※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
インターネットの世界が広がっているなかで、志を持って新しいことに挑戦している人もいれば、なんだか結局は経営者のお金儲けの手段なのか、と思われてしまうこともある。個人的には、どうせ仕事にするなら思いを形にしたいと思います。
今回募集するのは、クラウドファンディングサイトMotionGalleryで働くエンジニアの募集です。ただ、この私ナカムラケンタも関わっている、誰もが映画を上映できるサービスpopcornの開発にも担当することになります。

MotionGalleryはクラウドファンディングサービス。その代表の大高と出会ったのは、2012年のこと。さらに自分がクラウドファンディングを利用することになり、MotionGalleryを使ったことで、お互いをよく知るきっかけになった。
MotionGalleryの特徴を説明するならば、クリエイティブな分野に強いということ。映画や音楽のプロジェクトでは、1000万円以上あつまることもあるそう。
なぜこんなサービスのはじめようと考えたのか。実は大高はもともと映画を撮りたいと考えていたそうです。

芸術と事業を同居させることは難しい。
だから「投資」を前提とした資金集めでは、はじめから実現が困難なものとなる。それなら「制作費の調達方法をもっと工夫できないか」と考えて、クリエイティブ領域に強いクラウドファンディングサービスMotionGalleryが生まれることになる。

これまで映画を自主上映することはとても大変なことでした。まずどれが自主上映できる映画なのかわからない。誰に問い合わせたらいいかもわからない。なんとかわかったとしても、初期費用がネックで上映を断念する人が多いことがわかった。
popcornはそれらを解決して、誰もが映画を自由に上映できる機会をつくるものです。

このアイデアを思いついたのは、この日本仕事百貨の採用面接でした。
ぼくはよく面談で聞く質問があります。
それは「もし今回の募集がなかったら、どんな仕事がしたいですか?」というもの。
なんだか揚げ足をとるようですが、そうではなくて、まずは本当にしたい仕事がどういうものなのか考える。そこから一緒に働くイメージをつくっていきます。
そのときに面談にいらっしゃったMさんはとても映画が好きな方でした。学生時代は映画のことも勉強していた方なのですが、ただ映画をつくる仕事は自分には向いていない、ということ。
それではどんな仕事がいいのだろう。じっくり聞いていくと「自分がいいと思う映画を紹介したい」ということでした。それなら映画館をつくるのはどうだろう?という話になる。
けれども映画館をつくるのは簡単ではありません。設備投資がとても大きなものになるし、世の中のスクリーン数は増えているものの、ほとんどが大手のシネコンです。小さな映画館はどんどんなくなっているのが現状でした。
それならば、と考えたのが自主上映でした。

全体の事業もうまくいきやすいだろうし、そこまで大きな設備投資も必要ない。ポップアップの小さな映画館が生まれることで、Mさんのような映画好きの方に新しい仕事をつくることができるかもしれないと考えました。
とはいえ、自主上映も簡単ではないことがわかりました。
まずどの作品を上映できるかよくわからない。それがわかったとしても、1回上映するだけで数十万円かかることもあるそうです。仮に10万円だとして、映画館と同じ1,800円の入場料だとしても60名近く集客できなければ赤字になってしまう。
自主上映会には100人以上集まるものもあるけど、ほとんどは集客の壁が高く、損益分岐点を超えることが難しいために、自主上映をあきらめることが容易に想像できました。
ただ、一方で映画の権利をもっている配給会社などの立場で考えれば10万円という費用は決して高いものではありません。その都度、ブルーレイディスクなどを送付して、期日までに送り返してもらう。それを一つひとつ確認するだけでも管理に手間がかかりますし、そもそもの作品の価値もあります。
とはいえ、このままだと大規模な自主上映しか成り立たないことになってしまいます。
面談のあとに頭に浮かんだのが大高でした。すぐに電話して概要を説明したら「難しいけれども、やってみよう」ということになりました。

映画は制作するだけでは完成しない。誰かに見てもらうことで、はじめて映画の意味が生まれると思っています。
MotionGalleryでは、数多くの映画の制作費を調達してきました。けれども製作しても、かならずしも十分な上映機会も約束されているわけではありません。
大高も次のように話します。
「最近は、映画の上映サイクルがどんどん短くなってしまっている。そろそろ観に行こうと思ったら、上映が終了していたり。多くの人がそんなふうに感じている映画がたくさんある」
MotionGalleryで映画の制作コストを調達し、popcornで上映する機会をつくれれば、と思ったのです。

popcornの仕組みを簡単に説明すると、映画を上映したい人は上映したい日時や場所を登録する。すると当日はストリーミングで映像を配信する。鑑賞したい人は参加したい上映会を探して、事前に決済して上映会に参加する。
結果として、上映した人には入場料から手数料を除いたものが支払われることになります。
エンジニアはサーバーサイドもフロントもわからなければいけないし、何よりネット決済やストリーミングなどについても知識が必要になってきます。
そんなサービスを、主導してつくりあげたのが、MotionGalleryの浜田さんです。
今はMotionGalleryとpopcornの両サービスの開発にも関わっています。今回、募集する人も同じように働くことになる。
「もともとソフトウェアエンジニアではなかったですね。電気電子工学科出身で、卒業してからはusb3.0のチップなどをつくってました。研究もしたかったし、世に出る製品もやりたかった」

そんな環境のなかで気づいたことがあった。
「自分は生産性が高くなるような、何か道具をつくるのが好きなんですよね。ITの仕事がいいのは、本来人間がやる必要がない仕事を、ボタンひとつで解決できること。そうやって便利になったらうれしいです」
そんな浜田さんがMotionGalleryと出会ったのは、友だちの紹介だった。はじめは別のスタートアップを担当していたので、その合間に手伝うところからはじまった。
それにしても、もともとソフトウェアエンジニアじゃなかったのにできるものなんだろうか。
「もともとrubyは書いたこともあったし、普段からプログラミング言語としては使っていたこともあったんで。ウェブサイトも個人で開発してたこともあったし、まあ、なんとかなるだろうと」
「たとえば、まったく違う分野、金融向けのシステムをつくっていた人が来たとしても、その人の能力が高ければキャッチアップできると思いますよ」
なるほど。そんな浜田さんが思う、この仕事の大変なところってどんなことでしょうか。
「やらなきゃいけないことが多岐にわたるんです。たとえば今はAWSというアマゾンのサーバーを使っています。単純にリナックスのサーバーを扱えればいいんですけど、その知識は必要なのと、あとrubyですよね」

さらにpopcornには動画配信の技術も必要になってくる。
「すでに再生に関して必要なことは実装していますから、それが理解できれば大丈夫。なによりも大切なことは、必要に応じてキャッチアップできること」
知識もそうだし、日々起きることに関しても、柔軟に乗り越えていく必要がある。
たとえば、MotionGalleryでは、知らない国からサーバー攻撃をされることがあった。
「夜中の23時頃でした。普段はでることもないエラーメッセージが出て。ニュース番組でサイトが取り上げられたのかと思ったけど、それにしても多すぎる。調べてみると特定のページへのアクセスが多いし、攻撃しているのもルーマニアやドイツからだった」
ちょうどそのとき捕鯨に関する映画のクラウドファンディングをしているときだったようで、それが狙い撃ちされた。
浜田さんは一旦、ヨーロッパからのアクセスを遮断する。
「それで落ち着いたんですけど、何度も同じ場所からリロードするアクセスははじくという設定に書き換えました。このようなnice to have な機能や対応も、優先順位を判断しなくてはいけないですが、その判断が突発的に入れ替わることもときどきあって、スタートアップならではの柔軟さが求められますね」
そんなことはよくありますか?
「ほとんどありませんよ。まあ、あとはサーバーを移したときは大変だったかな」
「popcornの場合だと、大変だったのはDRMですね」
DRM?
「digital rights management。ユーザーが映像をストリーミングして、再生できるようにしつつ、映像を守ための技術です。はじめは既存のサービスを利用しようと思ったんですけど、ぼくらも権利者も納得できるものがなかったんです」
「まあ、ほかの人がやっていることなら、技術とお金をかければ自分たちでもできるはずだと思って調べてみたら、なんとかなった。ぼくも専門じゃなかったけど、調べる能力があればできるんです。ドキュメントを英語で読めるのは必須だけれど、今はグーグル翻訳があるので」

ぜひ映画の世界をより良くしていきましょう。映画版Airbnbを目指して、日本も飛び出しましょう。
(2017/2/10 ナカムラケンタ)