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フロンティア・スピリット

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混沌としてきた今の世の中、どんな未来を思い描けるだろう。

今は答えられなくても、ここなら何かが見えてくるかもしれない。

そんなことを感じさせてくれる場に出会いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 北海道七飯町(ななえちょう)にある大沼流山牧場「Paard Musée(パド・ミュゼ)」

単なる牧場ではなく、大自然の中で生き物本来の暮らしや文化を体験できる環境をつくったり様々な事業を展開することで、人と自然と動物が協働する新しい未来を提案しています。

今回はここで、地域の人とのネットワークを“開拓”する人を募集します。

七飯町で農業やものづくりをしている人たちとつながり、牧場を拠点とした農泊や体験ツアーなど、企画から運営まで様々な観光開発を行います。

年齢や経験は問ません。新しいことや知らないことにワクワクしながら取り組んでいけるような、好奇心と行動力のある人を求めています。


Paard Muséeのある七飯町は函館市のお隣。函館駅から車で約50分の距離にある。

大沼国定公園という湖の近くにあり、遠くにはいつも駒ケ岳が悠々とそびえ立っている。

観光客や路面電車で賑やかだった函館市内とは打って変わって、大自然を感じる環境だ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 総面積約200ヘクタールという広大な土地。

少し肌寒い風が吹くなか、鞍も蹄鉄もつけていない自然の姿の馬たちが草を食んでいる。さらにその向こうでポニーやロバ、ヤギたちが同じ飼い葉桶で仲良く食事をしている。

ほかにもウサギなどの小動物や200頭ほどの羊など、ここでは様々な生き物が暮らしている。

Paard Musée代表の宮本さんは、2008年からこの地を“開拓”してきた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 実は昔、このあたりは温浴施設やゴルフ場だったそう。

バブル崩壊後に様々な開発が行われた末、土地を所有する企業からの相談が宮本さんのもとへやってきたのがPaard Musée立ち上げのきっかけだった。

宮本さんは当時、自然体験やまちづくりに取り組むNPOの中核メンバーとして働いていた。

もともと北海道の地方出身だったということもあって、もっと地元の人や都会の人が農村地域に愛着を持ってもらえるように、そしてお金も落ちるような仕組みをつくろうと、都市部の人たちを地方へ送る交流事業を展開。

だんだんと地方側から組織や施設づくりまで依頼されるようになり、道内の様々な地域を駆け巡っていた。

当時の宮本さんを知るスタッフさん曰く、「道内のまちづくりに関わる人で、宮本さんの存在を知らない人はいない」というほどの活躍ぶりだったそう。

「ここも、その仕事のひとつでした。30年間放置されていた農地の活用と観光開発について相談いただいて」

「これまで自分はいろんな地域へ行ったりしていましたけど、たまたまそのときは自分がプレイヤーになるのもいいなって思って。それで農業生産法人をつくって、仲間と開拓をはじめたんです」

法人はつくったばかりなので大きな補助金をとれるわけでもないし、借金もあまりできない。普通だったら大きな機械を入れて一気にやるものだけれど、宮本さんたちは自らの手で地道にやるしかなかった。

「じゃあせっかくなら昔ながらのやり方にしようと、蹄耕法といって切り株を残したままにする方法をとりました。雑草や雑木は馬が意外と食べてくれるので、馬を入れた後に小さい機械を入れるっていうのを何回も繰り返して、なんとか牧地化しましたね」

宮本さんが馬に着目したのには理由がある。

Paard Muséeのある七飯町はその昔、北海道農業の礎を築いた農業試験場『七重官園』があった地域で、北海道の開拓史はじまりの地とも呼べる町。

その開拓に欠かせない存在だったのが『道産子(どさんこ)』という北海道の在来和種馬だ。

paardmusee04 おとなしくて丈夫、それでいて力持ちのため、木を運ぶにも畑を耕すにも、道産子は人々の生活の中にあった。

「けど、今や道産子は食べる肉でしか使いようがないという状況なんです。僕が今までやってきた仕事は地域資源を再評価して磨き上げ、観光資源や体験型の学習教材として売り出すことだったので、道産子も何とかできないかと」

「それで道産子を自然繁殖させて、調教した馬を販売するような農業スキルを高めると同時に、ただの乗馬ではない観光開発も進めてきました」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ここで体験できる特徴的なプログラムのひとつに『ネイチャーホースライディング』というものがある。

用意された馬にただ乗るのではなく、今日乗る馬を自分の手で捕まえることからはじまるという、聞くだけでワクワクしてくる乗馬体験だ。

ほかにも『ホースセラピー』といって、馬との触れ合いや乗馬体験を通じて障がい者の方の心身を療養するプログラムなどがある。

乗馬やホースセラピーのために訓練した馬をほかの牧場や施設に販売することがあり、馬のトレーニングを学習する研修の受け入れや人材育成を行っている。

羊の生産・販売もしていて、非常によい肉質だと一流のレストランなどから評判なのだそう。

paardmusee06 こうした牧場としての事業以外にも、Paard Muséeでは様々な取り組みが行われている。

たとえば林業。切り出した木材を馬が運ぶ、馬と人が協働する森づくりを行っている。

大きな重機を入れるための林道をつくる必要がないので森を壊すことがないし、馬の力に頼ることで化石燃料を依存しない持続可能な森づくりが可能。全国の国立公園などから要請があって、馬とスタッフが出張にいくことがあるという。

またノウハウ提供として、馬の導入方法から技術研修、資材の購入から継続的管理委託まで、馬と森に関する全体的なコンサルティングも行っている。

paardmusee07 整備した森からは山菜や栗、メープルシロップなどが採れ、宿泊施設やレストランなどで提供。地域でものづくりをしている人たちの商品と一緒に物販も行っている。

さらに保育所を牧場内に設け、お子さんのいるスタッフたちは安心して働くことができる。子どもは身近に命の多様性を感じながら育つことができ、とてもいい環境だと思う。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ここまで聞くと、Paard Muséeは普通の牧場ではないのが分かる。

いろんなことに取り組みながら、宮本さんはどんなことを目指しているのだろう。

「ここはいろんなスモールビジネスが集合体になったコミュニティーというか、ビレッジなんですよね。最終的にはここにいろんな会社が入ってくるっていうのもいいなと思っているし、生み出したメソッドや価値観をどんどん広めていきたい」

「つまりこれは“21世紀の開拓”です。北海道のアイデンティティってやっぱり開拓だし、新しいものをつくっていくというフロンティアスピリットが僕の中にあって。自然や動物と触れるよさとか命の尊さっていう体験を、ちゃんとお金が落ちる仕組みでやる。ここで目指したものが世界に散っていくのが本望なんです」

Paard Muséeが完成するのはまだまだ先。もしかしたら100年後かもしれないと宮本さんはいう。

まだやるべきことはたくさんあるから、これから加わる人にも開拓者精神を持ってほしい。

具体的にやることは、七飯町の農家さんとの関係性を築いて、宿泊機能を持つPaard Muséeを拠点とした農業体験を企画・運営すること。地域の人たちとのつながりはまだ少ないため、最初は地域に入り込んで紹介づてに人を訪ねるようなことからはじまると思う。

paardmusee09 農家さんのほかにも、ものづくりや面白いことをしている人とつながることができれば、また違った企画や物販などに発展することができるかもしれないから、期待感は大きい。

「うちは農村地帯に入っていくための入り口なんですね。今後、旅行会社から問い合わせが来るようになれば、全部その人がコーディネートして地域を売り出していく。そういう農泊事業をイメージしていいます。時間はかかると思うけど、ここでの成功体験をもとに別の地域でも活躍したいっていう人も全然構わないです」

宮本さんはどんな人に来てほしいですか?

「若くて伸びしろのある人ですね。もちろん30代とかで一度行き詰まってしまって、何か希望を持ってここへ来たっていう人でもいいと思うんです。すべてをまずは体験として受け止める姿勢のある人がいいのかなって」

「あと、農泊事業の主体となるべきは地域側だと思うし、変わりたいとか新しいことに挑戦したいっていう欲求が地域にはあると思うんですよ。だから神輿を担ぐタイプの人だといいかもしれないです。最初は地域に行って手伝って、飲み会に参加して、みたいな感じになると思うので」


今回募集する人は、Paard Musée・七飯町・観光協会・地元の農家さんが共同で立ち上げた『七飯大沼農泊観光推進協議会』が雇用主となる。

こちらの代表も宮本さんが兼任しているので、Paard Muséeで働くようなものだと思ってもらって大丈夫。

業務についてはPaard Musée宿泊担当の北川さんが1から教えてくれるという。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA とても親切で話しやすい人だなぁというのが、北川さんの印象。たとえ年齢が離れていても、北川さんならきっと気兼ねなくいろいろ話せると思う。

今の雰囲気からは想像できないけれど、もともとは外資系コンサルタント会社に勤め、バリバリ働いていたらしい。その次に就職したのが宮本さんと同じNPOだった。

その後、沖縄の牧場で働いていたが、宮本さんがPaard Muséeを立ち上げたのを聞きつけ、また北海道へ戻ってきた。

「やっぱり宮本って独創的なんですよね。世間にない新しいものをパっと見つけてはじめる。馬を捕まえてブラシしたり、薪割りをするのって僕らが毎日やっていることで、お客さんにはここの暮らしをただ一緒にやってもらうだけなんですよね」

「そういうコンセプトの牧場って全国探してもなかなかないです。最初は建物も何もない状態からはじまったので、まさに開拓することから立ち上げるのも非常に魅力的でしたね」

今は七飯町のとある農家さんに指導してもらいながら、その方の畑で子どもが野菜の収穫を体験するようなツアーなどを企画している。

つい最近は旅行会社と組んで、女性向けの「ちょこっとりんごダイエット2days」と子ども向けの「りんごのおしごと体験キャンプ3days」を開催。

企画や運営に関してはほぼ担当者に委ねられ、かなり自由度があるようだ。

paardmusee11 大事なのは、まずやってみること。

「宿泊事業はまだスタートしたばかりなので、あんまりごちゃごちゃ考えるよりはトライ&エラーで。どんなことを企画したらより多くのお客さんがやってきて喜んでくれるのか、そんなのやってみなくちゃ分からないですからね」

七飯町は小規模農家が多いため、大規模農家に比べ苦労している人たちが多い。そのため、大変なことでも笑い飛ばして過ごしちゃおう、という明るい人たちが多いそうだ。

失敗したって冗談にして笑ってくれるし、閉鎖的な雰囲気はまったくない。思い切って地域へ飛び込んでほしいという。

北川さんは、地域の人と仲良くなって可愛がられるような人に来てほしいと話していた。

「あと宿泊施設のスタッフとしても期待しているので、そっちの仕事もきちんとやってくれて、お客さんを心から歓迎できるような人がいいですね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA そのためには、本人がここでの仕事や暮らしを楽しんでいることが一番だと思う。

たとえ忙しくても、ふと外を見渡せば心休まる景色が広がっている。すぐに動物と触れ合える職場ってなかなかないと思う。このあたりは札幌に比べて暖かく雪が少ないため、暮らしやすいと思います。

新しい未来へ向けて。ぜひこの場所を開拓してください。

(2017/9/15 取材 森田曜光)

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