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長くずっと、いい関係

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

あのお客さまが10年前に買ったワンピースに、このブーツがきっと合う。

今回入荷したジャケットは、昨年デニムを買ってくれたあの方にお知らせしよう。

そんなふうに、お客さま一人ひとりの顔を思い浮かべながら、コーディネートを提案する。

35年間、お客さまとの関係を重ね、愛されつづけるお店が、高知県にあります。

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世界中からセレクトした、いいものを届ける、T.O

歴史と確かな技術をもつ職人やデザイナーこだわりの服をはじめ、バッグや靴、帽子、ジュエリーなど、それぞれの専門ごとに、いいものだけを扱っています。

長く、大切にしてほしい。

お客さま一人ひとりと向き合いながら、洋服を提案する人を募集します。

高知駅から路面電車が通る大通り沿いを歩く。左に曲がって少し行くと、大きなショーウィンドウの明かりが見えてきた。

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事前に伺った話だと、スタッフは2名。代表の方と3名でお店を回しているというから、正直、こじんまりとしたお店を想像していた。その予想は大きく外れた。

仕事帰りのお客さんだろうか、女性が1人お店に入っていった。

少し間をおいて、お店の扉をあける。

スケルトンの空間に、商品が静かに佇まう。

「こんばんは」と、スタッフの方と代表の岡崎俊秀さんが迎えてくれた。

さっそく、岡崎さんが店内を紹介してくれる。

「どうぞ触ってみてください」と言って見せてくれたのは、カシミア100%のセーター。

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触れると、軽くてとても柔らかい。

「昔の機械を使って、空気をふくむように編むから生地にストレスがかからないんです。だから着心地も肌触りもすごくいい」

「洗うこともできて、どんどん柔らかさが増します」

次に見せていただいたのは、1枚革でつくられた靴。

「継ぎ目がないようにシームレスになっていて。履きこむほどに刻まれるクタッとしたシワもなんともよく、手仕事のぬくもりを感じられます」

「指先も動くから、歩きやすいし血流もよく、健康にいい。不思議な靴ですよ」

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ほかにも、ドレス、デニム、ストール、手袋、ソックス。お店に並ぶ商品のすべて、それぞれの専門分野で、確かな腕をもった歴史あるブランド品をセレクトする。

もともとファッションが好きだった岡崎さん。高校生のころは高知で、大学時代は東京の原宿で洋服店のアルバイトをしていた。

そうしたなかで、ものを見る目や価値観を養っていった。

卒業後、一度は他の仕事をするも、やりたいことを仕事にしたいと2年後に独立。

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はじめは商社を通してインポートのセレクトをした。

世の中に出回っているのものではなく、まだ見ぬいいものを求め続けるうちに、直接買い付けに行くように。

ハンブルグ、ミラノ、パリ、フィレンツェ…。各地でショールームへ行ったり、作り手に直接会うことも。だから余計いいものを知るんだと、岡崎さん。

「職人である彼らは、大量生産・大量消費はしたくない。利益やリスクの計算よりもまず、自分が好きなものをつくるんです」

「感性と技術が、高いレベルで融合してつくられたものには、普遍的な価値観がある。そういうものを紹介したいですよね」

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どれひとつとして捨ててほしくない。大事に、長く愛用してほしい。

だから、T.Oではケア用品も揃えているし、リペアも引き受ける。

「カシミアシルクなどの服も、日常的に自分で洗濯できる、ニューヨーク発のエコなファブリックケアをおすすめしています」

「靴底の替えも、服の虫食いも。うちの商品だけじゃなく、ほかのお店の商品でもメンテナンスします」

20年前に買ったコートを直して、また着られるのをよろこぶお客さんもいる。

服を売るというより、ファッションを通して、お客さんの一生に寄り添うものを届けているよう。

お客さまにもスタッフにも、店内で心地よい時間を過ごしてほしいから、ぬくもりある空間づくりに、とことんこだわる。

店内の什器はすべて、大正・昭和初期の時代につくられた西洋和家具。

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日本の洋館に合うように、コンパクトな造りになっていて、簡単に配置をカスタマイズできる。

ハンガーは、黒いスエード素材。ラックも、六角に仕上げた真鍮のもの。

「ステンレスだと冷たい感じですよね。温かみを帯びながら、主役の服を引き立てる脇役を考えます」

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そして、商品を並べるときには、魂を込める。

ブーツには手を入れて、女性の足の形にそうように丸みを出す。スチームをかけるのも、自然な立体感を出すため。

「ワインみたいなものです。栓を抜いて空気に触れさせることで、ワインを目覚めさせる。職人の手の込んだ商品も、仕込みをすることで、そのよさが生きかえります」

こだわりのポイントを聞いていたら、あっという間に時間は過ぎた。

お客さんも、話をしながらゆったりと時間を過ごしたよう。

帰り際、「ありがとう、またね!」と声をかける岡崎さん。

お店も落ち着き、今度はスタッフの方に話を伺いました。

浜口詔江(のりえ)さんは、勤めてもう23年になるという。

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「長い付き合いのお客さまも多いです。独身のときから来てくれて、結婚して、お子さんを連れてまたお店にいらしたり。本物の衣を通して、よろこんでいただき、一緒に年を重ね、成長していける環境があります」

「それでいて、常に新しいセレクト商品やブランドを取り入れながら、T.O自体も進化していくというか。だからいつも新鮮な気持ちで、気づけば長い年月が経っていたのかなと思います」

仕事のなかでどんなことを意識していますか?

「お客さまのワードローブを把握してお勧めをしています。10年前に買ったワンピースに、新しく入荷したブーツが合いますよとか。あのときのスカートに、このタイツが合いますよって」

そんなに前まで遡って、提案するなんて。

ときには、お客さんの背中を押すような提案につながることも。

「結婚式に出席するときの服装に悩んでいた方がいて。そのとき、ピンク色のストールを提案させてもらったんです。きっとご自分では選ばない色だったんですけど、持っているあの洋服に合わせたら絶対似合うと思って。実際に結婚式に着て行ったら、すごくほめられたそうで」

「『自分ではチャレンジできなかったけど、買ってよかった』と、喜んでくださった。その声を聞くだけで、やってきてよかったなと思う。日々のなかで仕事の糧になっています」

お客さんとの付き合いが長いとはいえ、顧客は3400人もいるという。そのなかでも一人ひとりに特化した提案ができるのは、一体どうしてなのだろう?

すると、「こちらへどうぞ」と、岡崎さんが事務所スペースに招いてくれた。

「買っていただいた商品や、お店での会話から、お客さん一人ひとりのライフスタイルを頭に入れるための仕事を、ここでしています」

新しく入ったコートがあの人に似合いそう。今までのアイテムと照らし合わせてみると、こんな着方ができるだろう。今度こんなイベントがあると言っていたから、そのときにはこういうものを着て行ったらいいかもしれない。

「顧客3400人のうちの1人かもしれないけど、一人ひとりを見たら、たった一人のひとです」

「衣を通してお客さまと出会い、新しい衣のあり方にも出会ってもらう。その方と、長くずっといい関わり方をしてきたい。接客とは、人生そのものだと思うんです」

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顧客管理のほかにも、新しく入荷した商品はすべて、他のアイテムとコーディネートして試着をする。

そうして自分の感覚で着心地を確かめ、すべてを把握してから店頭に並べる。

それをふまえて、色や素材感といったお客さまの好みや、体型、ライフスタイルによってコーディネートの仕方を考える。

「仕事はむしろ、お客さんの前では目に見えない部分が多い」ともう一人のスタッフ、横田由美さんは話します。

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「地道な仕事があって、リクエストに応えるだけでなく、相手の予想を超えた提案につながる。日々の積み重ねが大切だと思います」

以前は、東京にある商業施設内のセレクトショップに勤めていた横田さん。

高知に帰ってくることになり、はじめはファッションの仕事からは離れるつもりだったという。

そんなときT.Oのショップに出会う。

「高知出身だけど、こんなお店があるとは知らなくて。それに、東京で勤めていたところとは接客のスタイルがまったく違っていました」

東京では、お客さんも流動的。その人がどういう仕事をして、どういう家族構成なのか、背景がわからないまま接客をしていた。

「何十年と続くT.Oは、お客さまとの付き合いも長く、距離が近い。まずは、ライフスタイルも含めてお客さま一人ひとりを知っていくところからのスタートでした」

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そんな横田さんも、勤めて7年目。今は2児の母として、子育てと仕事を両立させている。

けれど3名でお店を回していて、大変なことはないのだろうか。

「そうですね、これくらいの規模のお店で、3人体制という環境はなかなかないと思う。そのなかでも、産休や育休をとらせてもらいました」

「うちはノルマもなく、一人のお客さまもスタッフ間で共有して接客するスタイルです。担当制だと難しいけれど、協力してお客さまを迎える体制があるから、今も保育園のお迎えに行けたり、連休をいただいたりできていて」

2人とも、どんなに仕事が残っていても、20時には強制退社なのだそう。夏休みも2週間ある。

働く時間が限られる分、より集中して仕事ができるようになったといいます。

「東京で仕事をしていたときは、子育てしながら仕事を続けていくとは想像もつかなかった。でも、今はそれができている。応募する方が独身であっても、私生活も楽しみながら働いていけるお店なんじゃないかな」

「求められる質は一つひとつ高いものだけれど、だからこそ成長していける環境があります。ファッションが好き、人が好き、会話が好き。そんな人と、同じ方向を向いていけたらいいですね」

最後に、岡崎さんがこんなことを話してくれました。

「グローバル化の波が押し寄せるなかでも、本物の価値観を貫く。それが私の志すことです」

「衣をセレクトすること、お客さんとの関わり方を築くこと、働く人の環境を整えること。どれにおいても、本物の価値観にあった快適さとは何か?と考え、いい仕事づくりをする」

「そうすると、ものが売れるだけでなく、いい循環を生んでいく。それは、豊かなことだと思います」

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世界に誇るいいものを届ける。そして、お客さんとも仕事とも、じっくり長くいい関係を築いていく。

ここには、格好いい仕事のあり方があると思いました。

(2016/12/23 後藤響子)