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「自分たちの仕事のどこに価値があるんだろう。そこに腹の底から気づくと、見方が変わるんです。見方が変われば働き方も変わり、結果として売り上げもついてくる。その価値のタネのようなものは、どんな会社さんでも必ずあるんですよ」そう話すのは、クエストリー代表の櫻田さん。
クエストリーは、中小企業や地域の価値のタネを見つけて、育て、かたちにして伝えるところまで。クライアントさんに一貫して寄り添うブランディング会社です。

クライアントさんは、飲食店、小売専門店、学校、一次産業、地域行政などさまざま。
現在は、コンサルティングスタッフが2人、デザインを手がけるクリエイティブスタッフが2人という、アットホームな雰囲気の会社です。
ここで、ブランディングプロジェクトとブランディングクラブをサポートする人を募集します。
クエストリーのオフィスは、築地駅から歩いて5分もかからないところ。オフィスに入ると、みなさん仕事の手をとめて、笑顔で迎えてくれました。
はじめにお話を伺ったのは、代表の櫻田さん。

「ぼくの父親は、襖や欄間(らんま)など、日本建築の建具をつくる職人だったんですよ。息子のぼくから見ても、腕のいい職人でした。でも、生き方としてはすごく不器用だったと思います」
お弟子さんもとらず、一人でコツコツつくっていたそう。
やがて、襖や障子などの需要は減り、アルミサッシに変化していく。当時お父さんは、何も言わずに職人の腕を生かせないアルミサッシの取り付けの注文も受けていた。
「父がやっぱり職人だったと気づいたのは、仕事をリタイアしたときです」
使っていたノミやカンナなどの道具を譲ってほしいと話したことがあった。ところがすべて知り合いの職人さんに譲ってしまった。
「理由をきくと、『使ってもらえないんじゃ道具が可哀想だから、使ってくれる人たちに譲った』って。道具への思いは、職人の証です。それを聞いて、父の中には、芯のところにずっとものづくりへの思いがあったんだと気づきました」
「世の中には本当にすごいけど、正しく評価されていない人たちがたくさんいる。ぼくはその人たちに寄り添えるんじゃないか、そんな思いが少しずつ芽生えてきました」
大学を卒業して入社したのは、セールスプロモーションの会社。
コピーライティングにはじまり、年数を重ねるごとにプランニング、マーケティング、店舗開発、最後は経営指導も。22年間勤める中で、だんだん携わる範囲が広がり、経営についての考え方も深まっていった。
そんな中、あることを感じます。
「たとえば、同じプロモーション企画をやっても、成功する店としない店があるんですね。よくよく社長さんと話してみると、『うちの考え方はこうで、こんなことを大事にしている』という方と、『とにかく売り上げがあればよい』とお考えになる方がいる。そして、前者のほうが、成功していることが多かった」
「サービスや商品を提供してお金をいただく前の段階に“何か”があるんですよね。それは、なんとしても譲れないことだったり、世の中から選ばれる理由だったりするんだけれど、そのことに年々お客さんが敏感になっているのを感じました」
もちろん働く社員も、自分の仕事に思いの源があるのとないのとでは、成果が大きく違ってくる。
そして辿り着いたのが、その“何か”を整理して、経営の軸として組み立てる「ブランド」という考え方。
とくに櫻田さんがお手伝いしたかったのは、大手企業との価格や量の競争で苦しんでいる中小企業の経営者や世の中に知られていない地方の生産者たち。
フリーの期間を経て、13年前にクエストリーを創立します。

まずは相手の価値のタネを見つけるところから。
ここで、ブランディングを手がけた、ちゃんこ料理のお店「ちゃんこ巴潟(ともえがた)」さんを紹介してくれた。
巴潟さんは、両国で創業40年になるちゃんこ料理専門店。

すると、内部の人たちにとっては常識で当たり前でも、外から見ると「シビれるほど魅力的」なところに気がつくそうだ。
「巴潟さんには、塩、味噌、醤油、水炊きの4大ちゃんこがあって、一番人気は塩ちゃんこ。塩ちゃんこの命は、総料理長のつくるスープです」
「総料理長につくり方をお聞きすると『何もめずらしいことはしていない』って。それでも見せてください、と現場に入らせてもらったんです」
仕込みの始まる朝5時。
厨房をのぞくと、大きな鍋で20~30キロの鶏ガラを煮込んでいたそう。鍋は2人の料理人が見ていて、灰汁がでるとすくう。淡々と2時間ほど煮込むと、スープは黄金色に輝いてくる。
「総料理長は、その日の天気、お客さんの数、料理との相性など、さまざまな要素を考慮して味つけをしていく。『味見するか?』と言われて飲んでみると、すごく美味しいんです」
「創業時から頑に守り続けてきた味と、食べていただく人への深い愛情。これこそが価値のタネなんじゃないかと思いました」
とはいえ、「これはあくまでひとつの意見」と櫻田さんはいいます。
「ぼくたちたちのコンサルティングって、価値のタネをこちらから教えるアンサー型ではなく、働く人たち自ら見つけてもらう、ナビゲーション型なんです」

「なぜなら、ぼくらはずっと寄り添っていけるわけじゃない。現場の人たちが腹の底から『自分たちの価値ってこれだよね』って気づく瞬間をつくらないと、その後の行動が変わらないんです」
自分たちが心から納得した価値を源にした行動は、必ず利益につながる。
巴潟さんでも、プロジェクトチームをつくり、6,7回ほどミーティングを重ねた。
すると、それまで変わらずにつくっていたスープが実は一流のものだということ。接客スタッフが具材の鍋入れをして差し上げるのはお客様にとても喜ばれるということ。とても丁寧な仕事ぶりに気がついた。
「自分たちにとって当たり前のだったものを磨き上げれば、他とは違う“ひとつ上の満足を提供できる”。それがうちの店の価値なんじゃないか。みんなが『これだ!』と思わず手をうちたくなるような瞬間があるんです」
「その瞬間こそが、ブランディングの醍醐味ですよ」
軸が固まったら、社内外に伝えるためのカタチにするところにも関わる。
巴潟さんのときは、クエストリーのクリエイティブスタッフや社外のクリエーターも加わり、ショップカードやのれんなどのほかに、会社のブランドブックも制作。

続けて、ブランディングディレクターの岡本さんにも話を聞いてみる。
「ブランディングというと華やかに見えるかもしれませんが、実はぼくらは縁の下の力持ちです。事務的な地味な作業もけっこう多いですよ」

今でこそ11年も経験を積んだベテランだけれど、ブランディングはまったくの未経験から学んだといいます。
一番大変だったことは何ですか?
「プロジェクトはチームでやるので、いろんな人が話し合いの場にいらっしゃいます。温度感にばらつきが出たり、他人事に考えている人もいます」
そんなときは、伝言ゲームでアイスブレイクをしたり、まずは発言しやすい環境をつくるそうだ。
「決められた期間の中で全員が変わるのは難しいけれど、やる以上は出来るだけ一緒にやりたい。ブランディングに熱を持ってくれる人をどう増やすかを意識しています」

向き合う関係じゃなくて、隣で手を取り合うような関わり方。
「一方で、それぞれのクライアントに合わせたやり方だから、そのぶん事務的な作業は量が多くなることもあります」
たとえば、事前の資料づくりや会議の記録と整理、ミーティング当日のファシリテーション、デザインの打ち合わせなど。業種も方向性もさまざまなので、求められる知識の幅も広い。
「ただ、焦らなくていいです。その大変さは私もよく知っていますから。一つひとつ好奇心をもって素直に学べる方なら、大丈夫ですよ」
たくさんの好奇心が仕事のエネルギーになりそう。引き出しを増やすため、社員旅行で海外に行くこともあるんだとか。

ブランディングクラブ?
「寄り添うようにしてブランディングに取り組んでも、その後会社を運営し続けるのは社長さん自身です。ぼくらは会社の価値を大事にした経営のほうが結果としてうまくいくと信じていますが、売り上げが落ちれば自分たちの軸に確信が持てなくなる社長さんもいます」
そこで、学びの場としてのセミナーや、情報交換の場としてのセッションの開催、ブランディングの情報が掲載された会報の発行など。スタッフ4人が中心となり、外部のブレーンと協力して行っています。
「セミナーやセッションや会報を通して、同じようにブランディングに取り組んでいる方の考え方を知る。同じ立場の方だから、ぐっとささったり、心から感動することがあるんですよね」
こんなふうに、ブランディングの個別プロジェクトからブランディングクラブの運営を通して、人を巻き込みながら、永く寄り添い続ける。
相手の価値を信じて光をあてる、あたたかな仕事だと思いました。
(2017/3/31 倉島友香)