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よろこび巡って

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世の中にはいろいろな家があって、それを建てる会社も星の数ほどある。

世知辛い世の中で勝ち抜いていくためには、無駄は省いて効率的に。見えないところは、こんなもんでいいかな。

そんなビジネスライクな家づくりこそ多くの利益を生むのかもしれない。

でも打算的に自分のことだけ考えていると、結局は自分の首を締めていくような気がする。

vegahouse01 これは、ベガハウスという会社を取材して感じたことです。

というのも、ベガハウスはこういった価値観とは真逆の住宅会社だから。

住む人のことを考えてオリジナルの家具や庭までつくったり、8ヶ月ごとに定期訪問し続けたり。とても面倒なことをやるけれど、ここでなら自分も納得できる家づくりができると思います。

今回は、この会社で設計を担当する人と、広報・デザイン担当の人を募集します。



鹿児島空港から車で30分ほど。まわりは木に囲まれて、ずいぶん山の中に入ってきたように感じるけれど、繁華街である天文館にも15分くらいで行けてしまう。

そんな場所にベガハウスはあります。まず目に入るのは、2016年にできたばかりの大きな社屋。

vegahouse02 奥には、ワークショップや学生インターンシップで訪れた人たちが泊まれるようなゲストハウスも完備されている。

「ここは“ものづくりの木造校舎”というテーマで、人を育てる場所としてつくったんです。もちろん仕事はビジネスで、学校ではない。でも会社は、人を育てることに比例して育っていくものだと思うんです」

そう話すのは、代表の八幡さん。

vegahouse03 「世の中からしたら、大馬鹿者ですよね。もっと身になるものに投資すればいいのにって思う人もいると思う」

「でもまず泊まるところがないと、訪れるきっかけにならないと思ったんですよ。来てみたら良かったなと思うかもしれないし、そこから縁がつながっていくかもしれないから」

誰かに求められたことではないけれど、素直に相手のことを考えて、もてなそうという心意気を感じる。

でも最初からそうだったわけではないそう。

先代がベガハウスを創業したのは、今から31年前。もともとは大手ハウスメーカーの下請けの工務店だった。

八幡さん自身は東京に出て、元請けのハウスメーカーで現場監督として10年ほど働いていたという。

「高校時代は野球をやっていたんですけど、補欠のまま、勉強も中途半端で挫折してしまって。だから社会人になったら補欠じゃなく、エースになりたいという思いが強かったんです」

「建築が好きというわけでも、仕事が好きというわけでもなく。ただ人に負けたくないという意地で10年間やっていましたね」

20代で係長に昇進したものの、働くうちに会社の嫌なところがたくさん見えてきた。

「お客さんを見て仕事をしないんですよ。出世のために、上司の顔色ばかり伺って。そういうのが嫌になったこともあって、鹿児島に戻って家業を継ぐことにしたんです」

八幡さんが戻ってからは下請けをやめ、これまで培った技術やノウハウをもとに住宅メーカーとして歩み出す。

業績は向上したものの、次第に薄利多売の状態に。会社を存続させようと思うあまり、いつのまにか利益や売上にばかり目が向いてしまっていたことに気づいた。

「金額だけを比べて、取引先を探していたんですよね。そのことにはたと気づいて。うわべだけじゃなくて、お客さんも、社員も取引先にも、笑顔でありがとうって言ってもらえるような仕事をしたいと思ったんです」

とはいえ、既にある商品では他社と価格を比較されて、薄利多売から抜け出せない。ならばカタログには載っていない、手づくりの良質な木造住宅をつくろうと考えた。

vegahouse04 さらに、関わる人たちに寄り添ったさまざまな仕組みを生み出していく。

たとえば、豪華につくったモデルハウスではなく、実際にお客さんのために建てた家をお借りして公開することで、暮らしを体感してもらう“ショーホーム”。

ほかにも、住む人に合わせたデザインと機能性を突き詰めるために、全国の家具屋さんに協力してもらいながら、建具や小さなスイッチまで自分たちでつくった。

世の中になければ、妥協せずに自分たちでつくろう。そんな姿勢はお客さんの満足にも、一緒に働く人のやりがいにもつながっている。

今では「モダンリビング」や「ビルダーズ」といった専門誌にも取り上げられるぐらい、知名度も上がってきているそう。“人”を軸に良い循環が生まれているみたい。



一緒に働く人たちは、どんなふうに感じているんだろう。

話を聞いたのは、設計を担当する谷さんです。

vegahouse05 大学院まで建築を学び、東京から縁もゆかりもない鹿児島にやってきた。不安はなかったのだろうか。

「全然なかったです。やりたいことはどこででもできると思っていたので。だから、あんまり参考にならないかもしれません(笑)」

もともとは、中村好文さんという建築家が好きで、弟子になりたかった。けれども事務所に入ることは叶わなかったそう。

中村さんがつくるものの、どんなところが好きなのでしょう。

「普通建築家がつくるものって、自分を全面に押し出したものが多いんですけど。建物だけじゃなくて家具も大事にしていたり、一つひとつのものの手触りとか、自然と住む人に馴染むような家をつくっているところが良かったんです」

そんな中村さんから良い住宅をつくっている会社があると紹介されたのが、ベガハウスだった。

実際に働いてみてどうですか。

「家具デザイナーや造園家とか、つながりが思っていたよりも広くて。家をつくるだけじゃなくて、暮らしを丸ごと提案できるのがすごく面白いです」

たとえば、あるお宅のソファをつくったときのこと。

ご主人は、会社の同僚を家に招いて、ワイワイ宴会をするのが好き。一方で、ご主人のお父様は足が弱い。一度床に座ると、立ち上がるのがすごく大変だった。さらに奥様からも、姿勢良く座れるソファがほしいとの要望が。

全てを兼ね備えるには、市販のものでは対応できない。谷さんたちは、円卓に掘りごたつを備えた、オリジナルソファの製作をはじめます。

その様子はワークショップとして、社外の人たちにも公開。一緒に家具づくりに参加してもらった。

vegahouse06 「他県の工務店さんやデザイナーさん、建材屋さんも参加して。座面の高さや、テーブルとの距離、座り心地。みんなで意見を出し合いながら、検証を重ねてつくったんです」

「自分の思い描いたものをすぐにつくってみることができるし、面と向かっていろんな職種の人に会える状況は、もしかしたら東京より多いかもしれない。生きた出会いが多いです」

生きた出会い。

たしかに、いろいろな人や感性と出会うことができるように感じる。

そんな谷さんがなにより大切にしているのは、住まう家族にとって使いやすい家や家具であること。

そのために、毎回スケッチを描いて実物をイメージしてもらうよう心がけているそう。

vegahouse07 「スケッチを見せると、お客さんがぽろっと口に出すことがあるんですよね。今回なら、『素敵だけど、お父さん足悪くなかったっけ?』みたいな。そこをちゃんと汲み取っていくのが大事かもしれないです」

図面が固まったら、現場監督として工事に立ち会う。予算の管理や職人さんとのやりとりなども含め、自分で描いたものを実際に建てるところまで関わります。

大変なこともあれば教えてください。

「やっぱり忙しいですよ。現場の職人さんたちは、朝の7時か8時くらいには作業をはじめる。担当範囲も広いので、やることはたくさんあります」

「でも困ったときには相談しやすいです。当番制で、みんなでランチをつくって食べたりもしているので、自然と人同士が馴染むというか。社内にいい空気感が生まれていると思います」

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もう一人紹介したいのが、マネージャーとして働く大迫さんです。

なんだか親しみがあって、安心できるような方。

新しく入る人の上司になる方でもあります。

vegahouse09 デベロッパーやアトリエ系の設計事務所での仕事を経て、創業当初からベガハウスに参加。会社の理念や仕組みづくりにも関わってきた。

「いい建物をつくりたいと思っても、前職では『収益が見込めない』とか『前例がない』という理由で、思うようにはできないことがあって。やりたいことが、自分たちでできるような仕事がいいなと思ったんです」

「無理に受注はとらないので、お客さんはうちのやり方を理解してくれる方ばかりです。本当に恵まれていると思いますね」

あるお宅には、竣工後9年経った今も、社員みんなで毎年お邪魔しているそう。

「みんなでフルマラソンに出るんだけど、お宅がスタート地点に近いんです。お客さんは走らないんですよ。でも朝ごはんをつくってくれて、来るのを楽しみにしてくれてて。レースが終わったあとの豚汁がまたおいしいんです」

「なんというか、人と人でつながっている。最近はご主人のアウトドア道具を置く場所が手狭になってきてるんで、庭に小屋建てようかと勝手に思ってるんですよ (笑)」

話を聞いていると、贈り物をするような仕事を積み重ねている会社なんだとあらためて思う。

それは家づくりに限らず、広報・デザインを担当する人も同じこと。

「やっぱり、ひと家族ごとに住まい方も違いますし、その都度合わせたデザインをしてくれる人がいいなと思います」

たとえば、家を引き渡すときに鍵につけるキーホルダーや表札。ホームページも外注している状態なので、伝え方から一緒に考えてほしい。

すると代表の八幡さん。

「ただきれいな写真を並べるのではなくて、見ている人がどう感じるかというところまでイメージできていないと、大迫が言うようなことはできないと思うんです」

vegahouse10 一つひとつは小さなことでも、「こうしたら喜んでくれるかな」「この情報があったらもっと伝わりやすいかな」という想いを積み重ねることが、ベガハウスのブランドイメージをつくり上げることにもつながっていく。

仕事がある程度わかってきたら、東京など遠隔地での勤務も可能とのこと。距離よりも、まずは自分がやりたいと感じるかどうかで選んでほしいです。



最後に八幡さんがこんな話をしていました。

「僕らがものづくりを発信することで、これから建築を目指す若い人たちの希望の星みたいになれたらいいですね。鹿児島みたいな地方でも、楽しいことやってるぞって思ってもらえたら」

vegahouse11 もし納得して働いていきたい方がいれば、ぜひ会社を訪ねてみてください。

大変なこともあるだろうけど、それ以上にうれしい機会もたくさんあると思います。

(2017/4/19 並木仁美)