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2011年に代官山にオープンした、代官山 蔦屋書店。はじめてここに入ったときのドキドキした気持ちを、わたしは今でも覚えています。
見たことのない外国の難しそうな本、装丁のすてきな本。いつもなら手に取らないようなものも、ここではジャンルを飛びこえて置いてあるから手に取りやすい。
コーヒーを片手に本を読めるスペースもあって、置かれた雑貨も気が利いていて。本に限らず、新しいコトやモノに出会える本屋さんです。
今でこそ自由な本屋は増えたけれど、代官山 蔦屋書店の影響は大きかったように思います。
代官山 蔦屋書店がほかの書店と一線を画している理由の一つに、フロアごとにいる“コンシェルジュ”の存在があります。
コンシェルジュの仕事は担当棚の書籍の選定に、関連商品の打ち出しやイベントの企画など。それぞれが培った知見を活かして、魅力的なフロアづくりをしています。
今回は“料理部門”で働くコンシェルジュを募集します。
求めているのは、医食同源や専門料理をテーマにしている“食”、手仕事や生活などをテーマにしている“暮らし”のエキスパート。
我こそは!と思えた方に、自分ならここで何ができるかを想像しながら読んでみてほしいです。
代官山駅から歩くこと5分ほど。
旧山手通り沿いに代官山 蔦屋書店はあります。
3棟ある建物の1階フロアは人文・アート・建築・カーライフ・料理・旅行の6つのジャンルに分かれています。
料理・旅行フロアのマネージャーが高野さんです。
「今までのTSUTAYAは、できる限り多種多様なバラエティに富んだ品揃えに力を入れていたんですけど、このお店に関しては置かないものや、やらないジャンルがたくさんあって。それぞれのジャンルに特化した物の置き方をしています」
目指すのは、TSUTAYAを使わなくなってしまった世代にも文化的な発見があって、ライフスタイルも提案できる場所。
たとえば料理フロアなら料理本に関する道具や食品など、置いてあるのは本に限らない。
TSUTAYAを運営してきたCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループの創業30周年を期に、新たな書店ブランド“蔦屋書店”の第1号旗艦店としてオープンした。
ライフスタイルを提案する6つのジャンルに特化した本屋にするためには、各ジャンルに精通するコンシェルジュの存在は欠かせません。
「いかにコンシェルジュたちの力を発揮させる環境をつくれるか考えています」
「彼らが言うことは本当に新しかったり、やってみないとわからないことがあったりします。それをどうやれるようにするか、お店の調整も必要になるので、葛藤しながら毎日やっていますよ」
知識や人脈、経験などを突き詰めているコンシェルジュたちを、うまくマネジメントして輝かせるのが高野さん。
そんな高野さんのことを「まるで珍獣使いですよ!」と笑うのは、料理フロアのコンシェルジュの一人、福島さん。
福島さんは料理フロアのなかでも“暮らし”ジャンルを担当している。
「今までやってきたことを、ここで集大成として体現できてますね」
そう言い切る福島さんがこれまでにやってきたことは、書ききれないほどさまざまです。
専門学校を卒業してから、インテリア雑貨を売る会社で販売のアルバイト、そこからディスプレイ担当となり、あっという間にその会社のテキスタイル開発で、インドやシンガポールでの仕事をまかされるようになった。
英語は高校で学んだきりだったけれど、ひとまずやってみるタイプ。福島さんは、自分がいる場所でできる仕事を探すのがとても得意だそう。
「私みたいな自分が強いタイプは、本社にいても駄目で。『出る杭は打たれるけど出過ぎた杭は打たれないんだよ』って、上司や周囲の人たちに言われてましたね(笑)」
そこで学べることがもう無いと感じたら転職。ハイブランドのファブリックの企画や販売計画、海外での買い付けも経験した。フリーランスになってからは、インテリアや手芸の仕事も請け負ったそう。
思い立って、数年間フランスに語学留学をしたこともあるんだとか。
培った知識や経験は、書籍の品揃えにも活かされている。
「たとえば刺繍の勉強はしてなかったけど、こういう書籍があったら面白いなって思って、レースの本を入れてみたの」
担当の手芸棚にハーダンガー刺繍という、ちょっとマニアックなレースの専門書を置いてみたときのこと。
「あるお客さんが『いつも手芸の本を買うときはここに決めてるの』って言うんです。『ほかの大きな書店に行けばもっといっぱいありますよ』ってお話ししたら『でもそこには私の探してたこの本はなかったの』って言ってくれた」
どんなふうに棚に置く書籍の選定をしているんですか?
「雑貨の世界でもそうですが、その中にストーリーをつくるのが大事」
ストーリー。
「同じジャンルの本を置くだけではありません。この本が好きな人だったら、ちょっとした料理系のエッセイがあってもいいとか、人文フロアにあるような本でも、ここに置いていいよねみたいな」
「マナーについて描かれた子供向けの絵本を、マナーの棚に入れたりだとか。そういうコンシェルジュのカラーをどんどん出していくのも腕の見せどころです」
自由にまかされているんですね。
「ただ、書籍やイベントの売上予算の管理もまかされるので、責任も大きいですよ。フロアのテーマから大きく外れていなければ、選書にタブーはないかな」
たくわえてきた知識や経験を書棚に落とし込みつつ、純粋に面白そうと思える本を組み合わせていく作業は、「編集に近い」といいます。
福島さんは、蔦屋書店で勤めはじめて今3年目。
フリーランスで請け負う仕事のつなぎにしようと、最初は週3回の書店員のアルバイトからはじめました。
一ヶ月ほどレジ打ちの仕事をしながら、整理整頓のルールづけや、倉庫に眠るたくさんの在庫の売り方を考えるように。前職でのディスプレイの経験や、インテリア雑貨の知識が役立ったといいます。
「そのうちに仕事がすごく面白くなって、週5日勤務にしてもらいました。やっていくうちにコンシェルジュの仕事をまかされるようになり『社員興味ある?』っていわれて。そういう働き方もいいなって。それで社員になりました」
3年働いてみてどうですか?
「蔦屋書店が各地にできはじめたことで人が減っていて。だから今はとても大変だけど、それでもずっと“面白い”は続いています」
福島さんを見ていると、本当に楽しそうです。
「楽しそうっていうのは、ただ単に楽しいだけじゃなくて。やはりある程度仕事の大変さをクリアしたからこその楽しさがあるでしょう?」
「格好いいだけの仕事がしたい人を求めてるわけじゃないんです。基本の仕事は本屋ですから。重労働で大変なことも多くて、それをこなしてもここで仕事をしたい。私はこういうことがしたい、というのがあってこそだと思う」
新しく入る方も、アルバイトからのスタートです。どうしたら福島さんのように働けるのでしょう。
「ステップアップしていこうと思うなら、頑張る力が必要ですね。勉強する力、我慢する力。チームで売り場をつくるから、コミュニケーション力もものすごく求められます。って求め過ぎかしら!(笑)」
軽やかに笑う福島さんのとなりで話を聞いていたのは、同じ料理フロアのコンシェルジュ後藤さん。
翻訳やナレーション収録のディレクターの仕事をしていた後藤さんの得意料理はフランス料理。フランスの文学や映画理論を学んだ延長で、フランス料理まで学んだそう。福島さんとはまたちがう、寡黙だけれど独特の雰囲気のある方です。
「料理という一ジャンルで専門性のある人材を探しています、というここの求人を見たときは、どういう人が来るんだろうって思って」
どんな人と、どんなことができるだろう。そんな好奇心からコンシェルジュに応募した。
「いざ面接のときに、『じゃあ後藤さんはここで何ができますか』って言われて。『えっ』ってなりました。最初はこれをやってください、じゃないのかって思いましたね」
なんと答えたんですか?
「フランスで3つ星シェフが新しい著書を出してすごく盛り上がっていても、その本を置く店って日本にはほとんどないんです。『少なくとも僕はそうした書籍を揃えられる。ここにシェフたちを呼べる、料理人の卵たちを呼べる、くらいですね』みたいなことを言って、今に至ります」
淡々と話しているけれど、すごいことです。
ときにマニアックな書籍も取り揃えているから、一流のシェフたちにも信頼されている。アラン・デュカス氏やピエール・エルメ氏のトークショーが蔦屋書店で実現したのも、国内外の著名なシェフがプライベートで訪れるのも、書籍の品揃えに信頼があるからだと思う。
イベントにはどうやって人を呼ぶんですか?
「コンシェルジュそれぞれがコネクションを持ってるんです。僕の場合はもともとの個人的なつながりもありますが、ここの売り場で話して知り合うこともあります」
「でも、それなりの目的意識と知的好奇心を持った人なら、最初からそんなにコネクションはいらないですよ」
先日は土井善晴さんの本の出版記念でイベントを行なった。もちろん関連した調味料や器も商材になる。
普通の本屋さんでは出会えないさまざまな業態の仕事は、興味を掘り下げられる人にとってとても面白いものだと思う。
大変なことはあるのでしょうか。
「どんどんオペレーションが変わっていくので、レジは大変かもしれないですね」
蔦屋書店のレジは世界一難しい!とのこと。でも、レジができれば第一関門突破です。
「あとはお客さんも、ふつうの本屋さんという認識では来られないので期待値が高い。知識にも正確性を求められます」
蔦屋書店のコンシェルジュは嘘はつきません。分からないことは分からないと正直にお伝えする。それは書棚のセレクトが万人受けを目指していないところにも共通しています。
最後にみなさんに、どんな人と働きたいかを聞いてみました。
「これでいいや、じゃなくて、これがいいやという視点を持てる人」
「好奇心を持ってる人がいいですよね。素直で勉強熱心だといいな」
お話をしてくれたコンシェルジュのお二人は、自分たちのことを“珍獣”と言ってしまうほど、パーソナリティも経歴もとても個性的。
お二人に共通しているのは、知らない知識をどんどん吸収したいという好奇心にあふれているところだと思います。
個性的な本屋さんで、一緒にどんなフロアをつくっていけるでしょう。想像できた方はぜひ、応募してみてください。
(2017/1/23 遠藤沙紀)