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手元や耳元をさりげなく彩るジュエリー。それは身につけるほどに、心に残る一瞬一瞬や想いを刻んで、その人の身体や生活の一部となっていく。

日向龍(ひなた・りゅう)さんと平結(たいら・ゆい)さんご夫婦によって、デザインから製作まで一貫して、二人の感覚を織り交ぜながらつくられています。
二人がジュエリーに込めるのは、なんてことのない日常にひそむ、美しさや面白さ、繊細な心の動き。
あるスタッフの方はRyuiの魅力を、こんなふうに話していました。
「真新しい新鮮なことというよりも、いつかどこかで体感したような心の動きや、自分の記憶の片隅にあるものを、はっと呼び起こさせる。そんな感覚をもたらしてくれるんです」
Ryuiの世界観をつくる一人としてショップに立つ、パートタイムスタッフやアルバイトを募集します。
取材に向かったのは、東京・国分寺。
駅から徒歩5分のビル5階に、Ryuiのアトリエ兼オフィスはありました。
ここで、Ryuiを立ち上げた日向さんと平さんにお話を伺います。

大学卒業後も、それぞれジュエリーとは違うジャンルの仕事をしていたという。
はじめにジュエリーをつくりはじめたのは、日向さん。
「周りにいた友人が彫金製作をしているのを見て、面白いなと思ったのがきっかけでした」
「基礎的な道具と技術があれば自宅でも製作できたので、リングをつくって彼女にプレゼントしたんです。そうしたら、すごく喜んではくれたんですけど、『どうやってくっつけるの?』と、つくるほうに興味を持って」
そうして、最初は仕事の傍、趣味として一緒にジュエリーをつくりはじめた。

それほど夢中になった背景には、ものづくりとジュエリーが好きだったことのほかにも理由があったと、平さんは話す。
「当時私が働いていたのは、薬品や化粧品を大量生産する会社でした。半年かけたデザインでも、売り上げが立たないと短ければ発売から数週間のうちに廃盤となる。それが当たり前のようなところだったんです」
「そういうやり方に対して、どうしても疑問が拭えなくて。一生やるんだったら、自分が生み出した一つの物がずっと大切にされるようなものづくりをしたい。そんな気持ちが強くなっていきました」

「生活に必要不可欠な物ではないけれど、母から娘へ、そして子へと受け継がれたり、一人ひとりの大切な想いが込められています。この小ささで、ここまで人の想いが強く詰まっている物は、そう多くはないように思います」
ジュエリーに強い魅力を感じていった二人は、お互い仕事をしながら3年ほど製作を続け、2008年にRyuiを立ち上げた。

Ryuiのジュエリーに込められるのは、二人が心惹かれる美しさや面白さ。
一体どんなものに、心を惹かれるのだろう。
ここで、『Negaposi』というネックレスを紹介してくれた。
「これは、夜の街灯りを遠くから眺めて目を瞑ったときに、その灯りが瞼の内側に残るような。そういう感覚みたいなものをジュエリーに込めてつくりました」

平さんの言葉に、日向さんも続きます。
「誰もがきれいだと感じるものがある一方で、先入観でものの見方が限定されているものもある。たとえば僕らは石や昆虫を見るのが好きなんですけど、なんでだろうって考えると、よく見たら『すごいな、こんなに光ってる!』『こんな色してるの?!』という驚きをくれるからじゃないかなって」
「フラットにものを見てみることで、案外気づいていない面白さがいっぱいある。そういう価値を見つけたいし、感じたいし、伝えたいなと思っています」
では、どうやって形に落とし込んでいくのか。
二人には大切にしていることがあるという。
「どちらかのデザイン案をそのまま商品化するということは一つもありません。アイデア出しも、かならず二人の間で意見をぶつけて、お互いの感覚を織り交ぜるようにしています」

「妻がつくるとラフな感じに仕上がって、僕がつくると几帳面な感じに仕上がるんです。僕が細部をぴしっと仕上げるところもあれば、詰めすぎて堅くなってきた部分を、妻が大胆に削ったり」
「なんとなくの形になっていかないように。二人の視点でいろんな角度から確認しながら、手応えが掴めるまで形を追いかけるようにしています」

それでも手間を惜しまないのは、人が長く愛用する物をつくっているという喜びや責任感があるから。
そして、一つのジュエリーができあがっても、完成ではないという。
「自分たちを見つけてくれたお客さまとのご縁を大切に、長く安心して付き合っていただけるブランドでありたいと思っています。いつまでもその方の宝物であってほしいから、お客さまの手に商品が渡ったあとも、サイズ直しやクリーニングなどのアフターケアなど承っていきます」
「すべての過程を通して、僕らの世界観がどう伝わるかということが大事だと思うんです」
日向さんと平さんと、アトリエスタッフ、ショップスタッフを合わせてメンバーは7人。
それぞれ役割は違っても、みんなRyuiの世界観を体現する一人。
西荻窪にあるショップスタッフの方にも話を伺った。
宮川ひかるさんは、西荻窪にショップを構えた2年前からアルバイトとして働いている。

入ったときの印象はどうでしたか?
「もともとRyuiのことは知っていて、二人がつくるものが好きなんです。空間とか、漂う空気というか。はじめから、ここなら長く働きたいなと思いました」
ショップは、金曜〜日曜日と祝日に開いていて、休日にはブライダルリングの相談会も行なっている。
仕事のメインは、日向さんか平さんとペアになって、来店するお客さまと接すること。必要なサポートをしていく傍、ジュエリーの梱包や、ブライダルリングの相談会に向けた準備などもしていく。

その際、直接お客さまと会うことのないマネジメントスタッフがスムーズに引き継げるようにするのも、ショップスタッフの重要な仕事のひとつ。お客さまとの何気ない会話もアトリエスタッフと共有しているそう。
たとえば、ある男性がエンゲージリングを探しに来たとき。相手の女性とはどんなところで出会ったか、彼女は華奢なものが好きそうで、色白だからピンクゴールドが似合いそうだといったことを話してくれた。そうした内容をスタッフ皆で共有できる形に残しておく。
製作する製品がどういったお客さまの手元に届くのかということを、直接会うことのないアトリエスタッフも知ることで、商品一つひとつにより想いを込めることができる。
隣で話を聞いていた平さんは、こう続ける。
「お客さまにとっては世界に一つのリングだから、ただ出来ましたとお渡しするだけでなく、お渡しした先のつながりまで丁寧に考えていきたい。そういう想いから、物だけではないコミュニケーションの努力も大事にしています」

「先日は、男性がエンゲージリングをこっそり買いにみえて。そのあとマリッジリングも納品したときには、後日結婚式の写真まで送ってくださいました。その次は奥さまの誕生日プレゼントを内緒で探しに来てくださって」
「そんなふうに関わっていくうちに、私の名前まで覚えていただくこともあり、お店の外で偶然お会いしたときにも声をかけてくださったりするんです」
ファッションジュエリーとしてもリピートする人が多いそう。
「何度も足を運んでくださることは、とてもうれしいですね」
一方で、仕事をしていて難しく感じる部分はありますか?
「なかには何がほしいのか明確でないお客さまもいらっしゃって、うまくご紹介できなかったなということは、ときどきあります」
そういうときは、たとえばその日のお客さまの服装ならどういうものが似合いそうかと伝えつつ、試着してもらう。そうやって、お客さまが自分の好みを掴めるようなきっかけをつくろうと心がけているそう。
「以前、大粒のパールがお似合いじゃないかとご提案したら、その方にとっては発見だったみたいで。後日また来店してくださったんですね。たとえ買ってくださらなくても、何か心に残るようなことをひとつでも持ち帰っていただきたいなと思っています」
親身になって考えてくれる人がいたら、きっとお客さまはうれしい気持ちになると思う。

「一番はRyuiのことが好きなこと。Ryuiとしての想いを、それぞれのお客さまにどんな言葉が響くだろうと考えながら、自分の言葉でお客さまに伝えられること」
「それから、休日はブライダル相談会もあり忙しいですし、ときにはイレギュラーな相談をお受けすることもあります。状況に応じてどう対応するのがいいか、自分で判断していけるようになることも大事です」
華やかに見えて、地道な仕事もあるという。
けれど、ここで働く人たちからは、一つひとつの仕事に対して繊細な心遣いを欠かさない姿勢を感じました。

(2017/09/01 後藤響子)