求人 NEW

やわらかに、しなやかに

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ここで働く人たちを見ていると、やわらかい中にも芯があるなと感じる。それぞれが自分なりの想いを持ちながら働いていて、だからこそお互いを尊重しあっている。

そんな気持ちの良い空気を感じる取材でした。

今回は、ウッドバーニングと呼ばれる木を焦がしてつくるアートや、マトリョーシカをはじめとする国内外の木工品と工芸品を扱う「GINZA HAKKO木の香」で働く人を募集します。

kinoka01


銀座駅から、歩いて5分ほど。大通りを一本入ったところに、木の香を見つけた。

ガラス張りのお店の中には、カラフルなマトリョーシカが所狭しと並んでいる。素通りできずに、思わず足を止めた人を何人も見かけました。

kinoka02 お店に入ると、ゆったりとした雰囲気が心地よい。下にどうぞ、と地下にある多目的スペースに案内される。

普段はアート作品の展示会やワークショップを行う場所として使われているのだそうだ。

ここで迎えてくれたのが、店長の加藤さんと開店当時から一緒にお店を運営している高梨さんです。

kinoka03 木の香を運営しているのは、長年はんだごてをつくってきた白光株式会社。

その技術を活かして、レザークラフト用に革を焼くための道具として誕生したのが、現在ウッドバーニングに使われている「マイペン」だ。

実際に見せてもらうと、電気で熱くなるペン型のもので、簡単に木に焦げ目をつけることができる。

kinoka04 加藤さんは営業として、入社したときからマイペンを担当していた。

「年間50個くらいしか売れないものだったんです。革細工以外でもなんとかして売れないかって会社からほぼ丸投げされて。でもどんなふうに使えるだろうとアイディアを考えたりするのは、昔から好きでしたね」

革細工以外の使い道を調べていくうちに、マイペンを使って木に絵を描いている人たちがいることを知った。

写真のような緻密な絵はもちろん、初心者でもトレーシングペーパーとマイペン、木製の素材があれば趣味として簡単にはじめることができる。

kinoka05 「それならきちんと協会として立ち上げようということになって。それまでは焼き絵アートとかいろんな名前で呼ばれていたけど、ウッドバーニングという呼び名に決めました」

ウッドバーニング協会の発足は、1999年のこと。その流れのなか、千葉そごうにウッドバーニングのお店を出そうとはじまったのが、木の香だ。

これまで営業職をしていた加藤さんと、新入社員として会社に入ったばかりの高梨さん。2人で小売のノウハウも経験もまったくないなか、お店を開けることになった。

「どんなお店にしようかと話していたときに、手づくりが好きな人やつくるのが苦手でもハンドメイドなものが好きっていう人が集まるようなお店がいいねと。さらに木はプラスチックにないあたたかみを感じられるから、それを出せるようなお店をつくろうと話したんです」

そのコンセプトは、銀座に店を移したあとも変わっていない。

ところが、コンセプトは決まったものの当時はウッドバーニング用のマイペン以外に、主役となるような商品がなかった。

「今でこそ落ち着いたいい感じになってますけど、最初は学園祭の準備みたいでした」

「クリスマスのイベントをやりますと百貨店に言われても、商品がない。二人でクリスマスの絵をウッドバーニングで描いたりして、全部手作りで。売れないと困るんだけど、売れちゃうと在庫がないから困る(笑)催事場を二人でまわって、取引してくれそうな人を突撃訪問したりもしていました」

そんなふうに人とのつながりをつくって、少しずつ扱う品物を増やしていた。なにもかもが手探りの状態のなか、どうしてマトリョーシカに力を入れることにしたんだろう。

kinoka06 隣で聞いていた高梨さんが教えてくれる。

「私が個人的に好きだったんですが、たまたまマトリョーシカを扱っている問屋さんをみつけて。置いてみたら、すごくお客さまから反応があったんです」

当時あまりマトリョーシカを売っているお店がなかったこともあって、すぐに人気商品になった。

「ロシアへ直接買い付けに行くと、お土産用のものから作家さんがこだわって描いた一点ものまで、すごく幅広くて。奥が深くて、既製品にはない良さを感じました」

kinoka07 加藤さんはどう感じていたんですか。

「僕にとってはロシアってあまり縁のない国だったんですよね。ヨーロッパへの経由地みたいな感じで。でも工場や作家さんを訪ねて話をすると、すごく面白くていい人たちだし、マトリョーシカを通じてロシア文化の豊かさも伝えていきたいと思うようになりました」

雑貨や手芸の世界でマトリョーシカが注目されたことも追い風になり、自分でつくりたいという人も現れた。

「地下で、ウッドバーニングをつかったマトリョーシカづくりの教室をやるようにもなって。今ではこの場所とウッドバーニング、マトリョーシカがうまくつながっている感じがしますね」

ここまでの道のりを、二人は「大変だった」と言いつつとても楽しそうに話す。

やりたいことに軸はあるけど、できることの枠を決めてしまわずに挑戦してきたからかもしれない。自分ごととして仕事をしている感じがしました。



木の香には、ほかにも紹介したい人たちがいます。

まずは、デザイナーとして働く“けっちゃん”こと毛塚さん。

kinoka08 高梨さんとは、大学の同級生。その縁でアルバイトとして入社し、その後社員になった方だ。前職では、コンサルティング会社でチラシなどの広告デザインを担当していた。

働いてみてどうですか。

「最初は事務を担当していたんですけど、DMをつくるときに意見を出したりしていて。そこからおもしろそうだなってどんどん入り込んでいったら、今の仕事に行き着いたような感じです」

今では木の香で販売しているトートバッグや一筆箋、オリジナルマトリョーシカや広報誌のデザインまで幅広く担当している。

中でもお店や新商品の情報が載った広報誌「木の香通信」は、毛塚さんがメインで関わっているもの。

地方に住んでいてなかなかお店に来ることができない方にも、カタログがわりに保存してもらえるようなものにしようと、毎回趣向を凝らしている。実際、バックナンバーを集めている方もいるそうだ。

「レイアウトを考えるときは、マトリョーシカは手書きなので見にくくならないように気をつけたり、飾ったときの雰囲気が伝わるようにしたり。一人で考えていると趣味が出ちゃうので、いろんな人に意見をきいて誰がみても楽しめるよう心がけています」

kinoka09 聞けば写真撮影から文章まですべて担当しているという。自由にいろいろなことに挑戦できる反面、大変なことも多くはないですか。

「そうですね。前職で経験があるとはいえ、技術や知識が足りなくて困ることも多いです。たとえば写真は独学で、技術というより勘で撮っているかも。でも自分が思った通りの魅せ方で届けたものが販売につながるとかなり達成感があるので、楽しいなと思いますね」

これからは木の香のブランディングにも取り組みたいと笑う毛塚さん。

新しく入る人も、毛塚さんのようにいろいろなことを吸収しながら日々成長したいという感覚を持てたら、さらに空気の良いお店になっていくんだろうな。



「銀座にはたくさん画廊があるし、街並みの中にもセンスがいいものが置いてあるので刺激になっています」

そう話すのは、入社3年目の阿部さん。なんと日本画家として活動する傍ら、木の香でアルバイトをしている。

kinoka10 日本画とマトリョーシカって、なんだかジャンルが違うような気がする。どうしてここで働こうと思ったんだろう。

「よく絵はみるんですけど、立体作品とか工芸品ってあんまりみないんですよね。でも自分とは違うジャンルのものをみることの大切さを感じていて。不思議なんですけど、一人でひたすら篭って描いているよりも、新鮮な視点が入ったほうがいい絵になるんです」

「ここは下がギャラリースペースで、木彫作家さんやステンドグラス作家さんとか別ジャンルの人とのつながりが持てる。関係なさそうに見えて、実はそういうことが自分の創作活動への栄養になっているんですよ」

kinoka11 日々の仕事はお店に立つ接客をメインに、webから注文が入った商品の発送やブログの更新。そのほか、お客さまからの問い合わせにこたえたり、ウッドバーニング協会の事務も担当しているそうだ。

扱う品数がとても多いから、すべて勉強してお客さまに伝えるのは大変だろうなと想像する。

阿部さんはどうやって勉強しているんですか?

「接客をしていると自然と覚えていくこともあるんですけど、みんなで『このへんはドイツで、このへんはロシア』というように確認しあいながら覚えていますね」

名前や種類を覚えるだけでなく、背景にある物語などにも興味を持てると、接客の幅も広がっていくといいます。

「少し気難しい、年配のお客さまが来店されたことがあって。いろいろと質問されたんですけど、普段からロシアのことやマトリョーシカにまつわる物語を聞いていたので、答えられたんです」

はじめは「なんのお店?」と訝しげに入ってきたお客さまも、「じつはマトリョーシカは日本の箱根が発祥なんですよ」と話しているうちにだんだんと興味を持って、定期的に木の香を訪れてくれるようになった。

スタッフにはロシア人の方もいるので、ロシアの文化や暮らしについても教えてもらえる環境があるそう。知らない世界に出会うことを楽しみながら、知識を深めていけるといいと思います。

販売するだけでなく、ものづくりにも挑戦しているという。

たとえば、年に一回行われる缶バッチ選手権。スタッフそれぞれが個性を持ち寄って、缶バッチをデザインする。木の香の隠れた人気商品になっているそうだ。

kinoka12 「自分でデザインしたものが、売れるとうれしいですね。日本画では写実的なものを描いているので、イラストに挑戦したのはここに来てからなんです」

「自分でデザインしてみると、なおさらデザイナーさんのすごさを感じます。毛塚さんは、写真を勘で撮っていると言ってたけど、ほかのデザイナーさんや絵描きさんをすごくたくさん知ってるんですよね。感性を養うための情報収集力がすごい。社員さんたちもみんな絵を描くので、一緒に働く人たちからも刺激を受けます」

そう話す阿部さん自身も少しずつ活躍の幅を広げていて、まもなく台湾で個展を開くのだそう。

お互いに良い刺激を受けながら、自分の軸をもっていきいきと働いているように感じました。

kinoka13 まずは、自分でつくることができなくてもものづくりに興味や関心があれば大丈夫。

そんな思いを持って、お店に立つ人がきてくれるといいなと思います。

(2017/7/10 並木仁美)