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集う人がつくるラボ

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

地域の課題をデザインの力で解決する「issue+design(イシュープラスデザイン)」。

博報堂に在籍し、代表を務める筧裕介さんが、studio-Lの山崎亮さんらとともに2008年に立ち上げた組織です。

当時はちょうど、地球温暖化や途上国の水不足などが取り沙汰されていたころ。筧さんたちは“日本人がリアルに考えられる課題に向き合おう”と、震災をテーマに活動をはじめました。

最初は完全プライベートではじめたものの、予算がつき、関わる人の数も増えて、2011年の東日本大震災ではボランティアのスキルを可視化する「できますゼッケン」が実際に活用されるなど、その活動の幅は徐々に広がってきています。

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そんななか、2014年からはじまったのが、高知県佐川町とのプロジェクト

総合計画と呼ばれる「まちの10年ビジョン」を、佐川町の町民300人とともに全17回のワークショップを重ねて作成。若者が楽しく働ける場を目指し、町民や町内外のクリエイターが自由に使えるものづくりの拠点「さかわ発明ラボ」を立ち上げました。

今回募集するのは、さかわ発明ラボの運営やものづくりワークショップの企画・実施など、地域資源を活かした新たなものづくりに挑むコミュニティデザイナーおよびアーティストです。

自分にはハードルが高いかもしれない。そう思った方も、まずは続けて読んでみてください。自分にしかできない仕事が、そこにあるかもしれません。

平日の昼下がり、issue+designのオフィスを訪ねる。

白壁に木製のフローリングというあたたかな雰囲気。入ってすぐ左手のスペースには、デザインや地域づくり関連の書棚とともにレーザーカッターが設置されている。

そして何より目を引くのが、中央に日本列島をかたどった青いテーブル。

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ショップボットという巨大な工作機械を用い、国土地理院の3D地形データをもとに木製の板を削り出してつくったという。

ちなみに、ピンが立っているのが高知県佐川町。今回募集する人はこのまちで働くことになる。

まず話を聞いたのは、さかわ発明ラボの運営に関わっている鶴見さん。

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さかわ発明ラボが誕生した背景には、数年前から佐川町で取り組まれてきた自伐型林業がある。個人単位で森を管理し、木を切り、売るところまで行う、フリーランスの木こりのような仕事だ。

太い木は建材に、細かな間伐材はバイオマス燃料になる。

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佐川町では、これらの用途に加え、さらなる有効活用の方法を模索していた。

そこで、佐川産材とデジタルファブリケーション、そしてデザインのかけ合わせによって、新たなものづくりに取り組む拠点「さかわ発明ラボ」の構想が立ち上がる。

「昨年までは準備期間ということで、町の文化センターの会議室をお借りしてラボを運営してきました。3Dプリンターやレーザーカッターなどの機械を設置し、まちのみなさんにも使っていただけるように講習会を開いたり、ワークショップ形式で実際にものづくりを体験してもらったり」

最先端の機械も、ラボの運営メンバーも、みんな佐川町の外からやってきた。この準備期間は、もとから佐川町にあったものや人を知り、接点を探っていくような期間だったという。

たとえば、佐川町出身の世界的植物学者・牧野富太郎ゆかりの公園で、人が集まるベンチづくりのワークショップを開催。切削機械の使い方を学びつつ、公園内のフィールドワークを通じて形やコンセプトを決め、組み立てて設置するところまで、町民と一緒に手を動かしながらつくりあげた。

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こうしたワークショップの企画運営に加え、町内の小中学校で授業もする。「さかわロボット動物園」と題し、機械工作やプログラミングの基礎を学びながら、動物型のロボットを実際に動かしてみようというもの。

コミュニティデザイナーの仕事はかなり多岐にわたるようだ。

「今年の4月にラボも本オープンを迎えて、金土の2日間を一般向けに開いています。これまではワークショップやイベントなど、特別な機会に接することが多かったのですが、最近は気軽に訪れてくださる方も徐々に増えてきましたね」

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目的を持って訪れる人がいる一方で、ふらっと立ち寄り、話だけして帰るような人もいたり。町民のコミュニティとしても機能しはじめているそう。

ちょうど今準備を進めているイベントについて、コミュニティデザイナーの森川さんにも話を聞いた。

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「佐川には『司牡丹』という日本酒の酒蔵があります。その前の通りで年に一度行われる『酒蔵ロード劇場』っていうイベントに関わることになったんです」

酒蔵の白壁に切り絵の映像が投射され、音楽とともにゆったりした時間が流れる。

一夜限りのイベントに合わせて、ラボでは酒瓶の形をしたライトを70個つくって並べることになった。

「それもただつくるんじゃなく、まちの子どもたちと一緒につくろうという話になって」

もともと毎週木曜日は「放課後発明クラブ」として、地域の小中学生に向けたワークショップを開いてきた。

今回のライトづくりも、その一環で行うことに。

「骨組みだけはこちらで用意して、外装の模様は絵の具で自由に描いてもらっています。イベント後に返す予定なんですけど、『3個以上つくったら2個はラボに置いて、残りは持って帰っていいよ』と言ったら、がんばってみんな3、4個つくるんですよ」

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「絶対つくるぞ!って、みんな必死だったよね(笑)」と隣で笑う鶴見さん。

ラボの目の前の通りが通学路ということもあって、最近ではよく声をかけられるという。

また、金土の一般向けにラボを開いている時間帯にも作業の続きをしたり、「下敷きに好きなプリントをしてみたい」という小中学生が自発的に訪れるようになった。

「前よりも裾野が広がったというか、ふらっと来やすくなったと思うんです。でも一方で、まだまだだなっていう実感もあって」

「いまだにラボのことをよく知らない方もいるでしょうし、何しろ人口1万3千人のまちなので。お祭りがあれば出展しようとか、ほかの地区の飲み会まで行ってみようとか、そういうこともみんなで話し合いながら進めています」

現在、ラボの運営メンバーは4名。週4日の勤務のうち2日はラボに常駐し、残りの2日で交代しながらワークショップを担当したり、地域のことに関わって人脈を広げたり、自分なりのテーマでものづくりに取り組んだりしているという。

この町ならではの働き方に興味があるという鶴見さんは、残りの週3日のなかで、高知特産の生姜農家さんのもとで働くこともあるそう。

「その農家さん経由で周りの農家さんとか、同じくそこで働いているおじちゃんおばちゃんとも出会うようになって。普段ラボにいると全然聞けない話を聞けたり、おいしい料理を教えてもらったり、関わりが生まれるのも楽しいですね」

今回募集する人も、さかわ発明ラボの活動に支障をきたさない範囲で副業も可能とのこと。

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移住の不安はなかったですか。

「最初はなかなか馴染めない時期もありました」と森川さん。

「でも、商店街でひとり友だちになったらどんどんつなげてくれたり、今住んでる家も行きつけの居酒屋のおばちゃんが紹介してくれたところだったりするんです。割とエンジョイしていますね」

高知市内へは車で50分、高知空港までも1時間程度で行けるため、アクセスはいいほうなのだけど、おふたりともまちの外へ出る機会はあまりないそう。

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日々いろんな人がラボを訪れるし、思い立ったときにものづくりできる環境が身近にあるから、飽きないのかもしれない。

「この間はお店の看板をつくってほしいというおじいちゃんが来て。でも、ラボは製作代行をするわけではないので、自分で作業してもらうための場所なんですよと説明しようとしたんです。そこへ常連さんがささーっとやってきて、『誰でもやろうと思えばできるものなんだよ』って話してくれて」

その常連さんは、もともとパソコン好きだったけれど、イラストレーターは使ったことのない方だった。

ラボに通うようになり、イラストレーターや機械の使い方を独学で習得。両手に板材を入れた袋を抱えてやってきて、大量のコースターをつくって帰るのだそう。

そのコースターはというと、行きつけの飲食店で配ってラボのPRに一役買ってくれているという。

「ラボを自分の場所として認識してくれていて、機械のメンテナンスまでやろうとしてくれるんですよ。そこはさすがに大丈夫ですって言いますけど(笑)。でも、すごくありがたいし、ここから次につながるんじゃないかなって」

次につながる。

「わたしたちがあれこれ言うより、利用者の方が発信してくれることでずっと伝わると思うんです。これから目指していくのは、そういう方向性だと思います」

その常連さんも、自分のまちにこんな場所ができてうれしかったんだろうなあ。

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もとは大学でデジタルファブリケーションに関わる研究をしていたという森川さん。

“自分でバリバリものづくりをしたくならないですか?”と聞くと、こんなふうに答えてくれた。

「もちろんものづくりは好きだし、楽しいけど、かっこいいものを商品化して終わり、みたいなことにはあまり憧れたことがなくて。もう少し社会に還元できることをしたいって、ずっと思っていたんです」

学んでゆくうちに、ある社会実験について知ることになる。

それは、辺境のまちに先端的な機器を自由に使える工房を設置したら、何が起こるか?というもの。

「すると、小学生の男の子がインターネットを見るために無線アンテナを自作したり、地元の人たちが野犬の寄り付かない超音波スピーカーをつくったり、自分たちの生活に必要なものを発想してつくりはじめるんです。その話を知って、これ面白いな、大事だなって思ったのがきっかけだったんですね」

クリエイターだけで集まってつくるなら、わざわざ佐川町でラボを構える必要もない。

今回アーティストとして募集する人も、自分の専門分野をこのまちでどう活かせるか、接点を探り続けてほしいという。

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最後に、どんな人と働きたいかおふたりに聞きました。

まずは鶴見さん。

「自分だけというより、まわりを巻き込みながらどんどんチャレンジできる人。失敗しても、何度でも挑戦できる人がいいかなと思います」

続いて森川さん。

「何かひとつ、自分はこれをやってきたと言えるものがある人がいいかなと。そういう人なら自分で学べるし、何をするにしても具体的なアクションを起こせると思うんです」

「たとえば料理が得意な人。佐川は一次産業が中心なので、木材以外にもさまざまな切り口が豊富にあります。今わたしたちにないアプローチの仕方で橋渡しをしてくれる人がいたら、新しくいろんなプロジェクトが生まれていきそうですよね」

地域資源×デジタル×デザイン。

そこに「自分」をかけ合わせたら、何ができるだろう。

(2017/11/10 中川晃輔)