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イマジネーションの森

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

北軽井沢の小川のほとりに佇む一軒家。

仕事部屋の壁には、一枚の絵が掛けられています。

夕暮れの空をブランコから眺める猫。静かな水面。大きな木と一体となったツリーハウス、その窓からこぼれる明かり。

日常の一コマのような安らぎと、物語の世界に引き込まれるようなワクワクを感じさせてくれます。

この絵をきっかけに、稲垣さんのツリーハウスづくりははじまりました。

北軽井沢の地で20年近く、ツリーハウスやログハウス、子どものための遊具など、人と自然が触れ合うきっかけをつくってきた稲垣さん。

今回はそんな稲垣さんとともに、自然の中で汗をかきながら働く人を募集します。

まず目の前のプロジェクトとしてあるのが、来年3月に埼玉県飯能市にオープン予定のテーマパークでの施工。

北欧フィンランドのライフスタイルや世界観を体験できるこのテーマパークの一角を、稲垣さんと一緒に形づくっていく仕事です。

プロジェクト自体は数カ月という短期間ですが、その後も稲垣さんのもとで経験を積みたいと思えば、継続して一緒に働くことも可能。日曜大工程度の経験でも大丈夫とのこと。

また、今回は有限会社きたもっくでの雇用となります。

稲垣さんが以前勤め、ツリーハウスづくりに携わるきっかけとなったきたもっく。キャンプ場「スウィートグラス」や樹上体験施設「フォレストアドベンチャー」、薪のある暮らしを提案する「あさまの薪」など、北軽井沢を舞台にさまざまな事業を展開しており、各事業に携わる人も同時に募集をしています。

まずは稲垣さんのつくる世界に触れてみてください。

東京駅から1時間と少し、新幹線に乗って軽井沢駅へ。

まだ雪の残る浅間山の存在を近くに感じながら、車で40分ほど北上し、稲垣さんがフィールドとしている群馬県北軽井沢へと向かう。

稲垣さんが一角の施工を担当している「軽井沢おもちゃ王国」を訪ねた。

お城のようなツリーハウスや、キノコやつくしの形をした遊具、木々の間を渡れる吊り橋など、大人も子どももいろんな遊び方・過ごし方ができそうな空間が広がっている。

吊り橋を外部の業者にお願いしている以外は、稲垣さんを中心に2、3人でこのエリアをつくってきたという。

ぐるっと一周、歩きながら話を聞くことに。

「もともと美大で絵の勉強をしていたんです。絵描きになりたいってわけじゃなくて、単純に絵を描くのが好きで」

昼間はアルバイトをして、夜に絵を描く毎日。

好きなことをやれている、はずだった。

「そうするとね、生活が荒んでくるんですよ。絵もだんだん暗くなってきて、病んでくる。もちろん、全員が全員じゃないだろうけど」

「このままの生活は嫌だなと思ったし、自然の中で汗水垂らして仕事したいなって思ったんです」

そこで最初に思いついたのが、ログハウスを建てる仕事。群馬県嬬恋(つまごい)村のログハウスメーカーに3年勤め、基礎を学んだ。

ただ、図面通りにログハウスを建てることに対し、次第に違和感を感じるようになっていったそう。

「やっているうちに、表現したくなってくるというかね。人間がイメージできることも、自然のもつ造形美も、本来もっともっと自由なもの。地中から湧き出るような、有機的で複雑な形に少しでも近づきたいって欲求があって」

会社をやめ、そんなことをぼんやりと考えていた稲垣さん。北軽井沢で年に一度開かれる「炎の祭り」に関わったとき、たまたま出会ったのが、有限会社きたもっく代表の福嶋さんだった。

「稲垣、お前今何やってるんだ?」「ログハウスメーカーをやめて、これから仕事探すんです」「じゃあうちに来て仕事を手伝ってほしい」

そんな流れで、アルバイトとして働きはじめたんだそう。

キャンプ場の仕事全般に取り組みつつ、ログハウスメーカーでの経験を活かしてコテージや炊事棟を建てたり、まだまだ未完成だったキャンプ場のグランドデザインを夜遅くまで議論したり。

刺激的な日々だった、と稲垣さんは振り返る。

「おれも社長も若かったですし、情熱を燃やしてましたよね。お客さんの反応を見ながら自由にものづくりもやらせてもらえて、ほんとに楽しかった」

入社して3年ほどが経ち、マネージャーを務めていた稲垣さんは、アメリカのオレゴン州で開催された国際ツリーハウスミーティング「WTC」に参加。そこで出会った世界中の人々やツリーハウスに感化されたという。

「帰国してすぐにイラストを描いたんです。それを社長に見せたら『いいね』って話になって、実際にツリーハウスをつくり、徐々にそっちの方向に歩きはじめて」

冒頭に紹介したのはそのイラスト。

思い通りのロケーションには、未だに出会えていないという。

「あの絵は、今でもこんなツリーハウスをつくりたい!っていう思いをそのまんま表していて。原点であり、目標ですね」

その後独立し、2008年にForest Worksを立ち上げた稲垣さん。

自然からインスピレーションを受けながら、20年にわたってツリーハウスのある風景をつくり続けてきた。

そのツリーハウスづくりの手法は、かなり特殊と言えるかもしれない。

「図面は描かないんです。最初にイメージのイラストを描いて、現場でイマジネーションを膨らませながら形にしていきます」

ただ闇雲に理想を詰め込むのではなく、まずはツリーハウスを支える木の健康状態、曲がり具合や枝のねじれなどをよく観察する。そして、実際に建てていくイメージを頭に浮かべながらイラストを描く。

現場ではイラストをもとに骨組みや柱を立て、デッキを張り、壁や屋根をつくっていく。

「なるべく自然の木に違和感なく、一体となるようにつくりたくて。だから曲線を多く取り入れたり、できる限り自然の木を使うようにしています」

たしかに手すりや窓枠、柱などには、曲がりくねった木が多く使われている。

だからこそ威圧感がなく、森の風景に溶け込んでいるような感じがするのかな。

「ただ単に木があって、森がある。そこで遊ぶって難しいじゃないですか。とくに都会の人はね」

「ツリーハウスや遊具があれば、そこに足を運ぶ意味が生まれて、木に触れたり、自然のことを思ったり。そういう、人と自然のつながりをつくりたいんですよね」

遊具で無邪気に遊ぶ子ども。デッキからぼーっと景色を眺めるお父さん。日が落ちて、窓からこぼれるあたたかな明かり。

稲垣さんはツリーハウス単体というよりも、そこに人が佇み、それぞれのあり方で自然とつながっている風景をよく想像するという。

「『ちいさいおうち』っていう絵本、知ってますか?その絵はね、おれ結構好きで。大自然の中にポツンとかわいいお家が建ってて、最初は山小屋や牧場が周りにできるんだけど、だんだんビルが建つようになって。最後のページをめくると、小さなお家はまた自然の中に引っ越している。それだけの話なんだけど」

「今いろいろ思い返してたら、ぽっと頭に浮かんで。美大で生活が荒んでたころ、自分も『ちいさいおうち』を求めてたのかもしれないなって」

自然の中で、体を動かしながら働きたい。

そんなシンプルな欲求を頼りに、一歩を踏み出した稲垣さん。

「仕事を仕事だけで選ぶと、通勤時間で自分の時間がなくなったり、いろんなものを犠牲にしなきゃいけなかったり。何が言いたいってわけじゃないけど、おれの場合は仕事より先に“したい生活”があったなあ」

したい生活。

「マンション住まいだったら、きっとイマジネーションも湧いてこないだろうし。どういう生活から、どんな仕事が生まれるか。それは、必ず結びついているかなと思うんですよね」

18年前、稲垣さんは、小川のほとりの大きな木のそばに自分の手で家を建てた。

二階から隣の木に渡れる橋を渡し、昨年の夏に息子さんとデッキをつくったそう。裏の川では釣りもできる。

「そういう生活がしたいとか、ちょっと面白そうだとか、そんなきっかけでいいと思う。最初は手伝いでもいいからやってみて、もっと面白いと思えることが自分から湧き出てきたら、そっちに行ってもいいしね」

経験や技術は必要ないですか。

「日曜大工程度でも大丈夫ですよ。はじめは物を運んだり、ペンキ塗ったり、簡単な釘打ちをしたり。ちょっとそっち押さえてて、とかね。あとは知りたければいろいろ教えるし、自然の中でものづくりしたい人ならいいと思います」

埼玉県飯能市のテーマパークの施工が目の前のプロジェクトとして存在するため、まずは稲垣さんと一緒に仕事をしてみて、もっと経験を積みたい!という気持ちが湧いてくれば、北軽井沢を拠点に暮らし働くことも考えられる。

「食べていけなかったら、キャンプ場で雇いますから(笑)。ぜひ来てください」

そう話すのは、きたもっく代表の福嶋さん。

稲垣さんがスウィートグラス内に12年前に建て、昨年リニューアルした「ツリーハウス・マッシュルーム」内で話を聞いた。

20年以上付き合いのあるおふたり。福嶋さんは、稲垣さんのことを稲ちゃんと呼ぶ。

「稲ちゃんが『これをつくります』って言えば、まったくその通りにできる。図面もなんにもないのに、360度イメージを持っているわけです。もうね、本当にすごいの」

「子どもの心、みたいなものを彼はとても大事にしていて。ある意味むちゃくちゃ頑固ですよね」

稲垣さんのイメージを形にしていくことは、一緒に働く人にとってかなり難しいことのようにも感じます。

「そうかもしれないね。きれいな曲線、自然の造形美って、みんな憧れは持っていると思うんです。でも、お手上げなんですよ。到底図面化できないから」

あとは単純に、自然の中での作業という過酷さもある。

森や木と対話し、イメージを膨らませながらつくっていく稲垣さんのスタイルだと、現場での作業がほとんど。冬は−10℃を下回るような寒さに包まれるし、真夏は太陽が容赦なく照りつける。

「彼と一緒に作業したこともあります。たしかに大変だと思う。でも、ものすごく楽しいと思いますね。ぼくの知ってる限りでは、こんなことができるのは稲ちゃんしかいないし、興味のある人にはちょっとたまらない、というか。そんなこともあるのか!っていう世界だと思います」

まだ言葉にならない、直感でもいい。

ツリーハウスに、稲垣さんに、この土地での暮らしに。

何かしら惹かれるものがあるなら、その感覚に素直にしたがってみるのもいいと思いました。

厳しくもあるでしょうけど、きっとあたたかく迎え入れてくれるはずです。

(2018/4/9 取材 中川晃輔)