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We are Artist.

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

誰にも真似できない仕事がしたい。

そう思う人に知ってほしい会社があります。

兵庫県三木市に120年続く、神沢鉄工株式会社です。

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新神戸駅から車で1時間。山陽自動車道の三木小野ICで降りるとすぐに看板が見える。

三木市は、新潟県三条市や岐阜県関市に並ぶ鍛治のまち。数は減りつつあるものの、現在も多くの職人や工場が軒を連ねている。

そのなかでも、神沢鉄工は業界の先端を切り拓くようなものづくりを続けてきた。

現代のエンジンにあたる発動機やもみすり機などの農業機械。のこぎりや剪定バサミ、専門的なものでは、大工が工事現場で使う穴あけ工具の刃や、削り・剥がし作業に使うスクレイパーと呼ばれる道具など。

今では世界の定番となっている形や技術の多くが、神沢鉄工によって生み出されたものだそう。

ただ、“KANZAWA ORIGINAL”が世界に広まっていく一方で、安価な類似品も増え、ホームセンターで気軽に手に入るように。いくら性能に自信があっても、このまま価格競争を続けるのは厳しいという現実がある。

そこで新たに取り掛かったのが、生活に寄り添った刃物づくり。

2014年に新ブランド「FEDECA」を立ち上げ、ナイフのある日常を提案してきた。

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ドイツ語で“爪”を意味する「ナーゲル」の名を冠したナイフは、爪のように気軽に、かつ自在に使ってほしいという意味を込めたもの。

持ち手には奈良県産の吉野杉や鹿角、メガネのフレームにも使われるアセテートという樹脂材など自然由来の素材を使用。ゆらゆらとした波紋を描く刃は、ステンレスを積層化したダマスカス鋼と呼ばれる素材を使い、職人の手で一つひとつ仕上げられている。

どんな使い道があるの?と思う方も多いかもしれない。

たとえば、ガーデニングや手紙の開封に。キャンプやDIYではきっと重宝するだろうし、大きめのタイプなら食材の皮むきやカット、食卓でも使うことができる。

それに、使うという視点を抜きにしても、しばらく眺めていたくなるような、モノとしての美しさも兼ね備えているように感じる。

今回募集するのは、こうしたナイフをはじめとする刃物の職人と、神戸にある直営店のスタッフ。

経験は問わないそう。

「とはいえ、ナイフって、あまり馴染みがないという方が大半だと思います。なんとなく怖い、というイメージもきっとありますよね」

そう話すのは、企画やプレス、デザインなどを幅広く手がけている浅郷(あさごう)さん。

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「昔は身近なものだったはずなんです。鉛筆を削ったり、彫刻を施したり」

安全かつ効率的な機械が生み出され、ナイフが使われる場面は減ってしまった。

「“削る”ことの楽しさを、もっといろんな人に知ってほしいんですよね」

オリジナルナイフの手づくりキット「It’s my knife」は、そんな思いから生まれたもの。

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工程はいたってシンプル。持ち手の部分を好みの形に削り、サンドペーパーで磨いてネジ留めする。大人も子どもも、誰でも自分だけの一本をつくることができる。

浅郷さんは、このキットを片手に都内各地で「It’s my knife」のワークショップを開催。神戸の駅地下に2年前にオープンした直営店でもたびたびイベントを開催し、“削る”楽しさを広めている。

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「代表の神澤がよく言うんですが、うちは大手の工場でも個人の工房でもない、工場(こうば)だと。クオリティに差の出にくい単純作業は機械化して、大事なところは職人の手仕事で押さえる。それによって、ほかには真似できないものを、適正な規模でつくっていこうと考えています」

とはいえ、大工やDIYマニアのような一部の人に向けた専門的な道具を中心につくってきた神沢鉄工。

その流れからすると、ナイフはかなり生活者寄りにある道具だと思う。

ノウハウの少ないなかでのものづくりは、ハードルもかなり高いのではないだろうか。

「1%でも安く、っていうような価格競争の努力は本当にしんどい。その一方で、夢のある努力はいくらやってもしんどくないんですよね」

代表の神澤さんは、さっぱりとした表情でそう話す。

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たとえば、持ち手の部分に採用しているアセテートという素材。綿花と高純度パルプからつくられる樹脂材で、メガネのフレームに使われることが多い。

これを求め、神澤さんはメガネの一大産地である福井県鯖江市に飛び込みで仕入れ先を探しに行ったという。

「何社か回ったんだけど、あまりピンとこなくて。日も暮れかかったころかな、最後にもう一件だけ行ってみようということで訪ねると、奥のほうにものすごい難しい顔した人がおったんです(笑)」

「鋭い目線を感じながら、『すいません、三木から来たんですけど、この素材でこういうモノをつくろうと思ってるんです』って熱意を伝えたら、感じとってくださったみたいで。材料を少しくれはったんですよ。ぼくは買うつもりで行ったんですけどね」

工場に戻って試作を重ね、後日試作品を持って再び訪ねることに。

すると、あの難しい顔をしていた方の表情がガラッと変わったそう。

「『よくやったな』っていう感じで、いきなり優しい顔になってね(笑)。『昔にトヨタも相談に来たけれど、諦めたぞ』って言うんです。鉄との相性がすごく悪いんですよ。今でもそこは苦戦してますけど、磨き方とか仕上げの方法とか、ありがたいことにいろいろ教えていただきながらやってこれました」

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柔軟で軽やか、かつ誰にも真似できないものづくりを目指す。

そんな神沢鉄工の姿勢は、どのように育まれてきたのだろう。

「創業からは120年の歴史があるんですけども。二代目にあたるぼくのおじいさん、非常に不器用だったそうなんですが、アイデアマンで。そのころからいろいろとユニークなものをつくりはじめました」

DNAは受け継がれ、サークルカッターやポンチ、ハンディソーなど、それまでにないアイデアで、のちに世界の定番となるような新製品を次々に生み出してきた。

先代である神澤さんの父は、海外への輸出やホームセンターでの販売にも積極的で、会社の規模を拡大。神澤さんが入社したのは売り上げの全盛期だったそう。

「ただ、モノは豊かになる一方で、なんていうか、心の満足感がないんですよね。20〜30年後、この会社はどうしていったらいいだろう?という不安は、入社当時からありました」

実際、オリジナルとして発表した製品の類似品が登場し、価格競争が厳しくなると、売り上げの低下とともに社内にも不安を抱く人が現れはじめた。

「刃物づくりをはじめたのは10年前からですね。このままではダメだということで、思い切ってやろうと」

従来の設備を一から見直し、機械化工程と手仕事をうまく組み合わせた独自の刃物づくりに取り掛かった。

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そして、2014年に「FEDECA」ブランドを発表。

同年、神澤さんにとって忘れられない出会いがあったという。

「『スネーブール』という、オランダで一流の園芸用品をつくっている会社の社長がうちの商品を見つけて、わざわざ会いに来てくれたんですよ。すぐに意気投合して、ちょうど100周年を祝うパーティーがあるからおいでよって、誘ってもらったんです」

「ほんで、行ってみたらですね、会社の面積や従業員さんの数はうちとほとんど一緒なんですね。でも、今から目指したら100年かかっちゃうなっていうぐらいの素晴らしい会社で。ぼくが夢見てきたような会社だったんです」

ものづくりの環境も、生み出すものも、その背景にある思想も。

すべてが目指すべきところにあると感じたそう。

「でね、彼と話していたときに、『We are artist』と。我々はアーティストだって言ったんです」

それは、どういう意味だったんですか。

「直接教えてはもらわなかったですけど、帰ってからよくよく考えたんです。アートっていうのは、真似できないんですね。ゴッホの絵が素晴らしいからって、いくら真似して描いてもゴッホの絵にはならない」

「本当にいいモノは、つくり手の魂が込められている。だから大丈夫、自分の信じた道を行け。たぶん、そういう意味でこの言葉をかけてくれたんだと思います」

その言葉を信じて突き進んだ結果が今、少しずつ実を結びはじめているのだと思う。

2015年には、欧州最大級の国際見本市である「メゾン・エ・オブジェ」にも出展。

世界的に有名なフランスのナイフメーカー「ラギオール」からコラボレーションを持ちかけられるなど、注目を集めた。

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今回募集する刃物の職人は、神沢鉄工が従来扱ってきた工作機械の操作を一通り経験したうえで刃物づくりに取り組むこととなる。

正直、機械操作を覚えるだけでも時間は必要だし、いきなりやりたいことができる環境ではないかもしれない。

職人の竹中さんはこう話す。

「ベースはそこにあるので。すぐに何かつくれと言われても無理でしょうし、少しずつですね。時間はかかります。そこを我慢できるかどうかは、その人次第だと思います」

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現在、ナイフづくりに携わる職人は、竹中さんただ一人。

ここで働いて15年になる。

竹中さんは、工場の一角に専用の建屋をつくり、作業に必要なハンマーや研磨機なども自作しているという。

「もとからある研磨の機械は30〜40年使っているので、調子が悪くなるんですね。そしたらバラして、修理でベアリング交換したりして。ここにモーターがあって、ベルトがあって、っていう構造がわかる。だから今、こういう機械もつくれるんだと思います」

とは言っても、構造を理解するだけではつくれないですよね?

「…できなくはないと思いますよ。ぼくも別に、工業科を出ているわけじゃないですし、知識はもともとなかったです」

「でも、興味はあったので」

興味。

「興味がないとやらないですよね。機械の仕組みとか、どうすればつくれるんだろうとか。やっぱり自分で考えないとね」

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作業しやすいように研磨機の回転を逆転させたり、小さな刃でも見栄えがするように細かな加工を加えたり。

基本を押さえていくと、やりたいことが自然とできるようになっているそう。

今は神澤さんや浅郷さんたち商品企画チームの意見を取り入れながら、日々ナイフをつくり続けている。

「普段は黙々と作業するので、和気あいあいって感じでもないですけど。新商品であったり、何か今までにないものをつくるのは楽しいですね」

誰にも真似できないものを、自分の手でつくる。

そこに至るまでには時間はかかるだろうけれど、ものづくりの楽しさ、真髄を感じられる仕事だと思います。

そしてそれはきっと、販売していくスタッフの自信と誇りにもつながるはず。

最後に、神澤さんの言葉を紹介します。

「ちっちゃくても世界一の会社ってあるんですよ。規模とか売り上げじゃなくて。やっぱりオランダの『スネーブール』は世界一やと思うし、ぼくらも世界一を目指したい。一緒に目指しましょう」

(2017/9/1 中川晃輔)