求人 NEW

ひっくり返せ、価値観を

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

少子高齢化、医療福祉、インフラの整備、地場産業の衰退など。

地方はたくさんの課題を抱えています。

教育においても、新しい設備やシステムは都市部から導入されていくことが多いため、地方にいくほど格差は広がるという見方が一般的です。

けれども、課題にあふれた環境で学ぶことって、本当にマイナスなことばかりでしょうか?むしろ、誰も正解を知らない課題に対し、年齢も学歴も関係なくチャレンジできる学びの現場と捉えると、従来の考え方とは真逆の価値がそこに見いだせないでしょうか。

山口県長門(ながと)市。

今回は、このまちに新たに開設される人材育成拠点のマネージャーを募集します。

行政とともにこの事業を進めていくのが、株式会社ドワンゴ。ニコニコ動画をはじめ、音楽配信やゲーム、イベントなど多方面に事業を展開する総合エンターテインメント企業です。

地方の新しい教育現場を一緒につくりませんか。

山口宇部空港からレンタカーで1時間半。南から北へ山口県を縦断するように進み、長門市内に入った。

暖流の流れ込む日本海側に面し、温暖な気候と豊かな漁場に恵まれたまち。

一昨年、アメリカの放送局CNNの「日本で最も美しい場所31選」に選ばれたことで話題になった元乃隅稲成神社や、ダイバーに人気の青海島、漁火が幻想的な風景を織りなす油谷地区の棚田など、ピンポイントにめがけてくる観光客も多い。

棚田漁火01

一方で、地方自治体ならではの課題も抱えている。

市内に3校あった公立高校は、統合されて1校に。農業科や水産科があるとはいえ、第一次産業の担い手不足は深刻だ。

有効求人倍率は約1.5倍と、働き口はある。しかし、若年層の地元定着率は一向に上がらない。

「人口減少に歯止めをかけ、魅力ある地場産業を育成する。『ひと』と『しごと』のハブとなるような拠点を整備していきたいんです」

そう話すのは、長門市役所の吉村さん(写真左)。同じく長門市役所の高橋さん(写真右)とともに話を聞いた。

P1540746

高校の同級生で、ラグビーをやっていたお二人。

福岡と名古屋の大学にそれぞれ進み、就職のタイミングで地元に戻ってきた。

「くされ縁ですよ」と吉村さん。

「『役場の採用試験、おれ受けようと思うんだけど、どうするの?』って高橋くんから連絡がきてですね。おれもじゃあ帰ろうかなっていう、そんなノリでした」

もともと、地元に帰って何かしたいという気持ちはなかったという。

「でも帰ったら帰ったで、自分のところを良くしたいって思うじゃないですか。楽しくやろうよって」

地元のラグビーチームに参加し、週末は決まって練習からの飲み会。関西トーナメントでは、クラブチームのなかで2番めの強さにまで引き上げた。

その後も出身地である油谷地区で「ゆやアウトドアクラブ」を立ち上げるなど、仕事以外でも長門での生活を楽しむお二人。

アウトドアƒ–

「住めば都ですよ」と話すのは高橋さん。

「あるとき地域おこし協力隊の女の子が、『休みの日は何するんですか?』って言ったんよ。『え、なんで?』って聞いたら、『カフェもデパートもないでしょ。何もすることないじゃないですか』と言うわけです。『別にすることいっぱいあるぞ』って」

「草刈りやら、地域活動もいろいろあるしさ。趣味があれば、釣りに行こうとか。別に買い物だけが楽しみじゃないし、なんだかんだでけっこういそがしいんですよ(笑)」

食べ物はおいしいし、人もやさしい。中学生まで医療費が無料だったりもする。

いいところがたくさんあるのに、地元の若者や市外の人たちに届いていないのが大きな課題だという。

そこで長門市では、役場内に4つの研究チームをつくり、さまざまな対策を講じている。

「たとえば何かお土産をつくりたいと思っても、個人事業では十分な設備がなくてつくれない。そこで、誰でも商品開発ができるようなレンタル制のラボを今つくっているんです。自動車の部品工場が空き物件となったので、その跡地を有効活用してね」

ほかにも、補助金をつけることで新規開業のハードルを下げたり、民泊やふるさとワーキングホリデーといった事業を推進したり。

市内外の「ひと」と「しごと」を動かし、交流させるような仕掛けを打っているという。

ワーキングホリデー(横長)

そんななか、ドワンゴとともに推進していくのが、新たな教育の拠点づくりだ。

今度は吉村さんが説明してくれる。

「ドワンゴさんのノウハウを活用して、たとえば都会に出なくても仕事ができるようなITのスキルを身につけたり、学びながらインターネットで長門市の情報を発信したり。そういったことを実践できる拠点をつくっていきます」

2016年4月、ドワンゴは専門領域であるインターネットと通信制高校の制度を活用した新たな学校『N高等学校(N高)』をスタートした。

生徒はPCやスマホを使って自分のペースで学び、高校卒業の資格を得ることができる。また、基礎科目に加え、プログラミングや全国各地の自治体と連携した合宿型の職業体験など、実践的なカリキュラムを受講できるのも特徴だ。

学校生活に馴染めない子や、通学に時間のかかる地域に住んでいる子にとって、場所を選ばず遠隔で学べることのメリットは大きい。

ただ、人との出会いや実践のなかで学べることもある。ネットとリアル、両面の学びを促進していくのが、教育拠点マネージャーの役割となる。

実は、ドワンゴが地方に教育拠点をつくるのは長門市がはじめてではない。鹿児島県長島町では、すでに「長島大陸Nセンター」が開設されている。

その所長を務める神明(しんめい)さんがちょうど長門に来ているということで、話を聞くことに。

P1540786

「最初はそれこそ影も形もないところからNセンターを立ち上げました。ロゴをつくり、内装を考えて」

長島町役場の最上階、全面ガラス張りの空間。カフェのようにくつろげる空間をイメージしたそう。

「予算も限られたなかでしたけど、“机と椅子を並べて、教える人がいる”っていう旧来型の教育施設にはしたくなくて。デザイン会社と一緒にこだわってつくり込みました」

Nセンター

今回募集する人も、神明さんのように0から拠点を立ち上げていくことになる。

「縮小均衡していく地域に合わせて、高校の劣化版をつくっても仕方ないんです。地方と都会の教育格差を埋めるんじゃなく、ある点ではひっくり返していかないと」

ひっくり返す?

「たとえば高校生が介護や福祉について興味を持ったとき、都会では〇〇病院にアポを取って、とか。ハードルが高いですよね」

「地方なら『あそこのおばあちゃんが介護のサービス使ってるみたいだから、ちょっと話を聞いてみよう』って、その日のうちに会いに行けたりする。課題の現場が身近なことこそ、これから地方の価値になっていくんじゃないかと思っています」

長島町日常風景

そんなふうに話す神明さんは、もともと大阪の田舎町出身。小さいころから、早く地元を出たかったという。

「DeNAという会社に就職して、ゲームをつくる仕事をしていました。VRやドローン、最先端のテクノロジーに触れながらの仕事は刺激的で面白かったんですけど、ある日、渋谷のマンションのなかでふと思ったんです。『自分は何をしてるんだろう』って」

目の前に広がるバーチャルの世界。その先に何千万人のユーザーがいるとはいえ、人の存在を直接感じられない仕事に違和感を覚えはじめていた。

「ちょうど一回帰省したとき、感じるものがあって。あまり言葉にできないんですけど…。田舎もいいじゃんって、そのときはじめて思えたんです」

思い切って会社を退職し、まずはいろんな人の話を聞こうと決めた神明さん。その1人めに選んだ相手が、前長島町副町長の井上貴至さんだった。

「前に一度だけ会って、Facebookでつながっていたんです。東京にときどき来ていることは知っていたので、『一度会いませんか』とメッセージを送ったら、『え、長島町来ないの?』という話になって」

そこからの展開は早かった。

実際に長島町を訪ねた神明さんは、井上さんからNセンターの所長を打診される。一度は迷ったものの、現場を経験したいという想いで移住を決意。東京のど真ん中である渋谷から、人口1万人の長島町へと飛び込んだ。

「IT企業で教育に関わりたくて悶々としている人って、実はいっぱいいるんですよ。そういう人はいいかもしれません。逆に、のんびりと田舎暮らししたい人は難しいと思います」

長島町のNセンターでは、具体的にどんな活動をしているのでしょうか。

「プログラミングや職業体験のプログラムをつくっては実施しています。たとえば、地元の事業者さんのもとで5泊6日のホームステイをさせてもらう代わりに、その方の商品のホームページをつくる『島TECH』というものがあります」

事業者さんと寝食をともにしたり、仕事を手伝ったり。高校生たちは、6日間の経験をホームページに落とし込んでいく。

PICT_20170117_090431

「ぼくは、いろんな要素を混ぜ合わせたほうがいいと思っているんです」

混ぜ合わせる?

「単にホームステイするよりも、ホームページをつくるというミッションがあることで、そこに主体的な意味合いが生まれます。生産過程を知らないとページがつくれないとなれば、仕事を手伝う意識も変わりますよね」

Copy of pc

地方には、想いを持ってすごい商品をつくっていても、パソコンはまったくわからないという人がたくさんいる。

一方の高校生たちも、やさしく受け入れてもらうだけでなく、対等な関係のなかで責任を持って取り組むため、深い学びにつながる。

一見地味なようで、そこにはちゃんとしたマッチングが成立している。

「長期的にとか、後々ではなく、その都度地域に還元していくことが大事かなと。島TECHで言えば、ホームページが残ることで事業者さんに喜んでいただける。ぼく自身もNセンターに関係なく、子どもに勉強を教えたり、農作業やふるさと納税の仕事を手伝ったり、いろいろやってきました」

勝手に長島町のPR動画をつくったり、家の裏山に映画を投影してみんなで観たり。

楽しみつつ、まずこちらから“ギブ”することで、地域に入り込んでいく。

裏山シアター

そうして信頼を得ていくことで、できることの幅も少しずつ広がっていくのかもしれない。

「この目に見えない活動を、いかに理解してもらうかですよね。先進的で尖った取り組みである以上、伝える難易度は高いし、まだまだ理解を得られないこともあります」

「そのなかでドワンゴや行政のみなさん一緒に試行錯誤しながら、拠点をつくりあげていく。めちゃめちゃ大変でしょうけど、そんな仲間が増えることをぼくも楽しみにしています」

この拠点づくりに関わるみなさん、かなり気合が入っているようです。

地道な積み重ねが、世のなかの価値観をひっくり返す。そんな仕事に携われるチャンスだと思います。

(2017/3/27 中川晃輔)