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ファッション・サーモグラフ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「安くて同質なものがあふれる時代。ぼくらはたまたま洋服に関わっていますけど、なんでも同じです。選ぶ側も提案する側も、昔より温度が低い気がしていて」

「買う・売るという以上に、もっと温度のあることを提案していきたいんですよね」

P1660933 これは、今回の取材で印象に残った言葉です。

たしかに、どこか冷めた目で状況を眺め、効率よく済ませることに重きを置く人が増えているような気がする。

他人事のように言ったけれど、少なからず自分にもそんな面がある。ネットで注文できることや、顔を合わせずにコミュニケーションできること。便利な世のなかになったと同時に、どこか温度が失われてきたような感覚もある。

そんな時代にあって、セレクトショップ「A.I.R.AGE(エアエイジ)」は、温度感のある買い方、ファッションとの向き合い方を提案しています。

今回募集するのは、商品の仕入れや販売を行うスタッフと、Webの運営や商品撮影をするスタッフ。経験は問いません。

“オシャレ”や“センス”を押し付けられない、気持ちのいい空間がそこには広がっていました。ファッション好きはもちろん、ファッションに馴染みがないという方にこそ、ぜひ知ってほしいお店です。


東京から新幹線で名古屋駅へ。

地下鉄を乗り継ぎ、30分ほどで名鉄春日井駅に到着。

線路の隣に田んぼが広がる、郊外ののどかなまち。

P1660692 駅の近くには全国各地の地方都市と名古屋を結ぶ県営名古屋空港もあるし、高速道路も走っている。車社会の名古屋周辺では、アクセスしやすい場所に位置していると言えそうだ。

駅からのんびり歩くこと15分、周囲から浮き立つ大きな建物が見えてきた。

P1660703 なかに入ると、広々とした空間が広がっている。

P1660844 この建物全体がA.I.R.AGEの店舗。倉庫を改装したように見えるけれど、一から建てたんだそう。

メンズ・レディースはエリアで分けられているものの、同じ空間のなかでひとつの世界観をつくっており、コスメや生活雑貨が並ぶスペースもある。居場所によっていろんな姿が見えるお店だ。

案内してくれたのは、ショップマネージャーであり、MDを担当する祖父江さん。

P1660735 「うちのひとつの強みは、見ごたえというか。個店としてはなかなかない大きさがあるので、このなかでどんな世界観を演出していくかについては、かなり意識していますね」

言葉の一つひとつをとっても、しっくりくるものが出てくるまで待つ祖父江さん。演出家のような雰囲気と語り口に、自然と引き込まれてゆく。

「セレクトショップとはどういうものか、常に考えています。洋服のセレクトも、お店のつくりも、ぼくはギャップが大事だと思っているんですね」

ギャップ?

「ええ。ギャップにもいろいろあると思います。たとえば、新品のなかに古着があるとか、意外性のあるブランドが差し色のように入っているとか。それに、ローカルな立地もギャップを生む要素のひとつなんです」

たしかに、周囲ののどかさとこの空間の雰囲気にはギャップを感じる。

P1660836 ホームページにも具体的な情報はほとんど載っていなかったし、もっと都市部にあるお店なのかと想像していたから、いい意味で期待を裏切られたというか。

「その『やられた!』という感覚が、一番人を惹きつけるんじゃないかな」

「半年に一回、一年に一回でも、『ショッピングに行きたいな』と思ったときに選択肢に入るお店にしたいんですよね」

実際のところ、岐阜や三重など、遠方から訪れる人も少なくないそう。

ギャップを生み出すという考え方は、祖父江さんのこだわりであるとともに、経営戦略でもあるのだと思う。

「今これだけECだとか大型商業施設が多くなっている時代のなかで、個店としてどう続いていくか。当然、危機感もあります」

「SNSはすごく大事だし、Webショップも必要不可欠なツールになっているのは百も承知なんですけど、それはあくまでひとつの手段。バランスが大切だと思います。やっぱり基本は、お店に来ていただいて、ぼくらのセレクトしたものを、ぼくらの手で提案していきたいんです」

A.I.R.AGEでは、販売のスタッフが仕入れも行う。都内の展示会に出向くこともあれば、日常生活でふと気になった商品を仕入れることも。

だから、商品の背景には必ず仕入れた人のストーリーや想いがあり、おのずと提案にも温度が生まれる。

「商品だけを仕入れるのは、自分一人でもできます。ただ、全部ぼくがやったら、ギャップが生まれなくなってしまう。それぞれのスタッフが、ぼくにない色を加えてくれるんです」

P1660848 現在、20代〜30代後半のスタッフがバランスよく働いているA.I.R.AGE。空気感は共有しつつも、それぞれの趣味嗜好や年代、視点の違いを取り入れることで、ギャップはさらに多様化していく。

また、仕入れに限らず、スタッフの発案でイベントを企画することもあるそう。

「7月の頭には、ブルキナファソの編みカゴのフェアと、毎年開催しているサングラスのイベントをやりました。今までうちを知らなかったお客さまにも、イベントをきっかけに来ていただけるのはいいことですよね」

P1660854 今回募集する販売・仕入れスタッフは、必ずしもアパレル経験はいらないという。むしろファッションに馴染みがない人でもいい、と祖父江さん。

「これまでの知識や経験が生きることもあれば、邪魔をすることもある。ぼくはそれよりも、恥をかける人のほうが伸びる気がしていて」

恥をかける人?

「最初って、接客してもびっくりするほど売れないんですよ。売れたとしても、それは実力じゃなくてハプニング。経験を積んでも10回接客して3回ぐらいしかうまくいかないような仕事ですから、甘くはないです」

「でも、多くの失敗から学べることはたくさんあります。できないことが悪いんじゃなく、そこからどうすればいいか考えられるということが一番必要で。失敗をフォローできるだけのチームは、ちゃんと成立していると思いますよ」

P1660896 祖父江さん自身、ショップマネージャーという立場から、売り上げにはシビアな感覚を持っているはず。

ただ、決して売ることを目的にはしていない。

ファッションを通じ、買う人と売る人双方の気持ちがちょっと上向くこと。社内のスタッフ同士も、互いに補い合うチームであり続けること。そして、結果として魅力的なギャップのあるお店が続いていくこと。

そういった部分に面白さを見出しているような気がする。

「自分の意図を持って、安くない金額で洋服を仕入れてくる。正直、スタッフの自信と不安は背中合わせだと思います」

「その不安をかき消すパワーって、一番もらえるのはお客さまからなんですよね。お客さまとスタッフという距離感のなかでおっしゃっていただく言葉は、身内のぼくらが何を言うよりも血肉となり、背筋を伸ばしてくれます。表情や立ち居振る舞いまで変わっていきますね」


そんな話を聞いて隣で頷いていたのが、販売と仕入れを担当する大西さん。

P1660947 仕入れの担当は、この春夏シーズンがはじめてだったそう。

「はじめて自分で展示会に行き、すごい金額の買い物をしてきて。店頭に並んだときは、うれしい反面、不安も大きくて」

「その洋服が今、自分の接客を通して『すごくかわいい』と気に入ってもらえて、買ってもらえたり。帰り際に『ありがとう』と言っていただいたり。最近はそれが一番のやりがいですね」

うれしそうに話す大西さん。

地元の三重県から進学を機に名古屋へ。専門学校へ3年通い、アパレルの大手企業に就職するつもりだった。

「最後の最後、面接で落ちてしまって。すでに大手の募集はどこも終わっていました。そんなとき、就職担当の先生にこのお店のことを教わって、一度見にきたんです。そこですごい衝撃を受けて」

迷わず応募し、その年で唯一、新卒採用されたんだそう。

当時の面接を担当した祖父江さんに聞くと、素直さがよかったという。たしかに、大西さんはまっすぐに「恥をかける人」なのかもしれない。

P1660864 「未だに年に2回はスランプがやってきます。でも、それがないと初心に返れないので」

「自分で仕入れた商品を並べて、お客さまに直接買っていただける。きっと大手の会社ではなかなか経験できないことですし、今振り返るとここに来れてよかったなと思いますね」

全部が自分に跳ね返ってくる仕事。プレッシャーが大きい分、お客さんからの反応がちゃんとかえってきたときの喜びも大きいんだろうな。


最後に話を聞いたのは、レディースの販売を担当している奥村さん。

P1660941 4年間通ったファッション系の大学。ビジネスや服づくりなどいろいろ学んだものの、どれもなんだかしっくりこなかったそう。

「ただ服が好きという単純な理由で入ったので、特別何かやりたかったわけではなかったんです」

大学2年生だったある日、友人に連れられてA.I.R.AGEを訪ね、衝撃を受けた奥村さん。アルバイトとして働きはじめ、昨年からは正社員として、新人教育も任されているという。

「わたしは、シーズンごとに扱うブランドが変わっていくのが楽しいです」

「秋冬だけのブランドもあるし、1年前とは違うブランドがあったりもするので。服好きな人は単純に楽しいと思います」

P1660829 たしかに、これだけ広い店内にいろんな服が揃っている環境って、なかなかないかもしれない。もともとファッションに馴染みのなかった人も、ここで働くうちにどんどん興味が湧いてきそうな気もする。

普段、接客以外で担当していることはありますか。

「イベントを企画したり、ポップや宣伝用のバナーをつくったり、ブログを書いたり。Webまわりを主に担当しています。あとは商品撮影とか」

「すべて自分たちで、業務時間内にやるスタイルなので。切り替えは難しいかもしれません」

P1660914 接客を第一優先として、手の空いた時間に事務や検品の作業も行う。Webページの構築や管理は専属の運営スタッフが行う一方で、販売・仕入れのスタッフも日常的な更新作業を行なっているそうだ。

役割がはっきり分かれているわけではないから、今回募集するスタッフも、適性に応じていろんな仕事に取り組むことになると思う。

「これまでファストファッションや大手のお店でもアルバイトを経験してきましたけど、やっぱりここは一人ひとりをよく見てくれる環境だなと感じます。地味な仕事でも機械的じゃないというか。お互いを見ていながら、すごく自由なんですよね」

ここで働くみなさんの関係性を、端的に表すのは難しい。

近い距離感にいながら、仲良しだけではないような。ときにライバルであり、ときにチームにもなる。お互いへの尊敬も感じる。

共通しているのは、そこにちゃんと人が感じられる、という一点かもしれません。

温度のある働き方をしたいという人は、ぜひ。

(2017/7/24 中川晃輔)