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瀬戸内海に浮かぶ小豆島。400年の歴史を持つ手延べ素麺や醤油、オリーブにごま油、佃煮など、さまざまな食品産業が、この地で育まれてきました。
株式会社協栄岡野は、そんな小豆島が誇る食品の製造・販売を手がける会社です。
40人ほどの小さな会社だからこそ、仕事の幅は広く、関わる人との関係性は密なものに感じました。
ここで、総務経理を担当する人と、製造メーカーさんと交渉しながら仕入を行っていく人を募集します。
どちらも、会社の潤滑油のような仕事です。
ほかにも、オリーブの栽培や素麺の製造を手がける人など、幅広く人材を求めています。
少しでも興味のある方は、続きを読んでみてください。
高松港から土庄(とのしょう)港に向かう。
穏やかな波のうえを船はゆったりと進み、30分ほどで到着した。
船を降りると、香ばしいごま油の香りが漂ってきて、さっそく小豆島の空気を感じる。
港まで迎えにきてくれたのは、鈴木修介さん。昨年9月、東京営業所からこちらにやってきたそう。
話をしているうちに、車は細い道を上っていく。ほどなくして、本社に到着。
見晴らしのいい場所にあるから、いつも夕日がきれいに見えるんだとか。
協栄岡野は、1993年に設立され、手延べ素麺の製造を生業にしてきました。
その後は販売にも事業を広げて、今では、オリーブオイルや醤油、うどんなど、小豆島にある他社のメーカーがつくった製品の販売もしています。
どうしてそんなに幅広く手掛けていくことになったのだろう。2005年から代表を務める、2代目の岡野雅隆さんにこれまでの経緯を伺います。
「学校を卒業して、東京の百貨店で3年間営業の経験を積みました。その後、東京の自宅を事務所として、岡野の素麺の営業を一人ではじめたんです」
小豆島は、揖保乃糸で有名な兵庫・播州や奈良県・三輪に加えて、素麺の三大産地。
けれども、東京で営業をはじめた当時、状況は変わっていた。
「百貨店さんに言われました。三大産地と言われたのは昔の話で、島原や稲庭など、最近注目されはじめた産地もある。小豆島が入り込む隙間はないよと」
「たしかに、小豆島は三大産地ということにあぐらをかいていたところがあったんですね。その間にも、ほかの産地の方たちは、お客さんにしっかりと自社ブランドのアピールをしていた。それが20年、30年と続くうちに、販売量やブランドイメージで、大きな差がついてしまったんです」
もう一度チャンスをつかみたい。
そんな思いで仕事をしていると、あるとき百貨店のバイヤーが小豆島を訪ねてくることになった。
「そのとき、バイヤーさんから小豆島には伝統に裏づけられた食品産業がいっぱいあるじゃないかと言われて。商品を百貨店仕様にして、まとめてもってきなさい、というお話をいただいたんです」
「これまでとは違う付加価値をつけた切り口が必要だと、商品開発を重ねていきました」
別の切り口とは、どんなものか。
一つは、素材。
協栄岡野は、国内産の小麦を使って素麺をつくっている。
一般的には、外国産小麦で素麺がつくられている。国内産小麦でつくる素麺は、当時は協栄岡野も含めて誰も手がけたことがなかったそう。
そんななか、食の安全・安心やオーガニックに人々の関心が高まりはじめていた。
だからこそ、前例がなくても素材を追求していこうと決める。
「そのとき出会ったのが、北海道産の小麦でした。単一品種で製造していて、販売開始から20年ほど経ちますが、今もうちの主力商品です」
小豆島の食品メーカーがつくる商品のOEM供給をはじめ、パッケージやサイズの見直しもした。
醤油でも佃煮でもオリーブオイルでも、お客さんが本当に必要としている情報が盛り込まれているか。ニーズに合ったサイズかどうか。
「メーカーさんと話をしながら、自分たちなりにお客さんを想像する。そしてニーズの仮説を立てて、それに合わせたものを世に出していく。今も変わらず根底にあるスタイルですね」
たとえば、大きなボトルのオリーブオイルだと、使い切れない家庭もあるかもしれない。お試し感覚で楽しんでもらおうと、少量のボトルで販売をはじめることもあった。
つくり手と協力しながら、お客さんにとって必要だと思うものを柔軟につくっていく。
6年前からは、自社でオリーブの栽培からオリーブオイルの製造もはじめた。
島外のメーカーさんと、小豆島産オリーブオイルの良さを活かしたドレッシングの開発もしている。
いろんな切り口から商品をつくっていったことで、年商は20年前と比べて、およそ20倍に。
売上がよくなれば、メーカーの思いにも応えられる。
「メーカーさんからは、『岡野さんが言うなら、新しいボトルに詰めるし、新しいパッケージもつくるよ。だから、しっかり売ってきてね』と言ってもらって。いい関係性ができました」
ときには、コスト削減や効率を図るためにメーカーと交渉することもある。ただ、一方的にリスクを負担させるのではなく、改善できる部分は改善する。
「つくる人がいて、売る人がいる。互いにwin-winな関係を模索していきたいんです」
「僕の代だけでドライにやろうと思えばできてしまうけど、やっぱり100年150年とつづけていくためには、メーカーさんとのきちんとした信頼関係がないと」
小豆島で培ってきたものを未来の世代までつなげていきたい。だから、いろんなことにチャレンジしてきたし、今もその真っ只中。
事業の拡大に対して、人手が追いついていない状況だという。
「今は過渡期にあります。次のステップに進む会社全体を、一緒につくりあげていく一員なんだと感じてもらえる人じゃないと、厳しいかもしれません」
「ただ、1,2年で少しずつ過渡期を脱却して、オンもオフも気持ちよく過ごせるようにしてほしい。これから加わる人もいろんな価値観をもった人がいると思うので、一緒に議論しながら納得いく形にしていきたいですね」
正直に、熱をもって話してくれる方でした。
続いて、総務経理を担当する課長の岡野良洋(たかひろ)さんに話を伺います。雅隆さんの弟さん。以前は税理士事務所で働いていました。
仕事は、どんなことをしていくのでしょうか。
「日々の仕事としては、注文をまとめて売り上げを登録し、荷札を発行します。月に一度、請求書の発行や、支払いの登録といった仕事もあります。いずれにしても、正確に丁寧にやることが重要です」
淡々と仕事をするイメージがあるけど、働いていて面白いと感じる部分はあるのだろうか。
「僕としては、意思決定をする人のいちばん近くにいるということですね」
どういうことでしょう?
「たとえば月次決算書は、社員のみんなが活動してくれたことがお金になって現れてくるもの。決算書をもとに、会社は今後の意思決定をしていきます。大もとの素材をつくる部署だと考えたら、面白いです」
スタッフも、仕事をする上で必要だと感じたときには、決算書を見せてもらうそう。
「誰にでも渡すことはしません。でも、たとえば『現段階で仕入れにどれくらい金額がかかっているか知りたい』とか、『在庫管理にかかる金額は、昨年と比べてどうか』とか。聞いてくれたら見せています」
すると、代表の雅隆さんも反応します。
「質問してくれるということは、前向きに取り組んでくれている証拠。そのときに、決算書を見せたくないと言ってもしょうがないじゃないですか。興味をもって理解を深めていってくれれば、欲を出して勉強できる環境があると思います」
午前中には商品部の鈴木さんからも、質問があったという。
今度はそんな鈴木さんに、商品部の仕事についてお話を伺います。
「商品をつくるためのパーツを集めていきます。たとえばオリーブオイルの商品をつくるなら、オイル、瓶、ラベル、キャップ。4つのパーツが必要になります」
異なる商品が10個あったら、単純計算しても40個のパーツがある。それぞれの特徴を覚えるのは大変そうだ。
しかも、現在商品は150種類あるとのこと。
「基本的には、どこのメーカーさんから仕入れているのか。もっと言えば、取引先といい関係を築くためにも、どこのメーカーの誰々さんというところまで覚えるくらいでないといけません」
「それから、売れる時期に合わせて予測をして、適量、適正価格、適切なタイミングに動いて仕入れることも大事なポイントです」
任された仕事を正確にこなすことから、一歩踏み込んだところで関わっているのが伝わってきました。
もともと、地域づくりに関心があったという鈴木さん。以前は生協に勤め、食品の産地へ研修に行ったりするなかで、関心が深まっていった。
そんなときに、協栄岡野のことを知る。
「小豆島で培われてきたあらゆる食品を扱っている。全国的にみても、貴重なことに携わっている会社なのかなと思いました」
いろんなことを任せてもらえる仕事。でもそれは裏を返せば、やることがたくさんあるということ。
「もしかしたら、すごく厳しい会社だと思う人もいるかもしれない。じゃあ何で自分はここで働いているんだろう?」
「いま考えていたんですけど、トップとの距離がすごく近いということが1つあるのかなと思って」
距離が近い。
「入社したときに社長に言われたのが、『私が最終的には判断します。ただし、ちゃんとその理由を伝えるから』とおっしゃって。言葉通り、どういう方向に会社をもっていきたいかということをしっかりと社員に伝えてくれるので、受け止める側としては強く意識に残るんです」
「自分の考えと照らし合わせて、納得ができるから、その後の仕事も前向きに取り組めるのかなと思っています」
スタッフ同士の距離感も、気軽に一緒にご飯へ行くような、コミュニケーションが取りやすい関係だそう。
「これから一緒に働く人も、入りやすい雰囲気はあると思います。自分の引っ越しのときには、前日に『手伝おうか?』と電話をくれた人もいて、ありがたかったですね」
最後に、どんな人に来てほしいか代表の雅隆さんに聞いてみます。
「小豆島という地域、協栄岡野という会社、働いてる人たちや、扱ってる商品に興味を持ってくれる。そういう人であれば、会社にはいろんなポジションがあるので、かならず活躍して、一緒に前に進めるんじゃないかなと思います」
仕事は忙しいだろうけれど、ここには柔軟に受け入れてくれる人もいるし、環境もあると思います。
そして島には、海も山も、美しい景色がある。人々がつないできた産業もある。
ここにしかないものに触れながら、仕事も暮らしも、一つひとつ実感を大切にしたい。
そう思えたら、一度、島を訪れてみてはいかがですか。
(2017/04/10 後藤響子)