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これからの観光

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「観光」のあり方は、少しずつ多様化しているように思います。

大型バスで名所を巡るだけでなく、自分の足で町を歩いてみる。定番の人気店もいいけれど、地元の人が普段から通う店を教わる。その店の大将に聞いて、次の日は早起きして朝市に参加することに。

旅先での出会いや体験を通じて地域を味わうスタイルは「着地型観光」と呼ばれ、ここ数年の間にますます注目を集めてきました。

今回はそんな着地型観光の考え方を軸に、観光まちづくりに取り組む地域おこし協力隊を募集します。

舞台は福岡県宗像市

昨年世界遺産に登録された沖ノ島と8つの関連遺産群や、玄界灘で獲れるイカやフグなどの魚介類、海・山・川をあわせもった人口10万人の町です。

東京・羽田空港から福岡空港へ飛び、そこから電車で宗像市を目指しました。

福岡空港から宗像市の東郷駅までは、電車でおよそ40分。

福岡市と北九州市という福岡県の二大都市の間に位置する宗像市は、いろんな顔を持っている。

そんな宗像市にまつわるさまざまな歴史や情報を教えてくれたのが、市役所の商工観光課で主任主事を務める杉山さん。

今回募集する協力隊の担当でもある。

「歴史と食と自然。この3つが宗像の観光の柱になっています」

まず歴史としては、大陸との交易の歴史が挙げられる。

かつて、海を渡る手段が手漕ぎの船しかなかった時代。大陸への航海はまさに命がけだった。

旅の安全を祈願するため、当時の航海者は必ず「宗像大社」を訪ねたという。

「九州本土の辺津宮、本土から10キロほど離れた大島、そしてさらに40キロほど先にある沖ノ島でも旅の安全を祈願してから海を渡っていったそうです。朝鮮半島にもっとも近い沖ノ島からは、大陸との交易を示す装身具や器など約8万点が出土していて、すべて国宝に指定されています」

沖ノ島と宗像大社を含む8つの関連遺産群は、当時の交易や祭祀の歴史をものがたる資産として認められ、昨年世界遺産に登録された。

また、漁業者の間では獲れた魚をお供えする文化が残っていたり、10月に開催される秋季大祭の「みあれ祭り」では、漁師さんたちが仕事を休んで100隻を超える漁船で御神体を護送するなど、未だに宗像大社の信奉はあつい。

「漁業者だけでなく、地元の方は宗像大社を大事に思っていることが伝わってくるんですよね。親しみがあるというか、生活と地続きの存在として捉えている人が多いように感じます」

そんな歴史的背景もあり、宗像の人たちにとって海は身近な存在なのだそう。

以前、本土から10キロほど離れた大島で2年間勤務していたという杉山さん。

「島の中に魚を売っている場所がないんです。食べたいときはどうしてるのかな?と思って聞いたら、『魚は買うもんじゃない、もらうものだ』って(笑)」

宗像市の目の前に広がる海は、国内でも有数の漁場として知られる玄界灘。日本海側の海女さんの発祥の地でもある。

このあたりではフグやイカ、アナゴなどがよく獲れるそうだ。

宗像大社を中心とした歴史があり、豊富な海の幸があり、離島や内陸の丘陵地帯に連なる多様な自然環境もある。

たしかに、歴史と食と自然、どの面から見ても魅力的な土地だなと思う。

けれども、いくつかの課題もあるという。

「観光バスで宗像大社に来て、そのあとどこ行きますかっていうと、福岡市内でラーメン食べますとか。そういったプランのツアーも多いのが現状で」

「大社まで来たなら道の駅に寄ってもらいたいし、ちょっと先には鐘崎という漁港があって、魚を目の前でさばいてくれる活魚センターもあるんですよ。そんなふうに、あと1、2歩宗像市内に足を伸ばしてほしいんです」

宗像市はもともと、内陸の旧宗像市、海沿いの旧玄海町、離島の旧大島村が合併して生まれた町。

3市町村それぞれの特徴や資源を活かしたまちづくりを目指したものの、市全体をあげての観光の取り組みはなかなか進んでこなかった。

今回募集する協力隊は、観光という視点から宗像市をひとくくりにつなぐような役割を担うことになる。

「行政と観光協会で毎月開いている観光戦略会議という場があるんですが、そこに地域の事業者さんも入ってもらえる部会を開いたり、漁師さんたちとの意見交換会をしたりとか。オール宗像の視点で、いろんな立場の人が関われるような体制を築いていきたいんです」

現状は、行政の商工観光課や離島担当部署、観光協会や地域の事業者がそれぞれの立場で観光やまちづくりに取り組んでいる。

地域おこし協力隊としても6名の方が活動中で、農業や漁業、それに4月からは前回日本仕事百貨の募集を通じて宗像にやってきた海女さんを目指す協力隊の2人もいる。

たとえば、そういった人たちの活動をまとめてSNSで発信したり、点として存在している観光の取り組みやスポットをつなぎ、一連の体験プログラムとして打ち出したり。

まずは宗像の人を知ることからはじまると思う。

「道の駅の隣に、『観光おみやげ館』という宗像のお土産を集めた施設がオープンします。その2階に観光協会の事務局が入るので、今回募集する方はそこが主な勤務地になる予定です」

「とはいえ、デスクワークというよりは、町の中に出ていろんな人と関係を築きながら体制をつくっていくような仕事になると思います。理論立てて考えるよりも、動いてみて失敗しながら進められる人のほうがいいかなと」

まちと人を知るにはいろいろな方法があると思うけれど、まずは各地で活動する協力隊のみなさんとの関わりをきっかけに、ネットワークを広げていくのがいいかもしれない。

続いてお話を聞いたのは、昨年から大島で地域おこし協力隊として活動する近藤さん。

主に特産品開発や情報発信の仕事をしているという。

「わたし、昔から食にすごく興味があって。栄養士として働いたあと、フードコーディネータースクールに入って、卒業後はメニュー開発を中心に飲食店の立ち上げのサポートをしてきました」

宗像市の隣の福津市を拠点に、全国各地で店舗の立ち上げに関わってきた近藤さん。

なぜ、宗像の協力隊に?

「中学生のとき、バレーボールの試合で大島にときどき来ていたんです(笑)。それでなんとなく親しみがあったのも理由のひとつかもしれません」

「それに、自分の中で新しいことに挑戦したい気持ちもあって。地域の人と関わりながら食でその地域を盛り上げていくことは、わたしにとって新しいチャレンジだったんですよね」

まったく未知の世界へ飛び込むというよりも、今までの経験を活かしつつ新しいことにも挑戦できそうな環境だと感じたそう。

実際、島の人に向けた料理教室を開いたり、特産品開発を進めたりと、近藤さんは1年の間にさまざまな企画を形にしてきている。

「島の特産品のひとつに甘夏があります。甘夏ゼリーや甘夏ポン酢など、果汁を使った商品はこれまでもあったのですが、わたしは捨てられていた皮に着目して。焼き生地に入れると香りが立つので、日持ちも考えて甘夏のカステラをつくったんです」

お土産を通じて大島や甘夏を紹介することができるし、廃棄されることの多い皮を活用することで島に利益を還元することもできる。

島の直売所での販売をはじめ、今後は観光おみやげ館や市内外への販路開拓も考えているという。

「試作をしていて甘夏がなくなってしまったとき、島の人が『これ使いなよ』って甘夏を持ってきてくれたり、行政の方たちも商品を置いてもらえるように陰でいろいろ走り回ってくれたり。人との距離感が近いし、温かい地域だなと思って。この1年間、関わってくださったみなさんには感謝しているんです」

そんなちょっとしたエピソードを知るだけでも大島が少し身近に感じられるし、せっかく宗像市に来ても素通りしてしまうのは、なんだかもったいなく思えてくる。

しかも、本土側から大島まではフェリーで25分ほど。知るきっかけがないだけで、観光の需要やこの土地に眠る価値は、大島に限らず宗像市内にまだまだ点在しているのだと思う。

近藤さんは、どんな人なら宗像市の観光の可能性を広げていけると思いますか。

「人の力を活かさなければ、何も進まないと思うんです。だからこそ、人と接する力がある人、というか。どこでも飛び込んでいって話ができたり、協力してもらえるような人だといいのかなと思います」

最後に、観光協会の事務局長を務める稲田さんのもとへ。

今回募集する人は、稲田さんをはじめ観光協会のみなさんと一緒に働くことになる。

宮崎県出身。以前は九州・沖縄の道の駅でのスタンプラリーやマップづくり、博多でまちづくりなどの仕事をしていたそう。

縁あって、10年前から宗像観光協会の事務局に参画している。

「着地型観光については、実は結構前から話にあがっていました。少しずつ体制を整えてきて、2年半前の秋につくったのが『宗像とくとくチケット』です」

1枚1,080円で購入できるとくとくチケットは、決められた枚数と引き換えに「食べる」「買う」「泊まる」「遊ぶ・体験」などのプログラムを楽しめるというもの。地域の飲食店の限定メニューや農業体験など、130を超えるメニューの中から選んで使うことができる。

パッケージ化されたツアーは効率的に楽しむことができる一方で、自由度があまりなかったりもする。とくとくチケットには、冊子をぱらぱらとめくりながら、一歩踏み込んだ旅の計画を自分で立てていける楽しみがあるように思う。

「宗像は、ようできたロケーションやなって思うんですよ。北九州と福岡の間、適度な都市機能もあれば、歴史や原風景もある。食と行事からは四季を感じるし、人付き合いもある。枝豆を枝ごともらって『自分でしぃ』とか、イサキを1匹丸ごと『持って帰りぃ』って渡されたときはびっくりしました。 本当に挙げたらキリがないぐらい、モノとコトがたくさんあるんです」

「逆に言えば、宗像のこれまでの観光はある種漠然としていて。世界遺産に登録されたこのタイミングがひとつのチャンスだと思うんですよね。宗像の観光のフラグシップを立てたいと思っています」

昨年、市内の旅行者600人に対して行ったアンケート調査のデータもあるものの、まだ十分に活かせていないそう。

定性的な人のつながりを大事にするだけでなく、定量的な分析もできる人、マーケティングの経験やノウハウを持っている人なら、ここでその力を活かせるかもしれない。

世界遺産に、おいしい食材、豊かな自然、適度な都市機能。

“なんでもある”ように見える町も、その町なりの課題を抱えながら前に進もうとしていることを感じました。

このまちで、これからの観光を考えていきませんか。

(2018/3/22 取材 中川晃輔)