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歴史ある避暑地として知られる軽井沢。株式会社ワタベアンドカンパニーは、軽井沢で最も多くの別荘を管理する会社です。
別荘管理事業を軸に、リゾートホテル運営やケータリング、不動産販売・仲介など4つの事業を展開しています。
今回募集するのは、別荘管理に携わる人。
お客さんが別荘に不在のときも、滞在中も。あらゆる要望に応えるこの仕事は、まるでコンシェルジュのよう。
必ずしも依頼されたことだけを行うのではなく、自分の頭で考え動く姿勢が求められます。経験は問いませんが、憧れだけでは続かない仕事かもしれません。
それでもひたむきに、考え行動し続ける人たちに出会いました。
軽井沢駅から徒歩3分ほど。ログハウスのような建物が、ワタベの本社です。
はじめにお会いしたのが取締役の設楽さん。
「ぜひ管理している別荘を見てください」と言っていただき、10分ほど車に乗って移動する。
まず別荘管理ってどんな仕事なのか聞いてみると、ちょっと衝撃的なエピソードが返ってきた。
「管理の打ち合わせの際に別荘オーナーのご婦人から、『あなた今日何色のパンツはいてるの?』って聞かれたことがあります。え!?って思ったんですが、『あなたたちの仕事ってそれくらい私生活の中に踏み込む仕事よ』と」
「確かに、家の自分の家の鍵を人に預けることってなかなかできないことですよね。それだけ信頼関係が必要な仕事だということを教えていただきました」
清掃や草刈り、レストランや新幹線の予約にホームパーティの設営から運営まで。
快適に過ごしてもらうためなら、どんなことでも引き受けるのが別荘管理の仕事です。
今でこそ約500件もの別荘管理を任されているワタベだけれど、創業当初は本当に仕事がなかったと設楽さんは振り返る。
代表の渡部さんと設楽さんは、同じ軽井沢の不動産会社の出身。
あるとき別荘を所有するオーナーから、「欧米には別荘での滞在中、食事や車の手配をする仕事が一般的なのに、なぜこれだけ別荘が集まる軽井沢の地に、そういう事業がないのか」と問われたことをきっかけにはじめた会社が、ワタベアンドカンパニーだった。
「想像以上にマイナスからのスタートでした。町内半数以上の別荘への飛び込み営業や、ゴミ回収無料券をつけたチラシを配ったりと試行錯誤しましたが、当時の反響はゼロでしたね」
潮目が変わったのは、別荘管理会社のあり方を見直したとき。
「軽井沢に、別荘管理会社は数えきれないほどあるんです。ただ、草刈りや掃除などの作業のみをする会社がほとんどでした。別荘に滞在されている方々にご希望を伺ってみると、従来の管理会社では応えられないニーズがあるとわかったんです」
たとえば、駅に車を届けてほしい、別荘の花瓶に花をいけてほしい。
些細なことだけど、あるとうれしいもの。それをサービスとして提供していこうと考えた。
「管理会社っていうより、サービス会社ですよね。頼まれたことはなんでもやって、喜んでくれたら、いくらで受けるか金額を決めて。それから一気に問い合わせや紹介が増えたんです」
その後は、ホテルの運営なども頼まれるように。求められるままに、仕事の幅は広がっていく。
大切にしてきたのは、“できない”と言わないこと。
「ホテルの運営できる?と言われたときも、できます!と言ってから一生懸命考えるような形でした。ホテル運営ってどういうものなのか、一から学んで試行錯誤を続けていましたね」
できない言い訳よりも、実現できる方法を考える。
「一時は収入面や体力面で厳しくなって、辞めようかと思ったことが僕自身もあります。だけど何をやるかより、誰とやるかというところがすごく大きかったんですよね」
誰とやるか。
「代表の渡部をはじめ、このメンバーでやりたいという気持ちが強かった。毎日が文化祭の前日みたいな感じで、地道な仕事でもこの人たちとだったら大丈夫だというのが、昔も今もモチベーションですね」
ワタベには、設楽さんのように熱い想いで働いているメンバーが多いし、新しいことをはじめるときにも「やってみたい」という人の情熱に動かされることが多い。
「日本仕事百貨への掲載もインターン生が提案したことですし、僕も別荘管理事業部を担当したいって自分で立候補したんです」
「もちろん責任は伴いますが、年齢も経験も関係ない。自分の居場所は自分でつくっていくものだと思うんです」
自分の居場所は自分でつくる。次に話を聞いた木島さんも、まさにそういう人。
未経験からこの世界に飛び込み、今年で5年目。今では別荘管理事業部の課長として働いている。
「出身は軽井沢です。ずっと東京で働いていたんですけど、震災や結婚を機に軽井沢に戻ってきたいなと思って、職を探していました」
東京ではフィットネスジムでインストラクターをしていた。その経験を生かせる仕事は軽井沢ではなかなか見つからず、ひょんなことから紹介でワタベに入ることになったそう。
別荘管理の仕事は、どんなふうに進んでいくんですか?
「まずはお客さまがご滞在される前に、別荘のチェックをします。建物や敷地内に不具合がないか、事前に準備しなければいけないことなどを確認するんです」
その後は建物内の清掃やお庭の草刈りなど従来の別荘管理の作業に加え、依頼があれば消耗品の補充や買い物の代行も行う。
「夏は空気の入れ替えをしたり、冬は暖房をつけたり。季節によって建物やお庭の状況も変わるので、お客さまのニーズを組み込みながら滞在準備をするんです。ご滞在後は、私たちでゴミの回収や施錠確認などを行い、最後に清掃をして次の滞在に備える。それが一連の流れですね」
どれも自分の名前が出ないような、地道な業務が多い。単調な作業に感じてしまいませんか?
「ただ手を動かしているだけでは作業になっちゃうと思います。だから、お客さまがこの別荘をどんな目的で利用されるか考えるようにしているんです」
目的、ですか。
「たとえば、この別荘は眺望が素晴らしいので、テラスに椅子を出してお茶を飲んだり仕事をしたいと思うんです。座った目線の先に、蜘蛛の巣がはっていたら気持ち悪いだろうから取っておこうとか、そういう目線が必要ですよね」
同じ別荘を担当していると、その場所を使うお客さんの癖も見えてくるそう。微妙な変化を感じとりながら、より過ごしやすい空間をつくる工夫をいつも考えている。
「よく使う食器は取り出しやすい場所に置くとか、セッティングを変えることもあります。それを好まないお客さまもいらっしゃるので、加減をしながらですけど」
“やるべきこと”をやるのは当たり前。“やったほうがいいと思えること”まで全部やる。
さらに、最も力量を問われるのはお客さんの滞在中。さまざまな依頼や問い合わせに応えていきます。
過去には暖房の不具合を直してほしい、話し相手になってほしいというものや、海外から大切な取引相手がくるので自分の代わりにアテンドをしてほしい、という依頼もあったのだとか。
「『いつも来てくれるのはワタベさんだけだよね』と言われると、自分のやっていることは間違っていなかったんだなと思えます。何も言われないときでも、何事もなく終わったことへの安堵感というか。いい滞在時間を過ごしていただけたなら、やっていてよかったなと感じますね」
どんな仕事でも「自分の仕事」として責任を持って取り組むから、やりがいにもつながっていく。一方で、自身の持つ知識や技術では補えないこともたくさん出てきて大変そうです。
「そうですね。毎日がサプライズという感じです(笑) でもわからないことは社内の人たちにすぐ相談できますし、前例がない場合はネットで調べたり、メーカーに問い合わせたりして」
「少しずつノウハウがたまっていくので、電球や床暖房に使われる不凍液をストックしておこうとか、予め対応を考えられるようになりますよ」
新しく入る人は、ワタベが運営しているホテルで清掃のやり方から学びます。その後少しずつ、お客さんのこと、別荘のことを知りながら関係づくりもしていく。
常に相手の立場に立つ気持ちを大切に働いていれば、いつしか木島さんのようなおもてなしのプロフェッショナルになれると思います。
「うちの会社では、サービスを受けている側のお客さまがわざわざスタッフに会いにきてくれることがあるんです。『設楽くん、いる?』って。それって本当にすごいことです」
うれしそうに会社のことを話してくれたのは、フロントデスクで働く吉田さん。
フロントデスクは、お客さんから別荘滞在中に依頼があったときの窓口となる部署。依頼内容を木島さんたち現場のスタッフに伝え、きちんと依頼が遂行されたかどうか確認し、請求処理をするまでが仕事です。
吉田さんと話していると、はつらつとしていてあったかい印象を受けた。昨年新卒で入社し、社内のみなさんからは「まりちゃん」と呼ばれて、可愛がられていました。
入社後は、いきなり思ってもみなかった仕事に抜擢される。3日間で120人が訪れる、大きなイベントの準備を担当することに。
会場設営やスタッフのお弁当の手配、来場者の宿の手配。吉田さんにとっては、はじめてのことばかりだった。
「事務職で入ったのに、こんなことも!?と思ったんですが、フォローしてもらって乗り越えられました。本番が終わった後は、うれしくてみんなの前で号泣しましたね(笑)」
「枠にはまらず、本当になんでもやるんです。社員一人一人が、みんなスーパーマンなんですよ」
たしかに。みんな依頼に対してノーとは言わず、実現方法を考え行動する。まさにスーパーマンだ。
そんな中で自分もやっていけるのか、不安は感じませんでしたか。
「驚きはしました。でもみんな自分が助けてほしいときに助けてくれるから、自分もああいう人になりたいなって。だから食らいついていこうと思ったので、入って後悔はないですね」
今後は、より現場の人たちが働きやすい仕組みや環境をつくっていきたいと考えているそう。
「みんな経験を積んで、感覚でやっている部分が多いんです。だから、できるだけ情報を蓄積して共有していきたい。フロントデスクは自分が訪れたことのない別荘について指示を出すこともあるので、現場の人と認識のギャップが生まれないような工夫もしていきたいです」
仕事は自分でつくっていくもの。その姿はとても生き生きとしていて、眩しく見えました。
きっと、誰もがいきなりスーパーマンになれたわけではないと思います。
時間はいくらあっても足りないし、失敗することもある。どうしようもないことだってあると思う。
それでも誰かを想って、頭を巡らせながら体を動かす毎日が続いていく。
「こうしたらもっと喜んでもらえるかな?」「このほうが使いやすくなりそう」
そんな想いを一緒に分かち合える仲間を、軽井沢で待っています。
(2017/6/30 並木仁美)