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どんなに住みたいと思う地域があっても、そこで生活をするためにはやっぱり仕事が必要です。そう考えると、地域やまちを元気にするためには、生活を営む人たちの仕事をなんとかすることが一番の解決策だと思います。
まちで働く一人ひとりを支援することが、まち全体を根本から元気にすることへつながる。
今回は、そんな仕事に関わる募集です。
まちの中小企業や起業家の相談に応え、継続的な支援を行う公的産業支援拠点『関市ビジネスサポートセンターSeki-Biz』。
ここで、企画広報コーディネーターを募集します。
名古屋駅から電車に乗って1時間ほど。
岐阜県関市は700年以上の歴史を持つ刃物のまちです。
毎年10月の2日間で開催される刃物まつりでは、人口の倍以上、約25万人もの人々が訪れる。世界でも有数の刃物の産地として知られています。
かつては日本一の名刀の産地でした。当時の刀匠たちが暑い作業のなかスタミナ源に鰻を食べていたことから、いまも市内には老舗の鰻屋が建ち並び、関市は「うな丼のメッカ」ともいわれています。
洗練されたものづくりと豊かな食の文化が息づくまち。
だけど近年、全国の地方都市同様に関市でもまちの活気が失われつつあります。
商店街を歩いてみても、シャッターを閉じたままのお店がちらほら。
関市経済部商工課の道添さんが幼いころよく通っていたお店も、今夏に閉店してしまったそう。
「プラモデルとかミニ四駆を買いに、バスや電車に乗って商店街へ行って。最後は満月堂で大判焼きや焼きそばを食べて帰っていたんです。子どものお小遣いでも買えるような優しい値段のお店で」
「いまはどこもお店が少なくなって、電車もなくなり、バスの本数も減りました。いまの子たちはああいう経験ができないのかなって思うと寂しいですね」
商店だけでなく、長年まちを支え続けてきた製造業者も苦戦しています。事業者数は県内2番目に多いけれど、一人当たりの所得は県内12番目。
いいものづくりをしていても、働いている人の給与はなかなか上がらない。
「事業者さんが元気になることで、関市全体が盛り上がっていく。これまでさまざまな経済政策を打ってきました。そんななか、最重要の政策としてはじまったのがSeki-Bizなんです」
Seki-Bizは、「行列のできる中小企業相談所」といわれる静岡県の富士市産業支援センターf-Bizをモデルに、関市主導で開設した中小企業相談所です。
事業者さんは1回1時間であらゆる経営相談を無料ですることができる。
Seki-Bizも当初は月30件の相談件数を目標にしていたところ、7月20日のオープンから10日間で73件もの相談が。その後も毎月約120件の相談者がやってきます。
リピーター率はなんと85%。口コミで関市外からも相談が入るほどの人気です。
従来の公的産業支援機関とは一線を画すほどの成果を上げているのは、なぜなのか。
センター長の杉山さんは「Seki-Bizが売上アップをテーマにしているから」だと話します。
「毎日ご相談を受けていて思うのは、事業者のみなさんはいろんな悩みをお持ちだけど、最終的には売上アップが問題だよねってことです。新商品をつくりたい、販路を増やしたい、経営をうまくやっていきたい。どれも売上アップにつながることなんです」
たとえばプラスチック塗装をするとある企業が杉山さんに相談にやってきたときのこと。
その企業の社長さんが席に座って最初に打ち明けたのは、会社の強みが分からないという話でした。
「自動車部品とかシャワーのヘッドとか、ああいうプラスチック製品に塗装をする会社さんなんですね。強みが分からないとおっしゃるのでいろんな話をうかがっていくと、とある大手自動車会社のミニバンのある部品を全量供給していると言うんですよ」
さらに話を聞いていくと、その部品を3年間ノークレームで供給していたことによって取引先が集約され、1社ですべてを任されるようになったらしい。こんなことができるのは全国でもその企業くらいだという。
「『社長、すごいじゃないですか!』と言っても『そうかな?』って。ほかにもお伺いしていくと、一般的な会社よりもたくさんの塗料メーカーとお付き合いがあるらしくて、大型から小型まで対応できて、それぞれに最適な塗装を提案できると」
「ものすごい強みがある。それをしっかりPRしていくことになり、今はずっとうまく運用されていなかったホームページを一緒につくり変えているところです」
どんなに経営が行き詰まっていたとしても、いままでお客さんがいたのには何か必ず理由がある。
1時間じっくり話を伺うなかで長所を見極め、売上アップにつながる最適な提案をするのがSeki-Bizです。
「ただそれ以上に、人を応援しているっていうのがベースにあるんじゃないかと思っていて」
そう話すのは副センター長の松浦さん。
人の応援ですか?
「この前、鍼灸院を開業された方がご相談にいらっしゃったんです。地元に戻って開業したけれども、無鉄砲に走り過ぎてしまう相談者を友人が心配して、Seki-Bizを紹介してくれたと」
「ご相談の内容は、地元で認知を広げていきたいということでした」
課題は明確なので、すぐに具体的なアドバイスができるかもしれない。でもSeki-Bizでは創業の経緯や動機を必ず聞くようにしている。
なぜなら事業をやるのは人だから。その人の動機や経験を大切にしている。
「お聞きしていると、実はプロスポーツ選手のトレーナーとして仕事をしていたとおっしゃったんです。開業する直前までは日本代表の女子バレーの専属トレーナーとして、リオ五輪にも帯同していたと」
ただ、地元を長く離れていたことで、この地域でやっていけるのか不安を覚えていた。それでも開業したのは、自分が育った地域でチャレンジしたいという強い想いを持っていたからだった。
「そのお話を聞いて真っ先にお伝えしたのは、『第一線で活躍している人が地元に戻って活動してくれるなんて、それは地域にとっても嬉しいことだし、あなたのことを必要としている方は絶対にいらっしゃいます』と」
後日、相談者さんから届いたメッセージには、こんな一文が書かれていた。
「いまの自分でいいんだと背中を押してもらい、光が見えてきた想いでした」
Seki-Bizには製造業に限らずIT・農業・飲食・NPOなど、さまざまな業種の人がやってきます。
起業を目指す若い人から、なかには経営が厳しくて決算書の紙袋を抱えてやってくる零細企業の社長さんまでいたりする。
数字の話になったとしても、最終的に向き合うのは“人”です。
「人口約9万人の小さなこのまちでも、素晴らしいことをされている方がいっぱいいる。その人たちの人生を応援している感じですね」と杉山さん。
人生を応援しているからには、安易な提案は絶対にできない。毎日相談を受けるためには覚悟と勇気が必要だという。
「それは事業者さんも同じです。だから僕らはその人の背中を押して『頑張っていきましょう』とモチベートし、決して上から目線ではなく、事業者さん目線でリスペクトして勇気づけていく」
「どれだけ向き合って、結果が出るまで添い遂げられるか。それが僕らの仕事だと思います」
事業者さんのモチベーションをあげたり、リスペクトの気持ちを持って向き合ったり。
その姿勢は、これから加わる人にも求められることです。
今回募集する企画広報コーディネーター。
大きな仕事のひとつが、Seki-Bizの“顔”となること。相談予約を管理し、日々やってくる事業者さんの対応からその後のフォローまでを行います。
そして、もうひとつがSeki-Bizをより広く広報すること。まだ開設したばかりで、必要としている人に情報がなかなか届いていない。
1回1時間の相談だけでなく、より相談者さんの役に立つイベントも開催していきたいといいます。f-Bizをモデルに2013年に愛知・岡崎ではじまったOKa-Bizでは、毎月さまざまな業界で活躍する著名人を招いたセミナーを行っていて、参考にしたり連携することもできると思う。
「トレンドを汲み取って企画していく仕事なので企画力が身につくし、SNSなどを使った広報も行うので文章や情報発信のスキルも磨かれていくと思う」
「世の中にはこんな仕事があるんだって視野も広がりますよ。それを若いうちに見られるって、ものすごい財産になるんじゃないかな」
ふたりの相談業務を間近で見ながら、ゆくゆくは自分も相談を受ける役割を目指すことも可能です。
「Seki-Bizを大きくドライブさせていくために、まず足回りをしっかりやってもらえる人が必要です」
予約管理や広報という言葉から引き立て役のようだけれども、とても重要な役割を担います。
「むしろ監督のような存在かもしれないですよ。僕らはプレイヤーなので」
たしかに、そのイメージに近いのかもしれない。先頭に立ってSeki-Bizをブランディングしていく役割もありそうです。
「きっとそうなると思います。f-Bizをモデルにしているところは全国に増えつつあるけれど、Seki-Bizのオリジナリティはまだ全然固まってない。そういうものも練り上げていかなきゃいけないです」
「正直、何もかも手探りなんですよね。僕も松浦くんも迷いながらやっている。一緒に悩みながら、こういうほうがいいんじゃないのって議論し合って、Seki-Bizを一緒につくりあげていく。一緒になって走っていく仲間が本当にほしいと思っています」
公的な産業支援機関と聞くと、なんだかハードルが高く、男っぽい世界にも思えるかもしれません。
けど、若い人でも女性でも大歓迎だといいます。実際にOKa-Bizでは堀部さんという若い女性の方が企画広報コーディネーターとして活躍しています。
情熱を持った人にぜひチャレンジしてほしい。ここでは書ききれなかったけれど、杉山さんや松浦さん、そして商工課の方々もいろんな熱い想いを持っています。
従来の日本の中小企業支援に一石を投じて、まちで働く人を元気にし、まちそのものを活性化していくBizモデル。
関市で一緒につくり上げる人を募集します。
(2016/12/17 森田曜光)