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みんな、何のために働くのだろう。「働く」の語源は「傍(はた)を楽にする」とも言われています。「傍」とは自分以外の他者のこと。
だから昔は、家のことを手伝うのも「働く」だったし、人のためになることは何でも「働く」でした。
現代のように会社に勤めて給与を得るだけでない、そんな「働く」がこの会社にはあると思います。

ここでwebマーケティング、充填機の組み立て・メンテナンス、営業をそれぞれ担当する人を募集します。
ナオミの社長は駒井亨衣さん。
よくナオミが本名だと勘違いされるけど、ナオミは駒井さんのお母さまの名前です。お父さまが会社を立ち上げたとき社名にしたのだそう。

といっても、そもそも『充填機』を知らない人が大半だと思う。
充填機とは、液体・粘体・粉体を容器に詰めるための機械です。
たとえば中小規模の食品工場で使われています。
よくテレビなどではビール工場のように全自動で商品がつくられていく映像が流れるけれど、それは本当に大きな工場だけ。いまでも食品業界の多くの現場では手作業で詰めています。
プリンをつくるときも、一つひとつ手作業で容器に注いでいく。ただ、毎回正確に測って小さな容器に詰めるのは大変だし、1日に1000個も2000個もつくるのは骨が折れる。
そこで充填機が活躍します。

「洗浄がすごく楽なんです。チューブだけを洗えばいいので5分くらいで綺麗になります。一般的な充填機は機械の中までバラバラに分解する必要があるので、洗浄に30分かかってしまうのです」
「そうすると最近は多品種小ロットの商品が多いので、別のものを詰めるためにその都度機械を分解・洗浄していたら、ものすごく時間がかかるわけですね。ナオミの充填機はチューブの付け替えだけでOKなので、1分後には別の充填をはじめられるんです」
掃除は楽だしコンパクトで使いやすいから、現場で働く女性の負担は少なくてすむ。機械の操作が簡単ということもあって、5人必要だったところが1人でまわせるようになったとう話もあったそうです。
卓上の小型充填機ではシェアNo.1のメーカーです。

なんとそれ以前、駒井さんはずっと主婦をしていました。
「自分が経営者になるなんて思いもしなかったですね。社会人になって最初に入った会社ではお茶汲みとかコピーとかばかりで、面白いと思える仕事はなかったです。だから仕事ってつまらないなって思いながら3年間過ごして、そのあとすぐ結婚して辞めちゃったんですよ。その次がナオミだったんですよね」
駒井さんは、つい想像してしまう“大阪の女社長”といった感じではなく、とても謙虚で物腰が柔らかい方だと思う。
2011年にお父さまから社長を引き継ぎ、新商品開発にも注力。1台で液体・粘体・粉体すべてを扱えるという革新的な充填機をリリースし、新たな主力製品となっています。

2014年に、駒井さんは充填機とはまったく別の新しいことをはじめました。
それが『学び舎 傍楽』。

駒井さんのお子さんが不登校になったことがきっかけでした。
「子どもが不登校になったことで、私もものすごく悩んで、お母さんを助ける場所とか、若い子たちが生きることについて話せる場所があったら、全然違ったんやろなって思って。だから、そんな場所をつくりたいと思ったんです」
「ひとりでも多くの人が楽に生きていけるようになって、まわりの人たちが、ちょっとでも笑顔になっていけたら、ほんの少しですけど日本を変えていけるんじゃないかって」
プロジェクトに賛同してくれた、NPOやボランティア団体の若いリーダーたちとともに、京都・烏丸の町家を借りて傍楽を構えました。
どこか、おばあちゃんの家のようで、ゆっくりしながら気軽に話せる場。
いざはじめてみると、意外にもたくさんの人が来てくれたそうです。
「来た人はみんな、絶対また来ますって言ってくれるんです。というのは、みんな自分の話をする場がないんですよね。自分のことを言葉に出すことで考えが整理されていくし、ほかの人の話を聞いてそういう考え方や人生でもいいんだなって思えて、楽になれたりする」
「ここに来たら誰かがいて、話をちゃんと聞いてくれて、何か一つでも自分が持ち帰るものがある。人伝えにどんどん人が増えていって、それでコンテンツも増やしていきました」

ルールは1つ、相手の話を否定しないで、話したいことをありのままに話す『ぶっちゃけ!(仮)』。子育てで悩んでいるお母さんや、未来のママ・パパを交えて話す『ママらく』。駒井さんとの個人セッション『駒井の、まぁおあがり』。高校・大学生向けに学校まで出向く『出前授業』。その道のプロフェッショナルを呼んで、働くことについて話してもらう『傍楽人』。
駒井さんは傍楽の主人として週に1〜2回通い、学生から社会人まで集まった様々な人たちと話し合います。
「私自身もものすごく価値観を変えられました。頭が柔らかくなりましたね。それがまた、会社のほうにフィードバックできるようになっていって、社員の子たちも傍楽のイベントに参加して多様性を学ぶんですね」
はじめは単なる社会貢献事業のつもりだったそう。急にはじまった傍楽に懐疑的な社員も多かった。ところが会社に活かすことができ、いまでは社員みんなが理解してくれている。
「傍楽が最大に貢献したのは川田ですね」

以前は“鬼の専務”として、社員の誰もが恐れる存在だったとか。
「『俺がルール』だったんです。企業を伸ばすために強引に推し進めていた。弱い=悪いことだと思って、僕は弱い者を認めない部分があった」
「たしかに、それで売上は上がりました。そうやって約10年全力で走ってきたけど、人生の豊かさをどこか捨てないとできないことだったんですね。でも、傍楽で多くの若者に出会いながら話をしていると、昔の自分はもっと純粋だったなということに気づかされて、いろんなことを受け入れられるようになりました」
ついこの前、営業社員が社用車で事故を起こしてしまったそう。幸い、誰も怪我なく済んだけれど、これまでなら川田さんの強烈なお説教が待っていた。
ところがいまは「モノなんていずれは壊れるし、お前が無事だったんだからよかったよ。次は気をつけなよって」。
社内では、どよめきが走ったらしい。
50代後半の、しかも会社で重要なポストについている人が、そこまで変わることってなかなかないと思います。
今後目指すのは、全国に傍楽のような場をつくること。賛同してくれた人に、傍楽でのノウハウを提供していきます。
「傍楽へ行くと実感するんです。今の社会に必要とされているなって。経済至上主義で世の中が回っているけど、みんな大事な何かを見失っている。けど見失ってるだけで、自分の今の生活に違和感を感じている。しかしそこにフタをして、みんな一生懸命に生きているんですよね」
「傍楽へ来て話すと、そのフタが取れるというか。正直な自分に戻っていく感じなんです」
webマーケティングを担当する田中さんも、傍楽へ通ううちに“フタが取れた”というひとり。
当時、田中さんは就職をひかえた学生。知り合いの紹介で傍楽に行ったことをきっかけに、傍楽に通うようになったといいます。

「それで、アルバイトも就活も全部やめちゃって、何も無くなって。家族や友達にも相談できないし、どうしようってなったときに助けてくれたのが駒井さんでした」
会社とはどんなものか知るためにも、ナオミでアルバイトしてみたらいい。そう言われてアルバイトをするうちに、ナオミで働きたいと思うようになった。
「働いている人がとても楽しそうだし、中途半端に仕事をするのではなくて、ナオミを成長させるために頑張っている人ばかりなんです。人の本気が伝わってきて。こんな会社を私は求めていたんだって。駒井さんに助けてもらった恩返しをしたいから、ここで働かせてくださいって伝えました」
最初は事務の仕事をしてみたものの、まだうつ病から完全に回復していないこともあってミスを連発。初の新卒採用で、まだ理解されていなかった傍楽からやってきた田中さんに対し、まわりの社員からは冷ややかな目で見られていたそう。
そこで試しに会社や傍楽のブログを書いてみたら、自分にとても向いていた。それ以来、田中さんはweb関連の仕事を任されるようになります。
これまで社内にウェブを担当する人はいなかったそう。たとえばホームページの分析なんて、まさに旧態依然としていた。
「ナオミってインターネットで『充填機』と検索すると1番目に出てくるんです。ただ、充填機という言葉を知っている人はとても少ない。たとえば、いちごジャムを瓶に入れたい人なら『いちごジャム 瓶 機械』で検索するよなって」
「それで『充填機』という言葉以外でも検索に引っかかるように、会社のブログのやり方を変えました。商品の紹介とか使い方の説明について書いて、毎日更新しました。そうしたら、充填機を知らない人でも調べたら引っかかるようになってきて、ブログからナオミのホームページを見て、お問い合わせが来るようになったんですね」

ベテランの先輩に教わりながら、自分でもセミナーなどへ赴いたりしてwebの力をつけていった。
目に見えるほど充填機の受注が増えていくうちに、田中さんに対する、ほかのスタッフさんからの見方が変わっていったといいます。
「いまは社員全員とすごく仲がいいです。仕事中も会話が多いし、プライベートな話もする。自分が違うなと思ったことも黙って遠慮するんじゃなくて、ちゃんと話し合ってお互いを理解するような風土があります」

「あと、生き方を学びたい人。こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、私ここで仕事だけをしている感覚ではなくて、考え方とか生き方を学んでいるんです」
「いままで自分に自信がなかったけど、この仕事をしてから『やるやん』『このデザインめっちゃええな』ってすごく褒めてもらえることが増えました。自分はここにいていいんだって、ありのままの自分を受け入れてもらえる場所は人生ではじめてで。恵まれているなと思うし、だからこそもっと成長して、ナオミのために働きたいと思っています」
みなさんは、何のために働いていますか?
本当の「働く」を、この会社では実感できると思います。
(2016/11/4 森田曜光)