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カフェじゃないカフェの話

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

沖縄は宜野湾市に、カフェユニゾンというお店があります。

たしかに名前にもある通りカフェなんだけれども、話を聞くほどにいわゆる「カフェ」じゃない気がする。

地元の人も、観光で訪れた人も、海外の人も。

毎日さまざまな人が行き交い自由に時間を過ごす店内では、月代わりでアーティスト作品の展示会が行われたり、ときにはライブやトークショーが行われることも。提供される料理から、沖縄の食材や伝統的な調理法を知ることもできる。

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人、音楽、アート、食…さまざまなものがこの場所で融合して、新たな文化として発信されていく。そんな場所に感じました。

自分もその中に入ってみたいと感じたら、ぜひ続けて読んでください。

お店があるのは3つの店舗が入った2階建てのビル。階段で2階に上がり、D&DEPARTMENTの沖縄店の隣がカフェユニゾンです。

入ってすぐに目に入るのは、独自にセレクトされた本。それに沖縄出身・在住の作家がつくった雑貨やアクセサリーが並ぶ物販スペース。

どんなものが並んでいるのか気になって、さっそく足が止まってしまう。

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ようやく店内に目を向けると、大きな窓から見渡せる海と、緑が気持ちいい。壁には天然素材を使ったやさしい風合いの服や小物が展示されていた。毎月変わる、展示のひとつなのだそう。

どうしてこういう空間が生まれたんだろう。

まずお話しいただいたのは、オーナーの三枝さんです。

「最近では、沖縄のロケーションを借りて、単純に内地にあるような店をそのまま持ってくるところがすごく多くなってきたと感じるんです。だけどそうすると沖縄らしさってどんどん薄れていくし、僕はやっぱり内地とは全く違う沖縄の文化っていうものへのリスペクトがすごくあって」

「だからカフェなりに、沖縄の文化を守るために貢献できることをやろうと考えています」

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編集者としてビジュアルブックを多数プロデュース。自身でも著書を出版する文筆家としての顔も持ち、さらに遡ると東京のレコード会社で映像制作もしていた。とても多彩な人だ。

もとは京都を拠点に働いていたけれど、子どもたちが学校に上がる前、2003年に移住を決める。

そして移住先の沖縄で、なんと三枝さんは専業主夫になってしまう。

「共働きをしていたんですけど、育児のために妻が主婦業に入って。働く自分とは生活観が違ってきた。そこで思い切って、逆をやってみようと思ったんです」

2年間の専業主夫生活を通して、価値観は大きく変わった。

「それまでは、仕事に対して人から評価されることがモチベーションになっていたんです。でも主夫業は、やって当たり前で誰も褒めてくれない」

主夫業を仕事だと割り切るのは苦しい。かといって、暮らしとして割り切るのもなんだか違う。

「単純に仕事はお金を稼ぐため、暮らしはプライベートと分けて考えること自体がちょっと違うんじゃないか、人間らしさを奪っているんじゃないか、とそのときに思いはじめたんです」

仕事と暮らしを切り分けない。

「うん。特に沖縄の人はみんな働いて、いくつも副業したりというのも当たり前で。よく考えたら、昔のお百姓さんとかもそうですよね。道具もつくるし、着るものも織るし、家だって自分で建てちゃうし」

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沖縄では、そういう暮らしのあり方がまだ一人ひとりの中に残っている。主夫業をやりながらそういったあり方にふれるうち、仕事と暮らしの関係性を改めて問い直したといいます。

ただ、カフェの運営を始めることになったのは全く偶然の出来事だった。

子どもたちが大きくなり、編集の仕事を再開しようと事務所を探していたときに紹介されたのが現在の物件だったそう。

「当時ここはボロボロの瓦礫の山で。だけど見た瞬間に『この場所はすごくカフェになりたがっている』と感じたんです」

これまで三枝さんが関わってきたものを活かして、今度は空間を編集する。それから12年経つお店には、この場所に関わった人の数だけ、いろいろなものが自然と積み重なっている。

目指したのは、人が分け隔てなく集まれる場所だ。

「30代の頃にバックパッカーで海外をまわったときに入った、カフェやバルの心地よさが根底にあって。観光客だろうが地元の人だろうが、お酒を飲もうが飲むまいが、料理も食べられて、ときには流しの音楽家が入ってくる。そんな普通の人が、普通に楽しめる場所」

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「その中で、働いている人たちも生きているっていう実感を持って、日々が充実するような働き方・生き方につながっていくといいなと思いながら手探りでやっています。単に働き手というよりは、そういうことを一緒に考えてくれる人が来てくれるといいですね」

店長の田代さんは、三枝さんの目指す暮らしと仕事に隔たりのない生き方に共感して、ユニゾンにやってきた人。

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東京で働いていた頃と今とでは、価値観が大きく変わったと話してくれた。

「大学を卒業した当時の僕の夢は、結婚して子どもが2、3人くらいいるような普通の家庭を築くこと。だから就職先も、そのために選んだ会社でした」

残業も少なく、安定したお給料。一緒に働く人たちも環境もすごくいい会社だったけれど、このままでいいのかなという思いもあった。

「働いているうちに、自分が本当に好きな仕事をしたいと思うようになって。一生は続けられないなって感じるような仕事じゃなく、仕事とプライベートを自然と一緒にできるような生活がしたいと思ったんです」

ユニゾンに来てからは、その想いが実現できているそう。たとえば、発酵食品への興味を活かして、パイナップルの酵素ドリンクを開発したり、アーティストの友人と展示会を企画したり。

店内のカウンターや本棚も、どうすればお客さんにとって過ごしやすい空間になるかを考えながら、みんなでつくったもの。

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与えられるのを待つよりも、自分がやりたいと思うことをどんどん仕事にしているような感じ。

「新しく入る人も、ユニゾンが好きな人がいいかな。もちろん売上も大事ですが、『やってみたい』という溢れるような気持ちを持っている人のほうが、うまく一緒に働ける気がするんです」

とはいえ、気持ちだけでできる仕事ではありません。経験や知識がなければ補う努力も必要だと思う。

まずは基本となるカフェの運営をしっかりできるようになる。料理をつくったり掃除もする。ほかにもやらなければいけないことはたくさんある。

でもそれができたら、自分のやりたいことを試すこともできる。そうやって経験することで自分の中の引き出しが増えて、きっと楽しく暮らすための彩りにもなっていくと思います。

続いてお話を聞いた廣澤さんも、自分で感じて、考えながら、仕事の領域を広げている人です。現在は弱冠25歳で、キッチン主任を任されています。

「以前も飲食店で働いていたんですが、ケーキなどのスイーツ系は、ちゃんとやりはじめたのがユニゾンに入ってからで。いろいろ失敗もあるけど、昔はできなかったような発想ができるようになっていて、やりがいになっています」

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たとえば、どんな発想ですか?

「そうですね…バジルを、スイーツで使ったりするんですけど、昔は何と組み合わせればいいのかわからなかった。今は、バジルと柑橘系のフルーツが合うだろうなって思い浮かぶし、沖縄にはバジルの代わりに使われるツボクサというハーブがあるので、そっちを使ってみようと考えられるようにもなりました」

「沖縄はスーパーにも東京にはない変わった野菜があるし、ユニゾンには有機野菜を扱っている人や、お店を運営している人などいろんな人が集まるので。その人たちに声をかけてメニューを考えたり、刺激を受けながら自分次第でいろいろ掴めると思います」

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話すことはあんまり得意じゃないと言う廣澤さん。それでもひとつひとつ、丁寧に言葉を選びながら伝えてくれる様子が印象的でした。

静かに、自分なりの想いを持ちながら働いていることが感じられる。

「キッチンを任されるようになって、お店や料理の質も変えて良くしていかないとという責任感は日々感じています。でも楽しみながら考えて、いいものをつくりたいなって」

「自分は調理の専門学校を出ているわけじゃないので、料理全般に詳しいというわけではないんです。だからもっと幅広くいろんな料理にふれて、自分の経験や能力を上げていきたいと思っています」

三枝さん、田代さん、廣澤さんは、みんな県外から移住してきた人。地元の方にもお話を聞いてみたくて、副店長の伊波(いは)さんにも参加してもらいました。

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物腰も笑顔も柔らかくて、話しているとほっとするような方です。

「にんじんしりしりとか、昆布を炒めたクーブイリチーとか、わたしは子どもの頃から食べているおかず、としか考えていなかったんですけど。ここにきて改めてどうやってつくるんだろう、この言葉はどういう意味なんだろうと考えてみています」

当たり前になっていたものを、問い直すきっかけになっているんですね。

「そうですね。田代や廣澤があちこち行っている話を聞くと、県内に知らないお店もたくさんあるなと感じています」

働いていて印象的だった出来事を尋ねると、自身が初めて本格的に関わった展示会について話してくれた。

「夫婦でやちむんをつくられている方の展示会だったんです。作品数が多くて値段の管理が大変で。素敵な空間が生まれている一方で、裏側では準備や管理がすごく大変なんだなって身をもって体感しました」

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なかでも、シーサーの壁掛けをアメリカからやってきたおじいさんが買ってくれたときは頭を悩ませた。大きな焼き物を、どうやってアメリカまで運ぶか。運送会社に問い合わせたり、ネットで調べたりと奔走したそう。

「自分がわからないことでも、やってみるしかない(笑)展示会ごとに家具を移動したりとか、力仕事も結構あるんです」

展示会、物販、飲食など同じ空間に混在しているから、たとえばランチでてんてこまいのときに「この洋服を試着したいです」と声をかけられることも。

少ない人数で、空間全体に目を配りながら働くのは大変そうです。

「もうしんどいって思うときもあります。でも最近では常連さんの顔も覚えてきて、この人はシロップを使わないとか、よくケーキを頼むとか、それぞれに合わせた対応もできるようになってきたんです」

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「そういうのが、すごくうれしいし、楽しいです。ただなあなあで働いているわけじゃなくて、全部自分の経験につながるから」

人とのつながりやいろいろな生き方・働き方との出会いを通して、自分と向き合うための機会と場もユニゾンではデザインされているような気がする。

ここに集う人たちと一緒に、自分たちにとって心地よいペースで柔軟に変化し続けていくのだと思います。

まずはぜひ、ユニゾンのみなさんと会ってみてください。なんだかカフェ以上の何かが生まれる、いい予感がしてくるんです。

(2017/8/19 並木仁美)