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人感じるまち 

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地域の人と、顔を合わせて語り合う。

それだけで、見知らぬまちが、知っているまちになる。

臼杵 - 1 大分県・臼杵市。

ここでは、宿泊を切り口に、人の顔が見える交流が生まれつつありました。

かつて南蛮貿易で栄え、400年前の趣がのこる城下町に宿泊する「町なか泊」では、夜はまちに繰り出し、地元の人と一杯。

城下町のあるまちなかから南へ足を延ばせば、有機栽培のさかんな農村部。田舎の暮らしに触れる「農泊」を通して、色んな人を受け入れています。

「知っている人ができたから、この町に越してきた」。移住者からは、そんな声も。

この町で会った人たちは、人と人が顔を合わせ、ゆっくり交流することを大事にしていました。

今回募集するのは、そんなきっかけを増やす人。

具体的には、まちに拠点を置き、人の交流を生む事業の母体をつくる人。農村部でのグリーンツーリズムをさらに盛り上げていく人の2職種です。



臼杵市へは、大分空港から車で1時間半。バスと電車を使っても2時間ほど。

最寄りの臼杵駅から20分ほど歩くと、石畳が敷かれた城下町が見えてきた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 歩いてみると、立派な武家屋敷や寺社もありつつ、味噌、電気、ブティック、居酒屋…と当時の建物をそのまま利用した、生活感ある店が並ぶ。

端から端まで歩いて15分もかからないコンパクトな城下町には、九州で最も大きくて古い味噌醤油蔵をもつ老舗のほかに、4つの酒蔵。

400年前にはじまった醸造業が今にも続いています。

すぐそばの海からは、トラフグやアジ、クログチ、カサゴなど、1年を通して様々な魚が水揚げされ、山からは旬の有機野菜が届く。

臼杵は、食の豊かなまち。

おかげで、城下町には質の高い飲食店が多く立ち並び、夜になるとまちの人も集まって賑わうそうだ。

「歴史的な城下町なのですが、わたしたちの生活の場でもある。観光地っぽくないので、『日本文化を日常の中に見たい』と訪れる海外旅行客もいるんですよ」

そう教えてくれたのは、協働まちづくり推進課の広瀬さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「そんなふうに城下町を訪れた人、ふらっと釣りに来た人、移住を考えている人も。泊まってゆっくりと滞在してもらうことで、まちの魅力を感じ、まちの人と交流してほしいなと思っているんです」

“交流”というテーマに至ったのは、臼杵市の農村部でさかんな農村民泊(以下:農泊)がきっかけだそう。

農泊とは、農村の家に泊まり、農業やその土地のご飯など、田舎の暮らしや人に触れる宿泊のこと。

「農泊で移住ツアーをしたところ、これまでに7組16名、参加者の約3割が臼杵への移住につながったんです」

「理由を聞いてみると『宿泊を通して、人とのつながりができて安心したから』と声があって。やっぱり、人を感じられることって大事なんだなと思ったんです」

同じように、臼杵の玄関口でもあるまちなかから、交流のきっかけを増やせないだろうか。

そこで「町なか泊」の構想が生まれます。

「今回交流事業を担当する人には、まずはどんな資源・課題があって、どんな運営が適切なのか。コンサル会社と一緒に調査するところから入って、事業母体を立ち上げてほしいです」

城下町では、民間でゲストハウスをはじめている方もいるし、農村部では2013年に立ち上がったうすきツーリズム活性化協議会(以下:協議会)も活動している。

連携をとりながら、一緒に進めていけると思う。



「先の農泊移住ツアーも、協議会の小金丸さんと協力して行ったんですよ」

そう言って広瀬さんが紹介してくれたのは、協議会を主に一人で切り盛りしている女性の小金丸さん。

臼杵の農村部・野津町(のつまち)にあるコミュニティハウスA・KA・RIを訪ね、話を伺いました。

「移住ツアーのアンケートには『行政と民間と地域のみんなが受け入れてくれる感じがしました』っていつも書いてあって。それは、わたしが活動する上でも感じています。臼杵の人は、役職や肩書きにかかわらず、みんなが横並びで交流をつくろうとしているんですよね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 小金丸さん自身も、3年前に移住してきた方。

大学を卒業後、グリーンツーリズム発祥の地といわれる大分県の安心院町(あじむまち)で1年半ほどグリーンツーリズムに携わり、一度出身である福岡市へ。都市で飲食店に勤めるも、やっぱり田舎に戻ってきてしまったんだそう。

「こっちのほうがわたしの肌にあっていたんです。…なんていうのかな、田舎に住んでいるほうがちゃんと人間らしく生きていけるなって」

人間らしく生きていける?

「都市って、たしかにお金があれば食べ物も買えるし、壊れたモノを買い換えることもできる。でも、田舎の人たちって、自分たちで食べ物をつくるし、モノが壊れたら直して長く大事に使うし、なければつくっちゃう」

「生活に必要なものを暮らしの中で賄っていけるんです。そういう生きる力が強い人が多いなと感じています」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 協議会に入ってからは、農泊受付などの事務作業、ウェブや新聞などの広報、あたらしい企画の立案など。

グリーンツーリズムの体制を整え、活動の幅を広げてきました。

現在30軒以上の登録があり、外国人旅行客や修学旅行生、企業研修など大人の農泊も積極的に受け入れています。

臼杵 - 1 (5) 暮らしに入り込む分、そこで感じたことは心に根付くものがあるという。

地元の銀行が企業研修に来たときのエピソードを話してくれた。

「40歳くらいの方かな。大人になって人の家に泊まるのは遠慮もあるし、コミュニケーションも得意なほうではなかったから、『実は、はじめはいやいや来たんです』とおっしゃっていて」

ところが「泊まってみて、ものすごくよかったです」と、農泊のイメージが180度変わったそうだ。

「銀行の仕事って定時でしょう。でも、農家は生き物が相手だからそんなの関係ない。長期的なものの見方や、その方の地域への想いに心動かされたそうです」

また、まちの人にとっても、外から来た人の声は意味のあるもの。

「すごくいい景色ですね」「お母さんのお漬物、すごく美味しい」。

それを聞いたお母さんも「じゃあ来年はもうちょっとウリを植えようかな」なんて。小さなことでも、次への活力になっている。

臼杵 - 1 (4) また、小金丸さんは、ツーリズムについてこうも考えています。

「ツーリズムと聞くと、観光を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。でも、わたしはツーリズムって、地域づくりでもあると思っていて」

地域づくり?

「この土地で暮らす人が、この先いかに豊かに暮らしていけるのか。たしかに外の人が来てくれることで変化も生まれるし、潤うこともあると思う。けれど、本当に何か困った時に助け合えたり、協力し合えるのは、やっぱりここにいる地域の人たちでしょう。地域の人たち同士がつながるきっかけもつくっています」

最近企画しはじめたのが、「種まく暮らし」というワークショップ。

農家さんが今でも当たり前につくる「竹かご」や「わら納豆」などを教えてもらいつつ、自分の暮らしに生かしてもらおうというもの。

臼杵 - 1 (7) 移住してきた方が企画に参加した後に直接竹かごづくりを習いに行ったり、出会った参加者同士で商品が企画されたり。

人と人が出会うことで、あたらしいものがうまれることも。

「そういう意味でも、この仕事って、つなぎ役なんです。まちの外とか中とか関係なしに、本当に必要な人たちを必要な部分でつなげていく。グリーンツーリズムとはいえ、臼杵全体を見ています」

今回募集するツーリズム担当は、小金丸さんの所属するうすきツーリズム活性化協議会と一緒に、グリーンツーリズムを始めとした臼杵のツーリズムを盛り上げていくことになる。

小金丸さんは、どんな人と働きたいですか?

「笑顔の素敵な、人が好きな人がいいですね」

「この仕事ってほんとに人ありき。だからイベントや飲み会など、私もできるだけ行くようにしているんです。はじめは、断らないことが大事かな」



もう一人、心強い臼杵の人を紹介します。

城下町でカフェとゲストハウスを民間で営む和気(わき)さんです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 昨年の春に家族5人で引っ越し、古民家を改装して「農民カフェ」をはじめました。

1階は、農業を料理で表現するというコンセプトのカフェ。2階には素泊まりのゲストハウスを用意しました。

「ここに泊まってもらって、夜はまちなかで飲み食いして、地域の人たちとふれあってほしい。初めての土地を訪れたとき、やっぱり人が重要なんです。人がいないと、その地域への理解は深まらないから」

和気さんも、自身が活動しているロックバンドのライブツアーで、見知らぬ地域へよく行っていたそう。

「地域で人と人がつながりを持とうというとき、“泊まる”ってことは大事だよね。人に出会えるし、まちの本質も見ることができる。それに、泊めることができるっていうのは、まちの懐の深さでもあり、本気度でもあると思うんだ」

「臼杵は、食や伝統など、よい素材が多い。イベントがあると人も訪れやすいし、楽しいだろうね」

飲み歩きツアー「酒場放浪記」の夜は、たくさんの人が来て盛り上がるそうだ。

臼杵 - 1 (9) 「まちなかをみんなで飲み歩くんだけどさ。臼杵の人は酒好きが多くて、半分以上は地元の人なのね(笑)ここも、夜空けておいたらたくさんの人が来たよ」

そんな中で、泊まりに来た人から「なにか体験したい」という声もでてきた。

そこで、和気さんは今、民間メンバーで臼杵市をまるごとつなぐツーリズムを考えています。

「まちなかは、電車、バス、フェリーなど、交通の面でも拠点になる。まずはまちに来てもらって、やりたいことに合わせて山や海でのツーリズムにつなげていけたらと思うんだよね」

「宿泊は、見方を変えれば腰を据えた試し暮らし。地域を知って人とのつながりができることで、移住にもつながりやすくなるんじゃないかな」

田舎に来れば当たり前かもしれないけれど、人を感じられるって、人間らしく生きるのに欠かせないことなのかもしれない。

まちでの交流事業も、グリーンツーリズムも。みんなで協力しながら、人を知ってつなぐことが求められています。

また、今回は、合わせて有機農業の協力隊募集もしています。

臼杵には、和気さんだけでなく、農業のために移住してきた人たちがマルシェを開いたり、自分たちで移住相談を担ったり。あちこちで動きが起こっていました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 人と人が交わると、何かが芽吹く。

そんなきっかけをつくってみませんか。

(2017/1/12 倉島友香)