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飽くなき建築

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「大学で建築を一所懸命に頑張ったけど、ダメだったという人。考えたことを設計に落とし込むのが下手だし、かっこいい造形もつくれないけど、想いはあるっていう人。僕はいわゆる建築マニアよりも、そういう人のほうが可能性はあると思っています」

「建築をあきらめきれなくて、やっぱりもう一度チャレンジしたいっていう人と一緒に働きたいんです」

そう話すのは、FESCH一級建築事務所の安井さん。

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なぜ安井さんはそう考えるのかというと、安井さん自身も建築が楽しくて、建築家になることをずっとあきらめなかったから。

19歳で現場監督として業界に飛び込み、設計を本格的に学びはじめたのは30歳のとき。2014年にFESCHを立ち上げる前は、設計事務所で7年間修行を積みました。

どんなときも人一倍に努力し、とことん建築と向き合ってきたからこそ、スキルや経験以上に想いが一番大切なことを知っている。

だから、実務経験はなくてもいい。何よりも考えることが好きな人を求めています。

新築の建築設計や店舗の内装を手がけるFESCHが、設計から現場管理まで携わる人を募集します。

 

東京・北千住駅から歩いて5分ほど。

2年前に立ち上がったばかりのFESCHのオフィスは、もともと中学校だった建物を利用してつくられた創業支援施設の4階にある。

扉を開けると、安井さんが迎えてくれた。

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話しはじめると「社長」や「建築家」であることを忘れるくらい、とても話しやすい人だなあと感じる。

仕事のことになると、時折少年のようにキラキラした笑顔になる。心から建築が大好きな人なんだと思う。

「以前の募集で入ってきたスタッフも建築が大好きなんですよ。その子は学校で頑張ったけどあまり評価につながらなかった。それでもあきらめられないほど建築が好きなんだけど、自分を追い込みすぎて『自分が建築好きか分からない』って」

「僕なんかも、学生時代は全然できないほうだったので、切実に分かるんですよね」

安井さんがはじめて建築に関わる仕事に就いたのは、19歳のとき。

大学へ進学する目的が見当たらなかったから、高校を卒業後に親戚の施工会社で働きはじめたという。

「当時は建築に興味があっても、どんな仕事があるのかもよく分かっていなくて。叔父さんが建築の会社をやってるって言うから、デザインやるのかなと思っていたらバリバリの現場作業の毎日でした(笑)」

仕事はきつかったけれど、現場の職人さんたちは可愛がってくれた。はじめて1棟のマンションが建ったときの感動は今でも忘れられないという。

「仕事が純粋に面白かったですね。飲食店とかのアルバイトとは違って、構造とか設備とか覚えることが死ぬほどあって、まったく飽きなかったです」

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現場監督になろうと専門学校に通い、卒業後はゼネコンに入社。

様々な現場を回せるようになっていくと、今度は設計もやりたいという気持ちが芽生え、店舗の内装施工を請け負うインテリア会社に転職した。

そこでは現場管理の仕事を軸に営業や設計も担当し、見積りから引渡しまで一連の仕事を経験した。

「実は、そのときの営業部長だった人と一緒に内装施工会社を立ち上げているんですよ。1級建築士も取得したんですけど、資格があるからっていい設計ができるわけじゃなくて」

「まあ、単にお客さんの要望を満たすだけだったらできるんですよ。けど、それ以上の何かをプロとしてつくるってなると、話は別で。自分の限界が見えたんですね」

一所懸命に勉強するのだけど、どうして建築家たちが設計したようにかっこよくできないのかが分からなかった。安井さんは当時、設計とはセンスなんだと思っていた。

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また、迷いもあった。当時、安井さんは30歳。会社は軌道に乗りはじめ、次期社長の位置にいた。

「けど、設計者としての自分を確かめずに経営者になるのには抵抗があった。ラストチャンスだと思って大学に入ったら、もうドハマりしちゃったんですよ」

最初の1〜2年はこれまでの経験にとらわれてカタイ設計ばかりしたため、まったく評価されなかった。それでもめげずに続けると、3年生の終わりのころから評価がついてきた。

そうして講師として教えに来ていたヨコミゾマコトさんに声をかけられ、設計事務所で働くことに。

「声をかけてくださった先生が何人もいたなかで、僕はヨコミゾさんのところへ行きました。建築に対する姿勢が好きだったんです」

姿勢ですか?

「そう、建築に対してすごく真面目な人なんですよ。建築家っていうと、自分の感性で好きにつくっているイメージがあるかもしれないけど、実はお客さんの話を聞かないと建築家って何もできなくて」

「その空間で実現したいほんとうのところは何なのか。お客さん自身も気づいていない潜在的なことにいかに気づき、周辺環境や地勢を紐解いてかたちにするってことが重要なんです。それはセンスじゃない。ヨコミゾさんから教わったことでした」

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ヨコミゾマコトさんの事務所で学んだことは、今でも大切な軸となっているという。

たとえば、設計に入る前に、まずはお客さんの話をとにかく丁寧に聞く。

潜在的に望んでいることは何なのか。お客さんが選ぶ言葉一つひとつに着目して、どんどん掘り下げていくそう。

「たとえば、お客さんが『中庭がほしい』と言ったとき」

「その『中庭』とは、お客さんの知っている建築のボキャブラリーのひとつでしかないんです。その言葉をどんなイメージで使ったのかというところを丁寧に聞いていきます」

お客さんは、市街地で子どもを安全に遊ばせるために「中庭がほしい」と言ったのかもしれないし、家の中の通風を良くしたかったのかもしれない。はたまた、友達の家で中庭を挟んだ子ども部屋を見て、子どもの様子が分かる空間がいいなと思ったのかもしれない。

「その上で、本当は子どもが遊ぶための場所がほしいと思っているのであれば、外とつながるような広いリビングをつくったらどうでしょうか、という提案もできるわけです」

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お客さんが真に望む空間が分かったら、今度はそれを実現させるための方法を妥協せずに考える。

たとえば、50センチ角の柱が意匠の理想なのに、構造から「100センチじゃないとできない」と言われてしまったら。

「普通は構造のプロが言うことに、疑いの余地はないと思うんですね。でも実現したい空間としては、デザイン的に50センチの柱であることが大事。そうであれば、柱の数を増やしてもいいわけです」

「言われたことをそのままやっていたらできない。単に依頼された通りにやってもお客さんはよろこんでくれるけど、想像を超えてくればそれだけよろこびも大きくなる。それを実現するのが建築家の仕事だと思っています」

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そんな安井さんのもとには、ほかで断られてしまったという案件の相談がやってくるそう。

ときには非常に難解な案件でも、安井さんは決して「できない」とは言わず、とにかくできることを考えるのだという。

あらゆる面からどうしたらいいかを何度も何度も考えるのだから、とても根気のいる仕事だと思う。

「うちで働くと大変なのは、黙々と作業することでも長時間働くことでもなく、考えることだと思いますよ。本来はそこが最高に面白いんだけど、そう思えない人はつらくなって続かないと思う。だから、建築学科で最後まで頑張ったけどダメだった人に来てほしいというのは、そういうことで」

「そういう人はちょっとコツを教えるだけで、化ける可能性がすごく高い。技術や手法は後からいくらでも覚えられるので。ぜひぜひ仲間として一緒にやりたいと思っています」

 

前回の募集から2人が加わり、今は安井さんを含めて3人がオフィスで働いている。

そのうちのひとり、今井さんにも話を聞いてみる。

「日本仕事百貨の記事には、たまたまたどり着きました。お客さん自身も気づいていないニーズを掘り起こすっていう話を読んで、自分はそんなこと考えたことなかったし、そうやって歩み寄っていけるのがすごく素敵だなと思って」

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最初はCADも満足に扱えない状態だったため、オフィスのトイレ改修など簡単な案件を担当することからはじまったという。

安井さんと一緒に現場同行もしたりして、手法や考え方を一つひとつ教わっていった。

「私が安井さんを見ていて思うのは、本当にあきらめないなと。お客さんの言ってることに対しても、もう実現させることしか考えていないような感じで、とことん追求していくんですよ」

「普通だったら難しいことをずっとやっていると疲れてくるし、最初に浮かんだ案でいいやって妥協しちゃう思うんですけど、全然そういう素振りを見せない。すごいなって」

今井さんは、働いてみてどうでしたか?

「すごい大変だなって思いました。けど、私もあきらめがわるいというか(笑)」

「私が解決方法を見い出せないことでも、安井さんは簡単なことのように解決していくんですよ。技術や知識はまだ全然ないですけど、すぐに『できないです』は悔しい。気持ちだけでいつも頑張っている感じですね」

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今井さんはどんな人に来てほしいですか?

「考えることが好きな人。安井さんはいろんなことを学ぶ機会をつくってくれるけど、考えること自体は自分にしかできないので。『もうこれでいいや』にならない人がいいなと思います」

 

安井さんは建築だけでなく“建築家”についても、とことん考えている。

建築家としてできることは何なのか。これから新しいサイトを立ち上げ、土地や物件を探す企画段階から建築家が参加するサービスをはじめるという。

安井さんはこれからもできることを増やしていくのだと思う。そのための勉強は尽きない。

きっと苦労も多いだろうけど、とことん建築と真剣に向き合える環境がここにはあると思う。

せっかく強い想いが建築にあるのなら、ぜひFESCHでチャレンジしてください。

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最後に、安井さんから。

「僕はいろんなことを自由にやれる組織が最高だと思っていて。だから、うちは通勤時間が自由だし、いつ帰ってもいい。もっと自由になるためには、一人ひとりが建築家としての意識を持って、頭を柔らかくしていろんなことを吸収していかないと」

「今までにない建築家像。そういうのを一緒に目指したいですね」

(2017/8/16 森田曜光)