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カウンター越しの風景

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

日本仕事百貨は東京・清澄白河でリトルトーキョーというスペースを運営しています。

建物の1階は昼夜でお店が切り替わる飲食店。

昼は『今日』で、夜は『今晩』という名前のお店になります。

今日は女将・高橋が“今日食べたいもの”を週替わりの定食で提供して、今晩はゆっくりお酒が飲めるバーのような雰囲気。

今回は、今晩で働く人を募集したいと思います。

場の運営や飲食店の経営経験がゼロだった僕らは、一つひとつ考えてきました。

紆余曲折しながらようやく輪郭が見えてきたけど、まだまだ道半ば。

この先何年もかけて、この場所を醸成していきたいと思っています。

ここで培った経験やご縁は、きっと働く人にとってもかけがえのないものになると信じています。

 

昨年の6月から清澄白河に移り住んでから、すっかりこの街が気に入っている。

昔から住んでいる人の多い下町なのでほっこり温かい感じがあるし、お寺がたくさんあって静かで落ち着いた雰囲気も心地いい。

最近は魅力的な新しいお店もどんどん増えている。

リトルトーキョーは清澄白河駅から歩いてすぐの場所。

目の前には地元の人に大人気の銭湯があって、お隣の中華料理屋さんにもよく通っている。

リトルトーキョーは5階建ての建物で、1階が飲食店、2〜3階はイベントなどが開催できるフリースペース、4階が日本仕事百貨のオフィス、5階はまだ未活用。

いろいろやっているので「リトルトーキョーって何なの?」とよく聞かれるけど、一言で表すのはなかなか難しい。

たしかに、端から見れば不思議な場所かもしれない。

どうして日本仕事百貨はリトルトーキョーをはじめることにしたのだっけ。

あらためて弊社代表のナカムラに聞いてみる。スタッフのみんなは「ケンタさん」と呼んでいる。

「日本仕事百貨では様々な求人情報を掲載してます。いろんな生き方や働き方を伝えられる場でありたいと思っているのね」

「でも、それって文字だけじゃなくて、ほかにも方法があるんじゃないかと思って」

ほかにも。

「うん。たとえばバーのようにカウンターのあるお店って、バーテンダーや顔見知りのお客さんたちとコミュニケーションすることもできるし、お客さんが自分自身と向き合うにもいい空間。会社と家の往復では知り得なかった世の中が見えてくるわけですよ」

たしかにリアルな場って、そういうことが起こりやすいかもしれない。

文章を通して知るだけでなく、実際に人と出会って話すことで心に残るものもある。

「僕もまさにバーでそういうことを実感して、日本仕事百貨をつくるきっかけにもなった。いつかメディアだけじゃなくて、リアルな場も自分たちでつくりたいと思っていたんだよね」

そうしてリトルトーキョーは2013年に東京・虎ノ門で生まれた。2016年からは清澄白河に移り、つい先月には2周年を迎えた。

ただ、これまでのことを考えると、うまくいかないことのほうが多かったかもしれない。

飲食店をオープンするまでに1年以上もかかったし、その間に辞めてしまう人も少なくなかった。

現在、今晩で働いている雪下さんも、今年の8月に退職することになった。その大きな理由のひとつが「スタンスの違い」ということだけれど、どういうことだろう?

「雪下さんは毎週いらっしゃる常連さんを大切にしていて。その通りだよね。ただ僕は年に1回訪れるような人も、こんにちは!とか久しぶり!って挨拶できるような場所もいいと思って」

年に1回なのに?

「たとえばゲストハウスってそういう場所がよくあるの。1年に1回くらいしか行ってなくても『おかえり、お土産は?』みたいなことも言える感じで」

「お互い知った関係で会話するのはすごくうれしいし、お金には変えられない価値がある。カウンターを介してそういうことが起きる場所になったらいいな」

そんな場所にするためには、どうしたらいいのでしょう?

「ひとつはお客さんのことをしっかり覚えること。あとは常連さんも久しぶりのお客さんも、相性が良さそうなら紹介したり。状況に応じて、対等にツッコミできるほうが心地いい」

自分より歳上の人でもボケたら突っ込んだり、ほかの人に迷惑かけているような人がいたらしっかり注意したり?

「そうそう。だから酸いも甘いも経験して、大変なことも乗り越えてきた人に来てほしいと思っていて」

ケンタさんのイメージとしては、スナックのママに近いそうだ。

料理は季節に応じて変化させたり、手に入った材料を活かしたり。得意料理のカレーをつくってみたら、みんなつられて同じものを食べはじめたり。

そこで自然に会話が生まれて、人とのご縁ができて。そういうことをかけがえのない財産として大切にしてくれる人に来てもらいたい。

「コミュニティって言葉が今言われてるけど、もともとバーとかスナックにはあったわけじゃない?人情風景っていうのかな。自然に醸成されていくものってあるよね」

 

リトルトーキョーには全国各地から様々な人たちが訪れている。

地元のママさんやご近所の老舗の大将、就職活動中の学生もいれば日本仕事百貨で求人を掲載している会社の人も。

ここまでいろんな人が集まるのは、リトルトーキョー2階で開催している『しごとバー』の影響も大きい。

しごとバーはいろいろな生き方・働き方の人に接する機会をつくりたい、という想いからはじめたもの。

様々な職業の方をゲストに招き、お客さんは予約も参加費も必要なく気軽に参加してもらい、お酒を飲みながら話す。

イベント担当の今井が自身のネットワークもフルに発揮して、毎回ユニークなゲストを招いている。

しごとバーの開催時間は20時から22時頃まで。今晩と同じく夜の部門なので、今井さんと会話することは多くなるはず。

「ゲストが食材を持ってきてくれることも多いんです。それを活用するのも面白いかもしれません」

「いろんなことに面白がってくれる人がいいな。ただのバーでも普通の飲食店でもない場所だから。働く人も、本当に貴重な経験ができる場所だと思うので」

最近、そういうことはあった?

「この前はしごとバーで『樹皮ナイト』を開催して、ゲストの鷲見(すみ)ちゃんが『木と知り合いになれるよ』って教えてくれたんです」

木と知り合いに?

「木のことを知ると、街にある木が何の木か分かるようになって、普段何気なく見ていた風景が変わるって」

それはいいね。

「ね!私もいいなぁと思って。それまでは木とか植物のことなんて全然興味なかったけど、図鑑を買って覚えたりしてて(笑)」

歌舞伎の小道具をつくっている人、カブトムシの専門家、お寺の住職さん、などなど。今まで出会うことのなかった人と出会えて、いろんなことを知って引き出しが増えていく。

今井さんがこの会社に加わったのは2年ほど前。美大を卒業して、新卒で入社した。今の仕事を「超楽しい」と言ってくれている。

 

最後は、今日の女将・高橋にも話を聞いてみる。

高橋さんのつくる料理は本当においしい。

食材は日本仕事百貨スタッフの実家で育てた野菜や、出張で買ってきた特産品を使うことも。味噌を自分たちでつくることもあるし、自家製のぬか漬けは毎週食べても飽きがこない。

友だちも誘いたくなるくらい、自信を持っておすすめできるお店です。

先月には、オープンから1周年を迎えることができた。

「ケンタさんには内緒だけど、1周年の日は常連さんにミニビールを配って、みんなで一緒にイエーイ!ってやったんですよ(笑)」

GWには開店前に20人ものお客さんが並んで待っている日があったそう。最近の盛況ぶりは本当に目覚ましい。

人気の理由は料理がおいしいことはもちろん、高橋さんの人柄もあると思う。

「ちゃんとお客さんに気持ちよくなって帰ってほしいっていう考えが根底にあって。ごはんがおいしいだけじゃなくて、それをさらに超えてその人の喜びスイッチを押せるように、人の様子をめっちゃ見るようにしてるんですよ」

「あとは、私が変なやつだから、興味を持ってくれる人もいるのかな(笑)」

そうかも(笑)

僕もお昼によく食べに来るけど、高橋さんとのやりとりを楽しみにしているお客さんが多いような気がする。

常連さんと仲良く話している様子を見て、はじめて来てくれた人が気軽に話しかけてくれたりしてね。

「そうなんです。私がめっちゃ忙しくしてたら、常連のご夫婦の方が隣に座っているはじめてのお客さんに、このお店は週替わりメニューでねって説明してくれたりして。何も言ってないのに、お盆にまとめてカウンターまで運んでくれたりとか」

「この前は名古屋に転勤になっちゃう常連のお姉さんが、引越しの前日なのにわざわざ1周年のお祝いでお花を持ってきてくれて。そういうのがすごくうれしいし、楽しいです」

ただ、今に至るまでには苦労も多かったと思う。

「とくに最初はどんなお店にしていくのか、着地点を見つけるのが大変だったな。お店のコンセプトすらはっきりしないないままいきなりバトンを渡されたから、あああ…って」

よくもわるくも、小さな会社。ましてや飲食業の経験がない会社が独自にはじめたことなので、正直至らないことは多々あると思う。キッチンが狭かったり収納が足りなかったり、設備面で不十分なところもある。

料理はどんなコンセプトにするのか、メニュー構成はどうしたらいいのか、価格帯は。一つずつ話し合いながら、試作を何度も重ねながら前進してきた。

その時期、高橋さんはとても苦しかったと思う。涙している姿を何回か見たこともある。

「大変でしたね。ケンタさんなんて意見がコロコロ変わるから(笑)」

それは日本仕事百貨メンバーも痛感していることかも。

「でもケンタさんの言うことって分からなくはないし、芯がある。私が脱線しそうなときは必ず指摘してくれるから、やっぱりケンタさんってすごいなと思ってついていけているというか」

「それに私は体育会系なんですよね」

負けず嫌いだよね。

「うん。ちくしょう!って思ったりするけど、そういうのを乗り越えた先に得られるものがあると思うし、それが仕事とか生きていく上での楽しみだと思ってます」

高橋さんは、どんな人に来てほしい?

「愛嬌があって、人に何かすることに喜びを感じられる人かな。ご飯を盛るにしても、どういう盛り方をしたら一口目を美味しく食べてもらえるのかとか、そういうことまで考えられる人だといいな」

これから高橋さんには今日と今晩の両方を統括してもらう予定です。だから今回募集する人には、高橋さんの右腕として活躍してもらいたい。

調理の方法などは彼女から教わってもいいし、経験があったり好きな料理があれば、ぜひ個人の色も出してほしいです。

ここがどんな場になっていくのか、とても楽しみです。

(2018/4/25 取材 森田曜光)