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ともに暮らすまちの未来

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自分が暮らすまちに愛着が生まれたり、自分の居場所のように感じられたりするとしたら、それは何に惹かれているのだろう。

さまざまな要素があるなかで、明福興産株式会社の伊藤さん夫婦は、まちの魅力を「人」だと考えています。

「人と人がつながることで、まちを元気にしたい」

そんな想いで、愛知県は上小田井を中心に、地域に特化した不動産業を営んでいます。

伊藤さん 不動産の売買仲介や賃貸物件の管理・運営はもちろん、リノベーション物件やコミュニティスペースの運営、まちづくり活動を手がけるなど、仕事の幅は広い。

それは、地域に根ざした不動産屋として、まちに暮らすお父さんお母さんとして、生活や商売を営む人のこと、そして何十年後のまちの未来を考えているから。

ただ、現在メンバーは3人。なかなか思うように仕事を進められていません。

そこで、営業アシスタントを担う4人目の仲間を求めることになりました。

経験は問いません。

まずは伊藤さんたちの考えを知ってほしいです。



名古屋駅から名鉄犬山線に乗り換える。車窓から庄内川を眺めていると、10分ほどで上小田井駅に到着した。

駅で迎えてくれたのが、明福興産の代表・伊藤さん。

まずはまちの様子や扱っている物件を案内してもらうことに。

目的地に向かうあいだの車内で、この辺りの歴史や伝統行事のことを話してくれる。

着いたのは、「アトリエ379」という明福興産が企画し、管理・運営をしている賃貸マンション。5年前から構想を練り、3年前に完成した。

外観 奥さんの菊代さんも合流して、建物を案内してもらう。

菊代さんは大家として管理・運営を行なったり、インテリアデザインに携わっている。すべて結婚してから勉強して、スキルを身につけた。

さっそく、このマンションをつくろうと思ったきっかけを聞いてみる。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「もともとここには、うちの会社の古いマンションが建っていました。耐震強度を見直す必要があったので取り壊しをして」

「エリアとしては最寄駅から徒歩30分かかる場所。わざわざ新しく賃貸物件を探す人はほとんどいません。だから、私たちの金銭的利益だけで考えたら、建て替えずに売りに出してしまったほうが収益にはなったと思います」

けれども2人は、あえてこの場所で建て直そうと決めた。

建築会社にプランを依頼してもつくってもらえないどころか、馬鹿にされることも多々あった。

でも、このあたりに一度住んだ人は、同じエリア内で物件を探すことが多い。住めばいいまちだけど、魅力が伝わっていないだけなんじゃないか。

「駅からの距離に替わる、ここでしか味わえない価値を伝えることができれば、まちが変わるかもしれないと思って」

二人は、入居者のターゲットを通勤の必要がない人や車通勤の人に絞り、その人たちに魅力的だと思ってもらえる物件をつくったらどうだろうかと考えた。

そんな考えから生まれたこの場所のコンセプトには、大きく分けて2つの想いが込められている。

一つが、暮らしを楽しむこと。

たとえば、近くには庄内川が流れていて緑地公園もあるから、サイクリングが好きな人にはいい環境かもしれない。1部屋分を使って、駐輪場をつくってみよう。

赤ちゃんの肌にも優しいように床には無垢材を使おう。猫が飼いたい人もいるかもしれないからペットを飼えるようにしよう。

求めている人を想像して、こんなものがあったらよろこんでもらえるかな?と選択肢を提供するような考え方だ。

みんなのリビング 「賃貸物件だからと言って、自分が思い描く暮らしを諦めるのは簡単なこと。でも、人が居心地よく暮らしていくには、こういうことが必要なんじゃないかなと思うんです」

募集してみたら、自転車やマラソン、グリーンインテリアを趣味にしている人などから問い合わせがあり、しかも駅に近いところからわざわざ引っ越してきてくれた。

もう一つが、つながること。

1階には「みんなのリビング」というコミュニティスペースがある。そこではふた月に一度希望者を募り、一人一品料理を持ち寄ってみんなで食卓を囲む機会をつくっている。

みんなで晩ごはん ほかにも、住人だけでなく外部の人も参加できるヨガ教室もひらいていて、お二人もよく参加しているそう。

「各部屋の壁は、住むことになった人に好きな色で塗ってもらっています。みんなが同じ体験をすることで、入居したばかりでも共通の会話ができるんですよ」

DIY 「何か困ったときにお互い相談し合えるような人間関係で暮らしてほしい。だから、コミュニケーションがとれる仕掛けをつくっています」

建物の内側だけにとどまらず、まちにも開放することでつながりを広げる。

完成時にお披露目会として夏祭りを開催したときは、百数十人もの人たちが訪れたという。

「暮らすということには、ハッピーなことばかりじゃなくて、人間関係を持ったがためにデリケートな問題を抱えることも含まれるかもしれない」

「でもそういうことを避けるよりも、全部含めてまちに根を張って生きていくほうが、豊かさを手にすることができるんじゃないかなと僕は思うんです」



どうしてそう考えるようになったんだろう。

そんなことを思いながら、事務所のあるビルに案内してもらう。

明福ビル外観 事務所は駅から徒歩7分ほどのビル2階にあり、3階には伊藤さんたちが企画したコミュニティスペースもある。

4~8階は、13年ほど前からリフォームやリノベーションを行なってきた賃貸物件やシェアサロンになっている。

renovation 明福興産は、伊藤さんのおじいさんとおばあさんが経営していた会社。

伊藤さんは大学卒業後、京都にあるベンチャー企業で運送業や引越し事業の立ち上げをしていた。

カリスマ経営者だったおばあさんが亡くなったのを機に声がかかったけれど、はじめは継ぐ気がなかったという。

ところが勤めていた会社が倒産。気持ちをリセットして名古屋に戻ってきた。

戻った当初は、大家として入居者にサービスとよべるものを届けられていない状況だったという。

「低所得者の方も多くいらっしゃって、決して生活に余裕がないなかでも滞納せずに家賃を払ってくれる人たちがいる。それなのに、安心して暮らせる環境を提供することもできていなくて」

どうせやるならしっかりとした仕事をしたい。宅建免許も取得して、売買仲介業も手がけるようにした。

ほかにも入居者とコミュニケーションをとるようにしたり、建物のらくがきを消しに行ったり。伊藤さんはできることからはじめていった。

office そんななかで、まちに根を張って暮らしていくという考えを、強く持つきっかけになった出来事があった。

一つは町内会長を務めたこと。

「町内会って、いろんな人が関わるから軋轢を生みやすいんですね。だから僕が町内会長になったときは、仕事自体は行政の下請けだと割り切って、それよりも、年代を超えた友だちができた!とよろこべるようにがんばろうって話をしたんです」

まずは自分の意識を変えていくことで、チーム全体の考え方が変わっていくのを目の当たりにした。そうしてできた関係は、今でも続いているそう。

二つ目は、PTA会長を務めていたときのこと。

「小学校の通学路内にパチンコ店ができることになって。狭い道路に増える交通量。せめて駐車場に歩道帯を設けてほしいと言ったんだけど、彼らから返ってきた答えは、『収支上割に合わないからやらない』ということ」

「商業ベースの考え方だけでまちの景色が塗りつぶされていくことが、怖いと思いました。子どもたちが成長したときにどういうまちの景色になっているか、考えをもって不動産業をやらなければと確信に変わったんです」

そして、相続も三度経験した。

「それまでは不動産屋として、相続って資産の分配を正確に計算することだとしか思っていませんでした。自分が経験して痛感したのが、お金だけの話ではないということ。亡くなった人の想いをどう汲んで整理するか、試される機会なんだと思ってね」

いろんな経験をしていくうちに、自分たちのお客さんに対する向き合い方が変わったと、菊代さん。

菊代さん-2 「それまでは“お客さま”として付き合ってきたけれど、今は、同じまちに暮らす人として関係を築いていきたいと思っているんです」

「楽しいことを一緒に共有するだけでなく、つながって暮らすことで、さみしいときや苦しいときにちょっと気持ちを聞いたり、小さな変化に気づけるかもしれない。不動産屋はそういうことを少なからずやれる立場の者だと、私たちは考えています」

伊藤さんたちが考える「つながる」という言葉には、まちに愛着をもつ人同士コミュニティを育てることに加えて、小さな声に気づくという意味も含まれているのだと思う。

「まちがよくなる鍵は、やっぱり人にあると思っていて。ただ人を集めるのではなく、人々の意識に働きかけていく不動産屋でありたいですね」


想いが強い分、やりたいことも質を高めていきたいこともたくさんある。

「けれど、正直自分たちがやりたいことに追いつけていなくて、地団駄を踏むような状況なんです」

今後はまちに循環をもたらす仕掛けとして、お店をはじめたいという人と地主さんや店舗オーナーとをつないでいきたい。

そうした展開も含めて、本当はもっとお客さんに会いに行って、それぞれの人が必要とする情報を提供したり、不安をやわらげたりすることに力を注ぎたいところ。

だからこそ、伊藤さんのアシスタントになる人にきてほしい。

まずは土台をつくるため、不動産の仕事を覚えること。取り扱える物件をデータベース化したり、物件の写真撮影、写真加工、書類作成などがメインになる。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA とはいえ仕事に垣根はないと捉えているから、草取りや掃除などメンテナンスの仕事をする日もあるそうだ。

大変に感じるかもしれないけれど、いろんな角度から仕事の意味を理解できることは手応えのあることだと思う。

仕事に慣れていけば、入社する人のアイデアで役割の幅も広げていってほしいそう。

以前はスタッフの方が、明福興産が発行する情報誌にまちのお店を紹介するコーナーを企画して、インタビュー記事を書いたりもしていたという。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ここには、自分で仕事をつくっていける環境がある。

「業界経験はいりません。あるといいのは、人生の経験。単身の方、夫婦の方、子どもがいるご家族、家族の介護をしている方。いろんな人の暮らしの場に何が必要か。経験があればあるほど、提案にも深みが増すんですよね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 伊藤さんたちが目指すところにたどり着くには、時間がかかると思います。

仕事も、最初は地道なものかもしれない。

それでも一緒に働きたいと思えたら、ぜひ応募してほしいです。

(2017/09/15 後藤響子)