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空気をつくる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

あそこに行けば何かありそう。

何度も足を運びたくなるお店には、心を動かしてくれる、いい空気感があるように思います。

一体それはどこからやってくるのか。

katakana(カタカナ)』というお店は、いい空気感は人が生みだしていると、強く感じさせてくれる場所でした。

店内

コンセプトは「日本のカッコイイを集めたお土産屋さん」。

まだ広く世に知られていない日本のいいモノたちにスポットを当て、ものづくりの現地を訪ね、背景にある物語もふくめて魅力を伝えています。

「今はインターネットで何でも買うことができます。それでもkatakanaが存在できるのは、セレクトしている編集力があるからだと思うんです」

運営する株式会社タンケン社の代表・河野純一さんは、そう話します。

ここで、バイヤーと販売スタッフを募集します。

ただ、名称からイメージする働き方で括ることのできない、いろんなつながりを持つ仕事だと思いました。

河野さんの言葉を頭の隅に置きながら、読み進めてほしいです。

よく晴れたある春の日、自由が丘店を訪ねました。

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ゆるやかな上り坂を歩いていくと、十字路の右手の角にkatakanaのお店が見えてきた。

通りに面した2つの入り口が開かれていて、入り口の手前にも商品が並んでいる。ガレージではコーヒーのマルシェも開催していた。

外観

通りがかる人たちが気になって足を止め、引き寄せられるようにお店へ入っていく。私も後につづいた。

店内には、陶器でできた新幹線の箸置きや、美濃和紙を使ったかわいらしいレターセット、パクチーオイルなど、好奇心をくすぐるようなモノが並んでいる。

お客さんでにぎわうなか、代表の河野さんが迎えてくれた。

「伝統工芸のような品だけでなく、日常で使えるモノで、どうせ使うんだったら長く使えるモノ、ほっとするようなモノ、わくわくドキドキするようなモノが集められればいいなと思って。文具も洋服もブローチも帽子も、なんでもありの品揃えになっています」

季節に合わせて様々な商品を紹介したいから、1年を通して2週間ごとのイベントをおこなったり、週末にはマルシェを開催している。

マルシェ花

「『先週のイベントがよかったよね、まだやってる?』とか『来週は何やるの?』とか。来る楽しみがあると、お客さまもお店に行きたくなりますよね。そして実際に体験すると記憶に残る。だからイベントはとても大事にしています」

どうしてこのお店をはじめたのか。これまでの経緯について、近くの喫茶店で話を伺う。

もともと河野さんは、全国規模で洋服店を運営する会社で、MD(マーチャンダイザー)を務めていた。

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10年ほど前、ファストファッションの流れが押し寄せたことで、洋服業界を取り巻く環境は様変わりしはじめた。

「1週間ごとに新製品を出すほどトレンドが早くなって。売れなければもっと価格を安くしていくというサイクルが、蔓延していたんですね」

当時の会社の方針としても、素材や縫製を選ぶ基準は、「安くてまぁまぁなほうを選びなさい」というものだった。

「でも、自分は洋服が大好きで、どうせならいい生地且つ、いい仕立て方のモノを選びたいという本音があったんです」

いつかは自分で洋服店をやりたいという夢を持っていた。けれど、一生の仕事がこのままでいいのか、疑問が浮かんだ。

何か別の形でできないだろうかと考えているとき、海外出張で出会った人たちとの会話からヒントを得る。

「僕は雑貨も大好きで、シャーペンは、1971年からぺんてるという会社がつくっている『KERRY』という商品を使っていました。彼らはそれを見て、『日本のモノってカッコイイよね』と言うんです」

「そのとき僕が身につけていたものといえば上から下まで海外のもの。でも、彼らの話を聞いて、日本のモノのカッコよさに気づいて」

kerry

当時、日本製の日用品を集めたセレクトショップは、まだあまりなかった。それなら、日本のモノを集めたお店をつくったら面白いんじゃないかと、河野さんは考えた。

もう一つ大事なきっかけがあると、河野さんは続ける。

「妻が病気になってしまって、働きながら闘病していたことがありました。薬による副作用で味覚がだめになっちゃって」

「食べるのが大好きな人なんですけど、味が感じられないとおいしくもなんともないし、食欲も出ない。でも、薬を飲むためには胃に何か入れないといけない。楽しみだった食事がだんだんと労働みたいになっていく。そんな日々を送っていました」

ある記念日に河野さんがプレゼントを贈ろうと考えていると、「曲げわっぱがほしい」とのリクエストが。

曲げわっぱは、秋田県・大館の伝統工芸として有名な木でできたお弁当箱。

河野さんがプレゼントした翌日、さっそく会社にお弁当を持っていった奥さんは、きれいに食べきって「おいしかった」と河野さんに話したそう。

「『え?味はあんまりわかんないはずじゃん』と言ったら、『これで食べたらおいしく感じた』って言うんです。本当かなと思って貸してもらったら、おいしんですよ。ごはんが全然ちがうの」

余計な水分を飛ばしてくれて、尚且つ乾燥からも守ってくれる。ごはんをちょうどいい状態に保ってくれるのが、曲げわっぱの特徴だそう。

「これはうまい!と思って。そのとき、ひょっとしたら今残っている日本の伝統的なものってすごいんじゃないかなと、肌で感じたんです」

曲げわっぱ

2つの出来事を通して、こだわってつくった日本のモノの価値を身近に感じた河野さん。

日本のいいモノたちと一緒にお店をつくっていけたら、納得したモノとの付き合いができるかもしれない。

そんな想いから、katakanaのお店づくりがはじまった。

katakanaを形づくる大切な要素の一つに、まず、こだわって仕入れた商品がある。

商品は、年に何度か全国各地へ「さがしモノの旅」に出て、発掘している。

さがしモノの旅

「うちのお店って、ごちゃごちゃしているようでなんとなく整っている感じもする。どうやって選んでいるの?とよく聞かれるんです」

katakanaらしいモノを選ぶ基準について、言語化してみたことはあるものの、感覚的な部分も多くひとことでは言い表せないよう。

「どこにでもあるものではなくて、あそこにいくと何かありそうだというワクワク感をお客さんにはもってほしい。そのために場を編集していく」

どのように編集するのか。

一つひとつの商品のセレクトはもちろん、その並べ方も方法の一つ。

「たとえば、忘れかけられているけどいいモノってたくさんある。もちろん最新作のいいモノもある。いろんなモノ同士の関係を見ながら、手間をかけて並べ方を変えてあげることで、お客さまの目に新鮮に映る。そういう動きを生んでいく面白さは、お店の醍醐味だと思います」

そしていちばん大事しているのは、「人」だという。

河野さんが、あるメーカーさんとの話をしてくれた。

「ノートだけをつくっているツバメノートという会社があって。はじめて商談しにいったときに、ノート1冊に対して2時間半かかっても商談が終わらなかったんです」

どんな話をしたかというと、使っているフールス紙という紙は特別な抄き方をしていて1万年もつといわれること。実はノートに入っている罫線を手で引いている職人さんがいること。

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「端まで罫線が繋がっているのが、職人さんが罫線を引いてるもの。昔は万年筆で書いていたみたいで、オフセット印刷の紙に万年筆で書くとインクがはじいてしまう。けれど罫引きのノートだと、するっと書きやすい」

「ノート1冊に、こんなに物語が詰まっている。だけどそんなこと、伝えないとお客さまは知らないままじゃないですか。だったら僕たちは、2時間しゃべることはできないけど、このノートの良さをお客さまに知っていただこうと思っていて」

伝える人がいて、お客さんの手に渡っていく。

「販売員、特にバイヤーは、つくっている人たちの想いを知って仕入れている。それをお客さまにお伝えしたり、スタッフに共有できる。そういうコミュニケーションがお店の空間で行われていると、売り場が常に動くんです。そういうお店をやりたくて」

河野さんと一緒に働く、バイヤーの小田祥子さんにも話を伺った。

小田さんインタビュー

katakanaでは、バイヤーも店頭に立ってお客さんに紹介する。

現在小田さんは、渋谷ヒカリエのお店をメインに、商品のセレクトからイベントの企画、売り場の作成、販売など幅広い仕事を担当している。

もともと同じ会社で働いていたつながりで声がかかり、立ち上げから1年ほど経ったころkatakanaのメンバーに加わった。

バイヤーの仕事は4年半前からはじめたそう。

最初は、どんなものをセレクトしたらkatakanaらしいのか、感覚を共有するところに悩んだという。

河野さん曰く、どのバイヤーも何を仕入れていいのかわからなくなるという壁にぶち当たるそう。壁を乗り越えていく一番のヒントは売り場にあるという。

小田さんも、それを実感しているよう。

「ほんの数センチ商品を置く位置を変えてあげるだけでも、お客さまの反応は違うんです」

「日々売り場をつくったり接客したりするなかで、お客さまはこういう色やデザイン、こういう素材のものを手に取るんだ、とか。逆に、自分ではいいと思ったけれど、何であんまり手に取ってもらえなかったんだろう?と考える。その繰り返しでだんだん感覚がつかめてきたのかなと思います」

渋谷店

今では年間計画も任せられているそう。

「1つのイベントのために商品をどう展開するのか企画していきます。それが2、3週間のサイクルで開催するので、順を追って先の計画を立てながら、今の状況も見て把握していかないといけない。そこが大変な部分ではあります」

「でも、1から10まですべて自分たちで考えてできることは、その分、成果が出たときにやりがいを感じます。成果がでないと辛いんですけど、それもふくめて楽しいです」

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小田さんは、どんな人と働きたいですか?

「いろんなモノに興味があって、幅広い視点を持っている方。何が正解というのはないと思うので、枠にとらわれずに何でもやってみる、提案してみるというチャレンジ精神がある方だといいですね」

最後に、代表の河野さんがこれからのことを話してくれました。

「この先、自由が丘周辺に根を張りながら、いろんな業態のkatakanaを展開したいと思っています」

「katakana食堂っていう食堂をつくってもいいかもしれない。子供用品を揃えたkatakana kids、洋服が好きなのでkatakana clothingとか。お客さまがお店をハシゴして『あぁ〜面白かった!』と楽しんでもらえたらいいなって」

お客さん

柔軟な広がり方も、katakanaらしい一つの編集の形なんだと思います。

ぜひお店を訪ねて、katakanaがセレクトしたモノたちとお店の空気に触れてみてほしいです。

(2017/05/09 後藤響子)