、その子に合ったアドバイスや褒め言葉をかけたいと思っていたんです」
未来舎の一クラスはだいたい20人、少数クラスでは10人ほど。
みんなと一緒に授業するけれど、内容はほぼ個別授業なんだそう。
それはどんな授業なんですか?
「たとえば数学だったら、先に解き方を説明して練習させるようないわゆる一斉授業は全くしていません。基本的にほうっておくんですね」
ほうっておく。
「そう。あんまり世話を焼きすぎると、子どもたちは自分で考えなくなるからね」
「数学のテキストは、はじめに例題があってその下に解く過程が書いてあるものを使っているので、子どもはそこを見て『なんでこうなるんだろう?あ、こことここを掛けてるからか』と、自分で考えてコツをつかむ。分からなかったら友だちに聞いたり、手を上げて先生を呼んでもらいます」
はじめに自分たちで、一ヶ月でどこまで進めるか、宿題はどのくらいやるかという目標と計画を決めるそう。
基本的にはすべて自分で進めて、ときどき先生を呼ぶくらい。
だから個別授業のような関わり方ができるし、ペースもそれぞれがつくっていける。
「問題も、何度間違えたっていいんですよ。大事なのは、自分で発見すること。うーんうーんと考えて『あっ、わかった先生!』っていう、そのときの子どもの目の輝きとうれしさ。それは、やり方を教え込んでテストで100点をとったとき以上のものがあると思います」
たとえクラスで一番点数が低くても、その子にとっては素晴らしい体験。
「だから数学を学ぶのではなく、数学『で』学ぶんです」
「ほとんどの人は、実際世の中に出たら数学は使わないと思います。じゃあなんで数学をやるかというと、それは、はじめてみる問題にチャレンジする精神や、どうやったらもっと早く正確にできるか工夫するといった、社会で生きていくのに必要な力をつけるためなんです」
何か問題が起きたとき、自分で考えること。それから周りと協力すること。
未来舎では、この2つについて勉強を通して教えようとしています。
そんな授業は、子どもたちにも好評なんだそう。
「頭を使うから脳がよろこぶんかな。子どもたちが『未来舎たのしかったー!』って言うて家に帰るから、親から『本当に勉強させてるんですか?』って聞かれることがあるんです(笑)」
「でも『お母さんは勉強を強要されたからいやになったんじゃないんですか?自分からやりたくてやれば違うかもしれませんよ』というと、たしかにそうかもしれません、と納得してくれるんです」
ところで、成績のほうはどうなんだろう。
続けてお話を伺ったのは、子どもたちに人気だった丸岡先生。
「成績をあげようと思わなくても、ちゃんと宿題をして、テストでできなかったところをフォローしたら中学の間はほとんどの子が上がります」
「解き方を丸ごと暗記させるやり方ではないので、すぐに点数はあがらないかもしれません。でも、その教科が好きになるから、成績はじわじわと上がっていくんですね」
そう話す丸岡先生は、もともと宮崎さんがはじめて勤めた塾の同僚。
宮崎さんとは、30年来の付き合いなのだとか。
「塾長はいいものはなんでも取り入れてみようという方なので、進化するスピードは速いです。『今度はコンピューターの導入ですか、今度は深呼吸ですか、えっ。次はプログラミングですか?!』という感じで(笑)」
「大変は大変なんですけど、いつも子どもが中心にあるのでやってみようと思えるんです。新しいことにチャレンジできるのは、楽しみでもありますね」
ここで、丸岡先生の担当する小学4年生の国語の授業を見せてもらうことに。
はじめに呼吸を整えたり、能力開発の簡単なプリントをしたり、ことわざのゲームをしたり。テンポのいい空気感で進んでいく。
とくに印象的だったのは、自分で解いていく中でわからない言葉や意味が見つかると、自ら辞書を使って黙々と調べている姿。
どうしてこんなふうにできるのだろう。
宮崎先生が、こう教えてくれた。
「興味がないものややりたくないことを無理やりさせるのは精神上よくない。だから、その子がやりたいと思うような言葉をかけたり、『する・しない』を自分で選択させるようにしているんです」
「たとえば、できない問題があったとき『どうする?やめてこっちやるか?』と聞いてみる。いやならやめてもいいし、『もう少しやる』といえば、『ほな頑張り』と言うこともあります。最後の判断は本人にさせるんです。そして、『その決断はよかったと思うよ』と言って絶対に非難しません」
そんな声かけは子どもの意志を尊重し、自分の言葉に責任を持たせることにつながる。
そんな彼らの選択を応援することで、やる気が引き出されるのかもしれません。
「だからわたしたちの仕事は真似ができないんです。いつも子どもたちの様子を観察しながら、『こういうとき、どう言う?』と考える。言葉のかけ方ひとつとっても、その子の性格、家庭環境、思春期に入ったかどうかなどの微妙なさじ加減が必要です。それは年数を重ねるほどわかってくる、匠の技なんです」
「最初はできなくて当たり前」という宮崎さん。
ここで、未来舎で一番若い三木先生にもお話しを聞きました。
「もともとだれかのためにはたらきたいという思いがありました。就活もしていたんですけど、大きい企業はそれだけじゃいられない。でもここは、何をおいてもまず目の前の子どものためという雰囲気がありました。そこが気に入ったんです」
未来舎の先生は、宮崎さんを含めて全部で5人。
そのうち2人は宮崎さんと丸岡さんの元教え子だそうで、職場は家族のような雰囲気だそう。
入ってみて、どうでしたか?
「先生方はオープンな感じで裏表がないです。いい人たちばかりで、とても居心地が良かったですね」
三木先生は、今年で5年目。
今は授業も一人でこなしているけれど、はじめはどんなふうに覚えていったんだろう。
「いきなり授業する、ということはないです。はじめの1年は先生方の授業のサポートにつきます。そこで未来舎の考え方だったり、子どもへの声のかけ方、飽きさせない雰囲気づくりなどを見て覚えていきます」
「授業のやり方にマニュアルはないので、自分たちで考える自由さはありますよ。とはいえ、土台はあるので、最初はそれを真似していきます」
授業の特徴のひとつとして、お互いが協力することを学べるよう、子どもたちがグループで進める時間がある。
「英語や公民、国語の授業だったら、わからない単語を調べるときグループでやります。もし協力がうまくできていない様子だったら『じっと座ってるだけだったら効率もわるいし、グループでしよる意味もないよね。どうしたらいい?』って促したり。そうすると、友だち同士で考えて進めていくんですよね」
そのうち「どこできてない?おわってないところやるよ」と子どもたち自ら率先して声かけができてくる。
「そういうふうに、子どもがだんだん変わっていくのを見ると、すごいな、って思います。宿題とかも、自分で考えて真面目にやりだすと、顔つきも変わってくるんですよ。そんな子が宿題をやらない子に『それやったほうがいいんちゃう』って言うようになったりしてね」
たいへんなことはないですか?
「部活帰りでヘトヘトになった子をどう集中させよう、とかは考えますね。でも、そんなことを考えるのは意外とたのしいんです(笑)」
それでもどうしたらいいか困ってしまったときは、授業がすべて終わってから開かれるミーティングで相談してみる。するとアドバイスをもらえるので、色々試しているのだとか。
「この仕事って、ずっとやり続けても完璧にならないというか。終わりがないんですよね。そんなところが面白いなって思います」
日々、子どもにむきあう未来舎。
宮崎さんは、こんなことを言っていました。
「何も用事ないのに未来舎に来て友達としゃべったり、バトミントンしたりする子もおるなあ。でも、それでいい。未来舎は、学校でも家でもない、子どもたちにとってリラックスできる一つの場所でありたいんです」
まるで家のように、大事なことを教えてくれる場所がありました。
(2016/11/7 倉島友香)