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境界を横断して

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

テクノロジーの発達にともなって、デザインはぐっと身近になった。

ソフトがあれば誰でも自在に編集できるし、3Dプリンターがあれば図面通りに形が表れる。

そんな時代に、プロができることってなんだろう。

それは、時間も空間も、デザインの境界も自由に横断して、新たなものをつくりあげることかもしれない。

デザインスタジオのキュリオシティの取材を終えて、そんなことを思いました。

今回は、ここでプロダクトデザイナーとして働く人を募集します。

代々木公園駅を降りて、10分ほど歩く。

大通りから一歩入ると、大学や公園があって静かになる。住宅街を進んだ先に、キュリオシティの事務所を見つけました。

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ガラス張りの廊下からは、たくさんのデザイナーが働いている姿が見えた。

様々な言語が飛び交っていて新鮮だ。

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キュリオシティは、デザイナーのニコラさんとパートナーの宮元さんの二人が20年前に設立したデザインスタジオ。最近では、GINZA SIXのインテリアデザインでも知られている。

まずは、宮元さんに話を聞きます。

「私はもともと広告代理店で働いていました。ニコラは、それまでフリーデザイナーとしてグラフィックからインテリアまで、様々な活動をしていて。結婚を機に、もっと幅広く活動できるようにと二人でキュリオシティを立ち上げたんです」

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広告会社での経験を活かし、ニコラさんのデザイン活動をサポートしていた宮元さん。

会社は順調に成長し、この20年で社員は32名を数えるまでに。

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「今も変わらず、グラフィックやインテリア、それにプロダクトと幅広く取り組んでいます。インテリアのイメージが強いかもしれないけれど、プロダクトも20年間ずっと取り組んでいるんですよ」

プロダクトデザイナーはどんな仕事をしているのでしょう。

「大きく分けて、2つあります。ひとつは、クライアントのいる仕事。最近では化粧品が多いですね。以前には、携帯電話やゲームボーイアドバンスといったインダストリアルも手がけました」

「そしてもうひとつは、クライアントのいないオリジナルの仕事。こういうものが世の中にあったら面白いよね、という自由な発想からはじまる実験的なものです」

たとえ商品化が前提になくても、こんなものがあったらいい、と思ったものを一からつくってみる。

ここで、オリジナルの香水『CURIOSITY ESSENCE』を紹介してもらった。

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ひとしずくが滴り落ちる、その一瞬を形にしたガラスボトル。

一般的な香水ボトルとは明らかに違う、自由なデザイン。一見しただけでは、香水ボトルとは思わないかもしれない。

「このボトルも、香水はエッセンスだよね、という発想から始まったんです。エッセンスだから、水、水滴」

水滴が落ちたあとに浮かび上がる波紋という、とてもシンプルなデザイン。

いつ誰が見てもその美しさを理解できるものをつくりたかった。

とはいえ、実現するのは一筋縄ではいかなかったそう。

「くっきりとしたイメージはあったのですが、それを実現する具体的な道筋はまったく見えませんでしたね。まずはガラス屋さんに当たってみるところからはじめました」

訪ねた先々で、難しいと断られたり、莫大な金額になってしまうと言われたり。そうしてたどり着いた吹きガラスの工場で、プロトタイプと出会う。

「最初は、マヨネーズをぴゅっとだしたような形で。でもニコラは、ポテンシャルがある、これは必ず形にできるよって」

「その言葉を工場の皆さんがとても喜んでくださって、次に訪れたときにはほぼ現在の形になっていたんですね。無事に完成させることができました」

肝心の香りも、甘いなかにどこか落ち着きを感じるような。はじめての香りです。

「そう。和の甘い香りはまだないから、自分たちでつくったんです。きっと和の香りもつくれるはずだって。調香師さんと協力して、ヒノキや和菓子、緑茶などの香りをブレンドして完成しました」

淡々と語る宮元さん。けれど、きっとどれも簡単ではなかったはず。

「そうですね。でも、皆ができないって言ってるからこそ、やりたいんです。今はできないと言われているものも、ポテンシャルさえあればできる。きっと、みんな無茶を楽しんでいるんでしょうね」

続いて話を聞いたのは、プロダクトデザイナーの佐竹さん。

7年前に入社してから、化粧品のデザインを中心に担当してきた方。

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「父が小さな工務店を営んでいて、母も陶芸教室の先生をしていたんです。そんな環境だったからか、僕も自然とものづくりの道を選んでいましたね」

高校はデザイン科に進学し、専門学校でもプロダクトデザインを専攻する。キュリオシティには、卒業後すぐに入社した。

実は、働きはじめたときにはインテリアデザインにも興味があったそう。

「ものづくりも好きでしたが、インテリアのような大きな空間も好きだったんです。キュリオシティを知ったのも、インテリアですごく有名だったから」

「面接でも、実はインテリアにも興味があるんですって言ってみたんです。でも、まずはプロダクトデザイナーとして働いてくださいねと言われました(笑)」

実際に働いてみて、どうですか。

「境界にとらわれていないんです。たとえば、化粧品のパッケージの仕事がきたときに、形だからプロダクトの仕事だ、いや印刷するからグラフィックだろ、とはならない。お互いに専門性を持った上で、半歩ずつ踏み込む感じ」

「いいものをつくるのには、それは欠かせないと思うんです。だからこうしていろんな領域と交わりながらものづくりができるというのは面白いし、ありがたいですね」

佐竹さんの中で一番印象に残っている仕事が、約3年にわたって携わってきたカネボウの化粧品「KANEBO」。

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はじまりは、企業を象徴するブランドをつくりたい、というカネボウからの依頼だった。

「当時カネボウさんは新たに生まれ変わりたいという意思を強く持っていました。化粧品にとどまらず、美しい女性の人生をつくりたい、やがて世界にも展開してゆきたい、と話してくれたんです」

依頼されたのは、ブランドロゴ、ストアカウンター、そして商品のボトルデザイン。社内チームを組み、佐竹さんはボトルデザインを担当することに。

世界的な化粧品メーカーの、一大ブランド。

容易ではなさそうです。

「そうですね。やはりとても大きな仕事だったので、僕も試行錯誤しながらとにかくたくさんのアイデアを出しました」

「コンセプトはフロウ。水が滴るには四角い形もありなんじゃないか、やっぱり丸みを帯びたほうがいいんじゃないかって、連日悩みながら何枚もスケッチを描きました」

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ほかにも、発泡スチロールや3Dプリンターで模型をつくる。いろんなものに触れ、適した質感を探す。

「最終的にはテーブルいっぱいにスケッチや模型を広げて、ニコラや宮元にジャッジしてもらいました。これは可能性を感じる、このデザインではない、というように。時間をかけて頑張ったから合格ではない。あくまで結果主義です」

そうして残ったデザインをもとに、またスケッチを重ね、模型をつくり、ブラッシュアップしていく。

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クライアントへのプレゼンテーションでは、試行錯誤の末に絞り込んだ3案を提案した。

「どの案も商品の10年先まで考えて、色や質感を変更できたり、グラフィックを加えることができたり、許容のあるデザインにしました。アイデアが一人歩きしないよう、ブランドがこれまで歩んできたストーリーと合わせて説明します」

化粧品は毎年新調される。今現在だけではなく、やがて商品が広がってゆくとき、このデザインは何ができるのだろう。

いろんな可能性を想定しながらデザインした。

驚いたことに、キュリオシティではプレゼンテーションをまとめた資料を一冊のブックとして箱におさめ、プレゼンテーションの参加者一人ひとりにプレゼントするという。

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自分のブランドのアイデアが詰まったブック。

クライアントも、とてもうれしいだろうな。

「準備期間が1ヶ月あったなら、すべてをアイデア出しには使わないんです。最後の1週間は、ブックの箱をつくったり、プレゼン自体を引き上げるためにとっておく。世界に引き込む準備というのかな」

世界に引き込む。

「プロジェクト自体にストーリーをつくって、パッケージングするイメージです。このプロジェクトは、どういう雰囲気をつくるといいのか、どういうふうに話をするのがいいのかも考える。それもデザインですよね」

実は取材に伺った日は、商品の発表会当日。

佐竹さんはとてもうれしそうでした。

「自分がデザインしたものが完成して、新商品として世の中に出る。やっぱりほっとするし、うれしいですね」

キュリオシティのデザイナーは、ニコラさんとも深く関わりながら仕事をする。

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大変なところはありますか。

「会話がスケッチで終わるんです(笑)A3の紙に描いたスケッチを一枚渡されて、『あとは君におまかせね』って。最初は、何が当たりなのかわからないから辛かった」

「それに、何もかもニコラに確認できるわけではない。彼が絶対的な正解、という意味ではないのだけれど、彼の感性や言葉に共鳴できなければ難しい仕事だと思います」

佐竹さんは、自分の荒削りのアイデアが、ニコラさんの足した1本の線によってガラリと印象が変わる瞬間が好きなのだそう。

「ニコラは関わっていくことを歓迎してくれるし、何より自分のデザイン的感性にぴったりと合う。濃い時間を過ごせていると思います」

最後に、どんな人と働きたいか聞いてみます。

まずは宮元さん。

「何を美しいと思うか、そういった感覚を共有できる人がいいですね。その人の素の部分で、同じものを美しいと思えたらうれしいです」

佐竹さんはどうでしょう。

「ブレーキを踏まない人ですね。たとえできないと感じたときにも、実現するために頭と手足を動かせる人だったら、いろんな領域に関わっていけると思います」

自らの手で、ここまでだと線を引くようなことはしない。

ここで働くデザイナーは、いろんな境界を自由に横断しているように感じました。

キュリオシティのデザインの領域は、まだまだ広がりそうです。

(2017/6/27 遠藤真利奈)