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おいしいものが好きで、地域と関わる仕事がしたい。そんな人に知ってほしい会社があります。
株式会社バイヤーズ・ガイドは、食材・食品の生産者と百貨店やスーパーなどのバイヤーをつなぐ会社です。
社員数4名という規模ながら、官公庁や都道府県と連携し、地域のおいしいものが世に出るためのきっかけづくりをしています。
東京のオフィスを訪ねてお話を伺いました。
代表の永瀬さんは、もともとリクルートで求人情報誌の編集をしていた方。
29歳で個人事務所を設立し、後にバイヤーズ・ガイドを立ち上げる。
「『スーパーマーケット・トレードショー』という国内最大級の食品の展示会があり、8年前に公式ガイドブックをつくったんです。それがこの会社のはじまりでした」
中身を見てみると、写真と短い文章、生産者の連絡先などを添えた展示商品の紹介ページがカテゴリーごとに分けられ、並んでいる。
従来のガイドブックは各ブースの見どころを紹介する冊子だったため、展示会が終われば不要になっていた。しかし、商品の紹介冊子であれば、バイヤーは展示会が終わった後でも商品を探すことができる。
「展示会は出展者の数も多く、限られた時間内に人混みの中を歩いて探すとなると、本当に出会いたい生産者・メーカーさんのブースにたどり着くのは難しい。そのため、展示会の商談成約見込率は5%と言われています」
「弊社で商談会を運営する際には、バイヤーさんに商品が掲載された冊子を事前に見ていただき、『どこと商談したいか?』を聞くようにしています。その希望をもとにこちらで商談の時間割を組み、ミスマッチを防いでいます。加えて生産者さんに向けた事前の勉強会も開くことで、平均65%の商談成約見込率を実現しています」
成約見込率5%と65%の差は大きい。実際、全国の自治体から引き合いがあるという。
依頼の内容も、冊子の作成から次第にリアルなマッチングへと広がっていき、百貨店の催事や試食会を企画運営するようになってきた。
「この間は原木乾しいたけの試食会をやりました。林野庁の事業で、北海道から宮崎までの原木乾しいたけを集めて食べ比べたんです。香りや味がそれぞれ異なって、バイヤーさんからも『面白い!』と評判がよかったですね」
現在は海外への販路開拓支援も進めており、今後、事業拡大を目指しているそう。
さらに日本商工会議所の広報事業の一環として、民芸・工芸品や地域の着地型観光の情報を扱う「技」と「旅」の冊子を作成するなど、軸となる「食」からテーマも少しずつ広がりを見せている。
「『食』と『観光』って、実は密接に関係していて。食品は観光大使の役割を果たしていると思っています」
観光大使?
「わかりやすい例で言うと、東京で讃岐うどんを食べておいしいと思ったら、いつか香川へ行って讃岐うどんの食べ歩きがしたいと思いますよね。食べものと観光はセットなんです」
「弊社では、月曜や金曜の出張なら、プライベートで前後入りする人もいます。その地域をより深く理解するためにも、わたしはそれも大事なことだと考えています。食べものと地域が好きな人にとっては面白い仕事かもしれないですね」
バイヤーズ・ガイドのスタッフはそれぞれ担当の地域を決め、その地域の自治体とやりとりする、いわば“顔”となる。
「営業にいくと、『こんなことできない?』という要望が出てきます。実はそれが大きなヒントになる。みんなが地域を回るなかで意見を聞き、新規事業のニーズを掴んできている感じです」
昨年夏には、港区西麻布から千代田区一番町へとオフィスを移転。
ワークスペースのほかに、フリースペースを併設している。これも出張で地域を回るなかで芽生えた構想だという。
「『販路開拓をする上での営業拠点がほしい』とおっしゃる生産者さんやメーカーさんは多いです。そういった方々やバイヤーさんも活用できるような、コミュニケーションの場をつくっていきたいですね」
商談会や展示会ではどうしても堅い雰囲気が出てしまうというから、フランクな出会いの場をつくることで、また新たな事業展開の可能性も見えてくるかもしれない。
ここまでお話を伺ってみて、取り扱うテーマも事業領域も、少しずつ広がってきているように感じる。
その過程においても、ぶれない軸ってなんなのだろう?
「あそこにも書いてあるのですが」と永瀬さんが指差した先には「結」の文字。
「『結』。お引き合わせをして、売れるお手伝いをする、困っている人を助けるということ。要はおせっかいですね」
「わかりやすく言うと、うちの長尾とかはぴったりのタイプですよ」
そう紹介された長尾さんは、北陸・甲信越・中国地方を担当している方。
席に座るやいなや、長野のくるみを使ったお菓子を勧めてくれた。
「これ、食べてみてください!わたしたちのお菓子ランキングのなかでもかなり上位に入るおやつなんです」
味噌と砂糖でコーティングされたくるみは、まろやかな甘さでおいしい。
部屋の中央のテーブルの上には、ほかにも様々なお土産が並んでいる。出張に行くたびに何店舗も回り、厳選して決めるそうだ。
「小さいころからおいしいものが好きで。母は、手料理でおいしいものとか、手ごろでおいしいものを見つけるのがすごく得意でした」
地元・岡山から東京の大学へ出て、一人暮らしをはじめた長尾さん。
「はじめて自分で食材を選んだんです。そのとき、この食べものはどこからどういう経緯でここにきたんだろう?というストーリーにはじめて目が向きました」
「食」に加えて、「地域」への興味が膨らんだのも大学時代だったという。
「昔は地元を早く離れたかったです。けれども、大学の授業などの中で地域のおじいちゃんおばあちゃんの話を聞いたり、小さい子たちと一緒に遊んでいたりすると、地元愛のある人がたくさんいることを知って。『地元が好き』って言えるのもいいなと思ったんですよ」
「しかも地元の岡山県は、西粟倉をはじめ、移住者がどんどん増えているらしい。そういう話を聞いて、わたしが見つけられなかった地元のいいものを、外からきた人たちが見つけて楽しく活動しているのが悔しかったというか、羨ましかったんですよね」
就職活動で「食」と「地域」に関わる仕事を探していたとき、たまたま見つけた前回の日本仕事百貨の記事を通じて応募し、インターンを経て正社員になった。
「安定感を考えたらほかの会社のほうが全然いいんです。でも、安定したくなかった(笑)。言われてやるより、自分でやれる仕事がしたいなと思いました」
「小さい会社ですし、営業、編集、Webと担当が分かれているわけではないので、みんなそれぞれがなんでも屋さんにならなきゃいけないんですよね」
今回募集する人も、担当の地域を持ち、基本的には1から全部自分でやることになる。個人の裁量に委ねられる部分も多い。
ただ、わからないことがあれば気軽に尋ねたり、案件が立て込んだときには適宜補い合えるサポート体制を常にとっているという。
「正直、この冊子をつくるのはすごく大変です。原稿確認のために、1日に100件電話をかけたり、食品表示法と照らし合わせて問題がないか、細かい調整が必要なこともあります。それでも、こういうものができることで、その先によろこんでくれる人がいる」
「営業先にいつもこの冊子を持って行ってくれる農家のおじちゃんがいたり、ずっと電話でやりとりしていたバイヤーさんと商談会で会ったときに『ああ、あなたが長尾さん!いつもありがとうね』と声をかけてくれたりするのは、すごくうれしいことですね」
最後にお話を伺ったのは、北海道・関東・九州地方担当で、昨年の4月から部長に就任した山口さん。
前職ではメーカーの営業や企画部署を経験してきた。
今の仕事とはあまり関係がないように感じるけれど、やっぱり山口さんも「食べることが好き」なのだそう。
「土を触るのも好きで。東京の新島に畑と家を借りて、週末によく通っています」
「それに、いくらお金があっても何もできないということを震災が起きたときに感じて。お金以外のセーフティーネットとして、生命維持に必要な水と食べ物をいかに自給できるか、いかにネットワークをつくれるかが重要だと思っていました」
この仕事を通じて、実家以外の頼れる場所や、第二の両親と言えるような人とも出会えたという山口さん。
今は金銭ではない部分での安心感を感じているそう。
「わたしたちが接する事業者の方々には家族経営が多くて、暮らしと働くことが一緒くたなんですよね。そういう人たちと接していると、『お金のために働く』というよりも、『みんなで暮らしていくために働く』という感覚になってきます」
そんな山口さんの肝入りでつくった、新島の冊子がある。これもある意味、山口さんの暮らしと仕事が混ざった結果できたものだと思う。
「商工会との取り組みでつくらせてもらいました。文章も全部自分で書いて。島の特産品にくさやがあるのですが、見た目には違いがわからないので、生産者の顔写真を全部載せてみたんです」
「そうしたら、ある百貨店の担当者がこれを切り抜いて、ポップとして掲示してくれて。うれしかったですね。顔が見えると、売り上げが2、3倍変わってくるそうです」
食品の場合、このように写真ひとつで大きな差が出てくる。
東北6県の食品が集まる「伊達な商談会」の冊子をつくる際には、200ほどある商品をスタジオに3日間こもって撮影したという。
「全部の商品を送ってもらって、プロのフードコーディネーターさんに調理してもらい、同時進行でカメラマンさんに写真を撮影してもらいました」
撮影した写真は、すべて生産者に譲渡しているそう。
会社のはじまりとなった冊子から続いているのは、何事も一回限りにしないということかもしれない。生産者とバイヤーの関係も、いいものがつくられる仕組みも、先までを見据えてつなげたいという姿勢の表れなのだと思う。
「給料だけなら、割に合わないと感じる人もいるかもしれません。ぼくらは、それ以外のところで自分の資産がどんどん増えていくのを感じているから、楽しめているんですよね。いろんな人をつなぎ、自分もつながれるのは面白いですし、きっとそれはその人の資産になるものだと思います」
「食」を通じて人と人の縁を結ぶ。面白そうだと思った方は、ぜひ応募してみてください。
(2017/2/15 中川晃輔)