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手仕事のよさって、どこにあるんだろう。ちょっとしたゆがみ、縫い目の不揃いさ。
完璧じゃないからこそ、つくり手の存在が感じられるところに面白さがあるんじゃないかと思う。
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運営しているのは、京都を拠点にフェアトレード事業をしている有限会社シサム工房。
ショップのほかにも、フェアトレード商品のオンラインショップや卸しもしている会社です。
「途上国に暮らす人たちと、よりよい形でつながって生きていきたい。仕事というよりも、生き方と重ねた生業のような感覚でいるんです」
そう話すのは、代表の水野さん。
お店に立って、そこに暮らす人たちのものづくりの風景や価値を伝える。
シサム工房にとってはじめての東京店舗で、販売スタッフを募集します。
新幹線で新大阪へ。この日は、東京店の店長になる方がいるというもりのみやキューズモール店を訪ねました。
大きなショッピングモールの中にある店舗は、一歩足を踏み入れると落ち着いた雰囲気。
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迎えてくれたのは、代表の水野さん。
「近くの『まちライブラリー』へ行きましょう」
そう誘われ、コーヒーをいただきながら話を伺いました。
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「学生時代にアパルトヘイトを知ったとき、純粋に怒りを感じて。市民活動などをしながら、発展途上国の問題にも目が向くようになりました」
当時は、差別を受ける人たちや弱い立場にある人を守らなければという意識があったそう。
「けれど、バックパッカーとして世界中を旅する中で、そんな環境でも当たり前に生きている、むしろ自分よりすごく逞しい人たちに出会って考え方が変わったんです」
荒んだスラム街でも子どもたちは転げ回って遊んでいるし、街角では若者たちが音楽に合わせて踊る。
また、山奥の電気の通っていない村では、水を汲んだりまきを集めたり、たくましく働くお母さんや、草をつないで縄跳びのようにして遊ぶ子どもたちとも出会った。
「そこには、笑ったり、ときに怒ったりする、なんでもない日常がありました」
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大学を卒業して働いたのが、エスニック雑貨店。そこの社長にバイヤーとして鍛えられ、色んなところに連れて行ってもらった。
「その過程で『もの』がすごく好きになったんですね。たとえば、アジアの民家の納屋にうち捨てられていた机。見つけたときはカビだらけでも、たわしで磨いていくと自然のつやが出てくるんです。しかも、ちょっとした傷跡なんかがまた、経てきた時間を感じさせるんですよ。そういうのが好きだなあって」
4年ほどバイヤーとして働くなかで、だんだんと場をつくりたいと思うように。
「自分がいいと思えるものを伝えたり、関心を持って来てくれた人と話ができる“場”をつくりたかったんです。さらに、フェアトレードだったら、途上国の人たちともいいかたちで繋がっていける。それで、お店というかたちになったんです」
「フェアトレードって聞くと、チャリティーのようなイメージがあるかもしれませんね。でも、しっかりとしたものをつくり、その後ろにある風景をきちんと伝えていくことで、新しいお買い物の形としての価値を感じていただけると思っています」
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京都を中心に、関西で7店舗展開しています。
シサム工房で扱う商品の7割は服。そのほとんどは自社でデザインするオリジナルです。
「はじめに世界フェアトレード機関に加盟している団体を訪ね、現地の方々がどんなものがつくれるのか技術を見せてもらいます。それをもとに、販売スタッフからの声をきき、社内でデザインした服の製作を依頼するかたちです」
関わるフェアトレード先の職人さんたちは簡単には変えず、できるだけ長く深い付き合い方をしているのだとか。
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「実は東京に出店する話は、前々からいただいていて。今回踏み切れたのは、自ら東京でやりたいと言ってくれたスタッフがいたからなんです」
そう紹介してくれたのが、いまもりのみやキューズモール店で店長をしている小林さん。今回募集する人が一緒に働くことになる東京店の店長になる方です。
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もともと社会問題や環境に関心があり、大学では国際問題を扱うゼミにいたそう。
「フェアトレードに興味を持ったのは、フィリピンのゴミ山での衝撃的な体験がきっかけでした」
そこには、世界中から集まってきた見渡す限りのゴミの中から、金属などのお金になるものを拾い、生活している人たちが住んでいた。なんでも捨てられているから発火もするような場所で子どもたちが走り回る。
「テレビや本では知っていたけれど、実際に行ったら呼吸ができないくらいにひどい異臭がして、自分の体にハエがわーっと集まってきて。正直、その場に居続けるのはしんどいと思うくらいでした」
帰国して、考えれば考えるほど大きな問題に自分の無力さを感じるように。
そんなとき、教授に教えてもらったのがフェアトレードだった。
「向こうの人たちがこころを込めてつくったものを、日本で販売することができて。それも向こうの人たちの力になるってきいたときに、それならわたしでも出来るかもって思ったんです」
友人たちからもシサム工房を勧められ、5年前に入社します。
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「実際はたらいてみて、フェアトレードを押しすぎない販売がすごくいいなと思いました」
押しすぎない販売?
「きちんと伝えることはするんですよ。でも、途上国で大変な背景があって…というよりは、向こうの人たちはこういう伝統的な技術があって、こんな雰囲気でつくっていて、ってもっとポジティブな説明ができるんです」
たとえば、本来見本の服には入っていなかったはずの刺繍が腕のところにひとつふたつプラスされているのを見つけたとき。
「商品開発の人に聞いてみると、『現地の人がテンション上がっておまけで刺繍しちゃったんだって』って。そんな小さなエピソードを聞くと、なんてかわいいんだ!って(笑)つい伝えたくなりますよね」
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「やっぱりフェアトレードが好きで、伝えていきたいって気持ちがあるからかな。だんだんお客さまと話すのが楽しくなってきました」
心がけていることはありますか。
「お客様に服をすすめて買ってもらうというよりは、どちらかというと相談にのってるような気持ちで接客しています」
「この人は普段どういう格好をしていて、今どういう気持ちでお店に入ってきたんだろう。相手にちゃんと興味をもって話をしようと思ったら、売るというより、お客様の話を『聞く』姿勢になるんですよね」
すると、自然とその方にあった伝え方ができるようになる。
あたらしく入る人も、小林さんのように「人」に興味がある人だとよいかもしれません。
「たとえば、ここがフェアトレードのお店って知らずに純粋に服を見に来られた方には、ものの背景より、まずは服のよさをお伝えすることが多いです。わたしが着ているワンピースをみている方がいたら、綿でできているので洗濯してもシワが残らないですよ、とか」
「迷ってるときに、実はこのプリントの模様はインドに雪がつもったらっていうコンセプトなんです、とさりげなく伝えたりします」
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「すると『あっ、そういうお店なのね』って。ちゃんと伝わると、商品をお渡しした後にもう一度お店の中を見て回ってくれるんです」
「よくよくタグを見てくれたり、『これもフェアトレード?どこでつくられているの?』って聞いてくれる方がいるのが、一番うれしいです。フェアトレードや向こうの人たちを知らなかった方にも、入り口が広がったんだなって」
そういった場をつくるためにも、最低限の知識は覚えなければなりません。
「そこがちょっとたいへんかもしれませんね。素材のウールや綿にどういった機能があるか、洗濯はどうするかなどの服のことや、もちろんフェアトレードについての一般的な知識も。今はよく知らなくても、興味が持てたら覚えていけると思います」
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とはいえ、みなさんスタッフ同士に穏やかな空気感があるような気がします。
「お店に立っていたらどうしても業務的な会話が多くなるので、会話の時間は大事にしていますね。聞いてみると面白いんですよ、いろんな個性があって」
なんでもない会話の中から、お店での企画やワークショップが生まれることもしばしば。
「この間は、このまちライブラリーをお借りして、“トゥルーコスト”という安価に大量生産・大量消費されるファッション業界のドキュメンタリー映画の上映会をしました」
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シサム工房が目指しているのはストーリーや価値を伝えていくこと。
それに沿ったことなら、お店とのバランスをとりながらやっていける環境があるようです。
どんな人に来て欲しいですか?
そう聞くと、水野さんはあらためてこう答えてくれました。
「ぼくがシサムをつくったのは、途上国に暮らす人たちとよりよい形でつながりながら生きていきたかったからです」
「同じように、一緒に働く人にも生き方とリンクする働き方をしてほしい。言ってしまえば、フェアトレードのことは今はじめて知ったとしてもいいんです。ただ、シサムの活動にどこか共感できたり、ここで学んでみたいと思ったなら。一緒に歩んでいきたいです」
遠い国の手仕事を想う。
シサムでつなげる人になってみませんか。
(2017/1/14 倉島友香)