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愛すべきおせっかいさん

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

自分のためだけに料理をするのって、何だか味気なくてつまらない。

一緒に食卓を囲む人がいて、その人のためにと思ったほうがやる気は湧いてくるし、いつもより美味しいものがつくれたりする。

それはきっと料理だけでなく、ほかのことでも何でも。仕事においても同じことが言えると思う。

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今回ご紹介するのは、街の不動産屋さん。

東京・千駄木にある株式会社尚建(なおけん)です。

谷根千で仲介・管理といった不動産業を営みながら、地域活性化の仕掛けづくりや、借主の起業サポートも行ったりしています。

「不動産業をやりながらも、人の『やりたい!』ってことを実現させることが、僕のやりたいことなんですよ」

そう話す代表の徳山さんは、起業サポートでは無償でクラウドファンディングのお手伝いまでして、開業の資金集めを成功させてしまう。

飲食のお店に個性を持たせようと、特注の鍋をつくってくれないかと新潟のメーカーを訪ねることも。

ときには世話を焼き過ぎることもあるみたいだけど、そんなところもひっくるめて周りから愛されている人です。

ただ、紆余曲折あって、いま会社で働いているのは代表の徳山さんのみ。ひとりでやっていくには限界だと感じた徳山さんから、仲間を増やしたいと連絡をいただきました。

求めるのは、経験ではなく人柄。

人のためなら一生懸命になれる。そんな人を募集します。

 

東京メトロ千代田線・千駄木駅。

地上に出て不忍通りをちょっと歩くと、尚建のお店が見えてくる。

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正直見た目は、街でよく見かける普通の不動産屋さんとあまり変わらない。

だけど、代表の徳山さんはとても個性的な人です。

どこがというと、一番は人との距離の近さなのかもしれない。会ったばかりなのに心情をそのままに話し、そこまで言ってくれちゃうんだと思うことも。

話し出すとなかなか止まらないのだけど、別に相手を無視しているわけではなくて、いやな感じもない。むしろその真っ直ぐさに、親しみがわくような感じ。

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そんな徳山さんが会社を立ち上げたのは10年前。

もともとはお父さまが経営していた建築系の会社から、不動産部門だけを独立させるような形でした。

「うちはエンジニア家系なんですよ。じいちゃんは長靴をつくっていて、親父も手伝ったりしていた。どうして親父が継がなかったかというと、左右の足で同じものをつくるのが大変だったからって。それで自分の体ひとつでできるハウスクリーニングからはじめて、そこから建築士の資格を取り、バブル時代には中規模建築の施工管理をやってました」

徳山さんもものづくりが好きで、高校から建築学を専攻。大学では都市計画、大学院ではコミュニティ論や地域づくりを専攻した。

いい大学を出て、いい会社に就職すれば、いい人生が送れる。そんな考えの世代で育ったけれど、働く会社はどこも1年半ほどしか続かなかった。

「社長の息子は人に扱われるのがへたくそ。どこ行っても上司とケンカしちゃって、ソリが合わなかったんです。それで28歳のときに親父から声がかかって、不動産部門で働くことになって。それが面白かった」

「僕ね、幼いころから物事をナナメから見るのが好きで、それが仲介に活きたんです。『つまりこういうことですよね?』とお客様のご要望を整理したり、トラブルの原因を見つけるのが楽しかった。それに家賃が月9万円くらいの部屋を月3本も仲介すれば、月給分稼げるようなもんじゃんってカルチャーショックで」

ただ同時に驚いたのが、業界のマナーの悪さ。当時はまだ不動産業界の印象を損なう悪習が根強くあった。

マイナスが大きいぶん、プラスに変わる伸びしろがものすごくあるんじゃないか。そう考えた徳山さんは、不動産部門の経営を引き継いでから改革に乗り出します。

「まず目の前にある当たり前を疑ってみて、どこに本質があるのか。大家さんにとってみれば不動産はお金が入るものだけど、住む人にとっては生活をする場です。物件の良し悪しは当然借主さんに伝えるし、物件の修繕もきちんとする」

「だから、うちは借主さんに喜ばれるんですよ。大家さんから『お前はどっちの味方なんだ』と言われたこともあるけど、それが当たり前だよねって共感してくれる大家さんもいる」

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そうしてコツコツと会社を経営し続けて7年、いまから3年前に「まさに人生のどん底を味わう」出来事が起こってしまった。

会社の売り上げの多くを頼り、長年付き合いのあったクライアントとの契約が突如として解除されてしまい、当時3人いたスタッフ全員を手放さざるをえなくなってしまった。

みんな長く勤めてくれていて、徳山さんに頼らなくてもしっかり会社を回せるほどの体制ができあがっていた。スタッフの中には徳山さんのブログを読んで共感し、一緒に働きたいと言ってきてくれた人もいた。

「3人がいなくなったあと、1年くらいはうつみたいな感じで仕事も手につかなかった。目先の現金を入れるのに精一杯だし、本当に毎日スレスレのところで、どうしたらいいのか分からなかったんです。なんで俺ここにいるのって、人生についてゼロから考え直したりもして」

少しずつ回復し、そろそろ動き出そうと思いはじめたころ。

会社の新たな可能性に気づかせてくれる2つの仕事に出会った。

ひとつは、徳山さんが理事を務める千駄木の商店街にある空き物件で、新たにカフェをはじめたいと相談に来た主婦の方の話。

「賃料設定が平均相場よりも全然高くて、こんなの使う人いるのかなと思っていた物件でお店をやりたいと。根掘り葉掘り聞いていくと、実は知り合いと共同経営で責任分担は半分ずつ。経営も飲食もやったことないけど、会社をつくるんですと」

「不動産屋から見てマイナスな要素ばかり。絶対つぶれることになるからやめたほうがいいって言っても、テコでも動かなくて」

よくよく話を聞くと、自分の娘を勇気付けるために、母親の頑張る姿を見せたいという強い想いが見えてきた。

「当時から、一生懸命やりたいっていう人の願いを叶えたいと考えていたし、僕の大好きな商店街で失敗事例を出したくないという思いも正直あったんですよ。それで魔が差しちゃって、何とか頑張りましょうと」

それまでの計画はすべて白紙に戻し、徳山さんがfacebookで呼びかけて集まった共感者10人ほどと一緒に、徳山さんと飲食コンサルの知人が全体をマネージメントして計画を練っていくことに。

家賃が払えるようにと、カフェよりも単価の高い飲食店に切り替えた。お店の目玉をつくるために、新潟・燕で鋳物の新しいステンレス鍋を開発したメーカーを徳山さん自らが訪ね、使わせてもらえないかと交渉した。

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いまではすっかり人気店となった古民家レストラン「Okaeri」

実は徳山さん、このお店の仕事は無償で行いました。

その後も、ご夫婦で営むフレンチレストラン「フレール」の移転を支援。事情があり、突然の移転となったためクラウドファンディングで資金集めをするなど、ここでもやっぱり無償でお手伝いをしている。

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「単純にやるのが面白いっていうのもあるけど、地域に困っている人がいれば助けるのは当然だと思うんです。それが一番生活に近い立ち位置にいる街の不動産屋さんの本当の役割。僕が不動産業をいまでも続けて仕事にしているのは、そうやって働きたかったからなんですよ。僕が思う当たり前を、普通はこうじゃんってやっていく」

そうした姿勢は結果的にお客さんの支持につながるから、決して損するばかりではないという。

実際に現在、谷中でオープンするベイクショップの開業支援を行っていて、ここでもクラウドファンディングを成功させている。

Okaeriに加えてもうひとつ、会社の新たな可能性に気づかせてくれた仕事。それが谷中にあるhanareです。

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大浴場はまちの銭湯、お土産屋さんは商店街など、谷中のまち全体をひとつの大きなホテルに見立てた新しい形のホテル“hanare”。

谷中のHAGISOを設計・運営する建築家の宮崎晃吉さんが手がけています。

きっかけは管理物件をhanareに使いたいという宮崎さんからの相談。

ここでも徳山さんは飲食店の開業支援同様に、宮崎さんのため奔走したのだとか。

実際に宮崎さんにもお会いして、話を伺いました。

「出張費が出るわけでもないのに大家さんのいる福井まで一緒に来てくれて、契約書の文面も国交省や弁護士事務所まで行って確かめてくるとか、徹底するんですよ。普通そこまでしないでしょう。たまにウェットが過ぎるときがありますけど、なかなか人情に厚い」

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「器用か不器用かって言ったら、限りなく不器用な人だと思いますよ。すぐ懐に飛び込んでくるし、距離感が不器用なんですよね。でも、愛すべき人だし。それが分からない人は人間関係につらいところがあると思っていて」

たしかに人によっては「徳山さんいいよね」という人もいれば、クセの強さに敬遠してる人もいそうな感じ。

「私も考え方が違うからって、何回もケンカというか、言い合いをよくしてるよ(笑)」

そう話すのは、宮崎さんの話を隣で聞いていたスガコーポレーションの菅さん。

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谷根千では有名な大家さんで、徳山さん曰く、本音で何でも言わせてくれるありがたい存在なのだそう。

いまは谷中銀座にある菅さんの物件を尚建が借りて、観光向けではなく地域向けの活動や商いをはじめたい人にシェアスペースとして貸し出すプロジェクト「Things. YANAKA」が進んでいる。

宮崎さんとも、これからも気持ちのいい仕事ができそうな予感だという。

今回募集する人には、徳山さんがやっていることすべてに携わってもらいたい。

ただ、はじめから全部やるのはきっと難しいだろうから、ひとつずつ徳山さんがきちっと教えてくれる。業界の常識に捉われずにやっているので、むしろ不動産業の経験がない人のほうがいいのだそう。

そして一番は、徳山さんのように人の心に奔走できるかどうかに尽きると思う。

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「きちっと相手を愛して、心を受け止められる人。そういう人間関係が築ける人と働きたい。いまさら上下関係なんて持とうと思ってないですから。あくまで僕が10年続けてきた尚建という箱を使って、その人のやりたいこともやってくれればと思ってるんです。社員のことならどこまでも責任を持ちます」

これから一緒にやっていける仲間がほしいから、なるべく長く働いてもらいたいという。

「街の不動産屋さんって分かりにくくて、そこに人生捧げて働きたくないわって人が、ほとんどだと思うんですよ。だけど10年やってきて、いまめっちゃ楽しいし、いろんなお付き合いがあって、街でいろんなものをつくっている」

「自社で物件借りて実業していくっていうのも、普通の街の不動産屋じゃできない。1日の半分くらいは仕事じゃない丁稚奉公のようなこともやるんですけど、その中で利益を上げていけたら何でもできるようになる。どこかのサラリーマンより働く能力がすごく身につくと思うんです」

たしかにここで働けば、どこでも起業できるくらいの力がつきそう。

ずっと長く働くことで、谷根千という魅力的な街にとってかけがえのない存在になっていけると思う。

愛すべきおせっかいさん。あなたもなってみませんか。

(2017/4/7 森田曜光)