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戦う料理人!

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「まずは『odori』でお昼を食べてもらってから。そのあとお話ししましょう!」

これは取材前に伝えられたこと。

どんな場所なんだろうと思いながら向かったのは、徳島県・美波町。

その名の通り美しい波が寄せるこのまちは、夏になるとウミガメたちが訪れることで知られています。

img_3786 豊かな海と山に愛された美波町に、産直レストラン「odori」ができたのは1年と少し前のこと。

産直レストラン「odori」は、出荷数、シェアともに、日本一を誇る徳島県の地鶏「阿波尾鶏」の専門店。もともと産直レストランだった場所をリニューアルして誕生しました。

阿波尾鶏を使った食事を提供する「odori kitchen」、徳島県南の産直品の販売を行う産直市「odori market」、地元の食材を使ったodoriオリジナル商品を開発・販売する「odori foods」の3本柱で展開されています。

img_0231 今回募集するのは、「odori」で働く料理人。

日々の仕込みや調理はもちろん、食材の仕入れから地元の食材を生かした新メニューの考案や加工品の開発、イベントの企画や運営をすることも仕事のうち。ここでは“ローカルフードファイター”と呼ばれています。

どうして料理人がファイターと呼ばれるのでしょう?

その答えが気になる人は、ぜひ続きを読んでみてください。



徳島空港から1時間半ほど高知方面へ車を走らせる。山あいの国道沿いにふとodoriは現れた。

img_3737 この日は平日、しかもあいにくの雨だというのに、店内に入ると地元の人たちでにぎわっていた。レストランスペースの脇に、地元産の野菜とドレッシングやジャムなどが並んでいる。おしゃれな道の駅のような雰囲気だ。

さっそくodoriのランチをいただくことに。

毎朝地元の農家さんが持ってくるという野菜をつけ合わせに、阿波尾鶏が主役のランチメニューはこの地域にしては少し攻めの価格帯だ。

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夕方までのランチ営業が終わるのを待って、林さんにお話を伺った。

img_3782 「全然かっこいい人間じゃないんですけど、本当にいいんですか」

開口一番、笑いながら謙遜してみせる。気さくで楽しい雰囲気の人だ。

林さんは埼玉出身。大学中退後は東京の居酒屋で和食を学び、その後手打ちのそば屋で修行して職人になった。

「東京にはすごい料理人がたくさんいるんですよ。そんな中で私は30歳になっても、自分はこうなりたいというイメージが強く見えなくて。今後どうしようかって悩んでいたときに、吉田さんにお会いする機会がありました」

東京で知人がやっていたラーメン屋に、odoriの運営を担うことになった吉田さんがよく来ていた。そこでの出会いがきっかけで、odoriのシェフ兼店長の仕事を打診された。

「吉田さんにはいろんなことを言われましたよ」

いろんなこと?

「『男は決断の回数だ』とか、『お前は超一流の中途半端』とか(笑)」

「何か自分の中でも変われるようなきっかけになればな、と思ってこっちに来たんです」

産直販売を兼ね備えたレストランをリニューアルする。阿波尾鶏を専門にする。オープンまで半年もない。自分はその店の店長になる。

その情報だけを頼りに、打診があって2か月後には美波町での生活をスタートさせた。

はじめてみてどうでした?

「つらかったです、とにかくつらかった」

つらかった。

「店づくりにあまり理想がなく来てしまったので、いざ『どうする林くん』って言われたときに『いや特に何も…』みたいな状態で」

「だから、こんな経験出来ないぞって言われながらも、つらくてつらくて。自分には何もないなって、何度も打ちのめされましたね」

料理人としての経験はあっても、お店づくりや運営の経験はなかった。産直品を扱ったことも、ましてや食材の生産者さんと対話をしたことも。

img_3722 リニューアル前までは野菜を持ってきてくれていた生産者さんの足がodoriから少しずつ遠のいていく。料理に力を入れただけでは野菜は売れない。スタッフとも何度もぶつかってしまった。

「そのうち心が折れても仕方ないなって開き直りみたいなのが出てきて。1年経つころにようやく周りが見えてきました」

何かきっかけがあったんでしょうか?

「オープン1周年を記念して、生産者さんを招いた感謝会を開いて、そこでクイズ大会をしたんですね。そのときに『この人ってこんな盛り上がる人なんだ』みたいな普段見れないような一面も見れたりして。生産者さんの『人』の部分ともっとちゃんと向き合わないとなって思うようになったんです」

それまでは無我夢中の店づくりで、生産者さんの顔を見る余裕さえなかったという。

「1年やってみて、ようやく「odori」ってこういう店なんじゃないんかなっていうことが分かってきました」

こういう店?

「毎朝食材を持ってきてくれる農家さんがいて、その人ごとに野菜の味が全然違うんですよ」

「農家さんがつくったものが調理されて食べることができる。美味しいなって思ったら、その場でその食材が買えて。そして、その食材を使ったドレッシングまでつくって販売してる。すごい面白い場所じゃんって。1年かかったけどやっと分かってきた」

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そのためにも「道の駅とはまた別のものじゃないといけない」と林さん。

「たとえば道の駅に置いてある食材と同じものだとしても、“odoriで売ってる、使ってるモノだから美味しい”っていう認識まで持っていけたらいいんじゃないかな。道の駅との違いをつくるのが仕事というか」

違いをつくる仕事。

「odoriにも道の駅にも卸している方がいるんですけど、その方の野菜は土からとてもこだわってつくってあって、ハッとするような美味しさがあるんです。odoriではその美味しさを、料理や商品にしてどうやったら伝えられるかを考えないといけないと思ってます」

1人で七転八倒した1年間を乗り越えて、林さんはお店の形をつかんできている。

「料理に向き合いつつ、食材をつくる人にも向き合って。それって結構大変。でもこんな辺境まで来てくれてる人に対してがっかりはさせられない。それは“戦い”なんですよね。毎日、真摯に」



だんだんと輪郭がはっきりしてきた「odori」。それは広報担当の小川さんが仲間に加わったのが大きいかもしれない。

img_3754 小川さんは半年くらい前からodoriの広報を担当し、今は商品開発や生産者さんを取材した冊子「yoridori」の編集、メディア対応など、林さんと二人三脚で「odori」の見せ方を考えている。

「商品開発を担当することになって、地元の生産者さんと一緒に新メニューやオリジナル商品なんてつくっていけるんかなって不安な部分も最初はありました」

「でも、ほんまにここ数ヶ月くらいで『こういうことなんかな?』って言うのを思い始めたっていうのはありますね」

こういうこと?

「マルシェに出店するために、ズッキーニのドレッシングをつくったんですよ。小林エイ子さんという方がつくったズッキーニを使って、林がレシピを考えたんですけど」

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そんなエイ子さんがつくった野菜は、純粋に味が濃くて美味しい。

一度に大量に収穫されて売り切れないズッキーニを、どうにかできればとodoriではドレッシングに加工することにした。

「エイ子さんは、最初は半信半疑で商品化に協力してくれたんですけど、マルシェ当日には綺麗な真っ青の着物を着て、マルシェに見に来てくれて。うれしかったですね。」

「実際に自分の野菜を使った商品が売られているのを目にしたり、お子さんから『お母さんの名前、テレビで出てたよ』とかっていうのを聞いて、今まで以上に生産者さんが積極的に食材を持ってきてくれる。その食材が料理人としての林の新しいアイデアを刺激する。生産者さんや林からも元気を感じられるようになる。こういうつながりを太く、大きくしていくことが地域を元気にするということなんかなっていうのを最近ぼんやりと感じていますね」

odoriに置いてある野菜は農家さんの顔写真や名前つき。お客さんの反応も見られる場所だから、つくり甲斐はひとしおなのだと思う。

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「食材や商品にまつわるストーリーは僕の企画とデザインで伝えて、生産者さんの悩みを解決できる場所、そういうプラットフォームみたいな場所に『odori』がなればいいなって思っています」

たとえば豆腐屋さんとodori。漁師さんとodori。odoriを通していろんなかけ算が生まれていけば、それが地域の元気につながっていく。

さまざまな角度から「食」を伝えるから、普通のレストランでは考えられないほど、やっていることは幅広い。

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モチベーションって何なのでしょう。

「地元の農家さんや漁師さんは野菜を育てたり魚を獲ったりするプロなんで、絶対的に美味しいものを育てるし獲ってくる。そして、ほんとに美味しい。だから僕たちも中途半端なものはつくってられへんなっていう想いがあるんです。そこは大きいですね」

「odori」のコンセプトがようやくかたちになってきている。今はたった2人でodoriの未来を考えているけれど、新たな仲間が加わることでより骨太にしていけたら。

どんな人と働きたいですか?

「林は普段は適当なこと言ったりするんですけど、「食」に対しては本当に真面目すぎるくらい真面目なんです。ぜひ、林みたいな「食」の変態に来てもらえたら(笑)」

新しく入る人は、料理人として日々の仕込みや調理が基本の仕事になる。広報の甲斐あって来客数は増えていて、店長の林さん1人では足りていない部分を補うodoriの大事な柱になるという。

最後に、なんで“ファイター”なのかを小川さんに聞いてみた。

「生産者さんの期待を超えられるように、地元の食材と常に戦いながら僕らは何かを生み出していくんですよ」

「食」との“戦い”。林さんの言葉と重なる。

「僕らはodoriのこと、地元食材のことを常に考えてると思います。楽しいです。ほんまにそう思いますね(笑)」

料理に直販、商品開発。いろんなアプローチの方法があるから、大変で考えないといけないことも多いと思う。でもこの2人と一緒なら、きっと真剣に楽しみながら働けそう。

odoriでは毎日、「食」との“真剣勝負”が繰り広げられている。

一緒に戦ってみたいと思えたら、ぜひ応募してください。

(2016/11/22 遠藤沙紀)