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全国に約3600校ある公立高校。少子化が進み、毎年約60校が統廃合で廃校になっているといわれています。10年以内には6校に1校がなくなってしまう計算。
東京のようにたくさん学校があったり、電車で通学できるような地域はそこまで影響はないけれど、その地域に1校しか高校がないような離島や中山間地域にとっては、まさに死活問題。
その地域に唯一の高校がなくなると、子どものいる家族は都市部へ引っ越してしまう。人口流失が大幅に増加し、地域は衰退の一途をたどります。
そんななか、魅力ある高校づくりによって全国・海外から学生を募り、教育改革によって地域活性化を目指す「高校魅力化プロジェクト」が全国各地ではじまっています。

北海道利尻島・羽幌町、新潟県阿賀町、長野県白馬村、大阪府能勢町、岡山県和気町、広島県大崎上島町、熊本県甲佐町、沖縄県今帰仁村・久米島町…
さらなる地域での展開を控え、今回は高校魅力化プロジェクトに参画してくれる人を募集します。
年齢や経験は問いません。教員免許を持っていなくても大丈夫。教育に限らず、地域づくりや他のことに関心のある人も大歓迎です。
高校魅力化プロジェクトによって、地域と教育が変わっていく。そのプロセスを最前線で経験できると思います。
東京・銀座のコワーキングスペースLeague。
ここで、高校魅力化プロジェクトを全国に広めている株式会社Prima Pinguinoの藤岡さんに話をうかがいます。

一時は廃校の危機に直面していたこの高校は、高校魅力化プロジェクトによって一躍人気校になりました。全国のみならず海外からも入学生がやってきて生徒数は2倍に増加。進学率も大幅に増加し、子ども連れの移住者が増えています。
藤岡さんは隠岐で高校魅力化プロジェクトのメンバーのひとりでした。
「隠岐島前高等学校の様子を見て、私たちもやりたいといういろんな自治体が増えているんですね。たとえば長野県白馬村。白馬といえばスキーですよね。最近はオーストラリアなどからやってくる外国人の移住者が多いんですよ」
「そういった地域特性を活かして、英語と観光を学べる国際観光科を新設しました。入学生徒数は2年間で50名から77名に増えています」

「実際に成果は出はじめていて、沖縄では琉球大学に合格することがひとつのステータスなんですね。久米島では毎年1~2人受かればなといったところが、昨年度は4人受かった。町長に聞いたら、40年ぶりの快挙だって」
今後も北海道利尻島、東京都八丈島、奄美諸島の与論島などで高校魅力化に向けて話し合いがはじまっているといいます。
いずれも、20~30年後に日本全体が抱えるであろう問題が詰まっていると言われる課題先進地域。
だからこそ、その問題を実際に体感し、地域と教育の変革を体験するのは、プロジェクトに参画する人にとっても貴重な経験になるといいます。
「条件は限られているし、リソースは少なかったりする。本当に不完全で、いびつな形でスタートするんですね。しかも相手にするのは学生や学校だけじゃなくて、行政や民間の場合もある」
「そこで越境的にコミュニケーションをとり、自分たちで実現していく。変革のプロセスを学べると思うんですよ。簡単ではないし、楽でもない。でも、だからこそやりがいがあると思っています」

とはいえ、教育の分野での経験がなくても大丈夫だといいます。
実際にプロジェクトに参加しているのは、大学を休学してやって来た人や大学を卒業したばかりの人、教育とはまったく関係のない業界で働いていた人だったりする。
「教育に興味あるから来てくれる人が多いんですけど、営業をやっていたりIT業界で働いている人でも全然いいと思うんですよ。なぜなら学校のことをPRしようとしたら、営業しなくちゃいけないし、WEBやSNSを使った広報ができるかもしれない」
「かといって、特殊なスキルがなくたっていい。悩みながら来た子もいるし、やってみたら自分に合ってたっていう子もいる。飛び込んでくる子たちは、意外と普通の子たちなんです。そういう人たちが合わさってプロジェクトは進んでいます」
実際にどんな人たちが高校魅力化プロジェクトに参加し、どんなことを感じているのだろう。
沖縄県久米島を訪ねました。

景観が美しいだけでなく肥沃な土壌にも恵まれ、農業が盛んな島でもあります。
この島で唯一の高校「沖縄県立久米島高等学校」は年々生徒が減り続け、伝統ある園芸科の廃科が2009年から検討されるようになりました。園芸科がなくなってしまうと、島の基幹産業である農業の後継者育成に大きな支障が出てしまう。
2013年に高校魅力化プロジェクトが本格的にスタートしました。

久米島町の地域おこし協力隊として雇用され、任期は最大3年間となります。
放課後にやってくる高校生たちに、数学・英語・化学などさまざまな科目の勉強を教えるのが主な仕事。
教材学習以外にも、情報収集能力やディスカッション能力、将来の方向性を身に付けるための授業「ちゅらゼミ」を開催しています。
教材やちゅらゼミの内容はすべてスタッフ独自で作成しています。公営塾への参加を呼びかける広報もスタッフ自らが行い、一昨年度は30名ほどだった塾生が昨年から60名ほどに増加。
一昨年度には琉球大学に塾生から3人も合格したことから、勉強に関心を寄せる生徒が増えはじめているといいます。
「これまで1年半やってきて、塾の基礎的な部分はできあがってきたんですね。これからはどう持続していくか。3年ないし数年でスタッフが入れ替わるというなかで、塾の形や想いをずっと残していくためにはどうしたらいいかを今は考えています」
そう話すのは塾長の山本さん。

ここでは塾長としてチームをまとめるリーダーを務め、3年の任期後も教育に関わっていくといいます。
「ここでは教育のスキルだけではなくて、まちでの生活の中で人間的な部分も磨かれていくと思います。自分でやろうと思ってできないことはないと思うようになったし、嬉しいことも多いけど嫌なことももちろんあった」
嬉しいことも、嫌なことも。
「地域のためとか、子どもたちのためとか、すごくいいことを考えて来てくれると思うんですけど、実際はその通りにはならないです。難しいことに取り組むし、プレッシャーは大きいけれど、じゃあ達成したからって何かご褒美があるわけでもないし、地域の人全員に賞賛されるわけでもない。だから、実績がほしいっていう人はきついかもしれない。夢だけじゃなく、そういう覚悟を持って来てほしいです」
山本さんと同じく立ち上げ段階からのメンバーである、岡本さんにも話をうかがいます。

「教授からは、いまの学歴があれば有名企業にも入れるのに、と言われたりしましたね。でも、そこにはこだわりがなかったんです。たとえそういった企業に入っても、これからの時代どうなるかなんてわからないですし、自分がやっていた研究にも自分がやる意義を見出せなかったのもあったので」
2年前に取材したときよりも、岡本さんは物腰が柔らかくなって、落ち着いた印象です。
「今になって振り返ってみると、あの頃はすごく生き急いでいたなって。何かを成し遂げなければいけない、精一杯生きなきゃいけないっていう思いが強かった。そういう自分に気づいたので、いまは落ち着いたのかな」
「今後のことはまだわからないけれど、もっといろいろな世界を見たいと思っています。ただ、この島に自分の根ははれているかなと感じています」
昨年から公営塾には新しいスタッフが2名加わりました。
平山さんは千葉県出身。大学院を中退後、千葉のホテルで3年半働いていました。

「山本さんをはじめ、スタッフの方も島の方も一生懸命。いい方向へ変えようとしているのがすごく伝わってきて、そんな場所に自分もいたい、一緒に仕事をさせていただきたいと思って来ました」
「自分に何ができるのか、日々すごく手探り状態で。探しながら、できることをちょっとずつやっていっています」
麓(ふもと)さんは鹿児島県の徳之島の出身。福岡の大学で、まちづくりについて学んでいました。
教育系NPO活動に参加したのをきっかけに、教育に興味を持ち、故郷と環境のにた久米島の魅力化プロジェクトに参加しました。

「あと、自分が対応したことで生徒ができるようになったり、問題が解けたっていう表情を見ると、自分が幸せを感じるんですね。いまやってることって、自分に合っているんだなって。島での暮らしも楽しくて、あちこちで名前を呼んで、ご飯とかに誘ってくれる。そういった環境にも恵まれているなって思います」
この2人以外にも、昨年4月から中学校支援員として4名のスタッフが加わりました。

さまざな背景や想いを持った人たちが高校魅力化プロジェクトに参画しています。
「興味があれば大丈夫ですよ。子どもの成長の変化って日々違うので、そういうのを見ていくのがすごく楽しい。不安はないですね」
今回募集するのは、高校魅力化プロジェクトに参加することに興味のある人。
いますぐ参加するつもりがなくても大丈夫です。大学を卒業してからでも、希望する地域でプロジェクトがはじまってからでもいい。
興味があれば、まずプロジェクトメンバーと実際に会って話をしてほしいです。
(2017/3/21 森田曜光)