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らしく、働く

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働き方を大切にする人が増えているように思います。

住環境に、勤務時間。会社に自分を合わせるのではなく、できるだけ自分が望んだ形で働けたら。

そんなふうに考えているデザイナーがいたら、この会社はぴったりだと思います。

株式会社アズグラフは、グラフィックからwebデザイン、セールスプロモーション(SP)まで幅広く手がけるデザイン事務所です。

社員は5名。働きやすい環境づくりに力を入れていて、長野・広島・東京と、それぞれ自宅やお気に入りの場所で、オンライン上で進捗を共有しながらリモートで仕事をしています。

今回は、正社員・業務委託のグラフィックデザイナーと、業務委託のwebデザイナーを募集します。



新宿駅で穂高駅までの切符を買い求め、特急あずさの待つホームへ向かう。

車窓の眺めは、ビル街から緑へぐんぐん変わる。東京を発って3時間、穂高に到着するころには北アルプスが目の前に迫っていた。

アズグラフの安曇野オフィスは、駅から車で10分ほどのところにある。

北アルプスを裏庭に持つ、とても気持ちの良い場所。

迎えてくれたのは、代表の平塚隆司さん。

取材前の連絡で感じたように、とても丁寧で穏やかな方だ。

もともと地方のデザイン事務所で働いていた。5年勤めたのち、都内のSPデザイン会社に転職する。

代理店からの依頼をもとに、カーディーラーや家電商品といった店頭販促物やイベントブースなどを制作し、気づけばチームリーダーになるまでに。

転機となったのは、約4年前。デザイナーの奥さまが多忙から時短勤務をはじめたことだった。

「当時はまだ、働き方改革という言葉もありませんでした。そんなとき『強いチームはオフィスを捨てる』という本を読んで。オフィスにいなくても働けるのかと衝撃を受けたんです」

「同じころ、サテライトオフィスを持つ企業や、サテライト誘致が進む徳島の神山町などを知って。生産性を上げる環境づくりをしながら自由に働こうとする姿は、すごく魅力的でした」

職場にいなくても、きちんとしたクオリティの仕事ができたら問題ない。

むしろ自分の好きなところで働けるほうが、自分の時間も増えてパフォーマンスも上がるのではないか。

そんな確信のもと、当時の勤務先でサテライトオフィスをつくろうと独自に行動を開始。土地探しのなかで出会った安曇野を一目で気に入った。

「でも…当たり前ですが社内調整に時間がかかりそうで、実現が危ぶまれてしまった。いっそ自分でやろうと思って、会社を辞めました」

えっ、辞めてしまったんですか。

「すぐに実現したかったんです。とにかく気持ちよく働きたい一心で」

「デザイナーって、夜遅くまで仕事をすることが多い。早寝早起きできるような、心身ともに健康な働き方を実践してみたかったんです」

勢いそのまま3年前に安曇野に移住、フリーランスとなる。

ツテも仕事も一切持たずに飛び込んだものの、以前から親しくしてくれた人たちが連絡をくれて、すぐに以前と同じSPの仕事ができるように。

自分の好きな場所で、自分のペースで働けるようになった一方、デメリットもわかった。

「移住してすぐ、奥さんが2週間入院して。もし病気になったのが僕だったら奥さんを孤立させてしまっていたのではないかって思ったんです」

メリットはそのままに、より働きやすくするにはどうしたらいいだろう。そこで浮かんだのが、同じような思いを抱く人の共同体をつくることだった。

「人数が増えれば、お互いにフォローできるし仕事の幅も広がります。それで社会的な保障もサポートしやすい会社組織にしようと考えました」

そうして合流したのが、前職の仲間で広島在住の、フリーランスのWebデザイナー/フロントエンドエンジニアの林さんご夫妻。

株式会社アズグラフとして2016年に船出した。

仕事は東京の代理店経由でのSPがメイン。ほかにも単発イラストや商品ブランディングを請け負うこともある。

最も大切にしたいのは、それぞれの場所で自分のペースで働ける環境。

そのため仕事の選り好みはせず、自分たちが役に立てる依頼はほぼすべて受けている。

「仕事がきちんとできるのなら、たとえば離島でかき氷屋さんをしながら働いてもいいんです。そして売りかたもデザインしていけばいい。僕らもこの夏に、事務所を改装して小さなお店をつくる予定です」

「デザイン会社だからデザインだけしなくちゃ、とは思わなくていい。せっかく場所を選ばない職業なんだから、あらゆる可能性を潰さなくていいと思うんです」




ここで気になるのが、今回募集する人の具体的な仕事内容。

この質問に答えてくれたのが、隆司さんのパートナーの沙文佳さん。ふわりと優しい雰囲気をまとったグラフィックデザイナー兼アートディレクターだ。

「日々の仕事は、主に東京の代理店を通したSPデザインです。今回募集するグラフィックデザイナーも、基本的にはこの仕事をしてもらいたくて」

具体的には、カーディーラーや家電量販店などで使用される商品POPや販売台など。

アイデア出し、スケッチから制作まで、代理店からのさまざまな発注に社内ディレクターと組んで取り組む。締め切りから逆算して立てた目標をチームで達成していくスタイルだ。

しっかりとしたクオリティを出せると判断された場合には、デザイン過程もある程度個々に任せてもらえるそう。

仕事をする上で気をつけていることはありますか。

「まず、時間の無い案件が多いので効率は大切にしています。たとえばクライアントに確かめたいことがあれば、一度ですべて聞けるよう先読みをしてから電話をかける。何度も打ち合わせすることはしません」

「あと、一度交わした約束は必ず守ろうって。納得できる質と量を、締め切りよりも早い時間に必ず出す。すべては信頼関係をつくるためです」

アズグラフが大切にする柔軟性はあくまで働き方。どこで何をしていても、タスクをこなせるのなら問題ない。

けど、仕事をおろそかにしていいということではないし、質をより高めようとする姿勢はほかの事務所と何ら変わりない。

「社内外問わず気持ちよく仕事を進めるには、信頼関係が何より大切だと思っていて。ここが中途半端になってしまうと、今のように働けなくなってしまうかもしれません」

「そのぶん、効率的に進められれば空いた時間を自分の時間として使えます。早めに仕事を終わらせて温泉に行く日もあるんですよ」

ただ、ときには朝に「夕方までに仕上げてほしい」と連絡が来ることもある。毎日が定時通りで自由気まま、ということでもない。

「そう、何もかもが自由なわけではなくて。旅行で明日から休みます!と急に言われては困るし(笑)周囲を困らせないことを前提に、自分で時間をコントロールする感覚かな」

軽やかに働いているように見える沙文佳さんたちも、そのための努力をしているのだろうな。

そんな沙文佳さんは、絵を描くことが大好きな少女だったそう。学校を卒業後、隆司さんと同じ都内のデザイン会社に就職する。

「不甲斐なさに泣きながら働いたこともあったけど、仕事を分かりはじめるとすごく楽しくて。でも、忙しさに追われるうちにモチベーションを保ちにくくなってしまいました」

「ひとまず時短勤務をはじめたけど、常に仕事が気になって。いろんなことが重なり、いっそ東京を出て好きなところに住んでもいいかもって思ったんです」

移住後は、新天地での生活を楽しんでいるという。何より、自分が心地よいと感じられる土地で働けるのは気持ちがいい。

「やっぱりオフィス街のなかで生活するのとは全然違って。生活コストも抑えられて、おいしいものも多い。面白い人とたくさん知り合えて、深くつながれるようになりました」

「最近ではSPだけじゃなく、自分たちのつながりで生まれる仕事もあって。新しくお店を持つ人のためにWebサイトをつくったり、地元商品のパッケージデザインもしたんですよ」

これから先、もし気に入った土地を見つければ移住してもいいと考えているそう。その土地の人とのつながりを大切にしていれば、距離が離れても仕事で関わりつづけられる。

「ウェブチームも地元広島はもちろん、北海道や東京など地域や会社の規模を問わず請け負っていて。これからは制作だけじゃなく、マーケティングやブランディングにも力を入れたいって言っています」

「仕事の幅を広げながら自由に土地を選べる。そんな働き方かもいいなって思います」




最後に話を伺ったのは、同じくグラフィックデザイナーの西岡さん。

今回募集するグラフィックデザイナーが一緒に仕事をすることになる方だ。現在は東京のクライアントに出向中のため、Skypeで繋いでもらうことに。
地元・広島のデザイン会社で8年ほど働いたのち、経験をつけようと他のデザイン会社でアルバイト。

ところが、体力的にも金銭的にも続けるのが難しくなってしまう。

「フリーランスになる自信もなくて、もうデザイナーを諦めようかなって…。そのとき、広島オフィスの林さんが声をかけてくれました」

二組の夫婦が合流したアズグラフにとって、人を雇うのは西岡さんがはじめてだった。

「どう働きたいか確認しつつ、待遇を整えてくれたのがすごくありがたくて。ずっと東京に住んで働いてみたいとも思っていたので、1年前に入社を決めました」

ただ、紙面デザインの経験を積んできた西岡さんも今は難しさを感じているそう。

「SPデザインのほとんどは立体構造です。見た目だけではなくサイズ感や構造、素材、それに実現可能性も考えてデザインする必要がある」

なかには全国展開されるものもあるし、求められる精度も決して低くない。

もし代理店と仕事をするのに慣れていなければ、最初は忙しさも覚悟したほうがいいという。

「本当は自分である程度デザインの方向性を決められるんですけど、今はまだ自信がないので社内確認をしてもらっていて。急ぎの案件が多いので、手を早く動かしつつ質を上げられるようにもなりたいです」

それに離れているからこそ、対面に近い密度のコミュニケーションが求められる。

「私は自分の状況をうまく共有できずに皆を困らせてしまうこともあって。自分から発信することが大切ですね」

「思った以上に自分ができなくて、正直しんどいときもある。でも一度はデザインを諦めようとしたんだから、任せてもらえる限り頑張りたいと思っています」

新しく入る人にも、伝えたいことがあるという。

「もし不安に思っているのなら案外大丈夫ですよ、って。遠隔でもこまめに連絡を取り合っているので、不安なときもSkypeやチャットで相談できるし、気軽に雑談もできます」
「忙しいときには、作業分担を提案してくれることもあって。丁寧にコミュニケーションできる人であれば、一人で仕事をしている感覚は少ないと思いますよ」

もちろん、楽しい面ばかりではないと思います。きっと仕事で試行錯誤することもあるはず。

それでも、自分らしい形を模索しながら働く皆さんの姿は、健やかに見えました。

(2018/03/27 取材 遠藤真利奈)